面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
まず読者の皆様、長い期間お待たせしてしまい大変申し訳ありませんでした!
それともう1つ伝えることが。今回はハーメルン内で同じ遊戯王小説を書いている作者、白狼天狗=サンとの話し合いの末で作ったコラボ回となります!コラボは以前からしてみたいと思っていたのですが、やってみると超大変…他の作者が書いた作品の設定を矛盾させずに、かつ皆様が満足できそうな話を作るのは非常に骨が折れました……
ところどころ白狼天狗=サンの作品設定と食い違いが生じることがあるかもしれませんが、それは僕の未熟さ故の失敗ですので、そのことで他作品の評価を決めることはご遠慮ください
…前書きが長くなりました。それでは他世界なコラボ第1話をドーゾ!
※EX章の話は本編と深い関係性はありませんので、読み飛ばしてもらっても構いません
※今回の話は他作品のオリジナルカードが使用されます。オリカアレルギーの方はこの話を読むことを推奨いたしませんので、それらを全て承知した上で読んでください
ヤッダーバァアァァァァアアアアア!
異世界での邂逅
『サウザンド・フェイス選手に会わせてください!質問したいことがいくつもあるのです!』
『ですから、彼は既に帰ったと言っているじゃないですか!』
『そんな訳ないでしょう!楽屋に入ってから、ずっとドアの前で待っていたんですから!サウザンド・フェイス選手!少しだけ、ほんの10分だけで構いませんから話だけでも聞かせてください!』
『貴方は赤馬零児社長の推薦でプロになったと聞きますが、賄賂でカードを握らせたというのは本当の話ですか!?』
『素顔を隠す理由に貴方が元犯罪者だからという噂が立っているのですが、そこのところどうなのですか!いるなら返事をしてくださーい!』
「…あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛も゛う゛……マジクソ鬱陶しいィィィ……!!」
オッス!オラホスウ!今楽屋の前にスッゲェ人が集まってるぞ!オラワクワクしてきた!
……ああぁやっぱり無理!知りうる限り前向きなキャラの性格をトレースしてみたけど我慢出来ん!ウザい!ひたすらにウザいよ!試合終わった後なんだからいい加減にしろ!
遊矢とのエンタメデュエル合戦以降、遊勝塾の皆と少しだけ距離が縮まった僕はスタンダードの意識改革と今を生きる為の生活費を稼ぐのを目的にプロ
だが、やはりというべきなのか、試合の後のインタビュアーたちがひたすらに邪魔過ぎる。最初はドームの入り口を固められていたので裏口から帰っていた…が、ある程度経つと今度は裏口に何人かの記者が獲物でも見るかのような目で待ち構えていた。だから今度は駐車場から影を縫うように帰っていたのだが、そうなれば当然そこも固められる。窓から、地下から、いっそ開いたドームの上から……ありとあらゆる手段と道を用いて今まで逃げ果せてきたが、ことごとく退路を潰されていった。そして今に至っては、試合が終わったまさに直後にインタビュアーが来て、質問責めをする始末。荷物を回収する為に楽屋に逃げ込んでも外に出ようにも、待っているのは質問地獄。スタッフの皆さん、本当にゴメン……
とにかく、ああいう奴らから逃げる為に、今日も僕はデュエルディスクを起動しシンクロ次元に移動するつもりである。……でも、シンクロ次元はシンクロ次元で、セキュリティ共との耐久デュエルが待っているし……前門の虎、後門の狼…というやつだ。そろそろ胃に穴が空きそうな程ツラい……マジで滅びねえかなぁ、マスゴミ共にシンクロ次元
『病む気持ちは分からないでもないが、それだけはやめてやれ』
こういう時、いつでも冷静なもう1人の自分の存在がマジで助かる
……愚痴っても仕方ない。今度赤馬……は忙しくて無理だから中島さんと相談して何らかの対策を立てよう。最悪、質問用の答えくらい考えておくか
いつも通りカバンを肩にかけ、自分のデュエルディスクを左腕に装着して《シティ》と英語で書かれた横文字に指を当てる。ポティッとな。これでいつものようにシンクロ次元に移動しーー
直後、前触れもなく訪れる異変。デュエルディスクがエラーコードを鳴らしたかと思うと、ディスクの画面が真っ赤に染まり上がり……浮かび上がる文字は「
「え……ッーーー」
いつも通りとは違う何かを感じて恐怖が湧き上がるも、僕の身体は既に量子変換されており……抵抗は無意味だった
そしてサウザンド・フェイス…白星風斗の楽屋は、いつも通りのがらんどうな景色に早変わりした
「……うぅ、ん………ハッ!」
ガバリと腕に力を込め、身体を跳ね上げる。ネチョついた地面に倒れてたおかげでへばりついていた泥を手で払いながら、周りを見渡す。天気は晴天、しかし暗く狭い建物の間……どこかの裏路地な景色だった
「…シンクロ次元に飛ぶことができたのか……?それにしては、なんか見覚えのある景色のような……」
それに、シティの特徴でもある高度に伸び建てられた街の景色がどこにも見当たらない。まさかここは、シンクロ次元じゃない…?でも、エクシーズ次元のような高度な技術を駆使した建設物はおろか、ハートランドの象徴でもあるタワーも存在しない。そもそもハートランドは融合次元の侵略で崩壊している後だ……となると、消去法で残るのは1つ
「まさか……融合次元?」
あまりに絶望的な観測は宙を舞い上がり、空に溶けて消える
もしそうだとすれば非常にマズい。砕羽に聞いた限りでも、僕はアカデミアに強く警戒されている。ここが融合次元だと仮定して、僕の正体が奴らにバレた場合……間違いなく殺しにかかってくる。この世界風に言い換えれば、確実にカードにしようとしてくる
地の利が向こう側にあり、シンクロ次元の治安維持局などとは比べ物にならない異常な物量……状況は、最悪以上と言っていいだろう
いや待て、落ち着け。まだここが融合次元と決まったわけではない。もしかしたらシティが見えないシンクロ次元のどこかなのかもしれない……とにかく、どんな街かを確認しないと
サウザンド・フェイスだとバレないようにコートとデュエルディスクを四次元ポケットなカバン中に収納して、喧騒が聞こえてくる方向に足を踏み出す。息を潜め、足音を消し、正面から見えないようにゆっくりと顔を物陰から出して……
「………ハ?」
間抜けな声を思わず漏らした
視線の先には、僕が懸念したようなアカデミア軍が
「舞網市……?」
確かに次元間を移動した僕はずの瞳に映っていたのは、現在の拠点としている次元…スタンダード次元の街並みそのものだった
僕は間違いなく次元跳躍をした…この少し酔いそうな感覚は、次元跳躍後に起こる症状みたいなものだ。だとしたらこの矛盾はどう説明する?気絶している間に別次元に移動してからスタンダードに戻った?ブレスレットで跳ばされた遊矢シリーズみたいに別次元を介さずに移動した?…マジで分からん……
「……ん?」
ふと見つけた、赤色の髪に緑が被さった髪型。胸元で揺れるペンデュラム……間違いない、あいつは遊矢だ。安心感のあまり、彼に近づきながら声を掛ける
「おーい」
「……え?」
「良かったァ。お前がいるってことは、ここは間違いなく舞網市だな。1人か?他の皆はどうしている?」
『…おい待て、何か遊矢の様子がおかしいぞ』
「黒星?」
おかしい?何を言ってるんだ?黒星の言葉を聞いて、目の前のトマトヘアーを注視する。その表情は見たこともない人物に話し掛けられてるように戸惑っており、その辺で僕は遊矢に対し痛烈な違和感を感じ……
「えっと……誰、ですか?」
そう問い掛ける彼の質問に、僕は思考をフリーズさせた。…今、なんて言った……?誰、だと?2ヶ月は今の服装で遊勝塾で世話になっている僕を知っていない?
ただならないことが起こっているのだと、頭がそれを理解しながらもついていけていない。ゆえに、僕はある名前で確認をとってみる
「……瑠璃と……瑠璃と砕羽は、どこだ?」
投げ掛けた名前。スタンダードまで連れてきた2人の名を出して反応をうかがってみると……
「瑠璃…?!瑠璃って、黒咲が探している……もしかして君は、ユートや黒咲と同じエクシーズ次元の
ーーー驚くようにあげた返答に、息を詰まらせる。遊矢が返してきた答えは、とても残念なことに少しは思い浮かんでいた想像と一致しており……残酷な真実そのもの
「ッ………ッ…!!」
皮を破きそうなほど下唇を噛むも、身体のうちのどこかにあった冷静な心が暴れ叫びたい衝動を抑え……遊矢の返答に対して踵を返すように、回れ右をして僕は走り出した
「まさかこの人も、俺をユートと間違えて……?」
「すまない!人違いだった!」
「あ、待ってくれ!君に聞きたいことがあるんだ!止まってくーーー……」
鍛えられた健脚を駆使して、建物の壁をよじ登り、駆け上がり、屋上の床を蹴り上げ遠くにジャンプする。信じがたい事実を噛み締めながら、出来るだけ遠くに走り抜け……グルグルと混乱する頭の中で、1つの結論を叫んだ
ここは……!僕のいたところとは違う、少し未来の……しかも!別のスタンダード次元だ!
「…どういう…ことだ…?!」
驚愕を露にしながらも、LDS社に近づかないように僕は舞網市の空でコートをばたつかせた
「ハァ…ハァ…ハァ……マジかよ…!ちょっと、信じられないんだけど……」
約1時間程度を無心に走った末にたどり着いた公園で一旦止まってから、休憩も兼ねてベンチに腰掛ける。バクバクと激しく脈動する心臓のペースを少しずつ元に戻していきながら、周囲の街並みを見渡す。同じなのだが…少し違う。広告とか、外装とか……時期によって変えたにしたって、多過ぎる変化
朝の走り込みでよく通る、見知った公園だ。すべり台もブランコもジャングルジムもある……だが、数年は雨水を受け止め、塗装が剥げたことで見窄らしい茶色に覆われてた数々の遊具は、綺麗な黄色やら緑色の彩色を放っている。業者が塗装し直した?今朝見た時は塗り直す準備も予兆もなかったのに、たった半日そこらで全部塗装して子供が遊んでも問題ないほどに乾かす?そんなバカなことは、
「…少しだけ、身長伸びてたな」
現実ではあり得ない環境の変化を否定した次に考えたのは、先ほど顔合わせした遊矢の姿だった。あいつはさっき、ユートや黒咲などのエクシーズ次元に関する人物の名前を言っていた……つまりここは、僕が存在していない遊戯王ARC-Vの世界。正規の世界、といったところか。遊矢が瑠璃とかのことを知ったのは舞網チャンピオンシップ…ランサーズ選定試験が終わった後だ。つまり、ユートは遊矢の中に統合されたということで……
「…ッ……」
チクリと、胸が痛む。物語の都合上ユートが遊矢と1つになって、だからこそ遊矢の新しい力となり、成長させるきっかけと様々な救いがあったのは確かだ
……けれど、何か納得がいかなかった。もっと他に何かあったのじゃないのか?ユートを生かして…は言い方がおかしいが、遊矢とユートが1つにならなくても良かった方法、それくらい少しは何かあったのでは……?いくら思考の海に潜り込んでも、その解答は結局のところ全く見つからない
何より、ユートが助かって欲しいというのはつまるところ僕のワガママ…エゴなのだ。分からない未来の果てで、そのエゴが世界を崩壊させる可能性だって十二分に存在する。そんな危険を承知で未来を変えるほど、図太い神経を持ち合わせているつもりはない。……でも、僕の住むARC-Vの世界は既に正史とは違う歴史を歩み始めている…瑠璃を救った、あの時点で。今更僕がワガママ云々言うのはおかしいし、それでも皆がデュエルで笑い合える世界を、僕は見たい訳で……
「……今それを考えても無駄か。とりあえず、元のスタンダード次元に帰らないとな」
次元転送装置のインターバルである1時間は既に経った。デュエルディスクにも、いつもの4つの転送先が明るく灯されている。その中にある《スタンダード》と記されたコマンドを人差し指で触れ、目を閉じる。これで次に目を開けた時には、元いた世界のスタンダード次元にーーー
「………あれ?」
目を開けてみるが、見えるのはさっきと何1つ変わらない公園の風景。押し損ねてしまったかな?と思って、今度はしっかり…指紋がくっきり残るんじゃないかってレベルでディスクの液晶画面に指を押し当てる。しかし、十数秒くらい経ってもうんともすんとも言わない
え?ちょっ、ま…えぇ?なんで次元転移ができな……
「……ま、まさか……!?」
次元転移が………できない…?
「はあああぁぁぁぁぁーーーーーーーッ??!」
本日何度目かの……だが最大の驚愕と危機に、腹一杯に溜め込んだ空気を声として吐き出し、限界の許す限り声帯を震わせて絶叫をあげた。周囲の人たちは全員耳を塞いでいたが知ったことではなかった。膝をつき、腕を大地に這わせながらも怨嗟の声を撒き散らす
「ナンデェ!?ナンデ急にィ!?嘘だろバカだろあり得ねえだろ信じらんねえだろふざけんなこのヤロオオオォォォォォーーーーー!!!」
やるせない怒りを地に叩きつけるかのごとく、握りこぶしを地面にダンダン殴りつける。小指側の手の側面が痛くなるのもお構いなしに衝突を繰り返す僕の右手は、砂利が少々こびりついていた。周りからの変人か奇人か可哀想な人を見る視線が羞恥心を刺激するものの、怒りを抑えるには足りなかった
クソッタレェ!なんだってこんなことに!僕が何をしたっていうんだ!このままじゃ元のスタンダード次元に帰れない…!あそこで築き上げた計画とか信用とか、全て気泡と化す!誰の…いったい誰のせいでこんなことに!…そうだ…こんなことになってしまったのも、この大変な状況に陥ってしまったのも……!
『これも全部ドン・サウザンドって奴の仕業なんだ!』
「絶対に許さねえ!ドン・サウザンドオオォォォォッ!!」
…ってなんでや!ドン・サウザンド関係ないやん!どう考えても心のないマスゴミ共のせいだろうが!
一通り叫んだおかげで少しスッとした気分になったものの、往来の人々から視線を感じたことで気恥ずかしくなってしまい、フードを被って反省するように押し黙った。うぅ、この見られてる感じ…ツラい。このままだと恥ずかしさのあまり溶けていなくなりたくなりそうになったので、とりあえずこの場から離れようとベンチから立ち上がり……
「あの、すみません」
「……ンァ?」
唐突にこちらに掛けられた…声からして女の子だろうか?首だけ振り向いてみると、茶髪でロングツインテールのクセっ毛な髪型をした小柄な少女と僕と同じくらいの背丈でトゲトゲチックな短い髪型の男だった。女の子の方は赤と黒のシャツに白いフリルがついたスカートという服装で、何というか子猫やリスを彷彿させた。男はカジュアルな青Tシャツに黒ズボンといった出で立ち、Ⅳのようなイメージを一瞬抱いたが……前髪は至って普通だし髪の色も青みがかかった黒色、何より物静かな雰囲気がそんな先入観を容易に打ち砕いた
「…あー、騒がしくして申し訳ございませんでした。今から静かにひっそりと別んとこ移動しますんで、どうか忘れてください。んじゃこれで……」
「待ってください!あの、さっきドン・サウザンドって……」
「お願いだから忘れてね?お願いだから」
何故僕は見知らぬ子に自分の黒歴史を思い返させられてるんだ?巨大な釘を突き立てられて、肘打ちエルボーで打ち込まれたかのような痛みが僕の心を的確に貫いてゆく
勝手に自爆している中、女の子が隣の男とヒソヒソ話をする。んでもって話終わったかと思うと、絶対に逃さん!と言わんばかりにこちらを見る少女に、思わずタジタジしてしまう。男の方も物凄く真剣な表情である。何!?一体何なんだ!?
目の前の子は、軽く深呼吸をしたかと思うと意を決した顔つきになり……その口を開いた
「お願いします、千影を助けてください!」
「………はい?」
別世界の人からすれば戯言にしかならないことだけを喋った僕に対して、初対面である彼女のヘルプコールにただただ首をかしげるしかなかった
……正直言って、僕はこの世界に来て驚きの連続を味わったが……ドン・サウザンドの話を聞かせてくれ、何て言われるとは思ってもいなかった。けど、訳を聞く限り好奇心で聞いてきたのではないことは理解した
話し掛けてきた男女の2人…
最初は「訳が分からないよ」な状態だったのだが、彼ら彼女らから聞いた話では高坂の幼馴染で土野の弟……
即ち…彼も僕と同じ、元々はOCG世界の
そして僕に話を聞いてきた最大の理由が、土野弟…以後千影がドン・サウザンドに乗っ取られた場合に考えている最終手段…自害だけを何としても防ぎたい、とのこと。その為にドン・サウザンドのことを知っている僕に手助けをしてほしいらしい。2人は千影を信じているが、例え万が一の確率でも彼がいなくなるのは考えたくもない…と言った。千影曰く最終的に精神の封印or消滅しにかかってくるドン・サウザンドはデュエルを仕掛けてくるはず、それを返り討ちにすればバリアンの封印された神は蘇ることはできない…とのことらしい。随分デュエル脳なんだな…彼も
「…えっとだ、つまり要約すれば…千影くんとやらの中にいるドン・サウザンドを倒してほしい、と……そういうことか?」
「はい。千影の説明からするに、最終的にデュエルで勝てば物事が解決するという口ぶりでした。誰も千影の「ヌメロン」デッキには勝てなかった…けれどドン・サウザンドと「ヌメロン」のことを知っていたあなたなら、勝てる可能性があるかもしれない」
「お願いします!千影がいなくなるなんて、私絶対に嫌なんです!千影を助かるなら、何だってします!だから……!」
「お願い」と悲壮に呟く高坂と、静かに頭を下げてくる土野。何としても土野千影という人物を助けてやりたいという思いが、嫌でも伝わってくる
……きっとこの2人は、余程千影のことが心配なのだろう。高坂は幼馴染として、土野は弟として接点を持っている。ならば、余程長い時間を一緒に過ごしてきたはずだ……それこそ、家族同然に。そんな人が唐突に異世界の神とやらに乗っ取られ、そのせいで近い将来に消滅するかもしれない…うん、僕ならばその神とやらをデュエルでブッ殺す。それこそ、禁止制限を破ってなりふり構わずに
そんな狂いそうな感情をこの2人は抑えて、ドン・サウザンドを知っているという理由で何も知らない他人の僕に助けを求めている。信じることしかできない自分たちに悔しさを感じたからか、それとも元からお人好しなのか
自分の身に落ちてきた尋常じゃない大問題に、思わずため息を吐く
「………分かった。とりあえず、その千影くんを呼んでくれないか?」
「ッ!本当ですか!」
「とりあえず千影くんを呼んで。僕、ちょっとした事情があってあまりこの街をうろつけないんだよ……とにかく話だけでもしたいし」
「あ、ありがとうございます!今、千影に連絡を入れます」
「あぁ、頼む。…こっちからしても、他人事って訳じゃないからなぁ……」
「…?」
デュエルディスク片手に通信機能を使用しようとする高坂を尻目に、心の本音を漏らす。この別のスタンダード次元に来てからの出来事が全部夢だったら、どれだけ良かったか…でも夢じゃない以上、僕のいたところとは違えどここは遊戯王の世界
つまり、この世界で復活したドン・サウザンドが僕のいたARC-Vの世界にも影響を及ぼしてくる危険性が十分にあり得る。他所の問題と静観していられない訳だ。はっきり言えば、その問題に僕が入り込む余地がない…というか首を突っ込みたくない。だってドン・サウザンドだよ?「ヌメロン」だよ?そんな公式チートを相手にデュエルなんて、面倒くさい通り越して無理ゲーの領域なんだよ……
まあ、目の前で起こるかもしれない事態を無視するなんて後味が悪くなることは僕もしたくない。どうせ今は瑠璃たちのいるスタンダード次元に戻る手立てがないし、それまでなら手伝うのはやぶさかではないか。ただ……1つだけ、気になることがあるとすれば
「僕が仮にドンさんに勝てたとしても、消える保障って毛ほども無くね?」
『……あんまり、深く考えんな』
胸中に浮かび上がった一言は、心の奥深くへ転がり落ちていった
彼女たちが連絡を入れてだいたい20分くらい、公園に1人の男が入ってくる。あいつが、土野千影
首の半ばまで伸びた髪は赤みの帯びた黒髪であり、後ろ髪をゴムか何かで束ねていた。整えられた顔つきはまさにイケメンと言える奴で、つまり土野兄弟はイケメン兄弟というものだった…ケッ。黒いインナーシャツの上に赤い上着を着て、紺のジーンズを履いた服装。……赤い帽子被ったらまんまコナミくんな見た目だった。きっと偶然だろうと僕は決めつけた
そんな彼が、高坂たちに近寄り話し掛ける
「かなみ、兄さん、どうしたんだ?会わせたい人がいるって聞いてきたけど……」
「千影、聞いて。私たち、千影の中にいる神さまを知っている人と会ったの」
高坂の口から飛び出した事実。それは正しく、土野千影にとって今明かされる衝撃の真実ゥ!だったのだろう。彼は目を丸くして驚い…いや、あれはどちらかというと戸惑ってるな
「……ドン・サウザンドを知っている人だと?どういうことなんだ、2人とも」
「えっと…それは……」
「ーーそこからは僕が説明する」
どう説明したものかと迷っている高坂の言葉を遮り、僕は土野弟に近づく
「ドーモ 初めまして 僕の名前は白星、会って話がしたかった」
突如現れた季節外れな全身黒コートでフードを被った人物の登場に、千影は細めた目つきで警戒を強める。結構丁寧に挨拶したにも関わらずこの反応とは…あ、フード外すの忘れてた、そりゃ警戒されるか。急いで取っ払ってっと
「面倒なのは嫌いだから、単刀直入に言わせてもらう……僕とデュエルをしてもらいたい。君…いや、お前の「ヌメロン」デッキと」
2人から聞いた話では、ドン・サウザンドの呪いみたいなので土野千影は1日に1回はデュエルをしなければいけないらしく、そしてデュエルをすればするほどドン・サウザンドは力を取り戻していく。復活すれば世界に悪意をばら撒きかねない存在を駆逐する為には、現代兵器はおろかリアルファイトすら意味をなさない……「ヌメロン」デッキを倒し、危険な目を今のうちに摘み取らなければならない。そのついでに目の前の少年の呪いも解除してやれば良いことだ
そう僕が言うと、千影は顔をしかめる
「…かなみ、兄さん、喋った?」
「すまない……」
「ごめんなさい…でも、もしかしたら千影が助けられるかもしれないって思ったらつい……」
「……いいよ。俺の心配をしてしてくれたことなんだから…ありがとう」
優しげな表情で2人に礼を告げるとこちらに身体と顔を向け、デュエルディスクを構える。どうやらデュエルの相手はしてくれるみたいだ。僕も赤いディスクプレートを展開しながら、彼に最後の質問を投げかける
「土野千影」
「何ですか?」
「「遊戯王」「OCG」、この単語に聞き覚えは?」
「ッ…!!」
……どうやら、ビンゴだったみたいだ
「まさか」
「はっきり言えば、僕はお前の事情に関してはついで程度で考えている。このデュエルの勝敗でドン・サウザンドにそもそも影響を与えれるのかどうかすらも知らないし、万が一勝ったところで良い方向に働くとは限らない……が、ドン・サウザンドが復活すれば、間違いなく僕たちの世界にも危機が及ぶ。あいつらの未来の為にも、お前の中の奴を野放しにはしておけない」
「だから、俺とデュエルをしろと言ったのか」
僕たちを中心とした公園の広場が、殺伐とした雰囲気に包まれる。風は不穏さを纏い、空が灰色で覆われ、ピリピリとした空気が肌に触れるたびに弾けるような感覚が走る
土野千影。そこで観戦している2人から聞いた話であるなら、きっとこの子はドン・サウザンドとの接点なんて全くなかったのだろう。せいぜいが名前くらいだ。陰謀の為に力を得てしまって、それを振るわなければ世界を救えないのに振るえば振るった分だけデュエルの悪神は力を取り戻し……最後に全ての世界を蹂躙する
例え今すぐに瑠璃のいるスタンダードに戻れても、ドン・サウザンドが蘇れば次元戦争なんて目じゃない事態に陥る。…それに、遊戯王世界でようやく初めて会ったOCG出身の
戦う理由は山ほどあるが、せっかくの同郷の人間と話をする為ならドン・サウザンド……神様だろうがなんだろうが、テメェを這いつくばらせてやる!
「「デュエル!!」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
土野 千影 LP4000 手札 5枚
ある意味、世界の命運を賭けたデュエルが始まる。高坂と土野兄が見守る中、デュエルディスクにより先行を指定された千影からターンが開始される
「私の先行、私は手札から魔法カード「ワン・フォー・ワン」を発動。手札の「ヌメロン・フロア」を墓地に送り、デッキの「ヌメロン・ルーフ」を特殊召喚」
ヌメロン・ルーフ
レベル1 DEF 0
相手が使ってきたカード、そしてそれにより登場した「ヌメロン」モンスターに軽く動揺してしまう。効果とかステータスなどではなく、出てきたという事実自体に
「ヌメロン・ルーフ」…?それに「ヌメロン・フロア」だと?僕の知っている限り、ドン・サウザンドの「ヌメロン」モンスターは遊馬かナッシュの攻撃を防ぐ際に使用したモンスターを除けば全てエクシーズモンスターだったはず…!僕の知らない「ヌメロン」モンスターを使ってくるということか……!デュエルディスクの情報を見る限り、レベル調整効果も持ち合わせている。明らかにエクシーズ用のモンスターと言える。「ヌメロン・ネットワーク」を使ってこないのは、手札にないと考えて良いのか?ドン・サウザンドの運命力で初手に「ヌメロン・ネットワーク」がないのは不思議で仕方がないが……
「さらに私の場に「ヌメロン」モンスターが存在する時、1ターンに1度、手札の「ヌメロン・ピラー」は特殊召喚することができる」
ピラーと名は体を表すように、板のような歪な形の何かが出現する
ヌメロン・ピラー
レベル10 DEF 0
「そして「ヌメロン・ルーフ」の効果により、私の場の「ヌメロン・ピラー」を選択し同じレベルにする」
ヌメロン・ルーフ
レベル10 DEF 0
「ッ!レベル10のモンスターが2体、だと!」
「私はレベル10の「ヌメロン・ピラー」と「ヌメロン・ルーフ」の2体で、オーバーレイネットワークを構築!」
神の断片たる2体の悪魔が暗く薄い紫の球体に姿を変え、僕たちの間に出現した闇の渦巻きに入り込んでゆき……衣服を浮かせるほどの並みならない強風がそこから漏れ出す。この風…!実体化しているっつーことは!
「叡智に触れし偉大なる賢者よ、慈悲をもって彼の者に滅びを与えよ!」
そこから浮上せしそれは、「ヌメロン」の知識の一端を読み解きし神の名を冠し人型のモンスター。全身を覆う鎧服は僧侶のようなローブの形状をしており、夕焼けのような黄昏の光を反射させる。手に持った身の丈近くの長さの杖から、闇を感じさせる空虚な眼から、対峙する者の本能を縛り上げてくるその魔法使いは…神に近づきし賢者であり愚者
「エクシーズ召喚!来たれ、ランク10!「ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ」!!」
ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ
ランク10 ATK3000
フィールドに降り立つは、ランク10で攻撃力が3000のモンスター。そしてそれも当然僕の知らないモンスターの1体であり、正直混乱の極みに達していた
「ランク10の「ヌメロン」エクシーズ…?!ランク1のあいつらじゃないのか!?」
ランク10で3000は言うほど破格ではない…というか当たり前の打点なのだが、ドン・サウザンドの使用するカードはどれもがチートというか汚いというか……とにかくぶっ飛んだカードが多かった。だからこそ何かあるのではないかとか勘ぐってしまうわけで
そもそもランク10の「ヌメロン」エクシーズモンスターなど僕は見たこともなければ聞いたこともない。「
「ランク10の「ヌメロン」が存在したところで不思議ではない。私の知らぬカードが存在するように、貴様の知らぬカードもまた存在する」
「ぐっ…ごもっともで……」
「先行は攻撃権を持たない…私はこれでターンを終了する」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
土野 千影 LP4000 手札 2枚
ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ
ランク10 ATK3000
「僕のターン、ドロー!「ラーマヤーナ」の効果はっと……モンスター破壊とバーンの同時効果に、モンスター効果の無効化かよ」
ディスクに明記された「ヌメロン」の名に恥じぬ強力効果に、思わず舌打ちをする。「ラーマヤーナ」の効果は2つ。どちらも
『いや、「ヌメロン・ネットワーク」がある。あれには
え?……あっちょっ、MA☆TTE!そうだ、「ヌメロン・ネットワーク」そんな効果あったよ!「
てことは、「ラーマヤーナ」と「ヌメロン・ネットワーク」が揃った時点で、僕はモンスター効果が完全に使えなくなる…そんなになったら、ただでさえオブラートよりも薄い勝機が溶けて無くなっちまう!今「ラーマヤーナ」を倒すか、「ヌメロン・ネットワーク」の発動を封じるか……このターンで、「ラーマヤーナ」を倒す!どっちにしろ攻撃力3000打点は面倒だしな
「手札から「竜呼相打つ」を発動!デッキの「竜剣士」ペンデュラムモンスターと「竜魔王」ペンデュラムモンスターを1枚ずつ選択する。「竜剣士ラスター
「ペンデュラム?!なんであの人が!」
「ドン・サウザンドを知っていたことと関係しているのか?」
勝負の隅っこでデュエルを見ていた2人が、驚きと疑問の声を上げる。あぁそうか、この世界ではペンデュラムカードを持っているのはペンデュラム開祖の遊矢とペンデュラムを量産した赤馬零児だけ…それとその他多数か?どちらにせよ、舞網チャンピオンシップに参加していない僕がペンデュラムカードを…それも量産型とは違う物を持っているのはあり得ないと捉えられることだ
「やはりペンデュラムを持っていたか」
対照的に、千影は非常に落ち着いた素振りで手札に加えたカードを見つめる。遠回しに僕が転生者だということを教えたからな…ペンデュラムを持っていると予想はつけていたのだろう
僕は2枚のカードを裏側にしてシャッフルした後、それを突きつけた。同時に、2枚のカードが綺麗に並んだ状態でフィールドに現れる
「選択した2枚を相手がランダムに選ぶ。その時に選んだカードを特殊召喚またはペンデュラムゾーンにセットし、残ったカードはエクストラデッキに送られる。さぁ…どっちを取る?」
「私は左のカードを選ぶ」
指定してきたのは、僕から見て右側のカード。
「ーー対象のカードは「竜剣士ラスター
暗い青緑の翼膜の翼と深く黒ずんだ蒼色の尾の白銀の鎧と盾と剣を装備した人型の竜と、そして蜂のような下半身と悪魔のような細い上半身と爪を持った白と黄を基調とした天使がその薄い羽を機械的に動かしながら、両端の光の柱に現れる
白星 風斗 LP4000 手札 4枚
(スケール5)竜剣士ラスター
(スケール3)解放のアリアドネ
「ここで僕は、もう片方のペンデュラムゾーンにカードがある時の「ラスターP」のペンデュラム効果を発動!そのペンデュラムカードを破壊し、同名カードの「解放のアリアドネ」をデッキから手札に加える!」
「ラスターP」によって、神の言葉を伝える天使が内部から爆発する
「そして、戦闘・効果で破壊された「アリアドネ」のモンスター効果!その効果はデッキのカウンター罠3枚を僕が選択し、それを相手に選ばせ、選んだカードを手札に加える効果!」
しかし「解放のアリアドネ」はその無機質な一つ目を光らせ、3つのカードのホログラムビジョンを映しだそうとする
デッキには「
「ならば「ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ」のモンスター効果を発動。
「デスヨネー」
「ヌメロン」の賢者が杖を掲げる。主人の命により放たれた眩い光線は、解放の天使を容易に飲み込み消し去らせた。最後の抵抗をも、神の力を有した「ラーマヤーナ」の前では無力であった
まあ、後続の召喚…それに「ラーマヤーナ」を破壊しかねないカードを手札に加えられそうなら確実に無効にしてくるだろうよ。けど、「アリアドネ」はまだエクストラデッキと手札にいる。それにこれで
「「
「「ラーマヤーナ」の効果。
「クゥゥ……!」
登場し着地したと同時に白い光線の餌食となり、蒸発し一瞬で退場となったコウモリの道化師。あまりに不憫過ぎて同情の念すら湧いてくる気持ちを抱えながら、爆風から身を守る
だが、おかげで
「これでようやく動ける…スケール3の「解放のアリアドネ」で、再びペンデュラムスケールをセッティング!これで、レベル4のモンスターが同時に召喚可能となった!」
フィールドの「ラスターP」の下には5、「アリアドネ」には3の黄色い崩れた数字が浮かび上がる。黒いクリスタルが、間をゆるりと揺れる
「来るか…」
「揺れろ、深淵のペンデュラム!虚空に描け、漆黒のアーク!ペンデュラム召喚!!出ろ!僕のモンスターたち!」
柱の間の上空に巨大な穴が開け放たれ、そこから3つの光の塊が流星の如く舞い降りる
「エクストラデッキより現れろ!「竜魔王ベクター
降り立つ、闇の瘴気を撒き散らす魔王を名乗る竜魔族の1人。黒く染まりきった翼で身体を覆いながら、殺気を隠さない鋭い眼光をあらゆる生物にぶつける。右手には紫の水晶がはめ込まれた杖が握られていた。その横に現れるのは、先ほど賢者に破壊された2体のモンスター
3体のモンスターの前に、稀代の賢者が立ちはだかる
竜魔王ベクター
レベル4 ATK1850
解放のアリアドネ
レベル4 ATK1700
レベル4 ATK1800
「レベル4のモンスターが3体……」
「生憎だが、3体じゃなくて2体だぜ!僕はレベル4の「ベクターP」と「ドクロバット・ジョーカー」で、オーバーレイ!」
コウモリのピエロと竜の魔王は
「全てに反逆せし竜王よ!力の限りを尽くして、弱者も強者も薙ぎ倒せ!」
骨組みだけのような硬質的な黒翼、鋭利に尖った尾の先をしならせ漆黒の身体を動かしながら、逆鱗を震わせ反逆の竜が叫ぶ
「エクシーズ召喚!顕現せよ!ランク4!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」!!」
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ランク4 ATK2500
「「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」だと……」
千影の顔を見てみる。すると、デュエルが始まってからは表情筋がなくなったんじゃないかと思うほど無表情を貫いていた男が、初めて驚いたような態度をとった。と言っても目を少し丸くした程度で、見ただけじゃ驚いたとは全く分からないけど
「「ラーマヤーナ」はエクシーズモンスターだから突破されない…なんて考えてるわけないだろ?お前は知ってるんだからな!「ラーマヤーナ」を対象に「ダーク・リベリオン」のモンスター効果!
「…!」
「「トリーズン・ディスチャージ」!」
「ダーク・リベリオン」の翼が展開され、そこから発生した紫黒の稲妻が「ラーマヤーナ」を縛り付け、力を奪う。本来ならばこの効果は「ラーマヤーナ」の効果により無効化され、逆に反撃されてる予定であった。だが、前もって
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
(スケール5)竜剣士ラスター
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ランク4 ATK4000
解放のアリアドネ
レベル4 ATK1700
(スケール3)解放のアリアドネ
VS
土野 千影 LP4000 手札 2枚
ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ
ランク10 ATK1500
「攻撃力4000、千影のフィールドにはリバースカードがない」
「これは…もしかしたら」
伏せカードはあいつの場には存在しない…だけど、気掛かりがあるとすれば手札のカード。もしあの中に手札誘発の「ヌメロン」モンスターが存在したとすれば、トドメはさせない
しかし、今がチャンスなのも確か!
「バトルフェイズ!「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」で「ロード・オブ・ヌメロン−ラーマヤーナ」を攻撃!「撃滅のダークネス・ディスオベイ」!!」
弾ける黒雷。細い身体を己の力で浮かした反旗を翻す竜は、その黄色の瞳に映る強大な敵を睨めつける。愚鈍なる力を振り回す存在を捉え、抗う意思を顎で逆立ったその鋭い鱗に乗せながら……一瞬で距離を詰め、「ラーマヤーナ」を斜めに引き裂いた
抵抗することもできず、自身より弱い者に屠られた事実に打ち震えながら、神に近き賢者はその身を消滅させた。激しい風圧が、千影を吹き飛ばさんと襲い掛かる
土野 千影 LP1500 手札 2枚
「「解放のアリアドネ」でダイレクトアタック!」
千影のライフを0にすべく残ったモンスターである「アリアドネ」に攻撃力指令を投げ掛ける……しかし、いつまで経っても「アリアドネ」は攻撃を行わない
どうしたことかと相手の様子を見て…その相手の手札が1枚だけになっていた。歯噛みし、自分の考えの甘さを戒める。僕は悟ったからだ……このターン中にケリをつけるという、ワンターンキルの失敗を
「……クソ」
小さく呟いた言葉が消えると同時に、巻き上がった埃の中から1つの影が姿を現す
色素が殆どないほどの茶色の円柱。それにはささやか程度の足と…3倍の大きさはある多角柱の腕。ヌンチャクのような繋ぎ方で3つに分かれた腕は城塞のような頑丈さを感じられ、実際今の僕にはあれをどうにかする手段がなかった
ヌメロン・ウォール
レベル1 DEF 0
「「ダーク・リベリオン」の攻撃により戦闘ダメージを受けた時、私は手札の「ヌメロン・ウォール」の効果を発動した。この効果により、「ヌメロン・ウォール」自身を特殊召喚しバトルフェイズを強制終了する。よって、これ以上の追撃は行えない」
「やっぱ一筋縄じゃいかないか……カードを1枚伏せる。僕はこれでターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 2枚
(スケール5)竜剣士ラスター
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン
ランク4 ATK4000
解放のアリアドネ
レベル4 ATK1700
(スケール3)解放のアリアドネ
伏せカード 1枚
VS
土野 千影 LP1500 手札 1枚
ヌメロン・ウォール
レベル1 DEF 0
「私のターン、ドロー」
ターンを明け渡してしまったものの、向こうの手札は2枚でフィールドには「ヌメロン・ウォール」が1体…「
…この考えは、後で考え直せばあまりに浅はかだったと思った
「ヌメロン」を使役する土野千影…いや、ドン・サウザンドが、その程度で済ませるわけがないはずなのに
「私はーー永続魔法「ヌメロン・ネットワーク」を発動!」
「…ッ!引かれたか……!!」
辺り一帯が、途轍もなく嫌な雰囲気で満たされる。あらゆる存在が跪き、屈服し、立ち上がれなくなりそうな感覚
『これ、っは………オイ!しっかりしろ白星!気をしっかり!』
「ッ……!…ッ!……ハッ!ハァー…ハァー…ハァー……ハァハァ……」
その証拠に、僕も息をすることも忘れていてただならない
「さらに永続魔法「ヌメロン・サーキット」を発動!1ターンに1度、自分の場に「ヌメロン・ネットワーク」が存在する場合、2つある内の1つの効果を使用することができる。私は1つ目の効果を発動。自分の場のモンスター1体を選択し、そのモンスターと同じレベルのモンスター1体を手札に加える。「ヌメロン・ウォール」を選択し、同じレベル1の「ヌメロン・リフト」を手札に加える。そして「ヌメロン・リフト」を召喚!」
ヌメロン・リフト
レベル1 ATK 0
「「ヌメロン・リフト」が召喚に成功した時、墓地のエクシーズモンスターを除いた「ヌメロン」モンスターを1体特殊召喚できる。「ヌメロン・ピラー」を特殊召喚!」
ヌメロン・ピラー
レベル10 DEF 0
「さらに私の場に「ヌメロン」モンスターが存在する時、自身の効果で「ヌメロン・フロア」は墓地から特殊召喚できる!」
ヌメロン・フロア
レベル1 DEF 0
「ヌメロン・フロア」?!あれは確か「ワン・フォー・ワン」のコストで墓地に送ったモンスター…!この状況を見通して、僕の攻撃を看過した上でさっきのターンは壁として召喚しなかったのか!?
「そして「ヌメロン・ピラー」のモンスター効果。レベル1の「ヌメロン・ウォール」を対象に効果を発動し、私のフィールドに存在する全てのモンスターは対象モンスターのレベルと「ヌメロン・ピラー」のレベルの合計と同じレベルとなる」
ヌメロン・ウォール
レベル11 DEF 0
ヌメロン・リフト
レベル11 ATK 0
ヌメロン・フロア
レベル11 DEF 0
ヌメロン・ピラー
レベル11 DEF 0
相手のモンスターゾーンをほぼ埋め尽くす同レベルで高レベルのモンスターたちに、恐ろしさが思考を上塗りし、未知への恐怖に支配される
「レベル11が、4体…ッ?!お前、いったい何を!」
「私は、レベル11となった4体の「ヌメロン」モンスターで、オーバーレイネットワークを構築!!」
光が収束され、搔き消える。輝く柱に触れ溶けてゆく闇の球を糧に、さらに光は力を増す。千影の後ろで煌々と輝くそこから……光と闇が混ざり合う
「誉れ高き叡智に触れる虚ろの王よ!幻は夢、希望の光を絶望の闇へ」
浮上したそれは、金と白で彩られた全身鎧を身につけたモンスター。腕の近くにある一対の翼腕を大きく開けながら、虚無の王は絶望を振り撒くために現れる
「エクシーズ召喚!来たれ、ランク11!「夢幻虚王 ヌメロニア」!!」
夢幻虚王 ヌメロニア
ランク11 ATK5000
身体が重くなる。体重が2倍にも3倍にも増したかのように錯覚し、動作の1つ1つが遅く感じる
ここまで来て僕は、下手に神様にデュエルなんてふっかけるものじゃないと、「ヌメロニア」の唸り声を聞き流しながら反省した
というわけで、今回はコラボによる別世界のスタンダード次元INからのVS「ヌメロン」戦でした
この話は前から白狼天狗=サンにこちらから持ち掛けたコラボでしたので、本編の息抜きも兼ねて書いたつもりでしたが……話の流れの違和感をなくすのにあまりにも時間がかかり過ぎた。この作品を楽しみにしていた読者の皆様、改めて申し訳ありませんでした!自分に課した約束すらもロクに守れないダメ作者ですが、これからも読んでいただければ嬉しい限りです。また長い間期間を空けるかもしれませんが、その時はまたよろしくお願い申し上げます!
《ヌメロン・ウォール》
レベル1 闇属性
悪魔族 効果
①:自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる
このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了する
ATK/0 DEF/0
《ヌメロン・フロア》
レベル1 闇属性
悪魔族 効果
①:自分フィールド上に「ヌメロン」と名のつくモンスターが存在する場合発動できる
このカードを墓地から自分フィール上に特殊召喚する
②:このカードの効果で特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れる場合、このカードはゲームから除外される
ATK/0 DEF/0
《ヌメロン・リフト》
レベル1 闇属性
悪魔族 効果
①:このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる
自分の墓地からXモンスター以外の「ヌメロン」モンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する
ATK/0 DEF/0
《ヌメロン・ルーフ》
レベル1 闇属性
悪魔族 効果
①:自分フィールド上に「ヌメロン」モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる
②:自分フィールド上の「ヌメロン」モンスター1体を指定して発動できる。このカードは指定したモンスターと同じレベルになる
ATK/0 DEF/0
《ヌメロン・ピラー》
レベル10 闇属性
悪魔族 効果
《ヌメロン・ピラー》の①の効果は1ターンに1度しか発動できない
①:自分フィールド上に「ヌメロン」モンスターが存在する場合、手札にあるこのカードを自分フィール上に特殊召喚できる
②:自分フィールド上の「ヌメロン」モンスター1体を指定して発動できる。自分フィールド上のモンスターのレベルはこのカードと指定したモンスターのレベルの合計と同じになる
ATK/0 DEF/0
《ロード・オブ・ヌメロン-ラーマヤーナ》
ランク10 光属性
魔法使い族 エクシーズ 効果
レベル10モンスター×2
①:1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
相手フィールド上のモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。この効果を使用したターンはこのカードは攻撃宣言できない
②:相手がモンスター効果を発動した場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その効果を無効にして破壊する
ATK/3000 DEF/300
《夢幻虚王 ヌメロニア》
エクシーズ 効果モンスター
ランク11 光属性
悪魔族 エクシーズ 効果
レベル11モンスター×4
①:このカードが自分フィールド上に存在する場合、「ヌメロン」カードを発動条件を無視して発動する事ができる
②:このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手フィールド上のモンスター1体を破壊する
③:このカードが効果の対象になった時、X素材を1つ取り除く事でその効果を無効にして破壊できる
④:このカードが破壊される場合、X素材を1つ取り除く事で破壊を無効にできる
ATK/5000 DEF/500
《ヌメロン・ネットワーク》
永続魔法
①:相手のドローフェイズ時に自分フィールド上にカードが存在しない場合、このカードは手札から発動できる
②:1ターンに1度、自分フィールド上にこのカード以外のカードが存在しない場合、自分のデッキの「ヌメロン」と名のついたカード1枚を選択し、そのカードの発動できる。その後、選択したカードを墓地へ送る
この効果は相手ターンでも発動できる
③:このカードがフィールド上に存在する限り、「ヌメロン」XモンスターがX素材を取り除いて効果を発動する場合、エクシーズ素材を取り除かなくてもよい
《ヌメロン・サーキット》
永続魔法
自分フィールド上に「ヌメロン・ネットワーク」が存在する場合、1ターンに1度だけ①②の効果を選んで効果を発動できる
①:自分フィールド上のモンスター1体を指定し、指定したモンスターと同じレベルのモンスターをデッキから手札に加える
②:自分フィール上のXモンスター1体を指定し、指定したXモンスターと同じランクのXモンスターをエクストラデッキから召喚条件を無視して特殊召喚する
※「ヌメロニア」が「
それではまた次回!お楽しみは、これまでだ!