オブジェクト整備長の雑用係   作:フリーザ様

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レーザー

 

 

あっさりと敵を薙ぎ倒し、ほとんど任務はクリアしたようなモンだ。三人は天然温泉に足を突っ込んだ。

 

「うはぁあああぁぁぁぁ………」

 

足を浸かっているだけなのに、顔をゆるゆると緩ませ、気持ち良さそうな声を上げるヴレイア。

 

「それにしても、テロリスト達はなんで地対空ミサイルなんて使ったんだろうな」

 

唐突にクウェンサーが二人に言った。

 

「連中、大量のスペア砲を使っていただろ。あれで撃ち落としたって良いんじゃないのか。まして、スペア砲に電力を供給する謎のオブジェクトが本当にあるんだったら……」

 

「知るかよそんなの。連中は現に対戦車陣地で奇襲を仕掛けてきただろ。成功率を高めるために、わざと質の悪い兵器だけ。使って、情報を集めさせねぇって目的もあったんじゃねぇの?」

 

「……例のオブジェクトにしても、そもそもお姫様のレーダーにも映らないっていうのはどういう事なんだろうな。オブジェクトって、50メートルの巨体だぞ。隠そうとする方が難しいだろ」

 

「どぉーーーーーーでもいいっ」

 

突然、ヴレイアがダレた声で口を挟んだ。

 

「おんせんはひとのからだだけじゃなく、こころもいやすのです……」

 

「そぉれもそうだなぁ〜……」

 

ヘイヴィアも蕩けた声を出す。

 

「だぁー……。あまりにも気持ち良すぎて眠たくなってきたぜ……」

 

「おい、寝たら死ぬぞって言わせてくれよ。実はちょっと憧れているんだ」

 

「zzz………」

 

「おい、寝るなヴレイア」

 

なんて話してると、クウェンサーの視界に、何か銀色の塊が入った。

 

「うわ、なんか嫌なもの見つけた」

 

「何見つけてんだ馬鹿!仕事しなくちゃならなくなっちまったじゃねぇか!」

 

「ホント、トラブルはぜんぶ俺達の見ていない地球の反対側辺りでやってほしいよね」

 

「この南極から反対側だと結構『安全国』も遠くなるけどな」

 

二人は爆睡してるヴレイアを無視して、靴下とブーツを履いて、その機械の方へ向かった。

 

「おいクウェンサー、なんか向こうの方、白い蒸気みてぇなのが元気よく噴き出してんじゃん。本当に大丈夫なのかよ」

 

「目の前の問題をさっさと解決すれば、その分だけゆっくりくつろげる。そういう風に考えてやる気を出そうよ」

 

ブツブツ言いながらも、二人は岩陰の奥へ。そこにあったのは四角い箱があった。

 

「何だこりゃ?」

 

「観測用ロボットだよ。『安全国』で学校に通っていた頃、オブジェクトの基礎構造を学ぶ一環とかで何とかで、こんなものを作った覚えがある」

 

「ふぅーん……となると、テロリストの目的はこれかもしれないって事か」

 

二人合わせて顎に手を当てた。

 

「ようクウェンサー。コンピュータの画面見てわかることねぇか?」

 

「触って大丈夫なのかな」

 

「何だよ。フローレイティアに指示でも仰ぐのか。やだねぇ、料理教室に通いたての若奥様みてぇじゃん。フライパンに油垂らすのにもいちいち先生呼ぶ感じの」

 

「なら、なんかまずい事になったら説教受けるのヘイヴィアだな」

 

「分かったよクソが俺らはエプロンのつけ方も知らねえ幼妻だ」

 

てなわけで、二人はフローレイティアに聞いた。

 

『電子シュミレート部門のスタッフをそっちへ送る。到着するまで触れないように』

 

「けっ、こうして俺らの手柄が他所に持って行かれるわけですね」

 

『おや、ロボット内の空きスペースにプラスチック爆弾でも仕込まれているって可能性は考えないの?操作を間違えると即座にドカンとか』

 

「早く帰りてえ‼︎一刻も早く‼︎」

 

涙目で叫ぶヘイヴィア。その時だ。

 

「……あれ?」

 

「おい、なんか勝手に動き出してねぇか?」

 

二人の目はケーブルでロボットにつながっているノートパソコンへ。

その画面は、何やら猛烈な勢いで新しいウィンドウを表示し始めた。

 

「なんか、まずいことになってねぇか?」

 

「まずいなんてレベルじゃないぞ……」

 

ヘイヴィアと違って真剣にパソコンの文字列を目で追っていたクウェンサーが呟いた。

 

「この探査ロボットは通信衛星を使って遠隔地の研究室から操られている。その通信衛星を使った送受信回線に何か干渉しているみたいだ」

 

「で?」

 

「狙いは通信に使ってる衛生そのものだ!この人工衛星は通信の他に宇宙空間での様々な実験を行えるように色んなのを装備してる。その中の一つ、飛来した小惑星の表面をレーザーで焼いて、その時に出る光を検出してデータを取る機能が丸ごと乗っ取られている‼︎」

 

「ごめんクウェンサー俺にもわかる言葉で言って」

 

「平たく言うとハッキングした実験用のレーザーを勝手に照射しようとしているんだ!狙いはおそらく、月面にある特権階級達の別荘地帯だ」

 

「月面⁉︎」

 

「と、とりあえずフローレイティアさんに連絡を……!」

 

またまた通信。

 

『……電子シュミレート部門のスタッフが到着するまで触れるなと言っていたよね?……?』

 

「いやスミマセンでも今はそれどころじゃ‼︎」

 

『上官の命令へ勝手に優先順位をつけるとは良い度胸ねクウェンサー。とはいえ、月面の別荘か』

 

待ってろ、と言うとフローレイティアは通信を切った。戻ってきた。

 

『とっとと結論をいうか。心配しなくていいわよ。レーザー予測照射地点は推測できたけど、該当エリア「ロックキャッスル」に面白いVIP様がいるらしくてね』

 

「?」

 

『「正統王国」と同じ世界的勢力の一角、「資本企業」の少将サマよ。今まで「正統王国」がなんども暗殺しようとして失敗してる大物ね。テロリストが勝手に殺してくれるなら問題ないわ。今後、暗殺作戦でさらに多くの部下が戦死するぐらいなら、私はここで目を瞑る』

 

「………」

 

「………」

 

今までの緊張感を返せとでも言わんばかりに二人は顔を見合わせた。そんなことを知るはずもないフローレイティアは「そういうわけだから、それには触れるな」と言って通信を切った。

へなへなと座り込むヘイヴィアに、クウェンサーは聞いた。

 

「ヘイヴィア、ちょっと質問していい?」

 

「なんだよ」

 

「南極に来る前、整備基地の火薬庫で映像チャットやってたよね。金髪でドレスの女の子」

 

「ああ、それが?」

 

「あの子、どこにいるって言ってたっけ?確か、世界で一番地上の争いから遠い場所、とか言ってなかった?」

 

「……ちょっと待て。おい、待てよちょっと⁉︎」

 

「へ、ヘイヴィア。まだ決まったわけじゃないし、ほら、杞憂な確率も高いんだからさ。とっ、とりあえずネット使って連絡取ってみたら?」

 

「そ、そうだよな。何の根拠もねーもんな。クウェンサー、軍事行動中で外部とのアクセスが遮断されてるけど、これってハッキングでどうにかなんねぇの?」

 

「そんなことができたら派遣留学なんてしてません。でも、あのご令嬢こ臨時権限ってまだ生きているかもよ。それならヘイヴィアとの間だけは何とかなるかも……」

 

「おおう!繋がった繋がった!でもフローレイティアにバレてブチ切れられんのも時間の問題って感じだな!」

 

で、連絡を取った。

問一、あなたは今どこにいるのですか?

そのシンプルな問いかけに、とても単純な答えが出た。

 

『決まってんでしょう?月面にある「ロックキャッスル」って名前の別荘ですわよーだ』

 

直後、

 

「ファあああァァァーーーーーーーーーーック‼︎」

 

ヘイヴィアは叫んだ。

 

『な、何ですのそのストレートすぎる要求は⁉︎わ、わたくしそーゆー申し出は嫌いじゃねーですが』

 

そのセリフを無視して、ヘイヴィアとクウェンサーは肩を組んで小声で作戦会議。

 

「(じゃあ何か?軍の上層部はたとえ『貴族』の一人娘を巻き込んででも『資本企業』の少将さんをブチ殺してぇってことかよ⁉︎)」

 

「(でも、フローレイティアさんは知らないと思うなぁ、他に民間人がいるなんて話。知ってたらあんな調子で命令出さないと思うんだけど)」

 

「(なんにせよ結果は同じだ。軍の正式命令である以上、ここで衛星に手を加えるとそれだけで罰則受けちまう!けとここで放っておいたら……)」

 

『何をコソコソ話してやがるんですの?』

 

ビクゥ‼︎と二人は肩を震わせる。

 

「(ヘイヴィア、ヘイヴィアってば)」

 

「(なんだよこの切羽詰まった状況で)」

 

「(おーっと、手が滑ったってことで。やっちゃってやっちゃって‼︎)」

 

ぶふっ⁉︎と吹き出すヘイヴィア。

 

「(テメェ、自分が何言ってるのかわかってんのか⁉︎それやったら俺だけじゃなくててめぇまで一緒に罰則受けちまうぞ⁉︎)」

 

「(早くしろレーザー照射まで30秒ないぞ‼︎)」

 

「(わかったよやるよ!ただし、あとになってから文句言うんじゃねぇぞ‼︎)」

 

ヘイヴィアは大きく息を吸って深呼吸すると、探査用ロボットに接続されているパソコンに向き直った。

 

「おおーっと手が滑」

 

「ゴールネットを突き刺すシュウウウウウッッ‼︎」

 

ボタンを押そうとした直後、横からパソコンに蹴りが入った。ほぼ音速で振り抜かれた脚によって、パソコンからキーボードが消え失せ、画面だけがゴトリと落ちた。

 

「」

 

「」

 

固まるヘイヴィアとクウェンサー。ギギギッとロボットのようにぎこちない動きで横を見ると、寝ぼけたヴレイアがシュートを決めたサッカー選手のように雪原を走り回っていた。

 

「……お、おまっ、おまおま、おまっ‼︎ざけんなゴラァアアアアッッ‼︎」

 

ヘイヴィアの鋭い廻し蹴りがヴレイアの顔面にめり込んだ。

 

「うごっふぁ⁉︎何⁉︎何事⁉︎」

 

「テメェええええ‼︎ブッ殺す‼︎」

 

「ヘイヴィア⁉︎何でライフル向けて……⁉︎」

 

このまま本当にぶっ殺されそうになった時、「大丈夫そうだよ」とクウェンサーが言った。

 

「何が大丈夫なんだよ⁉︎もう解除しようが……!」

 

と、言いながら振り返った。クウェンサーの手にはひび割れたパソコンの画面が握られていて、そこには「中断されました」と出ている。

 

「………どんなミラクルだよ」

 

ヘイヴィアは思わず尻もちを着いた。

 

 

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