面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
思わず触発されて一気に書き上げちゃいました。けどスターヴヴェノムの出番はまだなし、無慈悲!
では変わり始める第7話ドーゾ!
※今回はデュエルあっさり終わります。ご了承ください
「ーッ!」
「フッ!」
拳が、躱される。空振った右腕を防御のためすぐ戻して後ろに傾きながら距離をとるが、黒咲の放った回し蹴りはもう僕の左のこめかみを捉えている。彼我までの距離は5センチ…4センチ…3センチ……回避も防御も不可能
「フンッ!」
だから頭突きで迎撃する。こめかみの位置にデコを移動させ、目を閉じ歯を食いしばり、力一杯足のくるぶし辺りに打ち付けた。鈍い痛みと共に頭を仰け反らせてしまった
「ーーッ!?」
だが予想外の反撃だったのか、大きく体制を崩したのは向こうも同じだった。この機会の逃したらもうない、やるなら今!特に考えもなくそう思った僕は、反動で上がった左足を強く踏みしめその左脇腹に渾身のハイキックをかます。とったーーー……!!
「ぅえッつぅ?!」
だがとれなかった。黒咲が左肘を僕の右足に叩き下ろしたせいで、痛みと衝撃で足をそのまま地面に着地せざるおえなくなったのだ。おかげで一瞬痛みに悶絶してしまった
「グワェ!?」
そしてその一瞬を突かれて腹にチョップ…というより手刀を打ち込まれ、小さく後ろに吹っ飛んだ。強烈な衝撃と共に肺から空気を出せるだけ吐き出して、ズザザザと背中を擦りながらも息をしたあたりで無理矢理身体を起こし掌を正面に向けてストップ!のサインを出す。目の前にはこちらに近づく態勢をとった黒咲
「…ハァー……ハァー……待った…!…ハァー……降参…ハァー……スタミナ的に…もう無理……ハァー……ハァー……」
「……なら、今日はこれで終わりにする」
黒咲のその宣告と共に、僕は身体を勢いよく仰向けに倒した
「フゥーー……また負けたか。名前は白星なのに黒星ばっかついてるんだけど……」
「やはり体力が俺たちの中で1番にないな、お前は。体術だけならば充分だが…」
「充分過ぎる、の間違いだろうが。生身の戦闘でお前と拮抗できんのはユートと僕くらいだぞ…」
体力があれば、の話だけど…。そんな致命的だが僕からすればわりかしどうでもいいことを考えながら、黒咲と戦闘訓練の感想を述べあっていた
「やはり俺の戦い方は風斗の戦い方とは合わんな」
「耐え忍んで一気に殲滅するって奴か?確かに僕には合わん。つーかそもそも戦闘訓練なんざ2ヶ月前に始めたばっかなんだぞ、どんな戦い方をしているか分からん」
「攻撃の手法はメチャクチャだが、基本的には攻撃を極力回避して隙を見つければそこを突いて一気に叩くといったところか」
「……それって黒咲とあんまり違わなくね?」
「似ているようで違う。俺の場合は耐えてからの攻撃だが、お前は1度攻撃すればもう敵に反撃の隙も与えようとせず倒す。ダメージを受けても躊躇しないところを見ると、すぐにケリをつけようと考えているのではないか?」
あぁ、それは何となくだが分かる。きっと自分のスタミナの無さが原因で無意識に短期決戦を試みるのかもしれない。攻撃の回避も、きっと攻撃を受ける際の体力を温存しているのだろう。前世でもモンハンとか最後の攻撃の時は2落ちも辞さなかったし、遊戯王もだいたい速攻で終わらせるデッキばっかだし……
「…まぁ体力に関しては順調につけていくしかないだろ。もう少し体力に余裕が出ればお前への勝率も少しは上がるかもな…」
ちなみに現在黒咲とのリアルファイトの勝率は3割、といったところである。僕と戦ってる奴がこの先のシンクロ次元編で看守たち相手に無双していたのを考えれば、前のインドアな時とは比べ物にならないくらい強くなっていると思う。お前本当にそれで中学生かよ…
「…………」
「…………」
……僕たち以外誰もいないな……?
「……なぁ黒咲」
「なんだ?」
「結構大事な話があんだよ。瑠璃のことなんだけど」
「なに?」
いつもならユートか瑠璃、半田に暗斎と誰かがいるのだが、今日はみんな別々に用事があるのか誰もいない。他にもそんな日はあったがだいたいが倒れ伏して話せなかったのと…単純に話しづらかったという理由で、これまで話す機会がなかった
だけど今が原作開始からどれくらい前で、いつ瑠璃がユーリ…融合次元の遊矢やユートに似た男に攫われるか分からない以上、全力でそれを回避する必要がある。その為には僕だけでは力不足だが、黒咲と協力して警戒すれば誘拐されることがなくなるかもしれない
しかしどうやって説得する?相手はあの黒咲、曖昧な理由ではバッサリ切り捨てられるだろう。かと言って途中までの未来を話すわけにはいかない(信じてもらえない可能性大)
ならばどうするか?…そういうのを全部除外した上での疑問を黒咲にぶつけるふりをする
「瑠璃に何かあったのか?」
「いや、なんていうかただの疑問なんだが、僕がここに来る際に瑠璃を助けた話は覚えてるか?」
「オベリスクフォース3人と戦ったことか?」
「うんそう、それ。その際に襲われた状況を聞いたんだけど……あとで考えてみたら奇妙なんだよ」
「奇妙だと…?」
そう、実は瑠璃に初めて会ったあの日、レジスタンスのこととはまた別でオベリスクフォースに追いかけられた話も聞いていたのだが……そのあとで難民のみんなから聞いたことと比べるとどうもおかしい点があるのだ
「あの時は僕も出くわさなかったけど、どうも僕が戦った3人の他にもかなりの人数がいたって言っていたんだよ。おかしくないか?たかが1人の女の子をそれだけの大所帯で追いかけるって」
そのおかしい点とは「人数」である。ただのアカデミア兵でさえ多対一(聞いた話では)でエクシーズ次元の
事情を何も知らなくてもエクシーズ次元のみんなはこう言うだろう、……おかしい、と
「…………」
僕の言葉に、黒咲は腕を組み思案する。それなりに筋は通ってると思うが、納得するかどうか……
「…お前は、何が言いたい…?」
腕組みを解き、その鋭い眼光でこちらを見る黒咲。その黄色いハイライトは、獲物を見定める鳥を彷彿させた
「…瑠璃が、何かしらの理由でアカデミアに狙われているのかもしれない」
「根拠は?」
「ない」
ここは嘘偽りなく正直に答えておく。実際に赤馬零王が瑠璃や柚子、リンやセレナを集めている理由が分からない以上、この質問は答えようがないのだから
「だけど、瑠璃がそれだけの人数に追われていたって事実がある以上、無視はできない」
思えば、あの時のオベリスクフォースは「ノルマ」とか言っていた。暇潰し感覚で人をカード化するような奴らがそれを「ノルマ」など言うだろうか?……思えばあれは、瑠璃をカード化する為じゃなくてどこかに跳ばそうとしたのかもしれない。例えば、
……とまぁ、こう言う理屈ならばきっと信じてくれるだろうけど…どうだろうかね…?
「だから僕はアカデミアの出方に注意を払ってみる。杞憂だったら僕が文句言われるだけで済むが、瑠璃がいなくなったらお前が何するか分からんからな。…で、黒咲はどうする?」
「…その話は、本当だろうな?」
「多人数に追われたってのは瑠璃に直接聞いたし、あとで聞いてみたら?」
当然心配掛けないように遠回しにだけど。まぁ黒咲のことだからその辺の意図は汲み取れるだろう
そこまで言うと、その瞳を黒咲は閉じた。何かを考えていたのか、少ししてから目を開け話しかけてきた
「このことは、ユートたちには…」
「言うつもりはない。言うにしても、先に兄のお前から言うのが筋ってもんだろ?」
僕は黒咲に背を向けてアリーナの外に出ようと歩き始める
「待て、どこへ行く気だ?」
「リハビリ兼ねて外に行ってくる。あとこの間からガキどもが甘いもんが食いたいとかうるせーから黙らせに行ってくる」
くるり、と上半身を軽くひねり後ろを向け、ドアノブに手を掛けながら僕は言う
「僕がこのことをお前に話したのは、お前があの子の兄貴だからだ。この話を他の奴に話したり、あの子を守るなり好きにすればいいけど、お前は兄貴なんだ。瑠璃を…妹を、絶対に守ってやれよ。僕も最善を尽くすから」
現在、ハートランドでそこそこ大きめのショッピングモール(イオンみたいな)で残骸を漁っている最中。暗斎からの子供達が食べれるお菓子を探してくれと相談を受けて、菓子コーナーを探しているところといったところだ
「……あーーもう!全っ然見つかんねーな!」
結構色んな場所をガサゴソと探し回っているのに、ロクなものが見つからない。既にバッグにはかなりの量の非常食や生活品を入れている。四次元ポケットもビックリな収納力だが、あいにくバッグの口の大きさという限界もあるので背中の大きめなリュックサックに入らないものを詰めている。そろそろ重さ的にも限界……
そもそもこの次元で侵略が起きてかなりの時が経っているから軒並み飴とかチョコとか溶けてんじゃね?つーか消費期限切れとかで食えなくね?…と最初に思ったのだがそこは未来都市、消費期限なぞなんのそのと言わんばかりに長持ちするらしい。それこそ非常食みたいに……見た目は前の僕がいた世界とは大差ないのに、凄いものである。かがくのちからってすげー
「…おっ?」
あまりの見つからなさに嘆いてふと足元を見てみると、大きめの包装袋に入った飴のお菓子を見つけた。拾って砂や埃を払う
「特に問題はなさそうだな…。それにこれがあるってことは、この辺が菓子コーナーってわけだ」
近くを探索してみると、瓦礫の下敷きになっている菓子を見つけた。半分くらいは潰れてて食えるもんじゃなかったが、それでも飴・チョコ・クッキーなど結構種類豊富に残っていた
「ふう…これだけあれば、当分は探しに行かずに済むな…」
それに位置を覚えれば今度からここに取りにこれば時間もかからない。元ショッピングモールなだけにたくさん残っているしな
そう思って安心できたので、早速グルグル巻きのキャンディに手を伸ばして……キャンディのビニール袋に
………ん?
おかしい。僕は片手で目の前の菓子を手に取ったはずだ、なぜ2箇所…それぞれ袋の端っこにシワで歪められる?…いや分かっている、きっともう1つの手が掴んだのだろう。僕とは違う、誰かの手が……
「……お前は……」
「へぇ、ボクを見ても逃げないんだ。流石といったところだね。でも、このお菓子はボクが貰うから離してくれない?」
紫雲院素良……ARC-V主要人物の1人にして、アカデミアの戦士が、僕の隣で悪戯が成功したように笑った
えぇー……ここでお前に出会っちゃう?…面倒くさいのに会っちゃったなぁー……。とりあえず何かされないうちに掴んでるキャンディの袋を離す。すると実に楽しそうに袋を開けて、大口でキャンディを口に含んだ。…さて、別の菓子を持ってくか…
「ちょっとー、無視しないでってば、ボク君に話しかけてんだよ。フードのお兄さん」
無視を決め込もうとしたが無駄だったでござる。…いや、まだ行けるはず、聞こえてないふりをして僕はバッグに菓子を次々に入れていく
「聞こえてないのー?お兄さんー?……聞こえてないのかなー……?」
無視無視。関わったってロクなことになら…
ふと、後ろから光が小さく身体を覆う。その何度か見たことのある光に悪寒が走り、紫雲院から咄嗟に距離をとる。ふと見た奴は腕のデュエルディスクを構えており、その顔はこちらを見定める目で口元は三日月型に歪んでいた
「……なんのつもりだ?こっちからしたらお前みたいな…それもガキとは関わりたくないんだよ……アカデミア兵」
精一杯の強がりを口にしてカバンのデッキを漁る
想像はつく、おそらくあの光は人をカード化する光だろう。アニメで何度も見た眩い紫色と一致するし、向こうからすればこっちは話しかけてるにも関わらず無視をする下等なエクシーズの人間…くらいの認識なんだろうなぁ多分。遊び気分でカード化したところでまた1人獲物が追加されただけ…って考えだろうよ敵さんは……
「今のを躱すか…。流石《サウザンド・フェイス》と呼ばれるだけはあるね」
「ちょっと待て、何だそれは」
なにその初代遊戯王で出てきそうな呼び名。信じられない異名の登場に戸惑いを隠せない僕は思わず紫雲院に尋ねてしまった
「アカデミアで呼ばれている君の名前だよ。フードのついた黒いコートを着た、顔を隠している正体不明の
「お前らのアレな頭のせいだろうが…!」
何だよ《サウザンド・フェイス》って!非常に厨二心くすぐられるけどもう僕は卒業したいんだよ厨二病!…カッコいいとか思ったけど!!思ったけどさ!!
「お前ら何なんだよ!?《サウザンド・フェイス》(笑)って呼ばれている僕に一体何のようなんだよ!?」
「逆に聞くけど何でそこまで取り乱しているのさ?」
ビックリの連続だからだろうがドチクショウがッ!!
アカデミアに言いようもない新しい怨嗟を抱いていると、急に紫雲院から質問された
「…君って、エクシーズ次元の人間じゃないよね?」
「ッ?!」
そう、僕の出生について核心をつく質問を投げられた。身体が逃げる本能を腕に、脚に、頭に伝達してくるが、理性で必死に抑える。大丈夫だ、問題ない。充分
「やっぱり…お兄さんって、アカデミアから逃げてきたの?」
これも想定内、まだ大丈夫。融合召喚に良い感情を持たないエクシーズの人間、と奴らが思っているなら当然の発想だ
「違う」
「ふーん、じゃあさ…」
まだ質問してくる紫雲院。これ以上される質問はないと思うが…、そう思っていた…
「お兄さん、アカデミアに来ない?」
そう思っていたから、次の質問…というか勧誘には、とても不意をつかれた
「オベリスクフォースをこの2ヶ月半の間に凄い数倒したんでしょ?融合召喚が使えるのにエクシーズ召喚なんて使ってたら弱くなっちゃうよ。ボクがプロフェッサーに言えば仲間に入れてくれるかもし…」
「断る」
有無も言わさずNOと答える。これだけじゃ足りないから更に畳み掛ける
「冗談じゃない、何だってあんな悪趣味な仮装してまで関係のない人間をカードにしなきゃならねぇんだよ。エクシーズ次元の方が融合次元よりずっとマシだね」
僕の言葉に紫雲院が一瞬だけ固まるが、すぐ元に戻るとその幼い顔と目つきからは想像もできない恐ろしい雰囲気を醸し出す
「なんで?エクシーズの連中なんてほっといても勝手に滅びるよ。なんでそんな奴らに肩入れするのさ?」
エクシーズの奴らに肩入れする理由?…どうやら勘違いしてるようだな
「何も分かってないから言っておくがな、僕は楽しいデュエルがしたいだけなんだよ。生死の分けたデュエルなんてどうやって楽しめっていうんだよ?そんなデュエルゴメンだ。だからそんなデュエルを強要するアカデミアは敵足り得るというわけだ」
デッキを左腕のディスクにセットする。同時に紫雲院に向かってそれを投擲する。しっかりキャッチした紫雲院はそれを見て顔をしかめた
「デュエルディスク?」
「エクシーズ次元製のだ。そいつでデュエルだ、カード化されるなんてたまったもんじゃねえからな」
「まさかカード化されるのが怖くてこれを渡したの?」
ディスクを受け取った紫雲院の顔はなんとも人を見下して汚物でも見るかのような視線だった。作中でも言ってた、本当の戦いに2度目はない!…って言いたいのか?だがお生憎様
「今からするのはただのデュエルだ。命も尊厳も賭けない、ただただ己の力と知恵と魂のぶつけ合いだ」
「ただの、デュエル…?」
首を傾げて、ピンとこない顔をしている。アカデミアは戦場で戦う戦士の養成所、デュエルは生死を賭けた戦い…そう刷り込まされたんだろうな。だからただのデュエルをする自分をイメージできないのだろう
だが、本来デュエルはそういうものだ。闇のゲームみたいに命懸けでやるなんてバカげてる、そんなデュエルはするわけにはいかない
「それに、お前には聞きたいこともあるからな」
これもディスクを取り上げる理由だ。アカデミア製のなら、敗北した瞬間すぐに強制転移され、融合次元に戻される。そういうことがないようにディスクを渡したというわけである。そういう意図は、向こうも察したみたいだ
「なるほど…そういうことか…」
「それで、どうする?やるのか?やらないのか?…やらないならこのまま帰らせてもらうぜ、ガキども待たせてんだよ」
「……良いよ、このディスクでやっても」
紫雲院は飴を咥えた口元を吊り上げると、デッキをセットしてディスクを展開し、こちらに向け獰猛な表情を浮かべた
「どうせエクシーズなんて使ってる奴なんかよりも、ボクの方がずっと強いからね!」
「…とりあえずデュエルはするが……」
その威圧を真正面から受け止めてデッキをディスクに差し込む。ディスクから赤いアーチが描かれると同時に、左の人差し指を紫雲院に突きつける
「お前に言っておくことがある。1つ、カード化が怖いと言ったな?当然だ、死は誰だって怖い」
中指を立てる。右手で5枚カードを手札に加えながら言葉を続ける
「2つ、デュエルは戦争の道具じゃねえ。己の全てをぶつけ合う、1種のコミュニケーションツールのようなもんだ。それをこのデュエルで証明する」
ディスクをつけた左腕の手にカードを持ち替え、右手で指を3本並べる
「そして3つ、…融合が強いだのエクシーズは弱いだの無駄なことを考えてたら勝てるもんも勝てない。それを…身をもって思い知らせてやる!」
「「デュエル!!」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
紫雲院 素良 LP4000 手札 5枚
ディスクに先行がどちらか表示される。素良……どうやら先行は向こうみたいだな
「ボクの先行!ボクは手札から「ファーニマル・ドッグ」を召喚!」
紫雲院が召喚したのは、背中に小さな白い羽を生やしたデフォルメされた犬のぬいぐるみ。アカデミア兵の「
……この段階までならな…
ファーニマル・ドッグ
レベル4 ATK1700
「「ファーニマル・ドッグ」が手札から召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「エッジインプ・シザー」あるいは「ファーニマル・ドッグ」以外の「ファーニマル」モンスターを手札に加える。ボクはデッキの「ファーニマル・オウル」を手札に加える!そして手札から、「融合」を発動!手札の「エッジインプ・チェーン」と「ファーニマル・シープ」で融合召喚!」
手札のチェーンが幾つも重なった鎖のバケモノと羊のぬいぐるみが、渦の中で混じり合う
「悪魔の爪よ!灼眼の目よ!神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!」
鎖が、ぬいぐるみの身体を引き裂き、貫き、蹂躙する。フサフサの皮からチェーンが突き出て、後ろには2つの丸ノコが鎖で持ち上げられ浮いている。手足の部位は丸ノコや釣り針で構成されており、開いた口からチェーンの歯を覗かせていてその大きなビーズの目は瞳孔が開ききっていた。そのぬいぐるみから生まれた魔物は元の可愛らしさなどどこにも見当たらないほど、恐ろしくグロテスクな造形だった
「融合召喚!現われ出ちゃえ!全てを封じる鎖のケダモノ!「デストーイ・チェーン・シープ」!!」
デストーイ・チェーン・シープ
レベル5 ATK2000
「うっわぁ…マジで出たよ。グロ注意グロ注意……」
「どう?これが本家の融合召喚、美しいでしょ」
これに美しさを見出せるのはシリアルキラーかセルゲイくらいだろうが!…あ、漫画版の黒咲でもいけるか
しかし本当にグロい。これは子供泣くわ、つーか漏らしてもおかしくねーよ。アニメ越しでもなかなかキツかったから、実際に、それも真正面で見ると結構くるものが…ウプッ。上がってきた…!喉元辛!
「ゴクッ!……ハァ、ハァ、ハァ……」
「フフン♪流石にこの融合召喚には緊張せずにいられないか」
いや違う、グロから来るものです。落ち着け落ち着け…他のことを考えて気を紛らわせ…。プラシドを思い出せ!ブックスを思い出せ!真ゲスを!黒咲を!無言の腹パンを!黒咲が大活躍していた!全て壊すんだ!…………!
「……フゥ…」
なんとか落ち着けた。ありがとう遊戯王のネタよ、黒咲よ、おかげでリバースせずにすんだよ……
「でもこれだけじゃないよ!手札から墓地に送られた「エッジインプ・チェーン」のモンスター効果発動!「デストーイ」カードをデッキから手札に加える。ボクはデッキから、「
「ッ!また融合か…」
「けどこのターンにはしないよ、する意味がないからね。僕はこれでターンエンド。さ、君のターンだよ」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
紫雲院 素良 LP4000 手札 3枚
デストーイ・チェーン・シープ
レベル5 ATK2000
ファーニマル・ドッグ
レベル4 ATK1700
しかし「チェーン・シープ」か…。確か戦闘・効果破壊時に1回だけ復活して攻撃力も800上げる、だっけ?だったらドロー次第では……
「僕のターン、ドロー!」
あ…魔法カード……
「…………」
「どうしたのさ?手札見たまま固まっちゃって。もしかして手札でも事故ったの?まさかあれだけカッコつけといと勝てないなんて言わないよね?」
「……いや…事故ってない…、むしろいい手札だ…。このターンでワンキルさせてもらうぞ」
事故率がほぼ無いようなガチデッキだから、ライフ4000のこの世界じゃ反則じみて強いんだよなぁ…。けど負けるのは癪だからOCGの深い虚無をたっぷり味わって死ね!(精神的に)
「…随分大きく出たけど、一体どうやってボクを倒すのさ?」
「こうすんだよ!僕は魔法「ヒーロー・アライブ」をライフコスト半分払って発動!デッキから「
颯爽と現れたのは、細い漆黒の鎧を着たヒーロー。鮮やかな長い青の髪と腰巻の前と後ろが流麗にたなびいており、その立ち姿には見ていてとても気高かった
白星 風斗 LP2000 手札 5枚
レベル4 ATK1000
「いきなりライフを半分も払うなんてね…。そして出したモンスターもたったの攻撃力1000…お兄さん、勝つ気あるの?」
「当然だ、こういうデッキなんだよ。特殊召喚された「シャドー・ミスト」のモンスター効果!デッキから「チェンジ」速攻魔法を手札に加える。「マスク・チェンジ」を手札に!」
「「マスク・チェンジ」…?」
胡散臭いものを見る顔が、意味不明といったものに変わる。その顔、すぐに恐怖で引きつらせてやる
「速攻魔法「マスク・チェンジ」!自分の「HERO」モンスターを対象に発動!対象は「シャドー・ミスト」!対象のカードを墓地に送り、墓地に送ったモンスターと同じ属性の「
紫雲院の表情が、瞳が、驚愕に染まる。それは信じられないといった、未知の出現によるものだった
「素材が1体で召喚できる融合モンスター?!そんなカードが…!?」
「変身しろ!「シャドー・ミスト」!」
「シャドー・ミスト」が、天高く跳躍する。突如闇が集まり、それが顔1つの大きさに凝縮されると、それは「シャドー・ミスト」の顔面を覆った。一瞬フラッシュし……そこから舞い降りたヒーローは別の姿をしていた
「悪を許さぬ孤高の英雄よ!闇の法で敵を裁き、己の正義を貫き通せ!」
その姿は、まさに孤高のダークヒーローといったものだった。闇に潜むような暗い黒のスーツ、両手には鋭い爪がつけられており、ライダースーツの胸部には孤独を主張する狼の顔が口を開かせていた。そしてその仮面も、同じく狼を形作っており、暗いオレンジの無機質な目を宙に滑らせた
「変身召喚!悪を踏みにじれ、レベル6!「
レベル6 ATK2400
「変身召喚…?!」
「便宜上つけただけで、実際はただの特殊召喚だがな。…だがどうだ、カッコいいだろ?」
やっぱ良いよね、ヒーロー物って。最近のやつは名前すらも知らないけど自分の中で1番印象に残ってるのは龍騎だな。ヒーロー同士の戦いとか色々とヤバかったなぁ…
…とりあえず「ダークロウ」の登場で狼狽えているが、この程度で終わりではない
「「増援」を発動!デッキのレベル4以下の戦士族をサーチする!「
風が大きく吹き荒び、それが渦を巻き中から青い筋骨隆々の肉体が竜巻の壁を突き抜けてくる。上半身の青いヒーロースーツは肩が出っ張っており、鉄の腰巻は銀色に輝いており、マスクは深い蒼のバイザーで表情が分からなかった。そして何よりも目立つのが、背中に2つのファンがつけられた大きな無機物の翼。それが万能ヒーローサーチマンと言われ、
レベル4 ATK1800
「「エアーマン」召喚・特殊召喚時に、2つの効果をどちらか選んで効果発動!僕はデッキから「HERO」モンスターを1枚サーチする!「
(リバースカードをこのタイミングで?それも4枚も……ブラフか?)
「手札が「
「エアーマン」の横に、右腕に大きな噴出機をつけ構えを取る男が出現する。深い蒼と柔らかい水色の服を着込んだ「バブルマン」は、酸素タンクらしきものを背負っていて、まさにそれは水のエキスパートといったものであった
レベル4 DEF1200
「僕はレベル4の「
その場に現れた立ち上がる者は、巨大な大剣を右手に握っていた。全てを萎縮させる紅い鎧を着たその戦士の、太身で少し短い剣を振り回す姿は堂々としており、彼は
「エクシーズ召喚!立ち上がれ、ランク4!「
ランク4 ATK2000
「!…エクシーズ召喚……だけど、攻撃力はたったの2000。エクシーズ召喚しなかった方がダメージが多かったんじゃないの?」
「ナメるなよ、先行1ターンで出してくる融合モンスターになんの警戒もしないと思ったのか?大まか耐性か蘇生効果でもあるんだろ?」
本当は「チェーン・シープ」がどんな効果かは知っているが、一応初対面だから大雑把に答えておこう。…まぁその効果も「ダークロウ」のせいで意味ないんだけど
「そこまでは考えてたんだ。でもどうやってワンキルするっていうのさ?」
少ししかめっ面をしたかと思ったら、すぐに余裕かました態度でこちらを見下す紫雲院。予想外が起きたものの、まだ僕が勝てると考えているな、あれは。確かに「チェーン・シープ」出した時点で結構返しのターンは厳しいものだろう……普通の奴なら。あいにく僕は普通とは大きくかけ離れた
「どうやらお前は、僕が融合を使うことを忘れてるみたいだな」
「なに…?」
「すぐに分かる!「
剣を空に掲げる。すると激しい雷鳴と共にエクスカリバーの剣に雷が落ちる。しかし雷はエクスカリバーを蝕まず、逆にその剣をより長く鋭利な形に昇華させる。ハイパーオーラ斬りだー!!
ランク4 ATK4000
「攻撃力ッ4000…!?」
「さらにリバースカードオープン!「ミラクル・フュージョン」!「
地面から暗い穴が開く。そこから風と水をそれぞれ司るヒーローが現れると、青とオレンジの渦に吸い込まれる
「墓地融合まで?!」
「風を吹き起こす英雄よ!水を操る英雄よ!今1つとなりて、絶対零度の嵐を巻き起こせ!」
氷山の一角が、地から突き上がる。その透明な氷は何かを閉じ込めており、氷塊が揺れるとヒビ割れ、破砕音と共に砕ける
閉じ込められていたのは、氷のような硬さと冷たさを持ったヒーロースーツに純白のマント。周囲に綺麗な雪を降り注ぐ力を持つ男は、見た目と能力とは打って変わった熱い声をあげた
「融合召喚!出ろ、レベル8!極寒のヒーロー!「
白星 風斗 LP2000 手札 0枚
レベル6 ATK2400
ランク4 ATK4000
レベル8 ATK2500
伏せカード 3枚
VS
紫雲院 素良 LP4000 手札 3枚
デストーイ・チェーン・シープ
レベル5 ATK2000
ファーニマル・ドッグ
レベル4 ATK1700
「そ、そんな…こんなことが…!」
「フィナーレだ。お前はナメプしてないんだろうがよォ、「相手」と「手札」が悪すぎたな…お前にとっては……。バトルフェイズ!「
「ダークロウ」が、鎖とぬいぐるみの悪魔に跳躍で接近する。半分距離を詰めたところでダークヒーローの右腕に黒い瘴気のようなものが纏う。ただならぬ殺気を「チェーン・シープ」にぶつけながら、そのガラスでできた左の瞳に拳を突っ込んだ。ガラスが割れる嫌な音と同時に緑の結晶がそこから散らばり、羊は徐々に暗黒に包まれてゆく。腕を抜いて離れた時には凶悪な丸ノコも縛り付ける鎖も朽ち果てていて、それが消えてもなお「ダークロウ」は無感情にそれを見つめていた
「「ダークロウ」が僕の場にいる限り、お前の墓地にいくカードは全てゲームから除外される!」
「な…?!それじゃあ「チェーン・シープ」の効果が使えない!」
白星 風斗 LP2000 手札 0枚
レベル6 ATK2400
ランク4 ATK4000
レベル8 ATK2500
伏せカード 3枚
VS
紫雲院 素良 LP3600 手札 3枚
ファーニマル・ドッグ
レベル4 ATK1700
「「
次は紅き闘士が乗り出す。まるでコロッセオのグラディエーターのようにゆっくり歩を進める…と思うと、いきなり走り出し彼我との距離を一気に詰め……上段のような構えから思いっきり袈裟切りにした。柔らかい綿がバラバラに叩っ斬られ、大きな斜め傷が出来上がった
しかし「エクスカリバー」はそれだけでは終わらず、ぬいぐるみを踏みつけたかと思うと、大剣を逆手に持ち替えその身体に容赦なく突き刺した。力の限り「ファーニマル・ドッグ」に食い込ませてゆき、剣の腹辺りまで入るととうとう耐えきれなくなったのか、綿の残りカスを撒き散らしながら爆破した。空に上がる濃い黒煙の中から、己の武器を肩に乗せたまま「
白星 風斗 LP2000 手札 0枚
レベル6 ATK2400
ランク4 ATK4000
レベル8 ATK2500
伏せカード 3枚
VS
紫雲院 素良 LP1300 手札 3枚
ま、何にせよこれで終了だ!
「これで最後だ!「
「アブソルート
「ウワアアアァァァァァァーーーーー!!!」
白星 風斗 LP2000 手札 0枚
レベル6 ATK2400
ランク4 ATK4000
レベル8 ATK2500
伏せカード 3枚
VS
紫雲院 素良 LP 0 手札 3枚
「フゥ…疲れた〜〜…」
一応まだ調整中のだったけど余裕の圧勝だったな。「ファーニマル」が防御の弱いデッキで助かった。あと手札が良かったな
「そんな……ボクがエクシーズ使いに負けるなんて…しかもボクも知らない融合モンスターまで使われて……!」
しかし今回は「ファーニマル」だったから良かったけど本来なら総攻撃の時に何かしらのカードも他のデッキならあり得たからなぁ……やっぱり「エクスカリバー」じゃなくて「ホープ・ザ・ライトニング」かな?けど枠の調整が面倒なんだよな……しかもユートじゃ「
「ボクが負けるなんて…そんなのあっちゃダメだ…!……サウザンド・フェイス!!」
僕が今回のデュエルでの反省と次の構築を考えていると、紫雲院が僕を名指しで呼んできた。なんでよりによって異名の方で呼ぶの…?
「…なんだ?あと僕の名前は白星だ。デュエル中にも表示されてたろ?」
「そんなことはどうでもいい!デュエルだ!今度こそ、本気の力で倒してやる!」
見るとすっごく必死な表情でこちらに睨みを利かせている紫雲院。何というか、負けが認められないって感じだな。そんなにエクシーズに負けるのが嫌か?
「…別に構わんぞ。気が済むまで相手してやる」
「余裕かまして…!その化けの皮、絶対引っぺがしてやる!」
怖いよこの子、ショタ怖い。けどデュエルの時くらいは冷静になるだろうと思うし、このまま帰っても暇だから相手してやるか
「「デュエル!!」」
「「デストーイ・シザー・タイガー」のモンスター効果!このモンスターの融合召喚に使ったカードの数だけフィールドのカードを破壊できる!これで君のカードを全部破壊…」
「チェーンで「エフェクト・ヴェーラー」の効果!「シザー・タイガー」を対象!エンドフェイズまで対象の効果を無効にする!」
「「デストーイ・マッド・キマイラ」で効果で戦闘破壊したモンスターをボクのフィールドに特殊召喚する!これで「アブソルート
「フィールドから離れた「アブソルート
「「混沌幻魔アーミタイル」でダイレクトアタック!「全土滅殺転生波」!!」
「「エヴォリューション・レザルト・バースト」!グォレンダァ!!」
「アーチャーデーモンマンサーマンサーシャシュツシャシュツアザッシター」
「ボチヤミサンタイ。さらにボチテンシヨンタイ」
「「マッド・キマイラ」リリースしてハンバーガー」
「トリプル「モリンフェン」ダイレクト」
「……っぐぅ…えぐ……ひっく……」
「えぇぇ〜〜……?」
あれから結局30連戦くらいデュエルした。日はもう落ち始めてる
最初はデッキの調整相手程度でやっていたのだが、15戦過ぎたあたりからだんだん面倒になってきてちょっと1人回ししたのである。その際に満足もしてしまったがペンデュラムは使ってないからそこまで問題はない。しかし1人回しすらも飽きてきたので、今度は暇なときに作った真性のネタデッキで相手してやった。当然OCGのガチも少し相手できるように改良はしているから、余程のガチ勢じゃなければこのデッキも充分勝率が高い。「マッド・キマイラ」がハンバーガーに溶かされたのを見たときの紫雲院の顔はちょっと面白かった
で、少しずつやる気が向こうもなくなってきたのだが、ちょっと様子がおかしいな?って思ったら時すでに遅し。トリプルモリンフェンで負けた瞬間膝から崩れ落ちてとうとう泣き出してしまったのである。さすがに泣くとは思ってなくて現在僕困惑中…
「あ〜……大丈夫か?」
「…えぅう……何で勝てないのぉ……?…ボクのモンスター…ハンバーガーにされたりぃ……ひっく……ただの通常モンスターに……あっさり負けたりぃ……」
イカン、泣かれるたびに心が締め付けられる。嗚咽が聞こえるたびに罪悪感で胸が苦しくなってきた。こんなんで追い打ちを掛けようもんなら外道にも程がある
「えっと…紫雲院?お前は負けたことないのかは知らないけど、まぁこういう日もあるから…負ける時もあるからあまり気にしなくていいと思うぞ?」
出来るだけ優しめの声を出して背丈と視線を合わせながら話しかける。その際に背中もさすってやる。……なんで僕、敵の組織の一員慰めてんだろ……
「…ひっく……っく……」
「デュエルは負ける時もあるから勝とうと頑張ろうとするんだよ。悔しかったろ?勝ちたかったろ?」
「……うん………」
「相手をカード化したらまた挑むことだってできないんだぞ?このまま勝ち逃げされるなんて嫌だろ?」
「……でも…プロフェッサーの命令は……絶対だし……」
さりげなく紫雲院の説得を試みるも失敗。生まれつきから戦士としての教育が彼の心を縛り付けているのだろうか…?…こればっかは僕でもどうしようもないのだろう…
「でも決めるのはお前だろ?お前がここにお菓子を取りに来たのだってプロフェッサーの命令だっていうのか?」
少し紫雲院は考え込む。それからしばらくしてから首を横に振った。違うと答えたのだろう
「ならこれからはお前自身で決めていかないとな?プロフェッサーの命令じゃなくて、紫雲院素良として何がしたいのか」
「……ボクの…したいこと……」
…これ以上はやる意味がねぇか……
もうここに残る必要も特になかったので、紫雲院が好みそうな菓子を幾つかだけ置いといてレジスタンス基地に戻ることにした
「じゃあな」
「……以上が、今回の偵察の報告です」
場所は、アカデミアのとある一室。そこで紫雲院素良は、眼帯の男バレットに今回の偵察の報告を告げていた
「フム、サウザンド・フェイス……そこまでの実力者か。奴がいる限り、目標の捕獲は至難と言ってもいいか…」
「へぇ、そんなに強いの?そのサウザンド・フェイスって」
声が、ゆったりと響く。その声音はとても甘く…だからこその危険さを感じさせた。肉食植物のような、妖艶な危険が
「ッ!…お前は…」
バレットはその人物を見て顔をしかめる。およそ自分が最も嫌悪しているであろう人間が現れたのだ、その心境は複雑なものだろう
「なら彼女はボクが攫ってくるよ。お姫様を見張るのだけじゃ暇だし。それに、彼女を捕まえるのはボクがプロフェッサーから直々に受けた命令だからね」
プロフェッサーからの命令。そう強く少年が主張すると、バレットの目つきが厳しくなる。自分に対する当てつけか、と暗に主張しているのである
「…フン……」
「フフ……」
(今まで……アカデミアのやり方には一切疑問を持たなかった……)
だけどそんな視線はどこ吹く風と言わんばかりに無視し、少年は素良に退出の命令を下す
「ご苦労だったね、紫雲院素良くん。ゆっくり休んでていいよ。あとはボクの仕事だから」
「…ハイ、分かりました……」
素良の心は、疑惑の心でとても満ち溢れていた。今までのやり方を否定され、自分で考えろと言ったあいつは、本当にとても強かった。きっと奴は、あれでも本気ではないのだろう
奴に…サウザンド・フェイスに勝ちたいと、本気で思った。戦場では2度目はないのに、自分の頭は奴のリベンジでいっぱいだった。だけど、それすらも邪魔する思考が、アカデミアに対する己の気持ちだった
(けど、アカデミアは正しいのか?ボクは……間違っていたのか?)
素良の腰の、もう1つのデュエルディスクが月光を反射させた
デパートの瓦礫を突き進む。時折良さげなものをカバンに入れながら帰ることにした。色々探してたせいでもう夜遅くだ
「お、シロップとか残ってるし。…おぉ、ホットケーキの素まで。今度時間あったら作ってみようかな」
暗斎やガキどもにはバレないように、慎重に作らねば……うん?なにか、身体に違和感を感じる……いや、身体っつーか感覚?何かが足りてないような……あっ
「ディスク、しまった。紫雲院に渡したままだった」
まだ居ればいいな、などと楽観的なことを考えながら紫雲院とあった場所にダッシュで向かった
だけど当たり前なことにそこに紫雲院は居なくて……
置いといたお菓子も、全部消えていた
月の光が、やけに明るく感じた
はい、というわけで素良くんとの邂逅でした
本当は融合シンクロエクシーズしてエンタメろうと思ったんですけど明るくエンタメるのは余りにもキャラとかけ離れてると思ったので悔しい心を奮起させて「命」を奪うアカデミアのデュエルを疑問視させるという流れにしました
あと途中で主人公がやったモリンフェンとかですが彼は決してナメプをしてるわけではないのです。彼にとっての全力とは今できることの全力という意味なのでデッキが弱くてもあまり気にはしません。まぁそれでも間違ったことをすることに苦悩して自己嫌悪していくのが主人公なんですけどね
それでは次は真面目な話になります。また次回お楽しみに!