面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
それではいつも通りに第5話ドーゾ
「お願いします!」
「断る」
後ろで女の子が何か言ってるが速攻断りを入れる
「どうしても強くなりたいんです!」
「なれば良いじゃない?ただし僕に関わるな」
会議室への歩を進めながら子供の言葉を返す。イライラ…
「1番強い人に教えて貰えば強くなれるから!」
「強い奴が教えたって弱い奴は強くならない、幻想だそんなの。つーか僕は強くねーよ、黒咲辺りに言えよ」
「白星さんが1番強いんです!」
ちょっと…いや、結構早く歩いてるがそれでも振り切れない。イライライライラ…
「お願いします!俺たちに…俺たちにデュエルを教えてください!」
「ハーメルンの笛吹きよろしく後ろから列並べてついてくんじゃねぇーガキ共ォッ!」
とうとう我慢できなかった。大人げなくガキ共に向かって僕は早口でまくし立てた
弁護士を呼べエェーーーッ!…という僕の絶叫が、レジスタンス基地の廊下を大きく響かせた…
苛立ちを隠せないまま、会議室でユート・黒咲・瑠璃・半田と話し合い…という名の僕の不満爆破大会が開催されていた。ちなみに不参加のガキ共は会議室前で待っている。ウザい…
「…つーわけであのガキ共どうにかしてくれ」
「ガキ共って…」
「デュエルくらい教えても良いんじゃないですか…?」
部屋の隅っこに座り込んでいる僕の発言に瑠璃はため息を吐き、半田は優しくそれを提案してくる。妥協案のつもりか…?だが甘い、全然甘い。半田よ、それはバニラアイスにチョコソースかけてイチゴ乗っけたデザートよりも甘々だ
「あのな、今回僕が持ち込んだ話聞いてた?場合によっちゃエクシーズ次元の存亡にかかわる問題なんだぞ?もうちょい危機感持てよ」
「確かに一理ありましたけど、殆ど白星さんの推測じゃないですか。それに人員を割くなんて…」
「人員はそこまで割かなくていいだろ。せいぜい行動に支障が出ない範囲で寄越してくれよ」
半田の反論を言い返す。確かに想像の域ではあるが十二分に考えられる可能性なのだ、たとえ杞憂に終わったとしてもやっといて損はない。つーかエクシーズ次元が滅んだら僕の人生も崩壊するからなんとしても阻止しなければいけないのだ
目の前のユートが顎に指を当てて思考する
「アカデミアの戦力強化か…」
「充分に考えられるんだからさ、
「そもそも白星がそのようなカードを使ったのが問題ではないのか?」
うっ…それ言われるとなんも言えねえ…
壁にもたれかかりながら腕組みしている黒咲はそんなことを言う。何か…何か言い返せること…
「…けどあれはああまでしないと絶対無理だろ。7人だぞ7人、他にも人いたし囲まれて逃げれないし…」
「別にそれが悪いとは言っていない。だが先行1ターンで無限ループを使ってまで倒す必要があったのか?お前のことだ、もっと他に倒せる手段などいくらでもあったのだろう?」
「うっ…それは、えーと…。…や、やられない確率は低いほうがいいだろ?」
「それでエクシーズ次元全体を危険に及ぼしたのでは元も子もないだろう?」
おっしゃる通りで…こればっかは何も言い返せねえ…。けどどうにかしようとしてんだから許してくんない?
言い訳じみた反論をユートがバッサリと切り捨てる。心なしか髪の毛がちょっと逆立ってる…気がする。もしかして怒ってる?もしかしなくても怒ってる?不安のあまり椅子に座ってる瑠璃たちの方を向くが、瑠璃は小さく横に首を振って半田は苦笑い。この裏切り者…!
ちなみに会議室とは名ばかりにこの部屋、あるのはそこそこ明るい照明と広さ、そして数個の鉄パイプ椅子である。だから基本的に僕は部屋の隅に座るか立っている
…ん?
「おい黒咲。確かに僕はさっきオベリスクフォース7人を同時に相手して全召喚法を使って倒したことは言った…けど、なんで先行無限ループワンキルしたことまで知ってんだ?」
そう、さっき早めに問題の戦力強化の話を切り出すために掻い摘んで今日の戦闘について話したがそれについて話したのは知っていれば説明のできる全召喚法を使用したことで、先行無限ループワンキルに関しては瑠璃以外誰にも告げていない。もしかして瑠璃が喋ったか?とも思ったが、そもそも僕よりほんの少し早めに来た彼女がそこまで話せる時間があるとは思えないから違う。じゃあなんで…?
「…さっき、レジスタンスの分の食糧を貰いにキャンプまで行ったが…」
キャンプ?ここでのキャンプは難民キャンプのことだよな?
「そこの住民が「白星が先行無限ループワンキルで7人も返り討ちにした」と言っていたぞ」
「…ハ?」
…と思ったが、考えてみればそこの住民の人と一緒にいるときにデュエルしたのだから知られてるのは自明の理か…そして…
「そうか…ガキ共の言ってた噂ってのはこれのことか…!」
思わず体育座りで顔を埋める。先行無限ループワンターンキル…字面だけ見れば前の世界でも充分すぎるほどすごい。…もっとも、現実味がないのと実践で使えないからと簡単に切り捨てられるけど。それを一時の気の迷いで実戦で使って勝ちを拾ったのだから、なるほど…噂になるのもわかるし、子供たちの憧れの視線も理解できる
けど…噂が光速で飛び交ったのと、そこからなぜ僕に弟子入りを懇願するのかは納得できないが
「とりあえずこの話はまた今度でいいか?今は難民生活が安定してきているから、そっちの方を取り掛かりたい」
「…まぁこの際戦力強化は今度の機会でいいよ…とりあえずお前たちにも使えそうなカードを渡しとくし、僕が提案したことだから教えろっていうなら当然やる。けどあいつらの面倒を見るのはハッキリ言うがお断りだ」
「…どうして?」
ここで言うあいつらとは未だ部屋の前で待ち構えているガキたちのことを指す。瑠璃は疑問の声をあげたのでそれには真面目に答える
その態度に緊張したのか、瑠璃や半田は喉を鳴らし、ユートと黒咲はその両目でこっちを見つめる
「簡単なことだ…僕はねぇ、ガキが嫌いなんだよ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
瑠璃たちの目がすっごく冷たくなった。なんだか部屋の気温も冷たくなっている気がする…防寒着いつも来てて良かった
「僕が最も嫌いなものの中に「ガキ」がある。勘違いするなよ?子供じゃない、「ガキ」…つまり生意気な子供のことだ」
実際は嫌な事をしでかした時点でガキ認定するけどね
4つの視線を受け流しながらビッと部屋唯一の鉄扉を指差す
「しかもあいつらはその中でもさらに「面倒」事を持ち込んだ奴らだ。「面倒」も嫌いな奴の1つなんだよ…。つまり「
そこまで言うと先ほどまでの冷たい目はどこへやら、今度は可哀想なものを見る目で見られた後、目を閉じて首を振っていた。4人のその一致団結っぷりには思わず腹が立った
「なんだよ、なんか文句あるのか?」
「…白星さんって、この中で1番年上なのに1番子供っぽいよね…」
「なんだと?!どういう意味だ!?」
「どう考えても偏見ですよそれ…もう少し大人になってくださいよ…」
「うっせぇよ!一言余計だ半田!」
返し方がもう子供だったが思わず言い返したくもなる。なんだって1番年下な面子にここまでなじられなきゃならんのだ!?僕は子供なんじゃない!ただちょっと他の19歳より純粋なだけだ!…なんでこんな分かり易すぎる嘘ついたんだろ僕…
「話を聞くだけでもダメなのか?」
些細なことだが落ち込んでいるとユートがそんなことを言い出した。話を聞く…ねぇ…
「面倒なんだよ…そうでなくとも理由を聞くだけ聞いて断ったら何言われるかわかんないだろ?」
「断ること前提なんですね…」
「さっきも言っただろ?言い出しっぺは僕なんだから強くすることくらい率先してやらなくてどうすんだよ?」
そう、戦力強化の案は先延ばしにされただけで話自体は残っている。ならばそのときに備えて色々準備や練習などが必要だろう…そんな忙しいタイミングで来られても仕事がおろそかになる恐れがあるのだから断って然るべき
「…ならば、教えてやればいいのではないのか?」
「え?黒咲?」
ようやくガキ共の話題を終わらせれると思ったら黒咲が終わらせてくれなかった。なんのつもりコイツ?
「これからお前がレジスタンスのメンバーに戦いを教えるというなら、練習のつもりで教えてやるのもいいのではないのか?」
「僕が教えるの戦いじゃなくてデュエルだからね?基本的なアドの取り方とかくらいだからね?デュエル勝つ上での常識教えるだけだからね?」
「あなたの世界のデュエルの常識は殺伐過ぎるんですよ…」
「場アドと手札アドくらい常識だろうが。お前黒咲のデュエル間近で見てるなら分かれよ。「
つーかだ、と黒咲の方を向く
「お前やけに子供の味方をするがどうした?」
「…………」
「子供は甘やかすくらいがちょうどいいから別にいいけどな、このご時勢じゃ嫌なことも大変なことも教えとかないと後々ツラい目に会うだけだぞ?」
教えられる側も、教える側も
「…分かっている…」
「ならいいけど…。…まぁとりあえず話は聞いてみるか…」
とりあえず話はひと段落ついたので部屋を出てみる。すると集団のガキンチョ軍団が横一列で座りながら話をしていた。…やっぱり面倒クセェなぁ…
「…あっ!出てきた!」
すると子供の1人が気づくと、残りの子供も立ち上がって僕の前に集まってきた。近い近い
「あの、白星さん!本当にお願いします!」
「どうしても強くなりたいんです、俺たち!」
「弟子にしてください!」
「とりあえず落ち着けガキ共」
集まると否や早口大声で話しかけるガキ共をたしなめる。これだからガキは嫌いなんだ、ちょっと何かあれば騒ぎ立てる。もう少し大人になれよ
「…ずいぶんと人気者だな」
後ろを見るとユートが微笑みながらこちらを見ていた。止めい、そんな保護者の目でこっちを見るな、お前は父親か
「…とりあえず、なんで強くなりたいか聞いていいか?」
そう聞くと、子供たちは次々と教えてくれた。…もっとも、だいたいがこのリーダー的子供の言葉に集約されていたが
「父さんや母さんを守れるくらい強くなりたいんだ!みんなも同じ理由なんだ!」
…みんなを守る、か…
「そうか…みんなを守る為、か。そいつは立派だな。うん、立派なだと思うよ」
「じゃ…じゃあ、弟子にしてくれるの!?」
子供たちは期待に満ちた目でこちらを見る。良くも悪くも純粋な、子供の目で…
「だがなおのことダメだ」
「…え…?」
目が点になる、といった感じでこちらをただ見ている子供。だが、率先して僕に話しかけてきた…パーカーの子だけは怒った様子であった
「なんでだよ!?」
「お前ら、守る為に僕に教えてくれって言ったよな…?それはとどのつまり、僕が教えればお前らでもみんなを守れるって発想なんだろうが……自惚れんなよクソガキ」
「ッ?!」
子供の驚愕とした反応。その目に溢れんばかりの敵意が見え見えであった
「僕は子供でも大人でもないが、そんな僕だからわかることもある。大人だろうと勝てねえものは勝てねえし、子供はどこまでも無力なんだよ。だと言うのに僕たちがみんなを守る?…幼稚すぎて反吐がでるな、寝言なら布団に包まって言えよ、あぁ?」
そこまで言うととうとう失望でもしたのか、侮蔑しきった目で僕を見ながら何処かへ去って行った。去り際に「バーカ!」だの「酷い!」だのほざいていたが所詮ガキの戯れ言だとすぐ忘れようとした
そうして振り返ると瑠璃と半田がすごい形相でこちらを見ていた。めっちゃ怖い。黒咲に至ってはなんか殺気立ってる気がする
「白星さん!いくらなんでも言い過ぎですよ!」
「なんであんなこと言ったの!?」
瑠璃たちはすごい剣幕で疑問をぶつけてくる。黒咲は返答次第ではただでは済まないと睨みを利かせてくる。だから怖いっての!
「…ああでも言わないとあいつら絶対言い続けてくるだろ。単純に迷惑なんだよ、ああいうのは…」
「…本当にそれだけなの?」
「白星、君の本当の気持ちを教えてくれ」
瑠璃はさらに食って掛かり、ユートはこっちの本心を見透かしたのような物言いをする
「…………」
「白星」
…………
「…………最初はちょっとだけならって思ったよ」
折れた、折れざるおえなかった。こいつらには隠してても無駄だろうし、鬱陶しいと突っぱねるには、僕の心はあまりにも脆かった。ガキ相手にあんな態度取っただけでこれじゃ、エクシーズ次元滅んだらマジで自殺するかもな…
「ただ遊びで強くなりたいとか憧れで弟子入りしてきたなら少しだけ付き合って免許皆伝とか適当に終わらせることができたんだからな」
「…ならば何故あのようなことをした?」
黒咲の鋭い目がこちらを睨めつけてくるが、それを真正面から受け止める。暗い黄色の瞳から目を逸らさずに…
「…お前なら検討はついてんだろ?」
質問を質問で返して悪いが、少なくとも思い当たる節はあるのだろう、少しの睨み合いも向こうが目を閉じることで終わりを迎えた
「…戦場に行かせない為か?」
「…………」
今度はこちらが黙ってしまった。しかし黒咲がそのことを直接指摘するとは露にも思っていなかったので、思わず思考がフリーズしてしまったのである
「どういうこと、兄さん?」
「…あの子供たちの言っていた「守る」ということがアカデミアと戦うことを意味していたら、俺たちのいつもの戦場に一緒に来ることになる…そういうことか?」
「…………」
頭を、頷かせる。理由は喋らないわけにはいかない…だからユートたちに説明する
「…正直言えば、だ…僕は怖かっただけなんだよ」
「怖かった…?」
「勝手に弟子にして、教えて、あいつらが外に行ってオベリスクフォースどもと戦おうなんてしたら…どうなる?子供なんだぞ、カード化は間違いない」
「それは…そうかもしれませんけど…」
「かも…じゃなくてそうなんだよ。少なくともそれくらいの認識じゃないと絶対に足元すくわれるんだよ」
僕もユートたちもあのガキたちもアカデミアの連中だって、みんな人間だ。デュエルが水ものってのもあるし、状況や体調とかでも負けることも当たり前のようにある…。それに…
「もしカード化された後にそのことを親御さんに聞かれてみろ。僕に子供を殺させた罪を背負わせる気か?」
もし、話を聞いたのが先にしろ後にしろ、仮に僕が教えたことであの子たちの誰か1人を消してしまってみろ?全員カード化されてみろ?それを周りの人間や…その子たちの親に非難されてみろ?
…きっとそれは僕を追い詰めて、追いかけて、いつまでも僕の重荷になる。そんな目にあうのは嫌だし、怖い。うなされて、心が擦り減って、精神が死んでしまうだろう。…どこまでいっても自分の心配ばかり…、やはり僕もロクでもないクソだな…
「…それに、子供がそんな目に合うのも見ていて嫌だ」
けど誰にも誰にも嫌悪されたくないから、顔と心に仮面をつけて、錠を掛ける。言い訳のその言葉も、実際にそう思っている。だから嘘はついてない…そう自分に言い聞かせて…
「白星…」
「白星さん…」
…ダメだな、いつもすぐに意気消沈して周りに迷惑をかける。もう過ぎたことなんだ、忘れろ。…子供には間違いなく嫌われてるだろうが特に問題はない。大丈夫、大丈夫、大丈夫…
「…とりあえず理由はそんなとこだ。この話はもう終わり、そろそろ次の仕事あるから僕もう行くぞ…ん?」
「…………」
無理矢理話を終わらせて外に出よう…とした考えたところで小さい影がこちらにゆっくり近づいてきた。さっき真っ先に怒っていたオレンジパーカーの子供であった
さっきの怒りはどこへやら、僕の前に立ち止まり、その黄緑の瞳が僕の視線と重なる。きっと向こうも同じように見えているだろう…目の色は黒だが。そんなしばしの沈黙が続くと、その子供は急に頭を下げて懇願してきた
「お願いします!俺に…、俺にデュエルを教えてください!」
「…また来たのか…?」
僕の中に湧き上がった感情は、憤りよりも呆れといった気持ちだった。さっきあれ程ボロカスに言ったにも関わらずまだ頼み込んでくるとは、いっそ感動できるレベルである
「何度も言うが断る。僕は見ず知らずのガキを対して責任のあること言えるほど口は軽いつもりじゃないんだよ」
「お願いします!」
頭が、深く下がる
「自分の実力弁えずに親を守るとか甚だしいんだよ。綺麗事なら他所で言え」
「白星さん!」
「どうか!本当にお願いします!」
「冗談じゃない、なんでお前みたいなガキのお守りなんざ。お前の言う守るっつーのは、自分が死ぬかもしれないこと分かってて言ってんのか?」
「…死ぬ……」
下げた頭から、分かりやすい恐怖に怯える声が聞こえる。見えないが顔もきっと青ざめているだろう
それが良い、それが正しいんだよ。死に怯えて、怖がって、みんなと一緒に守られて…子供ってのはそういうもんだ
「…そ……、れで……」
「…なに?」
「それでも…教えてください…!あなたの、弟子にしてください…!」
それでも。そんな言葉で自分の恐怖を誤魔化す気か?口から出てくる言葉は余りにも震えて、泣きそうで、壊れそうなのに…
「マジでいい加減にしろよ」
イライラする、自分の思い通りにならないこいつに対して…だけじゃない。それよりも大きく大きく割占めているこの気持ち。なんでこいつはこんなことを言う?怖いだろうが、嫌だろうが、苦しいだろうが。なんで今の僕にすら出来ないことを…恐怖を克服するなんてことを、このガキはできるんだよ!?
それはきっと嫉妬だった。醜くて、気持ち悪くて、ズブズブ腐っていくような暗い感情。きっと11歳くらいだろうかこの子は?その頃の僕は何をやってた?…たくさんの友達と思っていた奴らに裏切られて、それが苦しくて悔しくて、カーテン閉めた部屋の中で、いっぱい自分を傷付けた。頭を壁にぶつけまくったし二の腕に爪を立てて掻きむしった、その長い頭髪を1本1本抜いているうちに頭頂部の一部がハゲた。だけど楽しいことは忘れられなかったから布団を被ってゲームとかしてて…本当にどうしようもない無駄な1年だった
「何で僕なんだ?僕じゃないとダメなんだ?僕である理由は?…答えられないなら後ろのやつらに頼め、僕はもう知らん」
その子は頭を下げるのもやめて僕を見ていた。もう嫌だ、今はこんな視線ですら不愉快だ。その子を通り過ぎようと僕は足を動かし…
「…白星さんのデュエル、…見てて楽しかったから…」
歩くのを即座にやめた。左前にいるのは、意を決したかのような目つきをした子。その子は、言葉を続ける
「…レジスタンスの、ユートさんと戦ってたの見たとき…凄く楽しそうに…デュエルしてて…、こんな人のデュエルがしたくて…」
「楽しい…?」
楽しい。その言葉を聞いた…言ったのは、オベリスクフォースとデュエルに勝ってすぐのはずだった。いや違う、あの時は勝つことに必死だったのもあるし、言った言葉も「楽しくない」だったはずだ
楽しいなんて言ったのは…聞いたのは、いつぶりだ?実際は3日ぶりなのだが、そんな実感は一切湧かない。ユートとのデュエルが、半年も前のように感じる…
「…みんなを守りたいんじゃなかったのか…?」
「守りたい…けど、楽しいデュエルもしたいんです…白星さんは、本当に楽しそうだから…」
「…………」
楽しそう、か…
「…名前は?」
「え?」
「名前は?…お前の…」
一瞬、何を言われたのか分からなかった…だけど分かった。自分は名前の問われたのだと
「は、はい!
「暗斎、お前に聞いておくことと、言っておくことがある」
少年…暗斎はとても嬉しかった。自分の憧れる強い人に名前を聞いてもらったどころか、呼んでくれたことに浮かれずにはいられなかった。だから次に言われた…質問が最初は意味が分からなかった
「僕に弟子入りするといったが、このことは親に伝えてあるのか…?」
「え…?」
「どうなんだ?」
「…………」
だが質問の意味が分かれば沈黙しか返せない。難しそうに唸る彼の表情が返答だった
「言ってないのか…」
「うぅ…」
さっきまでの喜びはどこへやら、暗斎はとても苦しそうな顔をしていた。そんなに親が怖いのか…?分かるけど
「…明日の昼3時に、レジスタンスの訓練所でデュエルディスクとデッキを持って来い」
「……ッ!」
「ただし、あくまで今日親に許可をもらってからだ。えっとだ…あったかな…?」
そう言いながらカバンの中を弄る。必要最低限っつってたから出るかどうか微妙だが…おっ?あった
「ちょっと待ってろ」
カバンのどこに入っていたのか、手紙に良さげな大きさの白い紙とサインペンを取り出して、内容を書く。えっと…って、あっ
「暗斎」
「は、はい。なんですか?」
「お前の名前の漢字ってなんだ?」
そう聞くと、ペンと紙を貸してと言われたので渡してみると、さらさらと漢字を名前に書いて僕に渡してきた。ふむ、暗いの暗に書斎の斎に迅速の迅か…
…なんで僕の周りの人間はこんなカッコよさげな名前の持ち主ばっかなんだ…?
「…?白星さん?」
「あ…いや、何でもない。ありがとう」
危うく思考が変なとこに流れそうになるが暗斎のおかげで何とか踏みとどまったので、手紙を書いていく
えーと、「暗斎 迅君のご両親へ 実は今日、暗斎君が………」
そこそこの速さで手紙を書いていき、誤字などにも気をつけながら見直していく。…うん、誤字ってるところはどこもないな、内容も失礼ないよう書けているな…多分
「これ、お前の親に渡してくれ」
「これは…?」
「手紙に決まってんだろ?…内容は、僕がお前にデュエルを教えた場合に起こり得る危険を、思いつく限り書いといた」
「え?!」
「僕だけの一存で弟子にするわけにはいかないんだよ…。どうしても弟子になりたきゃ、必死こいて説得しな。手紙でのOKの返事と明日行うことができたら正式に弟子とする。それが僕の最大限の譲歩だ」
「…………」
苦虫を噛み潰したかのような顔つきだが、やがて顔をこちらに向けて「…分かりました」と答えた
「手紙の中身不安なら、今ここで読むか?あっ、朗読は間違ってもすんなよ?」
「…いえ、読みません。…ちゃんと、父さんたちと話し合います」
なら良いけど…親御さんはまともな判断してくれるよな?一応危険な目に遭わさないよう最大限努力するとは書いたものの、そもそもそんな危険なことを自分の子供に遭わせたくはないだろう…
「…あの、白星さん…」
「なんだ?」
「さっきは、ごめんなさい。俺たちのこと色々考えてくれてただけなのに、悪口言って…」
「…謝られる理由が分からんな…」
あれに関しては完全に僕の言い過ぎだから、謝罪なんかされてもむず痒い思いである。気にするだけ無駄無駄
「俺、頑張って父さんと母さんを説得します」
「…そうか…」
「ありがとうございました。それでは」
そう言うと、暗斎はそのまま帰って行った…
「…面倒なこと引き受けちまったな〜…」
「良かったのですか?あんなに嫌がってたのに」
声の主…半田に振り向くと、なんだか怪訝そうな表情でこちらを見ていた。瑠璃とユートはなんか微笑ましそうに笑っている。黒咲はいつも通りである
「あぁー…、あまり考えずに良いって思っちまってなー…」
もっと言えば子供相手に変な嫉妬を抱いた罪悪感といったところだろうか…なんであんなこと思ってしまったんだろうか…。結局計り知らずのところで黒歴史生産してるし…
「まぁ、あいつの親も子供が大事だと思っているならNOって返答するだろうよ。それがこの先考えても1番平和的だな」
「………なれば良いですけどねぇ…」
「ん?」
「なんでもありませんよ」
まぁ…なるようになれってやつだ、とりあえず自分で言った手前、明日の2時には訓練所に行かねえとなぁ…
「あぁ、鬱だ…」
きっと来てはくれないだろう…そういう一抹の希望を抱いて、僕は重い足取りで歩き始めた
翌日、1時50分。ハートランドの天気はいつも通り曇り、僕の心の天気もいつも通り曇り…
「白星さん、こんにちは!」
「…あぁ、ドーモ…」
昨日の希望は絶望に変わっていたようで、とても吹っ切れた顔で腕にデュエルディスク、手に手紙らしき封書を持ちながら、にこやかな笑みで少年…暗斎迅は挨拶してきた。それを少し遅れてだが条件反射で雑に返す。挨拶は実際大事だが、今の精神状況では返せただけマシだ…と思いたかった
その暗斎は近づくと僕に封書を渡してきた
「これ!父さんが返事って言ってました!」
「…………」
無言で受け取って封書を開けてみる。しかし糊付けが思いの外固かったので、仕方なく封の上のところをピピっと破り切って、中の白い便箋のようなものを取り出す。なんでここまでしっかりとした手紙渡してきたの?自分の子供こんな赤の他人どころかスパイ疑惑立ってた人間になんで預けられるの?そんな僕の見当違いな怒りと疑問は、手紙の中を読んだらあっさり吹き飛んだ
『白星 風斗君へ
昨日の運搬のとき、助けていただきありがとうございました。
手紙の内容、読ませていただきました。
まさか息子が君に弟子入りを頼み込みに行くとは思ってもいませんでした。きっと私の話を聞いて、どうしても強くなりたかったのだと思います。
妻と話し合いましたが、君にならば息子を預けられるとお互いの意見が一致したので、息子を任せることにしました。
君にも、レジスタンスのユート君たちにも迷惑をかけるかもしれませんが、どうか息子を宜しくお願いします。
暗斎 章吾より』
「…昨日の…運搬……?」
相変わらずコートにフード被ってネックウォーマーつけてるので誰にもばれてはいないが、今の僕は客観的に見ればビビるくらい汗をかいているだろう…。いや、これは防寒着を着ていることによる汗だ間違いない。無駄な抵抗をしつつも僕は暗斎に質問する
「なぁ…?昨日、お前の親父さんってなんの仕事やってた…?」
「え?…えっと、外から服とか食べ物とか持ってくる仕事だったと思います」
「ジーザス!」
間違いない!3日連続で一緒に運搬作業やってたあの人だ!あの人暗斎だったのか!?仕事に集中してたのとイライラしてたのとで全然名前とか覚えてないけど!けど、けどこの手紙の口調!ところどころ敬語だけどすっごく見た、というか聞いたことのある口調だ!
「…そっかー、あの人の息子だったのかー…」
「白星さん?」
あの人すっごく優しかったんだよねー、周囲の人たちに警戒されてる中、色々話しかけてきたのはあの人が初めてだったからなー…なんかやたらと信用されてたんだけど、何でだったんだろ?
暗斎章吾さんって言うのか…うん、感謝しないとね…あと覚えないと名前。やたら信用されてるって点以外は納得できたので、僕は暗斎の方を向く
「暗斎、もう一回聞いておくぞ」
「はい」
「僕の弟子になりたいんだな?僕の?」
ここまで来たのならばきっと答えは変わらないだろうが、念には念を入れて一応聞いておく
「はい」
「手紙の中身から察するに、僕の弟子になればレジスタンスに入るってことも分かっているんだな?」
「…はい」
…もうこれ以上の問答は必要ないな…
「分かった、なら今から僕とお前でデュエルを行う。合否の基準は「僕を満足させられるかどうか」だ」
「?……満足させられるかどうか…?」
「…まぁ想像はお前に任せるよ。とりあえずデュエルで良い結果を出せばいい…とでも思っとけ。…分かったな?」
少しの間考え込んでいたが、僕が分かりやすい基準を提示したら納得したのか、こちらを見据えてコクンッ…と頷く暗斎
「…じゃあ始めるか」
「はい!お願いします!」
「流石に僕も手を抜く気は一切ない。全力でかかって来い!」
「「デュエル!!」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
暗斎 迅 LP4000 手札 5枚
「俺の先行!俺は手札から「ヴェルズ・カストル」を召喚!」
今回の先行は暗斎から。5枚の手札から1枚を引き抜きディスクにセットする。すると暗斎の目の前に、黒い泥のようなものが噴き上がる。それが塊をなし隙間を徐々に埋めていくと、金属質な光を反射させる。右半身が白色、左は鋼鉄の輝く色に白銀のラインが入って少しの攻撃性を見せる大きな角や刃物がつけられた鎧を着ており、右手の大振りの剣を横になぎながら、赤いボロボロのマントを鎧の戦士がはためかせていた
ヴェルズ・カストル
レベル4 ATK1750
そう、暗斎迅のデッキは「ヴェルズ」。「インヴェルズ」という別方向の「ヴェルズ」を除けば、すべて闇属性のレベル4モンスターとランク4エクシーズで統一されたカテゴリである
「ヴエ゛エ゛ェ゛ェ゛ェェェ?!「ヴェルズ」ゥ゛ゥ゛ゥゥッ!?」
そしてあの戦士は今の僕の最悪の天敵ととも言えるカテゴリの一員だった
「うえ!?あの、どうかしましたか!?」
「い、いやなんでもない。大丈夫だ、もう僕は落ち着いた大丈夫、素数だって数えれる。2、3、5、7、11…」
暗斎に心配されて大丈夫と口では言うものの全然大丈夫じゃなかった。素数数えようとしてる時点でかなり混乱している
ヤバい、マジヤバい。よりにもよって「ヴェルズ」かよ!あんまり環境どころか他でも見かけないのと所詮子供を高を括ってたけどこいつはマジでヤバい!もしかしたら何もできず完封される可能性だってある!クソ!あいつ無効にできるのこのデッキには「ブレイクスルー・スキル」と…
『見たことないくらい戸惑ってるわね、白星さん』
『よほど相性が悪いデッキなのでしょうか?』
『子供と高を括っていたのだろう。あの状態が続けば奴は負けるぞ』
『大丈夫だ、白星も1人の
いつもの4人…ユート、黒咲、瑠璃、半田は風斗の見たこともない焦りようにそれぞれ感想を述べていた。彼らはどの様な結果の末にしろいつもの調子(デュエルバカ)を取り戻し、デュエルを楽しもうとするだろうと一種の信頼を寄せていたのである
しかし…
(「ダークロウ」みたいな除外系よかずっとマシだがそれでも本気で厳しい手札の「ブレイクスルー」をすぐ伏せて防御体制とって次のターンに無効にして展開していや待てそもそもまだ「奴」は出てないから出てくる前に展開でもそんな都合のいいこと起きるわけないしって落ち着け落ち着け素数を数えろ47、53、57……アレ?57って素数だっけ?…訳分からんくなってきたドチクショウッ!)
彼は尋常ではないくらいパニクっていた。服装で隠れてるのをいいことに、目を瞬かせ、口元を引きつらせ、眉間のシワが最大限まで寄せられていた
だがデュエルは彼を待ってくれない
「召喚に成功した「ヴェルズ・カストル」の効果!このターンもう一度だけ、俺は「ヴェルズ」モンスターを召喚できる!「ヴェルズ・サンダーバード」を召喚!」
また、闇が湧き上がる。その闇が空中で圧縮されながら、縦長の球体は表面を少しだけ剥がしてゆく。そこには、体を翼で抱き覆っている鳥らしきものがいた。フクロウのようなずんぐりとした身体の中央線あたりにはジグザグ曲がった2本の線の間に薄い赤紫の体皮が出て、そこには縦に並ぶよう赤く透けた球が埋まっていた。木に掴み止まるのに適した脚には黒い爪が4本づつあり、薄い赤紫色の翼膜はとても薄く、長く荒れた黒い毛と頭部から生えた…5本の触手を揺らしながら、その黒い嘴から鳥とは思えぬ低い鳴き声を響かせた
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
「ゲェッ?!」
「俺はレベル4の「ヴェルズ・カストル」と「ヴェルズ・サンダーバード」で、オーバーレイ!」
風斗は「奴」が出てくる条件が揃った悪夢に悲鳴をあげるが、彼には何もできない。せいぜい、目の前で紫の球が入り込んだ渦巻きから「奴」が現れるのを待つしかできなかった
「暗黒に染まりし竜よ!その闇を力に、黒く冷たい翼を広げよ!」
巨大な闇の塊が現れる。徐々に溶け落ちてゆくそれは翼を、尾を、頭を浮かばせて、黒を撒き散らしながら黒い巨躯を晒す。四足動物のような四肢が大地を踏みしめ、鳥のような白の嘴のついた顔からオレンジ色の眼で無感情に相手を一瞥する。黒い翼の翼膜は根元がマグマのように赤く、しかしすぐに、そして徐々に氷の冷たさを見せさせる濃い青色に変化していた。その強靭な尾は途中で枝分かれし、金色に輝き始めた先端で再び繋がり、まるで槍のようなそれをしならせた。そしてその羽を閉じた昆虫のような黒光りした背中から、六角形の金にはめられた橙色の鏡が光を放った
「エクシーズ召喚!出て来い、ランク4!「ヴェルズ・オピオン」!」
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
「アイエエエェェェ?!「オピオン」ナンデェ?!」
信じたくなかった現実を直視してしまい、思わず
ヤバい、本当に出てきやがった「ヴェルズ・オピオン」。「ヴェルズ」モンスター2体でエクシーズできる、僕の記憶じゃあよく「ヴェルズ」で先陣を切ってるエクシーズモンスター。その中途半端に超えにくい攻撃力、
「「ヴェルズ・オピオン」は
この次元じゃエクシーズ召喚…つまり低いレベルを使ってレベルを持たないエクシーズモンスターで戦っていく戦術が主流だから、一部の高ランクエクシーズじゃないとあまり役に立たないのであろう。高ランクでさえ、モンスターのレベルを上げて調整すれば簡単に出るもんである
(マジにマズいなぁ…このデッキ、低レベルモンスターが出にくいこと受け売りにできるレベルで出てこないのに…)
けどあいにく、僕はエクシーズ主体ではなく融合・シンクロ・ペンデュラムなどの
『なるほど…だから白星は動揺していたのか』
『だと思いますよ、ユートさん。僕たちの次元ではあまり効果はないですけど、あのカードが出されたら他の召喚法じゃあ突破する手段は魔法・罠くらいとかなり限られてしまいますからね』
『白星さんの様子を見るに、相当相性の悪いデッキみたいね…』
『瑠璃の言う通りだろうな。あれ程の絶叫をあげるあたり、余程戦い辛い相手なのだろう』
…そして巡り合わせは最悪なのか、今回の僕のデッキは融合・シンクロ・エクシーズのデッキだった。オマケに高レベルをガンガン出していくタイプだからレベル調整なんて当然入ってない。ハッキリ言えばすぐにでも
………だが…
『だが、たった1枚のカードで「ヴェルズ・オピオン」が出てくるのを想定したあたり、あいつの世界にもあのモンスターは存在したのだろうな』
『隼の言う通りだ。そして、デッキにとって不利になるカードの対策を取っていないほど、白星も弱くはない』
信頼が苦しい…。…だがユートと黒咲の言う通りでもある
「オピオン」以上のメタカードも存在していたOCGにとって、メタの対策は必須。このデッキに入っている「ブレイクスルー・スキル」もその1つだ。そしてもう1種類…2枚だけ、僕のデッキには「オピオン」を突破できるカードがある。それを使えばどうにかなるが…
…もっとも、「侵略の汎発感染」とかの1ターン限りの魔法・罠耐性をつけるカードがサーチされたら、「ブレイクスルー」も2回使う必要があるからその間にやられる…なんてのもあり得るけどね…
「「ヴェルズ・オピオン」の効果発動!
「オピオン」が吠える。すると背中の鏡に何かがボヤけて写り込み、ピントが合わせられるように見えてきたものは魔法カードの「汎発感染」であった
加えられちゃったよ「汎発感染」。しかし「侵略の」までだったか。まあそうじゃないと他に「侵略」って名のつくカード持ってこれるし当然処置か
「カードを2枚セット!これで俺はターンエンド!」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
暗斎 迅 LP4000 手札 2枚
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
伏せカード 2枚
「さあ、白星さんのターンですよ!」
「クソッタレ…上等だ!なんとしても「オピオン」ぶっ潰してやる!僕のターン!ドロー!」
なんだか僕の方がチャレンジャーに見えてきたが、考えると面倒だから忘れることにした
「手札から魔法カード「名推理」を発動!」
「「名推理」?」
「相手はレベルを1つ宣言し、宣言したらデッキトップをモンスターが出るまでめくっていく。宣言と同じレベルのモンスターならばそのまま墓地へ、違った場合そのモンスターが召喚可能ならば特殊召喚する!それとめくったカードはそのまま墓地に送られていくからな」
「宣言したレベルと違うモンスター?でもレベル5以上は特殊召喚できないし…。…じゃあ4!」
想像したのとは随分違うカードが出たのか、少し戸惑いながらもレベルを宣言する。そう、普通ならばそういうだろう。普通ならな…
「じゃあ確認していくぞ。まず1枚目!…出たのは魔法カード「ギャラクシー・サイクロン」。違ったから墓地へ」
「ギャラクシー・サイクロン」を墓地に送り2枚目をめくる。引いたのは…
「レベル10「インフェルノイド・ネヘモス」」
「じゃあ特殊召喚されますね。けど俺の場には「ヴェルズ・オピオン」がいるから特殊召喚できませんよ。その場合どうなるんですか?墓地?」
「確かにこのカードは特殊召喚できない…自身の効果でな」
「え?」
「このデッキに入っている「インフェルノイド」モンスターは1種類を除いて共通効果があってな…「手札、墓地の「インフェルノイド」を一定数除外して特殊召喚する」のと「僕の場の効果モンスターのレベル・ランク合計が8以下の時、特殊召喚できる」、最後に「自身の効果以外では召喚・特殊召喚できない」という効果だ。そして「名推理」は、通常召喚
「じゃあ、どうなるんですか?」
「特殊召喚できないモンスターはそのまま墓地へ送られ、「名推理」の効果は続行する。…続けるぞ?ドロー!引いたのは「インフェルノイド・アシュメダイ」!特殊召喚できないから墓地へ!ドロー!「インフェルノイド・リリス」!これも墓地へ!ドロー!…ゲッ!「インフェルノイド・ルキフグス」…。…これも違うから墓地へ…。ドロー!「ブレイクスルー・スキル」!罠カードだから墓地!ドロー…」
怒涛の勢いでデッキからカードをドロー(実際はただの確認)し、しかし全てが墓地へ送られてゆく。すでに墓地に落ちた枚数は10枚を超し、デッキ枚数も半分を切るところだった
「ドロー!…うわぁ…2枚目の「ルキフグス」落ちた…ないわぁ…墓地に…。ドロー…」
「オピオン」突破カードが2枚とも墓地にいくという惨劇に涙が出そうだが、それでもカードを墓地に落とし続ける
「…ドロー!…レベル1「インフェルノイド・デカトロン」、こいつは通常召喚も特殊召喚も可能なモンスター。そして宣言したレベルとも違うため、特殊召喚!」
青い炎が地面から吹き上げ、そこから小さな悪魔が現れる。オタマジャクシのような赤みがかかった紫の身体は1つの頭部のようであり、歪な口からところどころ欠けた歯を覗かせた。その腕とも言い難い壊れかけで錆び付いたヒレのようなものがついており、「デカトロン」の身体中に様々な色に光るランプが点灯し、背にはランプが虹色に輝いていた
インフェルノイド・デカトロン チューナー
レベル1 DEF200
「「インフェルノイド・デカトロン」が召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる!デッキから「インフェルノイド」モンスターを1枚墓地に送ることで、落としたモンスターのレベル分レベルが上がり、同じカードとして扱い、効果を得る!「インフェルノイド・アスタロス」を墓地に!」
これで墓地にカードが23枚。「デカトロン」で「アスタロス」も落としたから墓地の「インフェルノイド」は計11枚。まぁそこそこ落ちた方ではあるか…「オピオン」まだ突破できないけどね
「「アスタロス」の効果を得た「デカトロン」のモンスター効果!このターン、このモンスターの攻撃権を放棄して、フィールドの魔法・罠を1枚破壊する!暗斎の右の伏せカード1枚を対象に発動!」
「う…、速攻魔法「侵略の汎発感染」発動!このターン、俺の「ヴェルズ」モンスターは魔法・罠の効果を受けない!」
よし、「汎発感染」を割れたのはでかい。これで心置きなく「ブレイクスルー・スキル」で「オピオン」を無力化できる。…次のターンまで持てばいいけど…
「僕はカードを一枚伏せる。これでターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 4枚
インフェルノイド・デカトロン チューナー
(インフェルノイド・アスタロス)
レベル5 DEF200
伏せカード 1枚
VS
暗斎 迅 LP4000 手札 2枚
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
伏せカード 1枚
「俺のターン!ドロー!…うぅん…」
なんだか引いたカードを見たら悩み始めた。よほど悪いカードを引いたのか?それともこの状況に合ってないカード?
しかし意を決したのか、その目は何かを決断した目だった
「…俺は「ヴェルズ・オピオン」のモンスター効果発動!
「なに…?」
意外だ。僕の様子を見ていたならレベル5以上の特殊召喚を封じる「オピオン」の
(それとも…いや、多分…)
「効果で俺は…」
「その効果にチェーンしてリバースカード「ブレイクスルー・スキル」を「ヴェルズ・オピオン」を対象に発動!対象の効果をエンドフェイズまで無効にする!」
「な…!?」
再び吠える闇の竜。しかし今度は徐々に写り込む鏡に先程にはない変化が起きる。発動された「ブレイクスルー」が光を「オピオン」に浴びせると唐突に苦しみ出し、背中の鏡にヒビが入り写っていたカードが消えた
多分また「汎発感染」あたりでも持ってこようとしたんだろうがそうはいかない。それに、恐らくこれで終わりではない
「うぅ…お、俺は手札から、「ヴェルズ・ケルキオン」を召喚!」
地面から闇の魔法使いが現れる。軽い鎧のようなものを上半身だけ着込み、その背から捻り曲がった黒く巨大な角が生える。そこから片方ずつ白い羽のようなものが3枚重なったマントが出てき、頭には白い兜から小さく捻くれた黒角が後方に伸びる。右手には白銀に輝く鏡がはめられた金色の杖、左にはこれまた金の刺又のような杖が握られていて、「ケルキオン」の周りに小さい太陽のようなものが3つ円運動で周回していた
ヴェルズ・ケルキオン
レベル4 ATK1600
「「ヴェルズ・ケルキオン」の効果!墓地の「ヴェルズ」1枚をゲームから除外して、墓地の「ヴェルズ」1枚を手札に加える。墓地の「サンダーバード」を除外して「カストル」を手札に!そしてこの効果を使ったターン、俺は「ヴェルズ」モンスターをもう1度だけ召喚することができる!「ヴェルズ・ヘリオロープ」を召喚!」
暗い緑と黒の屈強な戦士が、不気味な色具合の剣を手にその赤い眼光を光らせた
ヴェルズ・ヘリオロープ
レベル4 ATK1950
「俺はレベル4の「ヴェルズ・ケルキオン」と「ヴェルズ・ヘリオロープ」で、オーバーレイ!エクシーズ召喚!出てこい、ランク4!「ヴェルズ・オピオン」!」
その冷たき翼をはためかせ、2体目の「オピオン」が舞い降りた
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
「来たか、2体目…」
流石に2回目ともなれば冷静にもなる。というよりあれは予想外すぎる天敵の登場であの手札だけでどうにかできるかパニクっただけであって、今は墓地がたっぷり肥えているわけだから焦る理由はあんまりない
「「オピオン」のモンスター効果!
「できることは何もない。続けてどうぞ」
「俺は「侵略の汎発感染」を手札に!そしてバトル!「ヴェルズ・オピオン」で「インフェルノイド・デカトロン」に攻撃!」
「オピオン」が「デカトロン」に向かって、青色のレーザーブレスを放つ。まともに受けた「デカトロン」はその身体を凍らせていき、最後に砕け散った
「グゥッ…」
「「ヴェルズ・オピオン」で白星さんにダイレクトアタック!行けぇ!」
今度の標的はこちらである。その口に冷たい青の冷気が一気に溜まって、僕に向かって息吹を撃ち込んできた
「直接攻撃時、墓地の罠「
「えっ!?「
「モンスター扱いでこのカードを特殊召喚する!守備表示!」
レベル4 DEF300
僕の目の前に、突如槍を持った騎乗の幻影の騎士が立ち塞がる。その直後、竜のブレスを直撃した「シャドーベイル」は完全受け切り、その身を消滅させた。あまりの忠誠心に思わず敬礼を取りそうになった
「「ヴェルズ・オピオン」の攻撃は代わりに「シャドーベイル」が受けた。そして破壊された「シャドーベイル」はゲームから除外される」
「あの攻撃を防ぐなんて…。俺はカードを2枚伏せてターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 4枚
VS
暗斎 迅 LP4000 手札 1枚
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
伏せカード 3枚
『まさか「
『あのカードは防御用のカードかしら…』
『だろうな。大量にカードを墓地に送るところから見ると、墓地で発動するカードを多く入れているのかもしれん』
『しかし俺の「ダーク・リベリオン」といい「
OCG全持ちです。ちょっと
「んじゃ、僕のターン、ドローカード!手札から「サイクロン」を真ん中のセットカードを対象に発動。そのカードを破壊する」
「え?!えっと、対象のセットカード「侵略の汎発感染」を発動!このターンの終わりまで「ヴェルズ」モンスターは魔法・罠の効果を受けない!」
「チェーン3で墓地の「ブレイクスルー・スキル」を除外し、
「ま、また墓地から…」
「なんかチェーンあるか?」
「チェーン?…え…えっと、何もないです…」
「じゃチェーン解決。チェーン3で「ブレイクスルー」の効果で
僕の足元から強風が吹き荒ぶ。それはやがて激しい
「あれ…?「汎発感染」は発動したから破壊されないんじゃ…」
「お前は僕の伏せ破壊に対してその「汎発感染」を発動したから、「サイクロン」のチェーン解決されるまでは場に残るから、チェーン1で破壊されるんだよ」
「え…チェーン解決?場に残る…?…ごめんなさい、何を言っているのか分かりません…」
「いや、別に怒ってないよ?コンマイ語は難しいからね…。まぁ後で嫌でも知ることになるから。手札から永続魔法「煉獄の虚夢」発動。これにより、僕の元々のレベルが2以上の「インフェルノイド」モンスターは全てレベル1になるが、相手に与える戦闘ダメージが半分になる」
「え?そんなカードがあったら、「オピオン」の効果を無効にしなくても良かったんじゃ…」
「このカードはあくまで僕の「場」の「インフェルノイド」をレベル1にするからね、特殊召喚する際はレベルが変わらないからこのカード単体じゃ突破は無理だよ。何にせよ、これでレベル制限は解かれた。墓地の「インフェルノイド・ルキフグス」を2枚、「インフェルノイド・アスタロス」を2枚除外し、「インフェルノイド・アドラメレク」を墓地から2体特殊召喚!」
「また墓地…!」
青い炎が急に灯り、大きく燃え上がり、そこから巨大な影が炎を掻き分け出現する。機械のように硬質で蒼い装甲には光で照らされた黄色い金属が重なるようについてあり、その猛禽類のような両脚と両腕の爪は金色に輝いて見えた。4つの太い尻尾は先で繋がり薄い紫が扇状に広がっていて、何もかもを吹き飛ばせそうなその大翼は基本的に蒼色で骨格の部分は黄色の金属で覆われていた。金色の角がついた鳥型の頭部からオレンジ色の眼が2体の竜を見据え、LEDのように身体中に剥き出しのガラス体が光を反射させた
2つの煉獄の悪魔が、大気を震わせ共鳴した
インフェルノイド・アドラメレク
レベル1 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル1 ATK2800
「そして「煉獄の虚夢」の効果!フィールド上のこのカードを墓地に送ることで、手札・フィールドから素材を墓地に送り「インフェルノイド」モンスターを融合召喚できる!」
「融合召喚!?」
「更に、相手の場にのみエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合、6体までデッキのモンスターを素材にできる!」
「えぇッ?!」
「デッキの「インフェルノイド・ネヘモス」、「インフェルノイド・リリス」、「インフェルノイド・アスタロス」の3体で、融合召喚!」
見上げるほどの巨躯の2体の悪魔とその足下で蠢いている小さな1つの悪魔が、渦のように混じり合わさり…そこから蒼炎を放出させる
「罪を司りし創られた悪魔よ!その煉罪積み重ね、業深き世界を獄炎で覆い尽くせ!」
それの第一印象は、翼のあるナーガであった。赤紫の蛇のように長くしならせる尾が身体の下半身全てであり、上半身は女性のように細身でも少し長い首から先は凶悪な双角を側頭部から伸ばしたトカゲのような頭だった。5枚の薄く長い翅でできた翼と悪鬼めいた細い腕は右が透き通る白、左が侵食するような暗い紫であり、地獄の業火を日輪の形で背負い、煉罪の王はその嘆きを轟かせた
「融合召喚!這い上がれ、レベル11!「インフェルノイド・ティエラ」!」
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
「こ、攻撃力3400?!」
「「インフェルノイド・ティエラ」のモンスター効果!このカードが融合召喚に成功した時発動できる!その効果は、融合素材に使ったモンスターの種類によって複数の効果を使える!今回は最低数の3体だから1つの効果を適用!お互いはそれぞれエクストラデッキのカードを3枚選んで墓地に送る!」
「エクストラのカードを墓地に!?」
「僕は融合モンスター「旧神ヌトス」2枚とシンクロモンスター「
「くっ…俺は「ヴェルズ・オピオン」と「ヴェルズ・ウロボロス」と「ヴェルズ・バハムート」を墓地に…」
「ヴェルズ」3竜そう落ちでこざる。しかしなぜ「ウロボロス」や「バハムート」を墓地に?勝負を捨てた……って感じではなさそうだしなぁ
「けど勝たせてもらうぞ。墓地に落ちた「旧神ヌトス」の効果をチェーン1、チェーン2で暗斎の伏せ2枚を対象に発動!対象のカードを破壊する」
「な…で、でも俺の墓地にはエクシーズモンスターがいます!罠カード「エクシーズ・リボーン」を発動!」
抵抗するために、先ほど「ティエラ」の効果で墓地に落とした「ヴェルズ」エクシーズモンスターを蘇生させようとする暗斎。なるほど、それで蘇生するための意図でわざと「ウロボロス」や「バハムート」を選んだということか
だが、いつまで経っても伏せられたカードが表になることはならなかった
「あ、あれ?なんで「エクシーズ・リボーン」が発動しないの!?」
暗斎は「エクシーズ・リボーン」が発動されないことを不思議に感じていた。が、僕や観戦している4人はその理由が分かっていた
「“召喚制限”だ」
「?しょうかんせいげん?」
「エクシーズモンスター…まあエクストラから出すモンスター全般に当てはまるんだが、1度でも正規の手順を踏んだ召喚を行ったモンスターでなければ墓地や除外ゾーンからエクストラからのモンスターを特殊召喚することはできないルール。これを召喚制限っていうんだ」
なんせこれがなければ、エクストラのモンスターを墓地に落として蘇生…なんて「おろ埋」と「死者蘇生」のようなコンボが成立して、簡単にエクストラのモンスターを特殊召喚できてしまうからだ
「どうやら僕の効果を逆手にとってエクシーズモンスターを増やそうとしたみたいだが、召喚制限を知らないゆえの行動だったみたいだな」
「じゃあ、今の俺の墓地にエクシーズ召喚したエクシーズモンスターはいないから……」
「そう、「エクシーズ・リボーン」は発動自体できない。…もうこれ以上チェーンはないと見ていいな?…ならば効果解決!2枚の伏せカードを破壊する!」
訓練所内上空で暗雲が立ち曇る。そこからゴロゴロ音がなったかと思うと、強い光とともに落ちた稲妻が暗斎の伏せカードを刹那のうちに貫き…光として散らせた
「うぅ…せっかくの「エクシーズ・リボーン」と「侵略の侵食感染」が…」
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
VS
暗斎 迅 LP4000 手札 1枚
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
「バトルフェイズ!「インフェルノイド・アドラメレク」で、「ヴェルズ・オピオン」を攻撃!」
「アドラメレク」が重みある走りで「オピオン」に接近する。距離を詰めきった「アドラメレク」はその腕を闇の竜に振り下ろす。とっさに翼で覆い防御を試みるが、重量の乗せられた残酷な剛爪は翼ごと「オピオン」を叩き潰し闇へと霧散した
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
VS
暗斎 迅 LP3750 手札 1枚
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
「うわ!」
「「アドラメレク」のモンスター効果!このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時、続けて攻撃することができる!2体目の「ヴェルズ・オピオン」に攻撃!」
しかし悪魔は止まらない。恐怖を煽る唸り声を上げるとその重尾を近くの「オピオン」の横っ面に叩きつけ、その勢いを利用し逆回転しながら今度はその身体に扇状の尾が打ちつけられる。それだけで「オピオン」は大きく飛ばされ、地面をバウンドしながら消えていった
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
VS
暗斎 迅 LP3500 手札 1枚
「あぁ…」
「「インフェルノイド・アドラメレク」で直接攻撃!」
腕を、大きく縦に振るう。すると巨大な衝撃波が暗斎に向かい、彼を大きく後退させた
「わあぁ!」
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
VS
暗斎 迅 LP700 手札 1枚
「「インフェルノイド・ティエラ」で攻撃!「贖罪の虹獄」!!」
日輪が光を放つ。大きく点滅しながら様々な色に変わってゆくそれは、徐々に「ティエラ」の口元に集い…虹色のレーザーを縦になぎった。しかし相手の直線上に撃つのは避けたのか、暗斎の横にレーザービームが通ると、そこから発生した突風で彼は小さく吹き飛ばされた
「うわあああぁぁぁーーーーーッ!!!」
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
インフェルノイド・ティエラ
レベル11 ATK3400
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
インフェルノイド・アドラメレク
レベル8 ATK2800
VS
暗斎 迅 LP 0 手札 1枚
「うぅ…負けた…」
「お疲れ」
吹っ飛ばされて尻餅をついてる暗斎に近寄って話しかける。いやぁ、「ヴェルズ・オピオン」は強敵でしたねぇ…
どこぞの新人防衛隊員みたいなセリフを吐いたが実際はかなりヤバかった。初手に「ブレイクスルー」引いていたのと「名推理」でたくさん「インフェルノイド」が落ちてくれたからこそ、相手の妨害を踏み倒して攻勢に出れたわけなのだから
「召喚制限のルールを知らなかったとかの未熟な部分もあったけど、4日ぶりに楽しいデュエルができたよ。ありがとう」
「…はい、俺も…凄く楽しかったです…勝てなかったけど…」
とても楽しそう笑顔を浮かべるが、すぐに俯いて落ち込んでいた。なんだって落ち込んでいるのか理由が分からん
「良し、今日はもう家に帰りな」
「…はい…分かりました…」
そう言うと唇を噛み締め、震えながら立ち上がりこちらに背を向けた。…あっ、そうだ忘れてた
「おい暗斎。明日できる限りの着替えや布団とか持ってこいよ昼ごろに」
「……え?」
こちらにゆっくりと振り返り、目をパチクリさせながらも暗斎は疑問を口にする
「着替え…?何でですか…?」
「何でって、これからお前にいろんなこと教えんとアカンのにいちいちこことキャンプ往復しても手間なだけじゃねえか」
「教えるって…なにを?」
「デュエルに決まってんだろ。お前が弟子にしてくれって言ったんだぞ」
「………え?」
「いや、なんでお前が驚くし」
なんだかとても信じられないことを耳にしたという感じでポカンと口を開けて僕を見ている。なんだその顔
「あの…俺、負けましたよ?」
「合否の基準は勝ち負けじゃないはずだったけど?」
「ボロ負けでしたよ?」
「強くなるために弟子になるなら別にボロ負けくらい良いだろ?これからもガンガン負けてもらう予定だ」
「本当に弟子にしてくれるんですか?」
「何のためにさっきデュエルしたんだよオイ。嫌なら別に良いけど」
…………
「…やっ……!」
「うん?」
また俯いてプルプル肩を震わせている。だけどその姿に悲壮感などなく…言い様のない喜色に溢れていた
「…ったああぁぁぁーーーーーーー…」
「喧しい!!」
「あだッ!?」
弟子になれたのがそんなに嬉しかったのか、身体全体で喜びを表しており、直後を僕の拳により暗斎は頭を抑え蹲っていた。すっごく耳キンキンする…!
「痛いですよ!白星師匠!」
「早速師匠呼びとは気のはえー奴だなオイ!とりあえず静かにしろ!あと呼び方は今まで通りにしとけ!」
「えぇっ!?なんでですか!?」
「理由なんか特にねーよ!いいからそうしろ!分かったな!?」
「は、はい…」
分かってくれたのか、静かに返事をしてくれた。うん、物分かりのいい奴だ。どこからか突き刺さる4つの視線が痛いがきっと気のせいだと思っておこう
「とりあえず、明日から正式にお前を弟子とする。同時にレジスタンスの所属にもなる。まだ外には当然出さねーしお前にはデュエルの技術云々の前に色々教えとくことがあるからそれを優先する」
「はい」
「ハッキリ言えばお前をどうやって強くするかに関しては先のことは全然決めてない。だけどコレだけは言っておく…間違ってもこの先お前を死なせないためにも僕の持てる知識をその頭に叩き込むつもりだ。…分かったな?」
「はい!」
「いい返事だ…。とりあえず明日荷物を持って僕の部屋の前に来てくれ。時間は昼ごろなら適当にでいいから」
「はい!じゃあ俺、家に帰って明日の準備してきます!また明日!」
「お前なぁ、遠足前のワクワクする子供か…って行っちまった…」
気がつけば赤い頭の影は訓練所の扉から颯爽と出て行ってしまった。…しかし明日からと言ってみたものの…なにから教えていこうか…
「とりあえずコンマイ語からかなぁ……でもそれにはカードの知識がめちゃくちゃいるからなぁ…カード暗記とはいかなくても、まずあいつのデッキの強化から…」
「白星さーん!」
不意に名前を呼ばれたので声の方向を向いてみると、瑠璃がこちらに向かって手を大きく振っていた
他のみんなもいる場所に、僕はゆったりと歩いていった
「おーいユート。あいつは弟子にしたけど、とりあえず移住食って僕と同じでいいよな?」
「あぁ、食事はこちらで提供するが、寝床は同じ部屋を使ってくれ」
「マジかー…。まぁ子供1人なら全然なんとかなるか」
とりあえず暗斎の「ヴェルズ」デッキを見てどんなカードが強化に使えるとかも考えないとだけど……面倒だから明日考えよう
咄嗟に師弟関係なんて築いてしまったが今までもなるようになれば生きていけたし特に問題ないだろう。僕はこの世界の流れを途中まで、大まかだが知っているつもりだ。…まぁだからって僕ができることなんて高が知れてる。覚悟なんてものはないが、暗斎が覚悟を示した以上僕もできることはする
…だがまぁ、いちいち明後日のことなんかを考えるよりも…
「瑠璃」
「なに?」
「またあとで紅茶飲みに行ってもいいか?」
「…角砂糖は3つでいいわね?」
今日を、今を精一杯楽しもう
余談だが、直後黒咲から無言の回し蹴りを食らう羽目になった
なんかコレジャナイ感がぱない…もっとこう、違うでしょ主人公はっちゃけてデュエルしないと!…自分自身を棚に上げて何言ってんだか…
今回は本当になんか違う感じなんですよねー、主人公の子供は嫌いだが子供は守られるべきって感じがなんか醸し出せない…最後のオチも気恥ずかしくて書いてしまった感があるんですよね…
それと暗斎君の親父さんついてですが、なんのこっちゃか分からない人は前話の内容を少し変えましたので読んで貰えばわかると思います。二度手間ですみません
次回こそは大分時間経ってからの話にします
それでは、オタッシャデー!