洞窟の中を四人は進み、外に出た。割と出口は近かった。辺りをヴレイアが見張っている中、クウェンサーとヘイヴィアとミリンダは会議を始めた。本来ならヴレイアも一緒のが良かったのだが、「僕頭悪くて何も言えないからパス、三人の決定に従うよ」だそうだ。ヴレイアは割と脳筋だ。
「多分、奴らにとっての最優先事項はエリートのお姫様だ。だから、さっき撃たなかったんだと思う」
クウェンサーが言った。
「だから、捜索活動はこのまま続行されるはずだ」
「ならここから気付かれずにドロンするか隠れてりゃ命だけは助かるかもしれないが……」
「そしたら登山中の自軍が皆殺しにされる」
「でも、かれらがぶじににげきれるまでおとりをつづけられるとおもう?」
「死ぬだろそんなの。敵兵にチラリとでも見られたら、オブジェクト呼ばれて下位安定式プラズマ砲で集中砲火だぜ」
「なら、このまま立ち去るのか⁉︎」
「だから、さっきからそうしてぇっつってんだろうがよ‼︎お姫様のオブジェクトでも太刀打ちできなかった化け物だぜ⁉︎俺らだけで何とかなる訳ねぇだろ‼︎」
「……あれは、いきなりそうちがさどうしかけたから。モードをかいじょするのにてまどっている内に、さらにオブジェクトから攻撃を受けただけだよ」
悔しそうに顔を俯かせてお姫様は言った。
「そんな事はどうでも良いんだよ。あのアメンボ野郎をどうするかだろ!」
「まだ逃げることを考えてるのか?生き残れるけど一生トラウマになるし、お前は貴族だ。ここで一人だけ生き残ってもそいつは不名誉扱いだ。家督は継げなくなるぞ!」
「……ッ!じゃあどうすんだよ!」
「決まってんだろ!」
クウェンサーはニヤリと笑った。
「オブジェクトの設計を学んでいる学生に、攻略の起点を探すための分析官、それに操縦を行うエリート、さらには正統王国生身最強の脳筋が揃ってる……」
「オイ、嘘だろ。何となくテメェが考えてることがわかった気がするが、それにしたって嘘だろ」
「探すしかないんじゃないか?どうやっても倒せないはずのオブジェクトを、どうにかできる弱点を」
○
ヴレイアと合流して、その事を話した。すると、
「馬鹿なの⁉︎そんなの勝てるわけないじゃん!」
と、嬉しそうな顔で言った。どうやら、脳筋だけではなく戦闘狂でもあるようだ。で、向こうのオブジェクトについておさらいする。
コードネーム:ウォーターストライダー(アメンボ)
全長:約140m
最高速度:時速550km
装甲:4センチ厚×250層
用途:局地的防衛用兵器
分類:氷雪地帯特化型第二世代
仕様:静電気+直接接地型推進システム
主砲:下位安定式プラズマ砲×2×4
副砲:レーザービーム、レールガン、コイルガンなど
メインカラーリング:ブルー
「………ごめん、何を言ってるのか全長と速さと武器しか分からなかったんだけど」
「ならちょっと静かにしててな」
ヴレイアが速攻で黙らされた。最年長とは思えない扱いである。
「静電気を使って地面の上を滑るような感じの方式だったな。基本はウチのお姫様と似たようなもんだが、4本足と組み合わせることで、より起伏の激しい地面でもスムーズに動けるように調整されているんだ」
「『せいでんき』はおもたいオブジェクトをうかばせるためのもの。まえへすすむためのそうちは他にあるの。わたしのばあいは、レーザーをおうようして、くうきをばくはつさせているけど、ウォーターストライダーは『あし』をつかってちょくせつじめんをけっているみたいね」
「なら、こういうのはどうだ?」
ヘイヴィアが言った。
「デッケェ落とし穴とかに落とすとかは?」
「いや、たとえ脚を止めても火力は生きてるし、足止めできても10秒くらいだ」
「………確かにな」
クウェンサーが一蹴した。今度はミリンダが手を挙げる。
「なら、てきほうだいをごばくできないかな?」
「こっちの手持ちにオブジェクトがあればできるかもな。でも、こんなチャチなミサイルじゃ、砲に擦り傷一つつけられねぇぞ」
ヘイヴィアに言われて、また考え直すミリンダ。「あ、あのー……」と、ヴレイアが控えめに手を挙げた。
「何だよ」
「そもそもなんでオブジェクトを叩かないといけないの?」
「「お前ェは話を聞いてなかったのか‼︎」」
「や、そういうんじゃなくてさ。こっちも向こうの補給源を叩けばいいんじゃないの?基地を全部ブチ壊せば、補給源を失った奴は本国なりなんなりに帰還するしかなくなるんじゃない?」
「「「…………」」」
三人は黙った。その手があったか、と思うと同時に、こいつ戦いたいだけだ、とも思った。
「……でもまぁ、その通りかもな。そうしよう」
「おい、本気か?四人しかいねぇんだぞ?」
「基地の大きさにもよるけど、うちと同じ程度なら僕一人で十分だよ」
恐ろしいことを言うヴレイアだった。
○
四人は敵の基地の裏。錆びた鉄の塔からよく敵の基地の様子が見える。ヴレイアが基地を見ながらポツリと呟いた。
「………ザラにも程があるよ。今から行ってきていい?」
「バカ言うな。レーダー施設ばかりとはいえ、一応は基地だ。油断するな」
「だってあんな戦車も何もない基地なんて……見張りにしてもやる気無さすぎでしょ。軍人なめてんの?」
「仕事中に狩に行ってた奴の台詞じゃねぇな」
「………ヴレイアもそんなことしてたんだ。そこの二人よりまともだとおもってたのに。ちょっとげんめつした」
「そ、そんな……⁉︎」
「いいから、とにかく作戦を考えるぞ」
クウェンサーの一言で全員黙った。
「なぁ、今更思ったんだけど、もしこの基地を落としてもオブジェクトが殺戮を止めなかったらどうすんだ?」
「………確かに。それじゃあ、いいとこ相討ちって事になっちまう」
ヘイヴィアも頷いた。
「どちらにせよ、オブジェクトもなんとかしなくちゃいけないってことね……」
ミリンダが顎に手を当てた。
「………なぁ、思ったんだけどアレだけの巨体を支えるのにかなり脚に負荷が掛かるんじゃねぇか?」
「確かに。そういえば、ウチの部署で採取した戦闘記録だと、あのアメンボ野郎は平均で半日に一回、基地に引き返してメンテを受けている。おそらく足元のガラスの靴をオーバーホールしてるんだろ。オブジェクトの巨体を浮かばせるほどのエネルギーを常時生み出していると、パーツの金属が溶けちまうってわけだ」
「なるほど……。つまり、あそこの脚のスペアパーツも壊さなければならないわけか……」
ヘイヴィアの台詞にクウェンサーが呟いた。
「でも、そうすればにげきれるかのうせいがでるんだよね?」
「ああ」
「………どういうこと?」
理解し切ってないヴレイアの台詞にクウェンサーが説明した。
「つまり、俺たちの仕事はあの基地の人間の皆殺しとスペアパーツの破壊って事だ」
「………ヴレイアって、おばかなの?」
「「そりゃあもう」」
キョトンと首を傾げるミリンダにクウェンサーとヘイヴィアがウンウンと頷き、ヴレイアはうな垂れた。
「じゃあとにかく、ヴレイアは拠点の制圧、俺とヘイヴィアはスペアパーツの破壊、お姫様はここでオブジェクトが戻って来たら知らせてくれ」
「「「了解」」」
クウェンサーの指示に三人が頷いた。