オブジェクト整備長の雑用係   作:フリーザ様

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ペンギン

 

 

南極の大地を歩く三人。

 

「いやーしかしアレだね二人とも。南極って言っても意外とあったかいもんだね」

 

ヴレイアが能天気に言った。

 

「南半球は季節が逆だからね。これからちょうど夏に差し掛かるんだよ。それでも一応、外気はマイナス3.9度。コート脱ぐと、あっという間に体冷えるから脱ぐなよ」

 

「嘘だろ。これでマイナスだって?なんかサウナみてえに蒸し暑くねぇか?」

 

ヘイヴィアもうんざりした様子で言った。

 

「この辺りは火山地帯だから、地面から一時的に変な熱が出てくるんだよ。二年ぐらいまえに大噴火があって火口の様子が大幅に変わったって話題になってたじゃん」

 

「! おい、二人とも見ろよ!」

 

突然、ヴレイアが指を差して大声を上げた。

 

「温泉だよ!南極のくせに!」

 

「だから火山地帯だって言ってるだろ」

 

「それにしたって温泉だよ⁉︎ヘイヴィア、入ろう!」

 

「おお!」

 

「お、おい二人とも!」

 

クウェンサーの制止を無視してヴレイアとヘイヴィアは温泉の中に手を入れた。

 

「うっ……ヤバい。ちょうど良さげな40度っぽい」

 

「あったけぇ〜……足だけ浸かる?」

 

「やめろ馬鹿。一度でもその温泉につかったら俺達もう戦争なんてどうでも良くなるに決まってる。フローレイティアさんにどやされるぞ」

 

「あーんな巨乳ババァがなんだ!」

 

ヴレイアがそう声を張り上げた時だ。

 

『誰が巨乳ババァだってヴレイア?』

 

ビクビクゥンッと震え上がった。クウェンサーもヘイヴィアも「あ〜あ」みたいな顔を浮かべる。

 

「クウェンサー、通信の電源切って」

 

「バカ、出来るか」

 

『ヴレイア、後で覚えていろよ?』

 

「………すいませんでした」

 

すっかりヴレイアのテンションがガタ落ちした時だ。タァン!と、という音とヴレイアの手が何かを掴むように空中を遮ったのが同時だった。

 

「⁉︎ なんだ⁉︎」

 

「………意外とやってみるもんだね、弾丸キャッチ」

 

そう能天気に言うヴレイアの人差し指と親指の間にはライフル弾が握られていた。

 

「うそー……」

 

「………お前本当に人間?」

 

「弾丸の向き的に……あっちか」

 

二人のコメントを無視して、銃弾の飛んできた方向を睨む。

三人は後ろに下がって、氷の地面という遮蔽物に身を隠した。ヘイヴィアがライフルを構えながら敵の人数を数えた。

 

「………距離は200。人数は7、8人か」

 

「やれそう?」

 

「むしろなんだその傍観っぽい質問は?テメェも拳銃とかPDWとか取り出してさっさと構えろよ‼︎」

 

「いや悪いんだけど、俺は銃器持って来てないよ。あるのはいつも通りの爆弾だけ」

 

「何しにここまで来たんだよテメェは⁉︎」

 

「学生だからね、仕方ないでしょ」

 

ヴレイアは呑気に言うと、警棒とライフルを取り出した。

 

「呑気に言ってねぇでなんとかしろぉおおおおお‼︎なんで俺だけ命懸けで応戦しなくちゃならねぇんだ!敵の居場所さえ教えりゃ海で待ってるお姫様がオブジェクトで砲撃きてくれるんじゃねぇのかよォォおおおおおおおおッッ‼︎」

 

『そのいちだと、ほうげきの「しょうげきは」や「ふくしゃねつ」であなたたちごとなぎはらう羽目になるけど、それでも良い?オーバー?』

 

「くそくそくそくそくそくそファック‼︎」

 

焦れた声で撃ちまくるヘイヴィア。その後ろでヴレイアは軽くストレッチをしている。

すると、クウェンサーが声を上げた。

 

「まずいヘイヴィア!」

 

「敵さんが複数のルートに分かれて襲って来そうってことか⁉︎」

 

「違うそうじゃない‼︎」

 

「ペンギンだ!」

 

「はぁ⁉︎この状況でペンギンなんてどうでも……ペンギン⁉︎」

 

「赤ちゃん!ペンギンの赤ちゃん!」

 

クウェンサーの指差す方向を見るヘイヴィア。敵とクウェンサー達の間を、ペンギンの群れがたどたどしい足取りで歩いてくる。

そこで、奇妙なことが起きた。敵からも味方からも銃撃が止んだのだ。敵も味方も関係なく、間をチマチマと歩くペンギン達の群れを眺めた。

 

「……がんばれっ‼︎がんばれ赤ちゃん‼︎」

 

「おいおいなんで赤ちゃんが一匹だけなんだよ⁉︎ちゃんと親が保護しないとまずいだろ‼︎」

 

そこで、ぺちっと赤ちゃんペンギンだけが転んだ。

 

「うああっ‼︎」

 

「ダメだヘイヴィア!人間は手を貸さないのが大自然のルールだ‼︎」

 

思わず飛び出そうとするヘイヴィアを必死に押しとどめるクウェンサー。そこで、ぎゃーという新たな鳴き声が聞こえる。

 

「アホウドリだとう⁉︎」

 

「おい、食わねぇよな?ここに来て上空から襲い掛かってきたりしねぇよな‼︎」

 

だが、助けられない。大自然のルールだ。アホウドリはペンギンの赤ちゃんに向かって突撃する。誰もが血の匂いを想像した。だが、悲劇は起きなかった。

 

「くみゃあああああああッッ‼︎」

 

という、新たな鳴き声が炸裂した。ペンギンの母親が全力で威嚇し、アホウドリの狙いをズラせた。

アホウドリは空中に上昇し、もう一度狙いを定める。だが、赤ちゃんペンギンの前には母親のペンギンが盾になるように立ちはだかった。さらに、威嚇の声を上げ続ける。

アホウドリは数回、親子の頭上を旋回すると、諦めたように空の向こうへと消えて行った。

直後、クウェンサーとヘイヴィアからわあああああああああああ‼︎という歓声が響いた。

 

「やったなヘイヴィア!」

 

「ああ!クウェンサー!」

 

二人して手を合わせて思わず涙ぐむ。

 

「ヴレイアも!見たかおい⁉︎」

 

言いながら振り返るヘイヴィア。だが、ヴレイアの姿はなかった。

 

「…………あり?」

 

声をあげてキョロキョロしてると、前からヴレイアが返ってきた。

 

「おーい、終わったよー」

 

ヴレイアの帰って来た方向を見ると、敵の兵隊が全滅していた。

 

「……………」

 

「……………」

 

「あれ?どうしたの二人とも?」

 

「お前、まさか俺たちがペンギンに見とれてる間に……」

 

「うん。全員殺した」

 

その言葉に二人は呆れることしか出来なかった。

 

 

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