ポールダンス
海面30メートルぐらいの高さの船の上。
「おら、ちゃきちゃき働かんかい雑用!」
「は、はいぃぃ!」
整備長に怒鳴られ、慌てて色んな道具を運んだり置いたり渡したりするヴレイア。多分、初めてなんじゃないかな、雑用の仕事してるの。
「ほら、早くスパナ持って来んか」
「わ、分かってますよぉ〜……」
涙目になりながら小道具を運ぶ。そのヴレイアに声が掛かった。
「ヤッホー」
「えっ?」
お姫様が手を振っていた。
「……あ、どうも」
「何してるの?」
「ざ、雑用です……」
「そう」
「…………」
気まずいヴレイアだった。そもそも、クウェンサーやヘイヴィアならまだしも、ヴレイアは女性と話すことに慣れてない。1対1だと尚更だ。
「じ、じゃあ、僕仕事あるんで……」
「うん。頑張ってね」
何の用だったんだろう……と思いながら仕事に戻った。
○
休憩中。ヴレイアはヘイヴィア、クウェンサーと一緒に強襲揚陸空母の甲板の端で戦闘機を眺めていた。
「見ろよ。このゴテゴテしたデルタ翼。ジャミング用の特殊アンテナばっか。ミサイルよりも多く吊り下げてるぜ」
「仕方がないんじゃないの。オブジェクトにロックされたら最後、大空のどこにいても光の速さで飛んでくるレーザーに撃墜されるっていうんだから。ロックされない、ロックされてもギリギリで回避できる環境を整える方に重点置くのが普通だと思うよ」
「一時期はステルス神話も囁かれてたみてえだけど、あれ、結局レーダー施設そのものを複数設置すると、せっかく照射位置とは別方向に拡散させたレーダー用の電波を別基地でキャッチされて居場所がバレるって話らしいな」
「バレないように飛ぶから、バレても当たらないようにする路線変更したわけだ」
なんて話してる時だ。唐突にヴレイアが呟いた。
「なんか、鶏肉が食べたい」
「分かる!」
過激に反応するクウェンサーだった。
「食べたいよな!噛んだらジュワーっと肉汁が出て来る感じの!」
「それ!それがいい僕も!あとちゃんも皮付きでしつこくてアッサリした感じの!」
「て、てめぇら!レーションばっかの戦場で何て事言うかね!」
「えー、食べたくない?ちょっとレモンで風味を付けても良いかもしれない」
「あー僕はレモンいいや」
「お馬鹿っ‼︎そんな事言ったら食べたくなるでしょ‼︎おおお駄目だ、トロットロの脂身が恋したくなってきたー‼︎」
三馬鹿が身悶え始めたところで、お姫様が口を挟んだ。
「たべられるよ」
「は?」
「このシャルルマーニュ号はしゅうこう15しゅうねんだったらしくて、そのパーティに色んなたべものをもちこんでいたみたい。まだ余りがあるみたいだから、かんないしょくどうに行けばたべられるよ」
それを聞いた直後、ヴレイアは壁を登って食堂に向かった。
「あっ、てめっ!汚ぇぞ!」
慌ててクウェンサーとヘイヴィアも食堂に向かった。
○
食堂。クウェンサー、ヘイヴィア、ミリンダ、ヴレイアが到着した。そこには、フローレイティアがスパゲッティを一人で頬張っていた。
「見ろよクウェンサー!案の定だ。美味いもののチェックに余念がない我らが上官サマが一人で全部平らげようとしている」
「アラスカの時の熊とか鹿の時といい、この人もかなり素晴らしい人格持ってるよな……」
「むぐ?何だ、そういうお前達も嗅ぎつけたの?」
「ウグルあああああッッ‼︎」
突然、ヴレイアが吠えてクウェンサーとヘイヴィアを蹴り飛ばした。
「「ぐおっ⁉︎」」
壁に叩き付けられる二人。ヘイヴィアが起き上がって文句を言った。
「テメェ!何しやがんだこの野郎ッ‼︎」
「うるせぇぇぇ‼︎残り少ないこの肉は僕のモンだァアアアアッ‼︎」
「あってめっ、汚ぇぞこの野郎ッ!」
「ヘイヴィア、共同戦線だ!とりあえず目の前のこいつを叩くぞ!」
「応ッ‼︎」
殴り合いが始まる中、お姫様もさりげなく肉を皿に盛り付けて食べ始めた。
結局、鶏肉は唐揚げ1個ずつくらいしか取れなかった三人は、大人しく椅子に座って食事を始めた。久しぶりにまともな料理が食べられ、しばらく無言で食べていたのだが、ふとヘイヴィアが口を開いた。
「ポールダンスってあるじゃん。あの、女の人が棒に絡みつく奴」
「? なにそれ?」
「ヴレイアは知らなくていいのよ。そのまま純粋でいてちょうだい」
フローレイティアに頭を撫でられ、顔を赤くするヴレイアだったが、それを気にせずクウェンサーが口を開いた。
「またいきなりだな。ヘイヴィア、ひょっとして欲求不満なの?」
「あれどうやんの?」
「いや、どうするも何も。棒に絡まってクネクネするもんだろ」
「そうじゃなくてだな。アクロバットなものになると、逆さまになって片足だけ、膝の裏のとこで棒に絡みついてグルグル回ったりすんだろ。あれ何なの?どうやったら体を支えられるんだ?」
知るかよそんなの……とクウェンサーが投げやりに答えようとした時、フローレイティアが口を挟んだ。
「お姫様、しばらくヴレイアの目と耳を塞いでて」
「え?ちょっ、なんっ」
塞がれたのを確認すると、フローレイティアは配管の方へ向かった。
「ものにもよるけど、基本的には真鍮製の棒と肌の摩擦で体を固定してるだけよ。まぁ、あとは足の組み方にもコツはあるけど。金属棒を挟んで捻るぐらいの気持ちで力をかけると、足一本で体を綺麗に支えられるわけ」
言いながら、パイプに絡みつき始めた。
「具体的にやると、こう、こんな感じ」
「あれぇ⁉︎フローレイティアさん何でそんなに手慣れているの⁉︎」
「作戦成功時の先勝パーティなんかでたまに隠し芸をやる必要があってな。後、これやると何故か現場の兵士のやる気が倍増する。足で棒を挟んで派手に回転すると、ストッキングが破れてしまうのが難点ね」
「そ、そりゃこんだけの爆乳に内もものストッキングをピリピリ裂きながらクネクネされたらテンションがおかしくなるのは事実だが……!」
「ちょっ、お姫様!手退けてっつーの!」
「あっ……」
ヴレイアが無理矢理手を離させ、目に飛び込んだのは大きく胸を反らせ、思いっきり強調させているフローレイティアの姿だった。
「ーーーッ⁉︎」
直後、鼻血を噴射し、ヴレイアは後ろにぶっ倒れた。
「………あーあ」
「どこまで純情なんだよ」