オブジェクト整備長の雑用係   作:フリーザ様

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奪還

 

「白い雪の中を歩いてるとさ、たまにパンツの上を歩いてる気分にならない?」

 

クウェンサーと二人で移動中、唐突にヴレイアが言った。

 

「…………こんな時になんだよ、急に」

 

「いや、初めての実戦で緊張してると思って」

 

「やめろよ。そんな場合じゃないだろ」

 

「戦場ではリラックスする時はしておくものだよ。特に、こういう時はね」

 

「リラックスと妄想は違うだろ」

 

「そうだな。リラックスは妄想によって生み出される」

 

「お前帰ってくんない?」

 

「ごめん」

 

「それよか、お姫様の位置は?」

 

「まだ分からない。……!静かに」

 

ヴレイアはイヤホンを耳につけている。そのイヤホンには索敵マイクの機能もついている。

 

「………向こうかな?」

 

ヴレイアの後にクウェンサーは続いた。そして、人影のようなものが見えた時、後ろのクウェンサーを手で制して、自分は木の陰に隠れた。

 

「…………いた」

 

「本当か?」

 

「声は小さめに頼む。いたよ、おまけ付きでね」

 

周りには、四人のライフルを持った男に囲まれていた。あたりにオブジェクトは見えない。あの四人をどうにかすれば、とりあえずお姫様は助けられる。もう少し雪の上を這いずりながら移動すると、少し崖のようになっていて、その下でお姫様……ミリンダは捕まっている。

 

「………クウェンサー。これを」

 

ヴレイアはライフルを持たせた。

 

「……お、俺が?」

 

「万が一、僕がピンチになったらここから狙撃して」

 

「僕がって……一人で行く気か?」

 

「現在、向こうの戦力は油断しきってるし、周りに仲間を待機させてる気配もない。こっちまで全戦力を晒す必要はないよ」

 

「でも俺、銃なんて撃ったことないぞ」

 

「僕とお姫様に当てなければいいよ。牽制で十分。それから僕が突撃したらしばらくは顔出さないで」

 

「でも、お前は武器無しにどうする気だよ」

 

「あんな連中……武器なんていらないよ」

 

言うと、ヴレイアは飛び降りた。

 

「っ⁉︎なんだテメッ……!」

 

言いながらライフルを構えた一人の敵兵にものすごいスピードで接近すると、顎に掌底を叩き込み、頭を掴んで顔面に膝蹴りを入れた。

 

「ッ………‼︎」

 

悲鳴をあげる間も無く蹴り殺すと、ミリンダに言った。

 

「しばらく目ぇ閉じてて」

 

「へっ?」

 

「トラウマになるといけないから」

 

言うと、二人目に突っ込む。

 

「この野郎……ッ!」

 

と、ライフルを向けてきたが、その手首を打ち払ってライフルを奪った。

 

「なっ……⁉︎」

 

「この距離なら、体を動かしたほうが速い」

 

そして、腕をねじり上げて残りの二人に敵兵を向けて盾にしつつ、後ろから手を回して首をへし折った。そのまま男をドンッ!と残り二人に向かって突き飛ばす。

 

「うおっ⁉︎」

 

その死体から避けた隙に三人目に近付き、殴り殺そうとした時、三人目は意外にもナイフを突き付けてきた。

 

「っ!」

 

それでも問題なく対処しようとした時、シュドッとそいつの頭に穴が空き、血が噴き出た。

 

「っ! クウェンサーか……!」

 

そう分析した時だ。

 

「スナイパーもいたのか……!」

 

残りの一人がグレネードライフルをクウェンサーの方に向けた。

 

「!」

 

「クウェンサー!離れろ!」

 

最後の一人とヴレイアの間は若干距離がある。射撃を中断させることは出来なかった。放たれるグレネード。クウェンサーは降って来るグレネードに反応が出来なかった。

 

「バカ、避けろ!」

 

ヴレイアでもない何者かの声が響き、クウェンサーを庇った。誰だか確認はできなかったが、ヴレイアはとりあえず残りの一人に向かった。

 

「このぉっ!バケモンがァッ‼︎」

 

そいつはヤケになって殴りかかってくるが、それを躱し手足を払って倒したあと顔面に奪ったライフルの銃口を突き付けた。

 

「……おっと、返り血を浴びるわけにはいかないな」

 

そう言うとライフルを引っ込めて顔面に蹴りを入れて殺した。

 

「………ふぅ、もう大丈夫だよ。お姫様」

 

ヴレイアに言われて目をうっすら開けるミリンダ。

 

「あなたは……主任さんの雑用の……」

 

「うん。ヴレイアだよ。よろしくね」

 

「おい、無事かヴレイア」

 

後ろからヘイヴィアとクウェンサーがやって来た。

 

「……! ヘイヴィア。来てくれたの?」

 

「うるせえな。仕方ねぇだろ」

 

そう言うヘイヴィアの肩には携行型の対戦車ミサイルが掛かっていた。

 

「こいつ、擦り傷にビビって気絶してたんだぜ」

 

「ははっ、情けないなークウェンサー。そんなんで助けに行くとか言ってたの?」

 

「う、うるせーな。俺はお前達と違って慣れてねぇんだよ。……でも正直、ヴレイアには来てもらって助かったかも」

 

「あ、でも援護ありがとね。……無くても問題なかったけど、楽させてもらったよ」

 

「そういえば、エリートのお姫様は?」

 

「何言ってんの。ちゃんとここで無事だよ」

 

「お前自分が助けた子の安否も確認してなかったのかよ」

 

と、戦場のど真ん中で能天気に話す三人に後ろから「どうして……?」と、声が掛かった。

 

「どうして、わたしを助けに来たの……?じっさいにメインでたたかうエリートでもないくせに。かくシェルターみたいなぶあついそうこうのオブジェクトに守られているのでもないのに。どうして生身の体でここまで来ちゃったの?」

 

ポロポロとミリンダの口から言葉がこぼれる。

 

「わたし、心の中ではあなたたちのことをバカにしてたのに。いつもわたしが守ってやってるって、オブジェクトがいなくなったらみんなころはれるしかないって!」

 

声を荒げる。それを三人は黙って聞いていた。

 

「ひていしようとおもっても、正しくありたいとおもっても、ずっとずっとそんなひどいかんがえばかりうかんでたのに‼︎なんでそんなにんげんを助けるために、こんな所まで来ているの⁉︎」

 

そう言われて、三人は顔を見合わせた。で、「どうするよ?」「いやどうするとか言われても」「クウェンサー、頼む」「そこで投げるの⁉︎」みたいなやりとりを目線でした後、クウェンサーが言った。

 

「酷い考えも何も、そいつは本当のことじゃないか」

 

「え………?」

 

「オブジェクトについて色々勉強してきたつもりだったけど、今日、実際に戦って初めて分かった。あれは、怪物だ。正真正銘の怪物なんだ。そんな化け物と今まで一人で頑張ってきたのは誰なんだよ」

 

クウェンサーは言いながら笑みを浮かべた。

 

「もう、良いじゃんか。もう、一人じゃなくても良いだろ。こんなの、大それた理由なんかいるのかよ」

 

「それな」

 

「一番最後に来たくせに賛同するなよ」

 

「なっ、ヴレイア!お前そういうこと言うなよ!」

 

と、また呑気に談笑を始める。すると、今度はミリンダはヘイヴィアを見た。

 

「俺の方も大したことねぇよ。クウェンサーの野郎が、お姫様一人じゃ囮にもならねぇっつったんでな。そいつで冷静になれたってだけだ。言われてみりゃ確かにその通りだから、囮にしても使えるレベルのモンを用意しなくちゃ皆殺しってわけよ。あとは、まぁ、あれだ……『仕方がねぇ』ってトコか?」

 

「そこまでだ」

 

ヴレイアの声が響いた。

 

「その怪物が来た。逃げるよ、ライフルぶっ放して銃声響かせたんだ。奴らがいつ来てもおかしくない」

 

ヴレイアの声で四人は地獄の鬼ごっこ開始。

 

「……くそッ‼︎具体的にはどこに逃げるんだよ⁉︎」

 

「自分の戦うエリアの地図くらい事前に叩き込んどけよ!50メートル先に洞窟がある!とりあえずそこに駆け込めば巨体はどうにかしのげる‼︎」

 

「本気⁉︎そんな事したら入り口に砲門突っ込まれて狙い撃ちだよ!」

 

「鬼ごっこよりはマシなんじゃないのか⁉︎」

 

「プラズマほうがこっちをねらってる‼︎」

 

ミリンダが叫ぶ。だが、狙うだけで撃ってこない。

 

(お姫様を生け捕りにするかで悩んでる……‼︎洞窟に撃ってくることはないかもしれない!)

 

ヘイヴィアはそう言うと、クウェンサーに聞いた。

 

「クウェンサー!爆薬持ってないか⁉︎」

 

「ありきたりなC4が五キロほどなら!」

 

「貸せ!信管ごとだ‼︎」

 

爆薬を借りてヘイヴィアは洞窟に飛び込む。その後にクウェンサーが飛び込んだ。次いでミリンダ、からのヴレイア。

そして、ヘイヴィアは洞窟の入り口にC4を置いた。

 

「悪い、のっけから運試しになりそうだぜ!」

 

ヘイヴィアは言うと起爆した。爆発し、洞窟の入り口は塞がれた。

 

 

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