面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
なんか気がついたら評価が凄いことになってる…みんなの期待って重いよね♪
それでは弟子回の第6話ドーゾ!
空気が、頬に触れる。息が、しづらい
瓦礫の街で2つの影が走っていた。1つは余りに一般的なほんの少し長い黒髪が、これまた黒いフードと共になびかせながら息を大きく吐いて突っ切っていた。もう1つは燃えるような赤色で前に垂れていたアホ毛が、マフラーのように首に巻かれたレジスタンスの証と一緒に風に流されるように後ろで揺れていた
「…ッ!ビルを登るぞ!」
「了解!」
フードの男は、少し背の低いその赤髪の男に指示する。赤髪の男はそれだけで了承の言葉と共に男について行き、共にビルを
しかしフードの男はすでに限界の様子だった。吐く量とは比較にならないほど少ない酸素を吸い、肩で大きく息をしていた
「ハァー、ハァー、ハァー……」
「大丈夫ですか、師匠?」
移動した距離に反比例して減らしたスタミナを回復させるため…白星風斗は柵に手をかけ体重を乗せており、その風斗を師と呼ぶ少年…暗斎迅は少し息を乱しながらも心配のあまり声を掛けた。さながら老人を介護する子供の図であった。…当然ながら、老人の立場は白星である
「ハァー、ハァー…少し休めれば良いが……。…クッソ、なんだって…今日に限って……僕の方にアカデミ……ァ兵が殆ど…来るんだよ……」
ところどころ呼吸を整えながらも愚痴るが、疲れているという点以外はいつも通りなので大丈夫と暗斎は判断した。そうしてると少し息が楽になってきたので柵から手を離し身体のバランスをとっている…
ザッ!3つの着地音が屋上に響く。瞬時に音の方を振り向けば、そこにはつい先程まで自分たちを追い回していた三人一組の信号機集団…
「逃がさんぞ!エクシーズの人間ども!」
–−−侵略者の尖兵、アカデミア兵がデュエルディスクを腕に荒々しく声を上げていた
だがセリフを口にしている間に既に2人はアカデミア兵とは真逆の方向にダッシュしていた。刹那的決断力であった。直感ともいう
しかしここは屋上、ひしゃげた柵に囲まれた人工の高台に逃げ道などどこにもあるはずがなかった。…いや、1つだけ、人間なら必ず躊躇する逃げ道が存在していた。柵のない方向の、数メートルは向こうであろうもう1つの屋上である。しかしもし届かずにビルの谷間に落ちればただでは済まない
「跳ぶぞォッ!!」
「ッ!ハイ!!」
しかしこの
谷間に、2つの影が舞う
「カットビングだぁ!俺エェェェーーーッ!!」
「……それで、風斗は足首挫いて帰ってきたというわけね?」
「修行の一環とは言え、酷い目にあった…」
「それをやるって言いだしたのは風斗さんですからね?」
いやぁ、あの時はなんというか血迷ってたよ…。自分の中の遊馬先生に従ってジャンプしたけど、
瑠璃に手当てしてもらいながら、呑気に数時間前の自分の行動を思い返していた
暗斎を弟子にとってかれこれ2ヶ月もの月日が経過した。時が経つのってとっても早い……。とりあえず暗斎にはデュエルのなんたるか(OCGバージョン)を順を立てて教えていってた
あと、ここにいる2人やユート、黒咲には名前で呼ばれるくらいには親密な関係になった。僕は特に呼び方は変えてないが
最初の1週間は単純なカード知識の詰め込み。…と言ってもある程度のデュエルに使われそうな、いわゆるポピュラーな汎用カードとか教え、その後に様々なカテゴリのカードやデッキの動き方などを教えた。「クリフォート」は妥協状態を消してこっちのモンスターを無力化してきたりとか、「竜星」は自ら割ってフィールドを展開したりとか
次のステップ…ルール説明、ここがホントに長かった…何せ3週間掛かったのだ。チェーンなどもだが、何より大変だったのが誰もが苦労したであろう、コンマイ語の理解である。特にタイミングのところは何度説明したことか…と言うか今も説明途中である。だから「時に〜発動できる」はタイミング逃すっつってんだろいい加減にしろ!
…まぁそれもある程度終わったので次はちょくちょくカードの「シナジー」とかも教えながら、弟子をとってからパトロールも兼ねて1人でやり始めた体力増加目的の「ハートランド1日1周ランニング」を一緒に行動するようになった。アカデミア兵(以下アカデミア)に出会った場合基本はダッシュで逃げ1周終わったらデュエル、デュエル解決は逃げきれなくなった時、本当の緊急時には真正面から叩き潰すなどなかなかに濃密な内容のおかげで随分デュエルマッスルが鍛えられたものである。…それでも高さ5メートルから落ちて足を挫くあたり
あいつら基本的に多対一による人海戦術でゴリ押ししてくるから僕や黒咲みたいにパワーカードで一掃!…とかができないととてもじゃないがデュエルなんてさせられないからな
「はい、これで大丈夫だと思うけど、3日は街に出たり無茶しちゃダメよ」
「ありがとう。……しかしこれだと出来ることが限られてくるな……レジスタンスのみんなを集めてまたデュエルしながら教えようかな…」
「やるにしても程々にして下さいよ?あれやると、みんな揃って動けなくなるんですから…」
「分かってるって」
1ヶ月前……つまりは暗斎もデュエルマッスル強化練習に混ざった時期なのだが、ちょうどその時にも2ヶ月前に提案していたレジスタンスメンバーの強化の採用され、時間を見つけてはデュエルしながら僕やレジスタンスのみんなのデッキや戦術の改善を行っていたのだが、最初にこれをやると何故か全員グロッキーになって次の日戦力が著しく低下するという事件が発生したのである。原因は十数回連続デュエルに耐え切れずダウンした、というものだ。構築の改善やデッキ慣れする必要があるからこれでも少ない方なんだけどなぁ
その後ユートと黒咲の2人に正座で長時間説教された。その後は量を控えめにしているので少なくともそれ以降は大変な事態にはなっていないが……
「なんであいつらアドの重要性理解できないのかなぁ…。墓地アドはいいにしても手札アドくらいは取ってくれよ」
「風斗さん相手に出し惜しみしてたらすぐ負けるのですから仕方ないじゃないですか」
貴方はデッキ構築が色々おかしいんですよ、などと言いながら半田がジト目でこちらを見てくる。失礼な…どうやって自分フィールドを展開したり逆に相手の展開の妨害をスムーズに行うかは、いかに手札や墓地、自分フィールドの枚数を維持できるかが重要なのだ。その為にはデッキのカードをどう全体的に噛み合わせるのか、噛み合わないカードはどう処理するのか…その為に色んなカードを試すのは必然だ
「お前らカテゴリのカードばっか使ってるからじゃねえか、そうじゃなかったら全く関係性のないカードとか…。別にお前らのデッキだから文句言うつもりじゃないけどもう少し別のカードに目を向けても良いんじゃね?」
そう僕は言うものの、実際この次元の人たちはカード効果にも目を向けるし、民度も高いのでアニメ視点で見れば最強の部類ですらある。度重なる敗北や逃走が彼ら彼女らのハングリー精神を成長させた、といったところだろうか
「こちらではカードが手に入りづらいですから……」
「分かってる。だからその辺は僕がサポートするんだ、あとはじっくり強くしていけば良い」
流石に他の召喚法のカードとかは渡せないけどな
「強くって言えば、暗斎くんもこの短期間で本当に強くなったわね」
「…………」
「風斗?」
「……実はエクシーズ限定でのデュエルだったら、何回か負けてんだよ…」
「えぇ!?未だユートさんや隼さんにも黒星がついてないのにですか?!」
半田が酷く驚くがそれもそうだろう、この次元に来てからの僕が負けている人間は弟子の暗斎ただ1人なのだから
「暗斎の奴、もうその辺の下手なデュエリストより強いぞ絶対……」
実力の公平さをつける為にと暗斎にはだいたいエクシーズ主体でいってるのだが、ここ最近負けることが多くなっているのだ…。「オピオン」もエクシーズでいけば楽勝だろとナメプしてたのだが、どんなデッキでも出てくるエクシーズの多様性を説明してからは平然に「カステル」とか「マエストローク」とか出てきてわりかし突破されるようになってきたのである…。「カステル」とか
だが同時に嬉しくもあった。少なくとも暗斎は強くなることで自分の覚悟を証明し続けているし、僕の教えたことが無駄にならなかったと実感できるというものであった。…そろそろ頃合いかな…
「失礼します、師匠は…いましたか、よかった」
思考の海で感慨深くそう思っていると、話題の人間がやってきた。とても目立つ逆立った赤髪に赤スカーフ、オレンジパーカー短パンの子供……僕のデュエルの弟子、暗斎迅がやってきた
この2ヶ月で理解したつもりだが、暗斎迅は尋常なく強情な人間である…と思う。僕に散々断られても弟子入り志願を諦めず、決めたと思ったことは何が何でも実行しようとする主人公のような奴である。コイツの師匠呼びもやっぱり尊敬すべきだから、などという訳のわからん理由で呼んでおり、それについては2時間も論争したものだ。オウムのように尊敬尊敬いう状況についにこちらが折れ、師匠と呼ばれるようになった
「暗斎か、何の用だ?」
「師匠が戻ってきたって聞きましたから…」
その言葉だけでだいたい察した。大方、僕を置いて逃げたことに罪悪感があって謝りに来た…といったところか?全くまたか
「別に気にしなくていいのに…」
「でも、俺のせいで師匠が怪我をしたって…」
「弟子を守るのは師匠の義務、ガキを守るのは大人の仕事、お前を逃したのはその方が助かる率が高かったからだ。分かったらこの話終了、人のこと言えねぇがそうやってウジウジされると周りが鬱陶しがるんだよ。だから終わり」
「…はい!」
自分本位な性格をしてるとしても他人の死を見るのは夢見が悪い。だから義務とか仕事とかの言葉で助けただけだ。いくら僕が面倒は嫌いだからって暗斎の両親…章吾さんや
「ったく、手間がかかる奴……何だよ…」
かれこれ何回目かも覚えきれないやり取りにため息を吐いていると、慈愛に満ちた目でこちらを見ている瑠璃と半田。また?またなの?…このやり取り飽きたよ
「やっぱり風斗さんって、子供嫌いというより逆に子供好きなんじゃないですか?」
ものすごくニンマリとした笑みを浮かべながらそんなことを抜かす半田。何というか、最初の弱気な印象が消し飛ぶくらい結構豪胆な性格何だよなこいつ……空気読めるくせに結構余計なこと口走ることがある
「何言ってやがる…僕はガキが嫌いなんだよ。けど章吾さんや奈菜子さんに任された手前、暗斎を無下に扱うのはどう考えてもそれに反した行動だろうが」
「いやいやぁ、口ではキツく言いながらも子供達の為に毎日頑張って戦っているじゃないですか。それに、最近は子供達にもデュエルを教えてるって…」
ガシッ!ミシミシミシ…(無言のアイアンクロー)
「イダダダダダッ!痛い痛い!両手はやめてください!」
「大人をからかうなよ?」
結構な力で頭蓋を軋ませると僕の腕と近くの机でバンバン!と同時にタップし半田は許しをこう。許してくださいってかぁ?許してやるよォッ!
手を離すと医務室には、机に突っ伏してこめかみ辺りをさすっている
ちなみに半田の言ったデュエルを教えているという話だがマジだ。最初は子供達に強く当たったのもあって会ってない子供にも嫌われていたが、実は暗斎が必死に僕のことを話したのと弟子入りしたことがキッカケで、またたくさん寄ってくる事案が発生したのだ。と言っても、暗斎を早く強くしないといけないから断っていたのだが、これまた暗斎が教えてやれないか?などと頼み込んできたのである。そんな状態の解決に、教える代わりにその時以外は我慢してくれとの約束の上で軽くデュエルを教える羽目になった…というわけだ。あぁ、ささやかな休み時間すら無くなっていく……サービス残業にも程がある
「……まぁ…」
痛みを堪えている奴はほっといて、椅子に座っている瑠璃と暗斎の頭にポンッと手を置き、髪が乱れないよう優しめに撫でる
「さっきも言ったが、大人の、僕の仕事はお前たちを守ってやることくらいだ。子供がンなこと気ぃ使う必要ねぇんだよ。子供は僕らと同じ大人になるのが仕事みてぇなもんだろ…。…僕が大人にカテゴライズされるかは微妙なとこだがな…」
19歳って大人じゃないし、かといって子供という歳でもないしなぁ……なんていやいいんだ?
…なんて思いながら、撫でている2人を顔を見ると、それぞれ違う反応であった。暗斎は嬉しそうにエヘヘ…なんて言いながら満々の笑みで笑っていた
「……瑠璃?」
「…………」
一方瑠璃は、なんか顔を伏せて終始無言だった。心なしか、その綺麗な肌色の頬が薄い桜色に染まっているように見える。目も閉じているし……もしかして恥ずかしくて俯いてた?
「……ゴメン」
「え…?……あ…」
すぐに撫でていた手を瑠璃から離す。暗斎の方ももう少し撫でてから離した
よくよく考えれば瑠璃も中学生くらいの子だ。その年頃なら異性…そうじゃなくても撫でられることには嬉しさよりも気恥ずかしさの方が勝るだろう。そんな子相手に何も考えず頭を撫でまわすなんて何やってんだ僕は……とっさに手を離した僕の判断力を褒めたいものだ。離す前に謝ったのもグー
……だというのに、何故この子は名残惜しそうに落ち込んでいるのだろうか…。なんか間違えたか?
「…ここに長居するのもアレだからな、オイ暗斎」
「え…はい」
「先に僕の部屋に行っといてくんない?後ですぐ行くから」
「あ、はい。分かりました。お先、失礼します」
暗斎が医務室から出て行く。それから…
「半田ァ」
「…はい、何でしょうか…?」
「突っ伏してるとこ悪いが、お前明日の予定は?」
「誰が突っ伏させたと…。特にありませんけど、それが?」
「明日デュエルの相手してくんない?部屋に戻ったらデッキ調節してくるから」
「デュエルの相手ですか…?構いませんよ、何時します?」
「昼の3時にするか」
「3時ですか、分かりました。場所はいつもの訓練所ですね?」
「当然」
それだけ伝えればもう充分。机の上のカバンを肩にかけて僕も部屋から退出した
「暗斎」
「はい、何ですか師匠?」
「そろそろお前に別の召喚法を教えようと思う」
自分のカバンから適当にカードケースを出しながら弟子を呼びかける。暗斎は目を丸くして驚いていた
「本当ですか!?というか良いのですか!?」
「エクシーズだけならもう相当強いからな……ユートや黒咲に並ぶんじゃね?」
「い、いや…流石にそれは……」
遠慮がちに目を伏せるが実際実力は僕より上だろう。僕がユートや黒咲とかに勝てるのは多種多様な召喚法と相手のデッキを事前に知ってる上での展開であって、エクシーズ限定で僕に勝つ暗斎は相当エクシーズ召喚に精通してると言える。「
他の召喚法は教えて良いものか迷いはしたが……コイツなら言っておけば他の奴に無闇に教えたりはしないと思う。それに…どこまで他の召喚法を使いこなせるか気になるところだし
「とりあえず何のカードを使いたい?調整しながらとっとと作り上げるぞ」
「う〜ん……」
カードケースを開けて束を弄る。暗斎はカードを見ながら悩み、デッキを見ながら悩み……を繰り返している。「串刺しの落とし穴」「ジャンク・シンクロン」「エクシーズ・シフト」「
そういや「ヴェルズ」に組み込むのかな…?でも「ヴェルズ」と組み合わせの良いカテゴリなんてないだろうしなぁ…
「師匠!このカードとかどうでしょう…?」
「うん?なんのカー……」
………えっ?
「これ…俺の「ヴェルズ」に組み込んでみたいんですよ…「ケルキオン」とか「サンダーバード」を主軸にして…」
「ちょ、ちょっと待て!」
カバンに手を突っ込み暗斎が指定した
…………
「……これ結構ヤバいな…」
感嘆の声しか出なかった。むしろかなり戦慄してる。これ思ってたよりシナジー良いぞ…。特殊召喚を殆ど行わないからこっちの展開に支障は出ないし、展開しながら除去したり後続を出したり……なにより
……ただ問題があるとすれば…
「…良いのか?このカードってお前らの…」
「大丈夫ですよ」
割り込んだ声で黙ってしまった。聞いておいたほうがいい…何故か、そう思った
「せっかく師匠が教えてくれたんです、俺は頑張って使いこなしたいんです」
朗らかに笑って、暗斎はそう言った。暗に、「もう俺は気にしてない…」そう言ってるように聞こえた
その変化にまた顔を緩めてしまった。きっと今の僕の顔は、口元だけ笑みを浮かべていることだろう。なにそれ悪役
「そうか」
だから返事もこれだけにしておこう。それ以上は、なんか余計というか、恥ずかしいこと口走りそうな気がするから…
「…じゃあ作っていくか。基本的に出すのは「これ」、なんだよな?」
「はい。「それ」と「オピオン」も出して徐々に相手を削っていくようにしようかと…」
「あぁ、やっぱそういう…。お前えげつねぇよ…こんな布陣建てらてたら、ホントモンスター以外しか対処の方法が……」
「風斗さ〜ん、すみません遅れてしまって〜!」
音のもとへ振り向くと、いつもの特徴的な黄色の癖っ毛が目に映った
「3分くらい誤差範囲だろ…何かあったのか?」
「いえ、単に部屋を片付けていただけですが…」
「そうか」
場所はいつもの小型アリーナ…相変わらず客席に結構人がいるが、その中央で、暗斎と一緒に話しながら半田を待っていた
「…ところで、1つ聞きたいのですが…」
「なに?」
「あなたの手に持っているそれは…」
「お菓子」
なに言ってんだコイツ?そう思いながら自身のぶら下げた左手の
「いや、それは分かってますよ…。分からないのは今からデュエルするのになんでそんなものを…」
「それはだな」
隣の暗斎の後ろに近寄り、肩をポンッと置く
「お前が相手してもらうのは我が弟子だからだ」
「え…えぇッ?!」
「ハハハ…どうも…」
苦笑いしながら挨拶する暗斎だが、それでも驚きからまだ抜け出せていない半田。そうそう、こういう顔が見たかった
「えっと、風斗さんが相手じゃなかったんですか?」
「そもそも僕明日デュエル出来る?としか聞いてないが?」
しっかり対戦相手のことを濁らせているから嘘はついてないよ!…詐欺師の常套手段みてえだな、これ
「えぇ…確かにそうですけど…」
「まぁ、デッキ調整はホントの話だから、相手してやってくんない?僕だけだと面白みもないだろうし」
「…ハァ、分かりましたよ。暗斎くん、よろしくお願いします」
「はい!こちらもよろしくお願いします!」
なんだかんだ言いながらしっかり相手してくれる半田。やっぱこいついい奴だな…断れない奴というか、お人好しというか。…僕も似たようなもんか
「あぁそうだ、間違っても手加減とか止めといたほうがいいぞ半田」
「え…?いや、あなたに勝てる相手に手加減とか出来ませんよ…」
いや、そういう意味じゃない。ホントにえげつないんだよ…ホントに…
「…頑張れよ、半田。骨は拾ってやる」
「なんですかその哀愁漂う頑張れは?!一体どんなデッキを作らせたんですか?!」
「じゃな、運が良ければ勝てると思うから」
除去系カードとか引ければな…。精いっぱいのエール(微量)を送って、横から2人の対戦が見れる観客席へ
「なにしてるの…?」
「いや、身体がどれほど鍛えられたかの確認を…あの、瑠璃さん?顔が怖いですよ?」
「昨日無茶しないように…って、言ったわよね?」
「待って!僕が悪かった!次から気をつけるから!」
必死に許してもらおうとリーマンもびっくりの平謝りを披露する。怒った瑠璃がマジで怖すぎる!
そう謝り倒すとなんとか抑えて席に座ってくれた。瑠璃…恐ろしい子…!そう思っていたらなんかジロッと横目で見られた。なに?僕の考えは分かるの?エスパーなのこの子?…女って怖ぇ…
まぁそんな茶番を繰り広げながらも席に着き、ティッシュ箱を脇に置きながらポテチのり塩を開ける。オレンジジュースもちゃんと持ってきてる
「用意周到ね…」
「弟子初の晴れ舞台みたいなもんだからな」
「お菓子片手で言うセリフじゃないわよ…」
「まぁまぁ、そろそろ始まるみたいだ。…しっかり見とけよ?今のあいつのデッキ、ホントに恐ろしいぞ」
「「デュエル!!」」
暗斎 迅 LP4000 手札 5枚
VS
半田 光磁 LP4000 手札 5枚
先行は…半田が先か
「先行は僕です!モンスターをセット!カードを1枚セットしてターンエンド!」
2枚のカードが場にセットされ、うちセットモンスターは裏側共通の紫の球体にキツめの目がついた何かがデフォルメされて浮かび上がった。半田のデッキは相手がモンスター並べた時に展開するタイプだからな…。さて、暗斎はどう動くか…
暗斎 迅 LP4000 手札 5枚
VS
半田 光磁 LP4000 手札 3枚
セットモンスター
伏せカード 1枚
「俺のターン!ドロー!…俺はモンスターをセット!カードを3枚伏せてターンエンド!」
暗斎 迅 LP4000 手札 2枚
セットモンスター
伏せカード 3枚
VS
半田 光磁 LP4000 手札 3枚
セットモンスター
伏せカード 1枚
周囲のどよめきが聞こえる。おそらく初動がゆっくりな半田はともかく、「ヴェルズ」使いで知られてる暗斎までもモンスターをセットするとは思わなかったのだろう。「手札事故か?」などの声も聞こえる。不安なのか、瑠璃も話しかけてくる
「ねぇ、大丈夫なの?暗斎くんがセットモンスターなんて随分手札が悪いみたいだけど…」
「多分「オピオン」は出せたと思うぞ」
あいつが「オピオン」を出さなかったのは半田のモンスターによる反撃が怖かったんだろうな…。あと伏せが3枚の時点で、まぁあんまりよろしい手札とは言えないんだろうな
「じゃあなんで出さなかったの?」
「出して「侵略の汎発感染」持ってきても半田はエクシーズして相手をモンスターで弱体化させながらダメージを与えるのがデフォだからな。魔法・罠も殆ど展開補助や強化カードだから魔法・罠の効果を受けなくする「汎発感染」とは相性が悪いって判断したんだろうな…」
「なるほど…」
「あと」僕は言葉を繋ぐ
「「アレ」をする為には、「オピオン」は邪魔だからな」
「え…?」
瑠璃は疑問の声をあげるが、その直後に別の声が上書きしてきた
「僕のターンです!ドロー!セットモンスターの「
裏側表示が表になる。すると最初に目にした特徴は、電子盤などの作成に使う道具「はんだ付け」で出来た8つの脚。丸っこい電子器具の身体の尻についている丸みを帯びた針から電子の糸を吐き出し、地面に描かれた図面はなにかの電子盤設計図に見えた。丸い頭についた2つの青いネジの目は無機質の空を見、脚の関節を動かしながら、その小さい身体を少し揺らした
レベル3 ATK500
「
もっとも、カテゴリが少ないせいで最初は魔法・罠に頼っていたのだが、僕が他の良さげなモンスターを推薦した結果…展開が素早く安定性が上がり、展開したモンスターで弱体化したモンスターを貫通して速攻で倒す…というデッキになった。OCGでは若干火力が足りなかったが、この世界は4000ライフだから充分ワンキル圏内の強デッキの1つである
そして反転召喚したのが「ウェブソルダー」ってことは…
「そして手札から「
次に現れたのは電子盤にくっついた虫の繭。4つの穴から光が大きく漏れており、背中の巨大なネジの十字部位も光っていた
レベル3 ATK 0
2体の
「これは…」
「「
「ウェブソルダー」が、光の線を発射する。それは対象を脚を絡めとると、糸が絡まって無様にこけ、地面にひれ伏して動けなくなった。絡めとられた糸を解こうと必死にもがいている
……「ウェブソルダー」が
「……クフッ……」
相変わらず笑わずにはいられない光景だった
「…風斗、いつも笑っているけど、失礼でしょう…」
「プッ……いやだって…自分の脚に糸撃って…絡まってジタバタしてて…フフハ……」
瑠璃に冷たい目で見られているがそれくらいではこの笑いを抑えることなど出来ない
笑いのツボが他のみんなには分からないようだが、要はあれだ。トムとジェリーでトムがやられる姿を見て笑うのと一緒だ。……この世界じゃ誰も共感できねぇか…
「また笑っている…何が面白いんですかね…」
「すみません、また師匠が失礼なことを…」
「いいんですよ、暗斎くんは悪くありませんから…続けますよ?「
青い穴が現れ、そこから激しく電気の音を鳴らしながら大きめの蜂が飛来してきた
バチバチバチ
レベル3 DEF800
「レベル3の「
丸い何かが、転がってくる。横が広い輪っかにプロペラが入ったそれは電子盤に使われるラジエーターという放熱装置であり、よく見ればそれは転がってくるのではなかった。スカラベと呼ばれる6本脚の電子虫が4本の後ろ足で器用に転がしながら、虫のような鳴き声を電子音で表してきた
「エクシーズ召喚!出て下さい、ランク3!「
ランク3 ATK1800
「あーらら、先に出されちゃったか…ワンキルされなきゃ良いが…」
「スカラジエーター」か、エクシーズ素材のこともあるから多分効果使うか?それより「バチバチバチ」か…
「
電撃が弾く。すると緩慢な動きの「スカラジエーター」に電気が流れ、転がしてるラジエーターが徐々にブンブン回っていく。早くなるのそっちかよ
「そして「スカラジエーター」のモンスター効果!
「その効果にチェーンして、罠カード「ブレイクスルー・スキル」を「
「な…!」
「ブレイクスルー・スキル」から発する光が「スカラジエーター」を捉え、徐々に力を奪っていく
おー、最初にそれ引いてたのか。「スカラジエーター」にはエクシーズ素材を2つ使ってモンスターの表示形式を変更して効果をターン終了時まで無効にする効果があったからな。僕の予想が正しければ伏せモンスターは
「う〜ん、してやられました…けど!「
「コクーンデンサ」の穴から光の球が4つ浮かんでくる。それらが合わさると大きく形を変えてゆき、それは「バチバチバチ」に姿を変えた
バチバチバチ
レベル3 ATK800
「レベル3の「
2匹の虫が光球となると銀河のような渦に入り込み、そこから爆発が生じ…20の数字が浮かび上がる
「出て下さい、「
現れるは、鈍く輝く銀色が特徴な巨大蟻。しかし蟻らしい6本脚ではなく、身体を支える為の鮮やかな紫色の大きな2本の逆足型の後ろ脚、バランスを整える為にあるだろう2本の前脚。威圧的で刺々しい頭には恐怖を煽るルビーのように赤く光る眼、そして2枚の刃のようにギラギラと反射している翅の右側には、少し途切れて…しかし本能で理解できる黄色の「20」が刻まれていた
「エクシーズ召喚!ランク3!「
不快な金属音の羽音を響かせながら、「ブリリアント」は口元をカチカチと鳴らし、その身体を反射させた
ランク3 ATK1800
「う…それがでたか…」
渋い表情で困惑する暗斎。実はレジスタンスの親しい人間…ユートたちいつもの4人には、「
…代わりにわかったことだが、僕のデュエルディスクは色々と違うところがあると分かった。まずモンスターの実体化、これは瓦礫撤去とかでまぁ察してはいたが……あくまで質量を持つだけなので怪我はあってもうっかり殺しちゃった、なんてことはないだろう。うっかりでもそんなことするつもりはない。そして多次元への移動、これも可能であった。スタンダードどころかアカデミアやシンクロ次元にも行けたりした。ただ、アカデミアには1人で乗り込む気はないし、シンクロ次元にも行く気は今はない。というか、出来るだけランサーズと一緒に行動したほうが何かと都合が良いのでその時まで融合次元にもシンクロ次元にも行きはしない。だったら何故スタンダードに行かないって?…正直に言えば、エクシーズ次元、もといレジスタンスにはかなり愛着みたいなのを持ってしまったから、移動するとしたらそれはユートたちと一緒に行動する時だ…それまでみんなは頑張って守るか
話が逸れたが、結局僕のディスクにはカード化以外はアカデミアと同じディスクと言えよう。ユートたちがスタンダードに行くためには赤馬零児の情報を自然に手に入れた状態でスタンダードに行かないとな……いつかは話さないとな
「
これは…暗斎どうするかな?もう2枚のうち1枚も「ブレイクスルー」か…?
「…ッ!リバースカード発動!「堕ち影の蠢き」!」
「「堕ち影の蠢き」…?」
おぉ、「蠢き」伏せてたか。これは動くな
「この効果で、俺はデッキから「シャドール」カード、「シャドール・ドラゴン」を墓地に送る!その後、俺のセットされている「シャドール」モンスターを任意の数表側表示に出来る!「シャドール・ヘッジホッグ」を表に!」
「モンスターを表側に…効果を使えないところを防いでたところから見て、リバースモンスター?」
裏側のカードが表になると、体色も細い針も影と闇で染まったハリネズミが現れる。鼻をスンスンしながら防御態勢をとる
シャドール・ヘッジホッグ
レベル3 DEF200
「「シャドール」…?風斗、あれがあなたの言っていた…?」
「うん、1ターンに1度、リバースか効果で墓地に送られた場合に効果を発動するカード群」
あの「シャドール」である。墓地アドと手札アドと場アドとりまくる元環境トップで、現在も他のデッキへの出張パーツが多く…
「墓地に送られた「シャドール・ドラゴン」の効果を半田さんのの伏せカードを対象に発動!チェーンして「シャドール・ヘッジホッグ」のリバース効果発動!デッキから「シャドール」と名のついた魔法・罠を手札に加える!効果で俺はデッキから……」
デッキからカードを加える。それは影に包まれた邪悪じみた2体のモンスターが渦に飲み込まれる絵柄が描かれたカード
「……魔法カード「
「「
…我らが怨敵、アカデミアを主張する融合召喚をする為のカードであった
「ッ?!もしかして風斗!」
「うん、教えたよ。融合召喚」
『融合?!』
『もしかして融合召喚するの!?』
『白星さんの弟子とは聞いてるけど、まさか教えてもらったのか?!』
瑠璃はすごく戸惑って、動揺を隠せていなかった。周りのレジスタンスメンバーはもっと動揺していた。いや、どちらかといえば暗斎が融合を使うことよりも、僕が他の召喚法を教えたことに驚きを隠せないといったところか…。まぁ散々ダメって言ってきたから当然か
「「シャドール・ドラゴン」の効果!対象の魔法・罠を破壊する!」
「ウワッ!」
どこからともなく糸が現れ、それが半田のリバースカードを吊り上げる。そのカードは「砂塵のバリア–ダストフォース」という罠であり、数秒後に無数の破片となり散り砕けた
「ダストフォース」か、あいつのデッキにはエクシーズ素材になったらそのエクシーズモンスターに守備モンスターを1回ずつ攻撃できる効果をつけれる「
「罠カードが割られましたか…。しかしターンを終わらせる気はさらさらありません!「
『シャアアァーーーーッ!!』
虫特有の反響する声を巨大蟻が発する。すると激しい光が一瞬だけアリーナを白に染め、それが収まると「ブリリアント」と「スカラジエーター」は少しだが点滅するように発光していた
ランク3 ATK2100
ランク3 ATK2100
「バトル!「
「ブリリアント」は羽音をさらに大きく鳴らし、宙を飛び小さなハリネズミに接近する。その翅は次第に炎を纏い、2枚の赤い鋼が「シャドール・ヘッジホッグ」を肉薄にした。光属性なのに炎攻撃とはこれいかに
貫通効果…守備表示だろうとプレイヤーにダメージを与えられる効果は、熱風の余波で暗斎のライフを減らしていた。これでワンキル圏内だ。どうなる…?
暗斎 迅 LP2100 手札 3枚
「う…」
「「
「スカラジエーター」が、放熱器を勢いよくキックする。するとそれは熱を帯び、火の車となって暗斎を襲う。だから属性ェ…
「ダメージ計算時に「ガード・ブロック」発動!その戦闘ダメージを0にする!」
しかし薄い黄色の透明の障壁に阻まれ、「スカラジエーター」の攻撃は通らなかった。ギリギリ助かったか
「その後、カードを1枚ドロー!」
「防がれましたか…。僕はカードを1枚伏せてターンを終了します」
暗斎 迅 LP2100 手札 4枚
VS
半田 光磁 LP4000 手札 1枚
ランク3 ATK2100
ランク3 ATK2100
「俺のターン!ドロー!」
さて、先制パンチは貰ったわけだが…まぁ後手に回ること前提のデッキだから特に問題はないかな。「
「「手札抹殺」を発動!お互いに手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローする!俺は4枚捨て4枚ドロー!」
「せっかくサーチした「
「カード効果で墓地に送られた場合、墓地の「
うまい、「
「すごい…「融合」カードを手札に残した状態を維持して手札交換するなんて…」
「「シャドール」のアドも凄まじいが、たった一晩で使いこなしてるあいつも大概なんだよなぁ…」
いや本当に、僕よりずっとうまく「シャドール」を使いこなしてるよ。瑠璃の呟きに続けて、僕も賞賛の言葉を出す。だけどなんか、嬉しい反面ヘコむなぁ…すぐ追い抜かれそうだよ…
「そして「
とうとう使用される「
「そして、相手の場にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる時、デッキのモンスターを融合素材にできる!」
「な…?!」
そう、デッキ融合である。暗斎を弟子に取るかどうかのデュエルの時にも「インフェルノイド」で使った、一時期環境トップに君臨させた凶悪効果。瑠璃や半田は目を見開いてはいるがそこまで驚いてはいない。1度見たことがある以上、驚きもそれほど大きくはないのだろう
…まぁ、知らないレジスタンスメンバーの諸君はザワザワさせながらとっても驚いているけど
「俺はデッキの「シャドール・ヘッジホッグ」と闇属性の「ヴェルズ・サンダーバード」で、融合!」
デッキから墓地に送られたハリネズミと暗黒の雷鳥が闇に飲まれ…1つに重なる。それは、新たな「影」の誕生であった
「運命をも操りし闇の糸よ!影と闇を1つに束ね、新たな影を浮き上がらせろ!」
その「影」は、2つで1つだった。紫の陰りに身を染めた四肢二翼の小型の竜、その上に乗っている長い緑髪を後ろで1つにまとめた少女はその右手に禍々しい杖が握られおり、その2体の目は閉じられている。しかし次の瞬間、頭上から闇の糸がそれぞれの手、足の甲に侵食し、その心を縛り付けた。唐突に開かれたドラゴンの眼は正気を失っており、薄く開けられた少女の目はハイライトをなくし、とても虚ろに前を見据えた
「融合召喚!浮き上がれ、レベル5!「エルシャドール・ミドラーシュ」!」
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
「融合素材として墓地に送られた「シャドール・ヘッジホッグ」のモンスター効果!デッキから「シャドール」モンスターを手札に加える!「シャドール・ビースト」を手札に!」
「まさか風斗さん以外にも融合召喚を使う人が僕たちの中から出てくるなんて…」
まあねぇ。ユートたちはエクシーズの代表みたいなもんだから他の召喚法は使わせれないし(黒咲は使いたがらないだろうし)半田のデッキはどの召喚法混ぜ込めばいいかハッキリ言って分からないし…1番の理由としては、弟子っつー免罪符みたいなのがある暗斎が1番教えやすい立場だった、ってところかな?
それよりも「ミドラーシュ」が出たぞ…手札抹殺したし、墓地にあれ落ちてたらそろそろくるかもな…
「さらに俺は「ヴェルズ・ケルキオン」を召喚!」
ヴェルズ・ケルキオン
レベル4 ATK1600
「「ヴェルズ・ケルキオン」の効果!墓地の「ヴェルズ・カストル」をゲームから除外して「ヴェルズ・サンダーバード」を手札に!そしてこの効果を適用したターン、俺はもう1度だけ「ヴェルズ」を召喚できる!「ヴェルズ・サンダーバード」を召喚!」
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
「え…?もしかして…!?」
「レベル4の「ヴェルズ・ケルキオン」と「ヴェルズ・サンダーバード」で、オーバーレイ!暗黒に染まりし竜よ!その闇を力に、黒く冷たい翼を広げよ!」
暗斎の言葉通りその薄い青の翼膜を広げ現れたのは、レベル5以上のモンスターの召喚を制限させる漆黒の竜
「エクシーズ召喚!出てこい、ランク4!「ヴェルズ・オピオン」!」
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
「エクシーズ召喚までぇ…、やっぱり「ヴェルズ」に混ぜたデッキでしたか……」
その顔はやっぱり、といった確信に変わった表情であった。多分半田の中でデッキ内容に当たりをつけていたのだろう、デッキ内容は「ヴェルズ」に「シャドール」を加えたデッキなのではないか、と……。そしてその予想は半分正解である
暗斎の新しいデッキは「シャドール・ヴェルズロック」といったデッキと言える。予想が半分、なのはどちらかと言えば暗斎のデッキは「
そして、あのデッキのどの辺が恐ろしいのかというと…
「「エルシャドール・ミドラーシュ」が場にいる限り、お互いモンスターを1ターンに1度しか特殊召喚できない!そして「ヴェルズ・オピオン」が場にいる限り、お互いレベル5以上のモンスターは特殊召喚できない!」
「…………え?」
そう、これが先ほどから言ってた「アレ」であり、世にも恐ろしい悪夢の布陣である。「ミドラーシュ」はモンスターを1ターンで複数回特殊召喚して素材を揃える必要があるシンクロ・エクシーズ召喚の天敵といったカード。中級のステータスとはいえ、特殊召喚を1度しか行えないのは「
なんということでしょう!お互いにレベル5以上の特殊召喚できなくなり、その特殊召喚自体も1ターンに1度しか行えないフィールドが出来上がったではありませんか!オマケと言わんばかりにこちらの「ヴェルズ」は「ケルキオン」や「カストル」などの通常召喚増加型のモンスターを主軸にしているのでエクシーズは何の問題もなく展開出来ちゃうわけですよ!…フルモンスターとかだったら本当にどうしようもできないデッキというわけである。効果破壊しようにも「オピオン」は「汎発感染」で魔法・罠は凌げるし、「ミドラーシュ」に至っては素で破壊耐性あるし
けど別に突破手段がないわけではなく、普通に「ブレイクスルー・スキル」や「禁じられし聖槍」、「スキルドレイン」とかで一旦効果を止めてから一気に展開すれば打点はそこそこ止まりだから突破も容易だし、攻略自体はわりかし簡単なものだ、フレシアダークロウとはわけが違う
けど、そんな考えに至る奴はこの世界には殆ど居ないだろうし、やったとしても「シャドール」の再生力や「ヴェルズ」の後続を残す力ではすぐ元に戻るから、正直OCGではネタ止まりで通用しなくてもこの世界じゃ充分過ぎる鬼畜デッキである
「……えぇぇぇーーーッ?!」
ようやくこの恐怖を認識したのか、半田の顔は青ざめている。その髪の色より深く青ざめ、歯は面白いくらいカチカチ鳴らしている。…なんかトラウマ刻まれてそうだけど大丈夫かな?ポテチをパリパリ食いながら呑気に考える
「おーい半田アァーーー!!気ぃしっかり持てーーー!!」
これで半田がデュエルできなくなったら僕も嫌だし戦力低下も痛いので本気で応援する。すると涙目でこっちを見て大声で僕に文句を言う
「何なんですかコレェ!?聞いてないですよォ!?本当に何なんですかァーーーッ!?」
「……いや、ホントゴメン…」
思いの外悲痛な叫びに罪悪感が湧いてきた。流石に可哀想だったので後で何かあげようと思ったくらい。なにかアフターケアもしねぇとな
「…ゴメンなさい…これも勝負なんで……。…「ヴェルズ・オピオン」の効果発動!
「オピオン」が繰り出した凍てつく青が一直線に「ブリリアント」に伸び、命中したらそのまま威力を上げていく。鋼鉄の身体も内側まで冷気が侵食して亀裂が胴体から入っていき、それが翅の「20」まで届くと…そこから爆発し砕け散らせた
暗斎 迅 LP2100 手札 6枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
VS
半田 光磁 LP3550 手札 1枚
ランク3 ATK2100
「うわっ!」
「「エルシャドール・ミドラーシュ」で「
「ミドラーシュ」のドラゴンは口に力を込めて、少女は呪文を唱えて、2つの紫炎の球を創り上げ…やがて出来上がったそれを少女の合図とともに放つ。そして途中で歪に形を変えながら…合わさってより巨大な炎球のそれは紫の陽炎をゆらゆら揺らしながら、「スカラジエーター」に直撃する。耐え難い高熱に身体の電子機器を、回線を、放熱装置を溶かしながら……「スカラジエーター」は光の粒へとなり消えた
暗斎 迅 LP2100 手札 6枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
VS
半田 光磁 LP3450 手札 1枚
「熱っ!…〜ッ!」
「メイン2、俺はカードを2枚伏せてターンエンド!」
暗斎 迅 LP2100 手札 4枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
伏せカード 2枚
VS
半田 光磁 LP3450 手札 1枚
「僕のターン!…うぅ、あれだけフィールドを整えてこっちも妨害してるのに、何であんなに手札があるんですか…?これがアドという奴なのですか…?」
いや、それに関しては「シャドール」がキチガイ過ぎると言っておく
「…僕は「
手札から召喚された「コクーンデンサ」と、再び墓地から舞い戻った「バチバチバチ」。…今日の過労死枠は「バチバチバチ」かな?心なしか「バチバチバチ」の顔色が心労で疲れてるように見えたし
レベル3 DEF2000
バチバチバチ
レベル3 DEF800
しかしこれで特殊召喚はもうしたから…守備に徹するといったところか?展開できるとはいえ、そもそも「ヴェルズ」は大量展開型のデッキじゃないし、「オピオン」の効果で「エルシャドール」たちの召喚も制限されてるし……暗斎の今後の課題だなこりゃ
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
「エンド時に「サイクロン」発動!セットカードを破壊!」
「…ターン……エンド……」
無慈悲にもほどがある。破壊されたの「ダスト・フォース」だし
いや、確かにエンドサイクロンを教えたのは僕だし僕だってこれ以上に蹂躙するようなデュエルしたけど(アカデミア限定で)、流石にこれはご無体過ぎる。半田完全に諦めモードだし隣で瑠璃は「可哀想な光磁…」とかなんか小鳥が乗り移ってるし周りはお通夜のように静まりかえってるし、色々とカオス過ぎた。身内内ではこういうの控えるようにしよ…控えさせるようにもしよ……
暗斎 迅 LP2100 手札 4枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
伏せカード 1枚
VS
半田 光磁 LP3450 手札 0枚
レベル3 DEF2000
バチバチバチ
レベル3 DEF800
「俺のターン!手札から「ヴェルズ・サンダーバード」召喚!そして「愚かな埋葬」を発動!効果でデッキから「シャドール・ハウンド」を墓地に!効果で墓地に送られた「シャドール・ハウンド」の効果発動!フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する!「コクーンデンサ」を攻撃表示に!」
暗斎 迅 LP2100 手札 3枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
伏せカード 1枚
VS
半田 光磁 LP3450 手札 0枚
レベル3 ATK 0
バチバチバチ
レベル3 DEF800
あ、終わったわこれ
「バトル!「ヴェルズ・サンダーバード」で「バチバチバチ」を攻撃!」
「サンダーバード」が「バチバチバチ」に近づく。蜂の方はやられまいと必死で電気を放ちながら突進しているが、電気に耐性があり4、5倍は体格に差がある雷鳥からすればまさに虫の抵抗だった。一息で「バチバチバチ」を口に入れ、咀嚼し飲み込んだ。弱肉強食の厳しさを垣間見た瞬間であった
暗斎 迅 LP2100 手札 3枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
伏せカード 1枚
VS
半田 光磁 LP3450 手札 0枚
レベル3 ATK 0
「「ヴェルズ・オピオン」で「
「オピオン」は下を向き冷気のレーザーを吐き出す。そして顔を上げ、縦一線にレーザーで「コクーンデンサ」を一閃した。縦斜めの線から徐々に身体を凍らせて回路をショートさせる。そしてそのまま電子の繭は崩れ落ちて消えていった
暗斎 迅 LP2100 手札 3枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
伏せカード 1枚
VS
半田 光磁 LP900 手札 0枚
「わぁッ!」
「これでトドメ!「エルシャドール・ミドラーシュ」でダイレクトアタック!」
既に準備していたのか、ダイレクトアタックの言葉と共に2つの炎球が半田に迫る。二重螺旋を織り込みながら、覆い尽くす業火の球になった瞬間…半田に直撃し紫の火柱が上がった
「ウワアアアァァァーーーーーーーッ!!!」
暗斎 迅 LP2100 手札 3枚
エルシャドール・ミドラーシュ
レベル5 ATK2200
ヴェルズ・オピオン
ランク4 ATK2550
ヴェルズ・サンダーバード
レベル4 ATK1650
伏せカード 1枚
VS
半田 光磁 LP 0 手札 0枚
半田の断末魔に、瑠璃は両手で口を押さえた。僕も片手で口を押さえた。僕は心の中で半田に謝罪した……笑いそうな口を押さえながら
(ゴメン、イワークって聞こえた…ッ!)
思いもよらないギャグに、彼の元に行くのに1分程遅れてしまった
「おーい、半田ァ、大丈夫かぁ?」
「…はい、なんとか……」
仰向けに倒れている半田に近づく。目はハイライトを取り戻しており、さっきの負のオーラみたいなのも感じない。…うん元の半田に戻ってるな
「風斗さん、何なんですかあのコンボは?酷いなんてもんじゃありませんよ?あんなのがあなたの世界では常識なんですか?」
「あー、あれか…まぁ確かにやられたらキツいんだが正直全然どうにでもなるんだよなぁ〜まだ。僕のところじゃ最悪魔法も罠もモンスター効果も発動できない状況とかザラだからなぁ…」
「…1ターンでですか?」
「1ターンで」
「なにそれ怖い」と言いながらまたぶっ倒れた。気持ちは分かるが向こうじゃ
「師匠!やりました!」
「…おぉ、暗斎。なかなか鬼畜めいてたぞ、流石僕の弟子」
「それって褒めてるんですか…?」
「褒めてる褒めてる。ほら行くぞ、ぶっ倒れてる半田を運ぶんだから、お前ポテチ持っといて」
「まだ持ってたんですか…?」
呆れてる弟子を横目に半田を前に抱える…俗に言うお姫様抱っこという持ち方だが、僕からすれば少し重い以外は子供な奴、それも男を運ぶだけなのだから特に思うことはない
「……むぅ……」
だと言うのにお隣のお嬢様はお気に召さないご様子だった
「…なに?」
「…別に、何でもないわ……」
いやいや、半田を持ち上げた途端に急に小さく頬を膨らませて睨み始めたように見えたんですけど?可愛い
もう、分からん。最近の瑠璃は訳の分からない理由で怒ることが多い気がする。今は考えてもラチがあかないので、とりあえず半田を医務室に運ぶ為訓練所から外に出た
でも一応気になるので瑠璃の怒る理由を考えたが……考えたが……
「…僕なんかしたかなぁ……?」
個人的な悩みは、誰にも届かず空に溶けた
評価凄い…重い…けどとっても嬉しいです!こんな暇つぶしと気まぐれで書いた小説ですが、これからも読んでいただけると喜ばしい限りです!
少し瑠璃との関係を書いてみましたけどなかなかうまく書けない…グググッ!ラブコメって難しい…!
時間を掛けたら一気に関係は進展しそうなんですけどいかんせん、主人公が妹のように可愛がってんのとこの先の主人公の展開を考えたら慎重に仲は進めないといけないんですよね…
次はお菓子大好きな彼登場!?デュエルスタンバイ!