とある科学の無能力者【完結】   作:ふゆい

27 / 68
 二話連続更新。今週の土日は結構調子が良かったです。


第二十五話 歌声と邪眼

 彼らは『五人』で一人だった。

 両親から捨てられ、身寄りもない五人の子供達。捨てられた先が学園都市というのが不幸だったのか、拾われた先で彼らを待ち受けていたのは託児施設ではなく研究所。人工的に的確に『大能力者を作り出す』という、学園都市内でも一風変わった研究所だった。実現の可能性が限りなく低い超能力者を作るなんて非効率。それならば、大量の子供達を集めて脳の構造を調整し、強制的に大能力まで能力強度を底上げしてしまえばいい。そんなイカレた思考回路を持った科学者達が集まる地獄。彼ら五人は、その研究所で邂逅した。

 毎日が言葉にできない程に凄惨な地獄絵図。毎日同じ境遇の被験者達が犠牲となり、植物人間となって帰ってくる。時には、脳が破裂して頭部が元の形を留めていない者もいた。無理矢理脳を弄られたために、人間の限界を超えてしまったのだ。

 彼らは一つの部屋で何年も過ごした。それぞれがそれぞれの能力に合った訓練を行っていたので四六時中共にいたわけではなかったが、訓練後と実験後にはその部屋で毎晩お互いを励まし合った。傷を庇い合い、いつかこの地獄から抜け出してやろうという決意を胸に秘めて毎日を必死に耐え抜いていた。

 だが、研究所に収容されてから十年が経過し、彼ら全員が大能力の片鱗を見せ始めたある日。

 

 『五人』は、『四人』になった。

 

 

 

 

 

 

                   ☆

 

 

 

 

 

 能力者データバンクの第一通路の先にある広がった空間に轟音が鳴り響く。広範囲に放出された衝撃波が壁を砕くと、通路全体を地震のような振動が襲った。

 爆音の原因は赤髪の少年。

 唐竹響(からたけひびき)と名乗ったパンクロッカーのような出で立ちの少年は、特徴的なノイズ染みた大声を辺りに撒き散らしていく。

 

「まだライブは始まったばかりだぜベイベェエエエエエエエエ!!」

 

 マイクを使っているわけでもないのに、鼓膜を突き破りそうな程の大声量がゴーグルの耳をガンガンと打ち鳴らす。聴覚が麻痺し始めてきたことに軽く舌を打つが、床を削りながら向かってくる衝撃波を自らの能力【念動力波(サイコウェーブ)】で防ぐことも忘れない。右手を開いて念動力を盾の形状で展開させると、衝撃波に思い切りぶつける。

 衝撃波と念動力が轟音と共に相殺した。

 

「クソッタレ……近所迷惑なんスよお前は……」

「今のはちょっくら弱めのバラード! お次は二曲目、今度リリースする新曲を発表するぜ! ポップでロックでちょっぴりパンクなオレサマの歌を脳髄に焼き付けてくれェエエエエエ!!」

「だぁかぁらぁ……五月蠅いっつってんだろうがこの歩く公害野郎!」

 

 脳を直接揺らされるような頭痛に苛まれているゴーグルが頬をヒクつかせるが、その原因である唐竹は気にするどころか更に声量を強める一方だ。もしかしたら自分の声のせいでゴーグルの言葉が届いていないのかもしれない。どこまで傍迷惑な奴なんだ、と基本温厚なゴーグルの額に珍しく青筋が浮かぶ。

 先程から防戦一方のゴーグルだが、ここで遂に反撃を開始した。唐竹が叫ぶ度に飛んでくる衝撃波の塊を念動力をピンポイントで発生させることで受け流し、唐竹の方へと走る。だが、彼との距離はまだ三十メートルほど離れており、人間の足では到達するのにそれ相応の時間がかかりそうではあった。

 時間にしておよそ四秒。それだけあれば、唐竹は己の大声で時間を稼ぐことができる。

 

「まだまだオレサマのオリコンランキングには届かねぇぜドーナツ系ゲスト! テメェがせかせか路上ライブしている間に、オレサマはバンッバンヒット曲を生み出し続ける!」

「確かに、走ってるだけじゃお前に接近することは無理かもしれねぇっスね。俺がいくら足を動かしても、お前が衝撃波で床をぶち抜いちまえばそこで動きは止まる。その間に天井でも砕いちまえば、それだけで戦闘は終了だ。打たれ強いことに定評のある俺っスけど、さすがにあんな高いところから落下してくる瓦礫をマトモに受けちまえばただではすまない。一発食らってお陀仏の可能性だってなきにしもあらずっス」

 

 「でもな」ゴーグルはニィと口を半月状に歪ませると、自身の頭を親指で示した。正確には、頭に装備している土星(・・・・・・・・・・)のような形のヘッドギアを(・・・・・・・・・・・・)

 何本ものコードが腰の機械へと繋がっている奇妙なヘッドギアを自慢げにこれ見よがしに見せつけると、ゴーグルは飄々と言い放つ。

 

「実は俺、ロボットみてぇなジェット噴射ができるんスよ」

 

 瞬間、

 ゴーグルの腰部機械から、緑白色の輝きが勢いよく放たれる。

 

「んなぁっ!?」

「こんなふざけたゴーグルわざわざ付けてんだ。少しは可能性を考慮した方がいいっスよ?」

 

 彼の頭部でゴーグルが虹色の機械的な点滅を始めていた。ヘッドギアが彼の脳波を読み取り始めているのだ。読み取った脳波を電流に変え、コードを伝って指令を腰の機械へと送る。普通に能力を武器や盾に変えて使うのではなく、ただ勢いよく噴射するだけだから複雑な演算式もいらない。バケツに貯めた水を水鉄砲に移し替えて使うよりもそのままぶちまけた方が早いのと同じ理論で、彼の演算はほぼノータイムで腰の機械へと反映される。

 その結果、膨大な量の念動力の波が彼を後押しするように後方へと噴射される。

 自分の足で走れば四秒。だが、ジェット噴射で速度を上げればほぼ一秒。

 わずか一秒では、声を衝撃波に変えることはできない。衝撃波を飛ばせない以上、ゴーグルを足止めするものは何もない。

 

「へ……へへっ! オレサマのフィナーレはまだ来ない! 『アイツ』のためにも……オレサマ達は、こんなところで終わるわけには――――」

「さっきからゴチャゴチャ五月蠅いんスよ、この三流ミュージシャン」

 

 瞬きするかしないか、その程度の時間で唐竹へと肉薄する。その速度はまさに一瞬。後退することすらままならない短さで爆走してきたゴーグルは、念動力に覆われた拳を握り込む。追い詰められた唐竹が息を吸い込んで最後の抵抗を見せるが、もう遅い。勝負は決している。

 

「そのクソつまんねぇ雑音の礼だ。おひねりと思って大人しく貰っとけ」

 

 右手を振るう。格闘技でも学んでいたのか、無駄な動きのない洗練された正拳突きが真っすぐ唐竹の顔面をとらえた。拳を覆っていた念動力が肌を破り、肉を裂き、骨を砕く。グチャグチャと気持ち悪い肉塊がゴーグルの頬を打つが、お構いなしに拳を振り抜く。

 右手を戻すと、グシャという鈍い音と共に先程まで人間だった物体が崩れ落ちた。圧縮された念動力によって首から上が破裂したように消失している。勿論、目の前の肉塊がこれ以上の抵抗を見せることはない。

 「うぇ……汚いっスねまったくもう」カーゴパンツのポケットからハンカチを取り出すと、返り血や肉を浴びた全身を拭う。身体を拭き終え、ついでとばかりにヘッドギアもキレイキレイした頃には、白かったハンカチはほとんど別物の赤に変色していた。鉄錆びた臭いも付着している。これは洗濯した程度では落ちないかもしれない。一応臭いを確かめると、瞬間的に顔を歪めた。これはもう使えない。そう判断した後、目の前の肉の上に適当に落とした。手向けというわけでは全くない。ゴミはゴミがあるところに捨てるという常識に則っただけだ。

 最後にパンパンと両手を叩いて埃の類を落とし終えると、唐竹だった物に背を向けて先ほど標的が入ってきた第一通路へと足を進める。

 

「シリアスな雰囲気は嫌いなんスよね。早く帰って垣根さんでもからかおうっと」

 

 

 

 

 

                 ☆

 

 

 

 

 

 彼ら五人の内、非常に身体の弱い一人の少女がいた。

 生まれた時から心臓が弱ったらしく、それが原因で【置き去り】にされたらしい。生きるためには大量の薬がいる。彼女の両親は、その薬代を賄うことができずに彼女を学園都市に捨てた。研究所に入った後も薬が必要なことに変わりは無かったが、そこは腐っても学園都市。科学者達は片手間で薬を製造すると、定期的に彼女へ薬を与えてくれた。同情からくるものではない。貴重な実験体を失うのが勿体ないと思っただけだ。科学者達にそんな思いを抱かせるほど、彼女の能力は稀少なものだった。

 彼らは、身体の弱い彼女を中心的に楽しませようとした。比較的身体が丈夫な四人に比べ、いつ死ぬか分からないから。どう考えても五人の中で一番寿命が短いであろう少女に、できるだけの楽しみを与えたかったから。

 そんな彼らの中の一人に、歌が大好きな少年がいた。

 彼を【置き去り】にした両親はそこそこ売れたパンクロッカー。テレビで大々的に取り上げられるほどメジャーになったわけではないが、業界内では一応名が知られている程度には活躍していた。だが、子育てよりも音楽活動に専念したいと思った両親は、彼を学園都市に捨てた。

 自分を捨てた両親のことは恨んでいる。だが、彼らの歌を聞いているうちに好きになった音楽は嫌いになれなかった。自分に唯一与えられた趣味であり娯楽。仲間達の合いの手をBGMに、彼は件の少女を喜ばせるためにひたすら声を張り上げた。決して上手とは言えない技量だったが、彼は自分にできる唯一の方法で少女と共にあろうとした。

 そんな彼の名は、唐竹響。

 大切な仲間達を鼓舞するために歌い続けた少年は、己の歌声と共にこの世から消えた。

 

 

 

 

 

                   ☆

 

 

 

 

 

 能力者データバンクの第二通路では、金属をぶつけ合うような音が何度も響き続けていた。

 片や金属製の特殊警棒、片や工場に置いてあるような鉄パイプを持った二人の少女がお互いの武器をぶつけ合う。ギィンと甲高い音が鼓膜を震わせた。

 少女達は腕力にそれほど差はないらしく、お互いが振るう武器が均衡を崩すことはない。だが、どこか心理定規が押されているようにも見える。別に銀髪オッドアイの美少女リリアン=レッドサイズが鉄パイプで押しかっているわけではない。ただ、リリアンの攻撃に比べると心理定規の攻撃はあまりにも命中していないのだ。心理定規が何度特殊警棒を振るっても、攻撃と同時にリリアンは行動する。最初から攻撃が来る(・・・・・・・・・)のが分かっていたかのように(・・・・・・・・・・・・・)、ノータイムで回避行動に移られる。

 横薙ぎに振った特殊警棒が鉄パイプで防がれると、苛立ちを隠そうともせずに心理定規は激怒する。

 

「あーもう! いい加減しつこいのよ! さっさとやられてくれないかなこの厨二病女!」

「フハハハハ! 貴様の温い攻撃なぞ、我が【未来予知(カオスフォーチュン)】にかかれば蚊を叩くよりも容易なことだわ! どんなに速い攻撃であろうが、発動時に分かっていれば回避するのは極めて容易い! 貴様の攻撃が我を捉えることは絶対に不可能なのだ! フハハハハ!」

「イタいし気持ち悪いし五月蠅いのよ貴女は! いくらナイスレディな私でも、貴女みたいな妄想拗らせたような奴は我慢できない!」

「好きにほざけ、下等生物め。攻撃が当たらない以上、何を言おうと所詮は負け犬の遠吠えに過ぎないのだからな!」

「ぐぅぅうう……! イチイチ癪に障る事ばっか言いやがってこの無駄巨乳……!」

「自分にない物を持っている相手に嫉妬するとはお笑い草だな。どうやら貧乳は心の方も貧しいらしい」

「余計なお世話だよ!」

 

 頭上から振り下ろされる鉄パイプを特殊警棒で防ぐと、一旦距離を取る。このまま殴り合っても埒が明かない。ここは一先ず戦法を練らないと。

 

(予知能力か……どの程度まで予知できるのかってのが微妙なんだよね……)

 

 聞いたら教えてくれないかな、と馬鹿なことを考えてしまう。あれだけ自分に絶対的な自信を持っているのだし、もしかしたらあっさり言ってくれるかもしれない。心理定規の経験上、あぁいう手合いは口が軽い。少し褒めてしまえば、そこからはもう濁流のように情報が飛び出してくる。自意識過剰であればあるほど、その勢いは顕著だ。

 やってみる価値はあるかもしれない。リリアンにバレない程度に軽く頷くと、疲弊しきった表情を顔に貼りつけて会話を開始する。

 

「認めたくはないけれど、貴女の能力って凄いよね」

「そうだろう! やっと貴様にも我が【未来予知】の偉大さが分かってきたらしい。このチカラは約一分後までの未来を確実に予知することができる。内面的な変化までは予知できないが、貴様の動作や挙動は寸分違わず適中させることができるのだ! おぉう? 一分後の貴様は笑っているな。どうやら恐怖でおかしくなってしまったらしい! だが確証は無い。さすがの我でも貴様の精神面までは予知することはできないのだからな! それは我が心中も然り。いいか、もう一度言うぞ? 精神面は予知できないが、貴様の挙動は全てまるっとごりっとすりっとお見通しなのだ!」

「…………ここまで馬鹿だと、いっそ心配になってくるわね」

「何をぶつぶつ言っている。まさか我が偉大な邪眼に恐れをなしたのではないだろうな!」

「……えぇ、そうね。ある意味では、貴女に恐れをなしているかもね」

 

 「何ぃ?」と怪訝そうにオッドアイを向けるリリアン。ゴスロリ銀髪少女が睨んでくるとかもはやホラー以外の何物でもないが、心理定規は恐怖よりもリリアンのあまりの愚かさと作戦が成功した喜びで肩を震わせていた。まさかここまでスムーズに事が運ぶとは。適度な確信があった上での行動とはいえ、少しばかり衝撃を受けてしまう心理定規である。

 どこか純粋さを残した顔をこちらへと向けているリリアンにニッコリと微笑みかけると、心理定規は歩を進め始めた。武器である特殊警棒を構えるわけでもなく、モデルがカーペットを歩く時のように、優雅な様子で。

 

「ふん、恐怖のあまりおかしくなったか! ならばこのリリアン=レッドサイズが、御自ら手を下してくれよう!」

 

 無防備な状態で向かってくる敵なんてただの的だ。鉄パイプを構えると、心理定規に走り寄る。それでも彼女は警棒を振り上げない。自殺でもするつもりなのか。

 

「これで……終わりだぁっ!」

 

 右手で持った鉄パイプを振り上げると、心理定規の頭頂部に狙いを定める。彼女の予知によると、心理定規が防御行動をとることはない。あくまでも一分後の予知だが、それだけの時間何もしていないということはリリアンの殴打を食らうことに等しい。

 力を込め、鉄パイプを振り下ろす。真っすぐ振り抜けばそれで終わりだ。敵を撃破して、さっさとデータバンクの中枢部に向かえる。勝利への確信を持ったリリアンの口が大仰に綻んだ。

 ――――――――が、

 

「どうしたの? さっさとその鉄パイプを振り下ろせばいいのに」

 

 心理定規の言葉がリリアンの耳を打つ。……リリアンは鉄パイプを振り下ろしてはいなかった。なぜ、どうして。自分でも理解できないのだろう。表情を見るに、彼女の内心が手に取るようにわかった。

 彼女はこう思っているに違いない。

 

「『あの子』と同じ距離(・・)にいる私を殺すことは、できやしないでしょう?」

「なん、だ……どうして、貴様が『彼女』と被る……!?」

「そういう能力なのよ、私」

 

 愕然と目を見開くリリアン。なんとか鉄パイプを振り下ろそうと両腕に何度も力を込めているようだが、その行動が遂行されることはない。当然だ。それが心理定規の能力なのだから。

 他人との心の距離を自由に操作する能力。家族にも、友人にも、恋人にも。彼女の采配で他人との関係が決定する残酷な能力。人間同士の信頼感なんて希薄で薄っぺらい物なのだと確信してしまうような、忌々しい能力。

 

「不思議でしょう? 今の私は『あの子』と同じ。詳しいことは分からないけど、貴女が何よりも大切に思っている『あの子』と同じ距離、七。凄いね。家族でもここまで距離を縮めることは難しいんだよ?」

「く、そ……くそくそくそくそッ! あり得ない! こんなところで……こんな女に、誇り高き我が負けるはずが……!」

「諦めなさいな、お姫様」

 

 鉄パイプを振り上げたまま硬直してしまったリリアンの懐に、特殊警棒を腰だめに構えて入り込む。彼女が動く様子はない。抵抗できる程、リリアンの精神は無事な状態で残ってはいない。

 

「相手が悪かったわね。残念だけど、私はこれでも一流のレディだから」

 

 バキィッ! と骨を折る鈍い効果音が発生する。口から一気に息を零したリリアンは、白目を剥くとそのまま心理定規へと倒れ込んだ。予知能力による回避を主とした戦いをしていたからか、そこまで打たれ強いわけではなかったらしい。

 豊満な胸が心理定規の左肩で卑猥にひしゃげているのを憎々しい顔で睨みつけるものの、体勢を整えてリリアンを背負うと第二通路の出口へと向かう。

 

「貴女結構面白い子だから、命だけは取らないで上げるわ」

 

 知り合いのカエル医者にでも預けようかしらね。何気に優しい一面を垣間見せている自分に気が付くと、まだまだ甘いなと自嘲気味にくすくす笑う。まぁ、甘い部分も一流のレディには必要だ。酸いも甘いも持ち合わせてこそ、全ての男性を魅了できるのだから。

 邪眼持ちの厨二病少女を背負い、心理定規はアジトへと凱旋する。

 

 

 

 

 

                  ☆

 

 

 

 

 

 とある少女を担当した科学者は、大のアニメ好きだった。

 彼女を実験体と思っている点は他の科学者と変わらなかったが、彼は暇さえあれば彼女に自分の好きなアニメの話を聞かせていた。未来を見通す目を持った、ゴシックロリータの美少女が主人公の物語を。

 彼女の能力が予知系であったため、能力向上を効率よくするために語っていただけかもしれない。だが、信じていた両親に【置き去り】にされたせいで精神的に疲弊していた彼女は、毎度のように語られるアニメの主人公に徐々に心酔していった。言動を真似し、格好を真似し……その科学者に頼み込んで、髪も銀色に染めてもらった。自分の大好きな美少女キャラが現実に降臨する事に感動を覚えた彼は喜んで協力してくれた。フィギュアのように扱われることは耐え難かったが、それであの主人公に近づけるのなら、と少女は科学者に笑顔を向けて主人公へと変貌した。

 ついには名前までも主人公になりきった少女は、完璧と言っていい物真似で仲間達を楽しませようとした。娯楽のない研究所で、四人の仲間達にエンターテインメントを与えようとした。現実には存在しない『彼女』を表現することで、一つの希望を与えようとした。

 自分を捨てることで新たな『自分』を得た少女、リリアン=レッドサイズ。

 その邪眼がこれからの彼女の未来を予知できるかどうか。真相は、神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。