ヴレイアに引き摺られてしばらく泳いだあと、ようやく海面に出た。
「……ッハァ!ケホッケホッ……。ゥオイ!何しやがんだヴレイア!」
「そうだぜ!殺す気かこの野郎ッ!」
二人の怒声がヴレイアに飛ぶ。それらを無視してヴレイアは自分達が乗っていたベースゾーンを指差した。そのベースゾーンは丁度、砲撃によって沈んでいく最中だった。
「…………」
「…………」
「海のもずくになりたかったの?」
「「藻屑な」」
「……………」
で、三人は黙り込み、元ベースゾーンを見た。
「全員、フローレイティアさんに、敬礼」
なんだかんだ、一番付き合いの長いヴレイアが言うと、三人とも海の上に浮きながら敬礼した。
「なんだかんだ、良い人だったよなぁ……」
「ああ、いい乳してた……」
クウェンサー、ヘイヴィアと言った時だ。
「ほう?それはどういう意味の敬礼なの?」
後ろから冷たい声が響いた。ビクッとする三人。ギギギッと壊れかけのロボットのように振り返ると、フローレイティアがボートに乗って脱出していた。フローレイティアも飛び込んで脱出したからか、海水で全身濡れている。
「ふ、フローレイティアさん……」
ヴレイアが声を漏らす。
「さて、人のことを勝手に殺しておいて無事で済むと思わないでね?作戦終わったら覚えてなさいよ。特に、失敗した暁には宇宙の果てまでぶっ飛ばすからね」
「「「は、はいぃぃぃ‼︎」」」
三人は泳ぎ始めた。
「でも、実際どうすんの?どうやってあの船に乗り込むんだよ」
「ヴレイア、何か考えがあって……いや、お前に聞くだけ無駄か。どうせ何となく面白そうだからって理由だろ」
「酷いぞヘイヴィア!僕だって真面目に考えての行動だったんたよ!」
一先ず注意しておいて、ヴレイアは説明を始めた。
「あいつは多分、ゴールテープに引っ掛かってると思うんだ。だってゴールテープを正面突破して来ていただろ?だから、一度潜ってそれに掴まれば乗れるんじゃないかなと思って……」
「そんなミッション・インポッシブルみたいな事出来るか!」
「でも、それ以外に乗り込む方法なんて無さそうだぞ。あの速さのオブジェクトに身体が直接当たっただけで汚い花火になっちまう」
ヘイヴィアの台詞にクウェンサーが反論した。
「とにかく、潜ろう」
「チッ、仕方ねぇな!」
三人は潜った。
○
上手く三人は甲板に上がった。
「で、ここからどうするんだ?」
「とりあえず、仕掛けられるだけの爆弾を仕掛けるしかないんじゃないか?」
「それもそうか」
と、三人は船の上を移動しながら爆弾を仕掛けた。
「おい、おい見ろよ」
ヘイヴィアがクウェンサーに声を掛けた。ヘイヴィアが指差す方向にはトライコアの別のフロートだった。トライコアのフロートはAのような形をしていて、クウェンサー達がいるのとは別の所にも、数々の施設が建っている。
「……大型倉庫?そうか、トライコアは整備基地を丸ごと内臓したオブジェクトだったんだ‼︎確かにこれなら弱々しい整備艦隊式のベースゾーンをお守りする必要もない。動力炉を三つも搭載している大型機ならではの新機能って訳か!」
「違うよそっちじゃねぇ!施設の他に機関銃持ってる兵隊もフルセット揃えてあるみたいだぜ‼︎」
言いながらヘイヴィアはクウェンサーの腕を掴んで物陰に隠れる。途端、銃声が鳴り響き、自分達の隠れた物陰に火花が散る。
「ちょっと待て。俺たちが隠れてるのって石油タンクじゃないか⁉︎」
「他に隠れる場所がねぇんだから仕方ねぇだろ‼︎それともだだっ広いフロートのど真ん中に出て行くかよ⁉︎」
「二人とも下がって!」
ヴレイアが二人の前に出て、姿を表しながら拳銃を発砲。一発も撃ち漏らすことなく、その場にいた兵士達を狙撃した。
「……終わったよ」
「本当にこういう時は頼りになるな」
ヘイヴィアがホッとしたように言った。
「ねぇ二人とも。面白い事考えたんだけど、いいかな?」
「なんだよ」
「このオブジェクトを、ハイジャックしよう」
「「…………はっ?」」
何言ってんのこいつ、みたいな顔をするクウェンサーとヘイヴィア。
「だーかーらー、ハイジャック。敵の兵隊一人残らず殲滅した後にコクピットを責めるんだ」
「本気で言ってんのかテメェ!」
「……いや、でもここにいた方が安全かもしれないぜ」
「本気かよクウェンサー⁉︎」
意外に賛成したクウェンサーにヘイヴィアが突っかかる。
「だってここは敵オブジェクトの上だぜ?敵の兵隊を除けばここに攻撃なんて来ないし、その兵隊もヴレイアがいればいいだろ。アラスカの時、ヴレイアがやってたみたいに敵兵の服でも着ればそれだけでも安全かもしれない。そういうことだろヴレイア?」
「なるほど……ヴレイアも考えてたんだな。見直したぜ」
「は、ははっ……ま、まぁね!僕も少しは頭使うからね!」
「そこまで考えてなかったのかよ」
「……………」
「まぁ、とにかくここでコクピットを探しつつ兵隊と交戦するのが一番安全……」
クウェンサーが言いかけた時、トライコアの横から水飛沫が上がった。
「「「……………」」」
我らがお姫様のオブジェクトの主砲だ。
「わ、忘れてたァァァァッッ‼︎」
「は、走れ!走れ!味方の射撃に殺されるぞ!」
三人は走り始めたが、目の前に敵兵三人がライフルを構えて立つ。
「! やべっ……!」
「邪魔だァァァァッッ‼︎」
ヴレイアの飛び膝蹴りが敵兵の中の一人の顔面に直撃、蹴った奴を踏み台にしながら空中で宙返りしつつ、発砲。頭を吹っ飛ばした。
が、派手にやり過ぎて他の敵兵も呼び寄せてしまった。
「ッ!」
慌てて三人はどっかの物陰に隠れる。
「畜生!兵隊と味方のオブジェクトに挟み撃ちかよ!このままじゃどちらにせよ俺たちの原型がなくなっちまうぞ!」
「ヴレイア、ヘイヴィアはここで足止め頼む!俺はお姫様に通信してレーザー系兵器を使うように通信する」
「OK!」
言うと、ヴレイアは物陰から一瞬だけ顔と拳銃を出し、一発撃つとすぐに引っ込めた。
「ッラアッ‼︎」
その後にヘイヴィアがライフルを乱射する。
「大人しくしやがれ!」
と、交戦する中、クウェンサーは通信機を出した。
「こちらクウェンサー。今トライコアの甲板にいる!脱出するまでの間、兵装を一時変更してほしい。WL3B1に変更してくれ!繰り返す、WL3B1に変更だ!」
言うだけ言ってクウェンサーは通信を切った。
「通信は終わったかヒーロー!」
「ああ、後は奴らを片付ければ……」
と、言いかけた時だ。チカッと上空が光った。
「「「ふおおおおおおおおおおッッッ‼︎‼︎」」」
三人でそこからダイブして回避。上から飛んできたのは、キラースコール。生身の人間を駆逐するための兵器だ。
「オイィィィッ!クウェンサーテメェ、お姫様に何を注文したんだ!」
「違う違う!WL3B2じゃなくてWL3B1だ!」
「助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい助かりたい………」
「神頼みするなヴレイアァァァァッッ‼︎そもそもお前がハイジャックするって言い出したんだろうが!」
まぁ、お陰で目の前の敵兵は殲滅出来たのだが。
「と、とにかく、先へ進もう」
三人はトライコアの上を進んだ。