面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語   作:ジャギィ

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「俺は……卓球次元を、許さない!」
「我が番組を書き換えたのだ」
「絶対に許さねぇ!ドン・サウザンドォッ!!」

怒りの投稿。…まぁかなり頭冷えてますけどね

それでは勲章な第13話ドーゾ!


アカデミア潜入!立ち塞がる獣闘機勲章!

「情報を整理すると……」

 

ユートの声が会議室全体を響かせる。明るい照明の下にはユートの他に黒咲・半田・暗斎と、それぞれ()()()()()()()人間たちが揃って小難しい表情をしている。4人の共通点…それは机の上に並べられた、4つの便()()

 

「風斗が瑠璃を助けに融合次元に向かったこと、案内役に捕虜のオベリスクフォースを連れて行ったこと、瑠璃救出後はエクシーズ次元(ここ)に戻ってこないこと……そして」

 

封の開けられた()()()たる4つの便箋のうちすぐ手前のものに手を取り、ユートは言葉を紡いだ

 

「この場にいる4人にはそれぞれ、風斗個人から手紙をもらっていたことだ。…みんな、中身はもう読んだか?」

 

「自分の分は」という副声音を付け加えるユート…そして頷く3人。目の前にある便箋に入った1枚の手紙。この手紙には、宛先相手に風斗の個人的な内容の要件や頼み…そして謝罪が改めて書かれていた

 

「それでユート…あの書き置きにも書いてあった、あいつの行き先の心当たりとはなんだ?」

 

黒咲が疑問を親友にぶつける。彼からすれば、自分の妹が救出された場合の後の行き先が何も分からず不安なのである。風斗が腐らずに立ち直ってくれたのは嬉しくはある…が、ユートたちに何も言わずに捕虜の人間も引き連れて組織を一時混乱させたことに、黒咲は若干の呆れと大部分に怒りの占めた感情を抱いていた

 

…この場に風斗が居れば、間違いなくこう言ったであろう。『お前も人のこと言えないだろ』と

 

ユートは、風斗が行きそうな次元を少し間を空けて考えた。融合次元から当分逃げ果せて、瑠璃がいても大丈夫な安全な場所で、かつ行くこと自体に意味のある次元……。かつて瑠璃が攫われた日に、風斗から持ちかけた話をユートは思い出していた

 

「…おそらく、スタンダード次元だ」

「スタンダード次元?」

 

疑問符の浮かべた声を上げるのはこの場で最年少の暗斎。今まで師から聞いた次元の話では融合・エクシーズ・恐らくあるであろうシンクロに関して聞いたことがあった。その際にペンデュラム次元はないのか?…と聞いたのだが、何故かバツの悪そうな顔で話を変えられた。あれはなんだったのだろうか?

 

閑話休題(それはさておき)

 

聞いたことのない次元の名前に、暗斎は視線でユートに説明の続きを求める

 

「風斗から聞いた話では、融合・シンクロ・エクシーズの3つとはまた別の次元であり……世界の基礎たる次元。そう聞かされている」

「世界の基礎……」

「それでユートさん、風斗さんは結局何をしにそこに行くのですか?」

「…スタンダード次元には、赤馬零王…アカデミアの統治者の息子、赤馬零児がいるらしい」

「何!?」

「えぇ?!」

「本当ですか!?」

 

衝撃の発言に、ユートを除いた3人が顔を驚愕に染め上げる。無理もない。危険を逃れるために向かったところには、この戦い(次元戦争)の元凶でもある者の跡取りともいえる存在がいると言うのだから……いると分かって、そこに自分の大切な妹を連れていった風斗の神経を黒咲は疑わずにはいられなかった

 

すぐに背を向けて部屋を出ようと……したが、ユートに肩を掴まれ黒咲の身体は停止する

 

「隼、気持ちは分かるが落ち着け」

「これが落ち着いていられるか!何故お前はそこまで落ち着いている!」

 

黒咲の怒りを滾らせた声がコンクリートの壁を反響する。しかし、ユートはこれくらいでは焦らない。静かに目を細めて猛禽のような金の瞳を見つめる。口を固く閉じて、彼は黒咲が気を落ち着かせるのを待った

 

ちなみに半田と暗斎、黒咲の剣幕に慣れているとはいえ、やることも出来ることもないのでことの顛末を静かに見守っていた。この様な状態の黒咲を止めることが出来るのは自分たちが知る限り3人だけ……親友であり黒咲を説得できるユート、唯一どんな状態でも耳を傾けてくれる妹の瑠璃(時おり兄の勝手な誤解あり)、そして……黒咲同等の格闘能力の持ち主であり、問答無用で拳で黙らしにかかれる(力が互角のため、失敗の可能性あり)鬼メンタルな風斗のみであった

 

「風斗はアカデミアの少ない情報で、赤馬零王と赤馬零児が敵対していることを予測していた。その予測は、俺を納得させるのには十分過ぎるものだった」

 

ユートは軽く説明をする。アカデミアとしての赤馬零児の立場上、単身スタンダード次元には行こうとはしないこと…それゆえに、風斗は2人は敵対関係を持っているのではないのか?…という予測を立てていること。そして……

 

「交渉?!」

 

暗斎の素っ頓狂な叫びが木霊する。己が師の他次元へ向かう真の目的が、敵となる得る存在との友好関係を築くことだったのだから

 

「そうだ、アカデミアの赤馬零王と敵対しているであろう赤馬零児と同盟を結ぶ……それによりアカデミアを迅速に打倒するのが、恐らく風斗の目的だ」

「危険ですって!そんな確証も特にない理由でスタンダード次元に向かうなんて!」

「確かに風斗は穴だらけの理由だとは言っていた。…だが、あいつの言葉には有無を言わせない凄みがあった。きっと俺たちにも話していない確信たり得る決定的な理由を、あいつはまだ持っているのだろう」

「そんな……」

 

悲痛な呟きが漏れる。しかし、強い意志を覗かせるユートの心の端に触れて、半田も疑問を飲み込んだ。自分たちと同じ年頃であってもユートは強くて、その力を正しく使うことのできる優しさもある。レジスタンスのリーダーたる彼の意見を、無視することはできなかった

 

……そんな彼らが信頼している人間の決定的な理由の1つに「アニメで見た」…などという訳が分からないものが混ざっているのだから、ユートたちの信頼はある意味不憫である、とも取れた。特に意味のない良心の呵責が風斗を襲う!

 

「今は俺たちに出来ることをしよう。それが風斗の頼みであり、俺たちが出来る最善の手だ。……あいつを、信じるんだ」

「ユートさん……」

 

ユートがそう言う。だがその言葉は…その思いは、断じて諦めからくるものではなかった

 

(風斗……お前ならば、必ず瑠璃を救うと信じている。信じているからこそ、必ずお前たちに会いにスタンダード次元に行く…待っていてくれ)

 

ユートは信じている。異世界の来訪者、白星風斗……彼ならば、自分たちと共に戦った彼ならば、必ず瑠璃を救い出してみせると

 

 

 

 

 

 

 

「ここはどの辺だ?」

「アカデミア裏手の森の中だな……この絶海の孤島では、船以外に外に出る手段がない」

「だろうね」

 

まぁ次元転送装置なんてものがデュエルディスクについているから、脱出とかは特に問題ないけど

 

現在僕…というか僕と案内人のオベリスクフォースは融合次元のアカデミアに侵入していた。といっても元アカデミアのこいつは裏切りを公言していない以上、この場において侵入者扱いは僕1人だけなんだけどね

 

「瑠璃はどの辺にいるか分かるか?」

「……恐らく、地下に幽閉されていると思う」

「思う?確定じゃないのか?」

 

曖昧な情報だから質問してみれば、返っていたのは沈黙。……何故かは知らんがこいつは瑠璃の居場所を知らないらしい。せっかく内部からの情報源として連れてきたのに、それじゃ僕がアホみたいじゃん

 

訝しげにジロッと見ていると、居心地が実に悪そうにオベリスクフォースの男はこちらから視線を逸らした。仮面越しでも分かるくらい渋い表情である

 

「…ユーリが、瑠璃を拉致したのはつい最近だ。それに彼女の情報も最高機密扱いなのだから、本当にごく一部…プロフェッサーやバレット隊長、ユーリくらいしか知る人間はいないだろう……」

「ふーん……」

 

最高機密か……オベフォにも教えない辺り、やっぱり柚子シリーズのメンツは赤馬零王の画策する計画とやらの重要なキーであることは間違いなさそうだな……

 

「ってオイ。お前未だにプロフェッサーとかバレット隊長とか呼んでるのに、なんでユーリだけ呼び捨てなんだ?」

 

あまりにさらっと言ってのけたから思わずスルーしかけたが、実際気になってしょうがない。雑兵どもには様付けで呼ばれて、赤馬零王からは恐らくバレットよりも評価されてるだろう存在に対して、何故呼び捨てなんだ……

 

正直僕がアカデミア兵の立場だったら本気でユーリに媚びへつらう。それか消えたと思われるくらい影薄くする。邪魔って理由でオベリスクフォースすらもカード化しようとするくらいには残忍な奴で…恐らく、かなり強いと思うから。予想だと、赤馬零児くらいには

 

「……苦手なんだよ…なんというか、常に落ち着いた態度なのに首にナイフを当てられたような……ふとした拍子で命を奪ってきそうな、あの雰囲気が……」

「ずいぶん恐れられてんだな、ユーリも」

 

僕からしたらニヤニヤした鬱陶しい奴ってとこなんだけどな。確かに底の見えない恐ろしさがあるが、それよりもあのウザったい顔の方が脳裏に浮かんでくる。……考えただけでイライラしてきた…あの野郎、次会ったら必ずブッ殺そう…!

 

「…お前は、ユーリと戦ったことがあるんだったな……」

「あん?」

「……いや、何でもない」

「何だよ?」

「だから何でもない」

「…そうか」

 

何とも雑な話の逸らされ方をされたが、今は瑠璃を救出するのが先決だ

 

「行くぞ」

「あいよ」

 

返答と同時に、それぞれ城の壁面を思いっきり駆け上がる。オベリスクフォースの男は訓練による跳力、僕は城壁の(くぼ)みや出っ張りに手の指・足の裏を引っ掛けながら、しかしお互いに同じスピードでロッククライミングし……指先に大きな引っ掛かりを覚える。しかし、その(くぼ)みは触った感覚で分かるほど平坦であった。首を上にして見上げる。少し大きめな四角形に整えられた空洞…城の窓だ。数多くの侵入口の入り口に、既に足を踏み入れていたのだ。もう1人の男は既に城内に入り込んでいる

 

「フッ…!」

 

腕に力を込める。懸垂(けんすい)の要領で一気に持ち上がった身体は城内に入り込み、少し膝を抱えながら僕は呼吸を整えた

 

…やっぱり、高いところ登るのは気が進まねえや…怖いし、落ちたら痛いし…つーか死ぬし……

 

一通り酸素を肺に送り込むと立ち上がって周りを見渡す。顔が映りこむほど綺麗なフローリングの床が暗い向こう側まで広がっていた。耳を澄ましてみるが、特に物音も聞こえない…近くには僕たち以外、誰もいないみたいだな…

 

「通路の1つか…?ここからどうすれば、地下に行けるのやら…」

「地下牢は向こうに行けば下りの階段がある。…俺が分かるのはそれだけだ。どこに収監されているかは分からないし、もしかしたら移動した可能性だってある……」

 

悲観的な声で、その重要なことを教えてくれる。可能性、というのは、瑠璃が閉じ込められている場所が変わっていることについてだろうが……

 

「だけど、それは今はどうでもいいことだ…重要なことじゃあない。…今すべきことは、いち早く瑠璃を見つけて融合次元から脱出することだ。だからデュエルディスクの転送法とかもお前に即興で教えてもらった」

 

そういいながら、腕につけている自分のディスクと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を見る。本来デッキが収まっているだろうところはカラッポで、そこに収まっていたものもオベリスクフォースの腰のデッキケースに入っていた。時間との戦いでもあっただけに、次元の跳び方はディスクを使って自分だけ跳ぶ手段しか分からない

 

だが、もう1つデュエルディスクがあれば。そのディスクを瑠璃につけて操作してから僕も同時に同じ次元に跳べば、スタンダード次元には問題なく行ける。…移住食は、これが終わってから考えよう……正直今は余裕がない

 

「……んじゃ、ここでさよならだな」

 

コイツは戦意が殆どなくなったとはいえ、オベリスクフォース…融合次元アカデミアの人間だ。故郷には誰だって帰りたくなるものだ…コイツにとって融合次元は、良くも悪くもそういうところなのだから

 

だから融合次元(ここ)に戻ることに関しては、僕は一切咎める気はない

 

「お前には色々教えてもらったし、けどお前を融合次元に帰したからこれでおあいこだ。……もう2度と会うことがないといいな」

 

戦場なんかじゃ特に、な……

 

黒い防寒着を翻して、階段の方に向かって全力でダッシュする。数瞬後に、オベリスクフォースの男も僕とは反対に走って行った

 

……あいつの表情が少し寂しげに見えたのは、きっと僕が感傷的になり過ぎてるだけだろう。印象に残った彼の顔を頭の中からすぐに霧散させ、メタルギアのスニーキングミッションを思い浮かべながら、誰にもバレないように下へ降って行った

 

 

 

 

 

 

 

暗い、暮らすのにはそこそこ便利ではある大きめな部屋。大きな天窓が1つだけ天井についていて、セキュリティの頑丈そうな扉が唯一の出入り口。そんな、監禁するためと言える部屋のフカフカなベッドに……紫髪の少女は腰掛けていた。顔は、薄くも暗い絶望が覆っていた

 

「…………」

 

融合次元のユーリに攫われてから、約2週間。彼女は特に何もされることなく、生活に困ることのない部屋に閉じ込められただけで済んでいた

 

…否、アカデミアに自覚がなくとも、既に瑠璃は大切なものを奪われている

 

「ユート……兄さん……」

 

かけがえのない『日常』を奪われた。エクシーズ次元の多くの『命』を奪われた。そして、家族や仲間とともにいる『時間』と『居場所』をも奪われた。これ以上何も残っていないというのに、アカデミアは瑠璃から何を持っていこうというのか

 

「光磁……暗斎君……」

 

もう、瑠璃に残されているのは思い出だけ。何もない虚空を見つめながら、友達と…家族と…仲間と過ごした日々を思い返す。最後に浮かび上がってきたのは…他の人と比べると、過ごした時があまりにも短いのに……1番鮮明に思い出せる、黒髪黒目の決闘者(デュエリスト)

 

いつもの面子で1番歳上なのに1番子供っぽいところがあって、口の悪いところがあるけどいつも他の人のために戦って、ぶっきらぼうで捻くれてるけど…誰よりも心優しい人

 

異世界から来たらしいが、彼女からすればそんなものは関係がなかった。そんなことに関係なく…彼は、平和が好きな人間なのだから

 

「………風斗……」

 

会いたい

 

(ユートに、兄さんに、みんなに……風斗に、会いたい)

 

だけど、現実は無情であることを理解していた瑠璃は、どこかで諦めていた。心の底で、もう会えないのではないのかと…完全に暗闇に落とされていた。彼女の左耳につけられた羽根の千切れたピアスのように、心の翼が()がれていた

 

意味のない観測的希望に思わず頭を俯かせ…右手のブレスレットを見ると、些細だが変化が起きていた

 

「ブレスレットが……」

 

発光していた。前触れもなく、唐突に

 

ガゴォォンッ!

 

「ッ?!」

 

唐突に訪れた変化は、ブレスレットだけではない。鋼鉄製の扉から部屋全体を揺らすほどの強い衝撃と音が…極僅かにだが、声らしきものも伝わってきた。よく目を凝らすと分厚いセキュリティロックの扉板には、小さな縦長な丸い出っ張りが出来上がっている

 

ドゴォォンッ!

 

コードが剥き出しになり、割れた電子盤が弾け飛ぶ。ドーム状の型はより大きくなり、長方形の警備の塊はひしゃげて歪んでいた。もはや扉とは形容し難いそれに…最後の一撃が、放たれる

 

「イィィィ…ッヤアァァァーーーーー!!!」

 

ドガアァァァーーーンッ!!

 

魂の叫びとも取れる…聞き覚えのある声によるシャウトは扉と枠の隙間から聞こえてゆき、完全に破壊された鉄塊は物理法則に従い横に吹っ飛び、地面に音を立てて落ちていった

 

土煙を巻き上げた中見えたシルエットは、片脚を斜め上に突き上げた人型であった。だけど、どこかヒラヒラした…コートのような服装で、頭には影でも分かる…フードを被っていた

 

トクン……

 

人影が煙を払いながら、フードを取っ払ってこちらに向かってくる。土煙が晴れたことで見えた姿は……つい先ほど、思い浮かべていた人間

 

「ゲホッゲホッ…!ミスったな、クソッタレ……。……大丈夫か、瑠璃?」

「…ふ……う、と……?」

 

予期せずに、願いが叶えられた

 

 

 

 

 

 

 

ゲホッゲホッ…ヤバい、むせる。あーもう!監禁場所は地下とは全く違う屋上付近だし、身を隠すための天井裏とか殆どないし、挙句監禁部屋は異常なまでに強固だし!怒りに任せて蹴りをお見舞いしたが、これもう他の奴らにバレてんだろうなー……

 

瑠璃を見る。見た目的には特に変化はなし。それが逆に怖くもあるが……まぁ深読みのし過ぎだろ。ボーッとしている瑠璃に近づく

 

「…風斗……なんでここに……?」

「瑠璃、悪いけど時間がない」

 

だけど瑠璃はなんとか見つけた。彼女の腕にちょっと強引にデュエルディスクを装着させる。ディスクは光を灯し、そこに上から順に《デュエルアカデミア》《シティ》《エクシーズ》《スタンダード》と英語で文字が浮かぶ。あとは瑠璃と一緒に次元を……

 

……脳裏にチラつく、仮面で哀しみを隠した男の表情

 

「ッ……」

 

ここに来て、余計なことが思考力を鈍らせてくる。止めろ、余計だ。アイツはここが故郷なんだ。愛憎含めても故郷は必要なんだ…それがもうない僕が、拠り所から引き離すなんてダメだ…

 

どれだけ自制しても、何故か妙な胸騒ぎがして止まない。胸中の警報が全力で鳴り響かせている。直感が、叫び喚く

 

ここで戻らなければ後悔する、と…

 

「……あぁもう!」

 

敵が来るかもしれないのもお構いなしにカバンからメモとペン…同時に()()()()()も数枚取り出す。本っ当に、僕のお人好しさ加減には文句が言いたくなる!

 

そして、殴り書くように素早く…かつ丁寧に書き綴っていく。そういえば、しゅうぞうって漢字でどう書いたっけ…?…あぁそうだ、修造だ!………よし書けた!

 

「風斗……?」

「瑠璃」

 

できるだけ真剣な表情で瑠璃にメモとカード片手に語りかける。そんな僕の態度に不意を突かれたのか、目を丸くしている

 

「瑠璃、よく聞け。今からスタンダード次元にお前を次元転移させる。次元のことは隠して、遊勝塾ってところの柊修造って人にこの手紙とカードを渡せ。決してお前を悪く扱わないはずだ」

「え……?」

「遊勝塾だ。そこの柊修造という人にこれらを渡してくれ……これも着とけ」

 

有無も言わさずコートを脱ぐと、それを瑠璃に羽織らせるように着せてフードを被らせる。よし、元々僕にも大きめだっただけに瑠璃の顔を一目なら隠せる

 

ふと聞こえてきた、忙しく迫ってくる多数の足音。これは…オベリスクフォースか?他の奴らか?…どちらにせよ時間はもうない

 

瑠璃の腕の部分をめくり上げ、デュエルディスクの次元転移装置を起動させる。行き先として押した場所は、スタンダード(基礎の世界)。青白い光が、瑠璃を中心に発生する

 

「きゃあ!…風斗!?」

「瑠璃!もう1度言う!遊勝塾の柊修造にこれを渡せ!そして待っていろ!」

 

彼女の手に簡素な手紙とカードを握らせ、肩から突き放す。1メートル近く離れたところで、光が部屋も巻き込む

 

「…必ず迎えに行くから!!」

「風斗!」

 

彼女の悲痛な悲鳴は、青い粒子となり身体ごとこの場から消えていった。瑠璃は移動した。手紙もカードも、何も落ちていない。何も欠けずに瑠璃はスタンダード次元に行ったのだろう

 

「…行ったか……」

「何者だ!!」

 

後ろから野太い声が響き渡る。振り返ると、そこにいたのは大柄なオールバックの男。筋骨隆々な身体つき、ただならない圧力(プレッシャー)…何より特徴は、左目付近に火傷の跡が残ってそこを眼帯で隠している。こいつは知っている…やはりアニメキャラは特徴があって分かりやすい

 

「…バレット、か……」

 

バレット。融合次元アカデミアの隊長を務める、いわゆる幹部とも言える存在。ネットでは勲章おじさんとか色々言われているものの…何というか、この力強い雰囲気……出来れば逃げ出したいものだ。その後ろに数人のアカデミア兵がいる

 

「貴様、ここには瑠璃という少女がいた筈だ。どこに隠した」

 

威圧的な眼光でこちらを睨みつけるバレット。声音と眼が如実に語っていた、嘘をつくな…と

 

「瑠璃はもう既に融合次元にはいない」

「何だと!?一体どこに…エクシーズ次元か!」

「答える必要はないな」

 

だがわざわざやられる危険を冒してまでここに残ったのだ。例え僕がやられようと、瑠璃の居場所だけは言う気が絶対ない。言ったとしても100%の嘘をつく。それくらいの抵抗は絶対する

 

しかし、そもそも負けてやる気は毛頭もないがな

 

静かに掌を合わせる。軽くお辞儀をし、目の前の勲章男に睨み返す

 

「ドーモ バレット=サン…サウザンド・フェイスです」

「何!」

 

驚くバレットたちをよそ目に、デッキホルダーに入っていたデッキをデュエルディスクに差し込む。ディスクから赤い閃光がブーメラン状に広がる

 

そしてバレットの前に躍り出る3人のアカデミア兵。オベリスクフォースですらないから、酷なこと言うが雑魚同然だろう

 

「何がサウザンド・フェイスだ!そいつの特徴は黒く身体を覆うようなコートだろうが!」

「すぐバレる嘘をつきやがって!そんな奴の名前で我々が恐れると思うな!」

「バレット隊長が出るまでもありません!このような偽者、我々だけで……」

「愚か者!!」

 

バレットが吼える。エクシーズ次元の戦場を駆け抜けた猛者は味方を一喝すると、こちらを見据えてデュエルディスクを構える

 

「お前たちには分からぬか?この者が放つ闘気が……私が相手をする、お前たちは下がっていろ」

「りょ、了解しました!バレット隊長!」

 

その返答を聞くと、実に楽しそうに笑みを浮かべるバレットに、僕は挑発も含めて話しかけた

 

「良かったのか隊長殿?アカデミア1番の脅威を…ここで確実に排除しておかなくて」

「お前の戦いはオベリスクフォースを通して聞いている。ただのアカデミア兵が増えたところで、焼け石に水なだけだ」

 

ゾクリッ…と、背筋に悪寒が走る。原因は目の前の男だ。目の前の、獣のような獰猛さ……それに、絶対に獲物を逃さないという考えが、ピリつく空気を伝って脳内に伝播する

 

「それに、私の長年の経験が告げているのだ。貴様は、倒し甲斐のある一流の戦士だとな!」

 

喜色の笑みでそう宣告するバレット。いや、だからってその為に上官の命令を無視しちゃいかんでしょ。軍法会議にかけられた後、勲章全部剥奪されて銃殺刑ものだぞ僕の世界じゃ……

 

それに、一流の戦士ィ?全然そんなんじゃないよ、戦い始めたのだってつい2ヶ月くらい前だぞ?遊戯王で言われたら10年は軽く越してはいるが…戦場とか云々じゃあねぇ……

 

だが面白い

 

「なるほどな…ならお前は僕を満足させてくれるのか?…並み以上程度で、僕を倒せると思ってんじゃねぇぞ」

「目を見れば分かる。やはりお前も戦士というわけか」

「違うな」

「何?」

 

そう、違う。的外れもいいところだ…僕は戦士なんて大層なもんじゃない。この世界での僕は……そう

 

決闘者(デュエリスト)だ」

「……フフフフフ…なるほど、面白い男だ。貴様、本当の名は何という?」

「…答える必要があるか?」

「名乗らぬのならば、それで良し。戦場では消えゆく者の名など、意味をなさん時があるからな」

 

消えゆく者?僕のことか?戦場では消えゆく者…僕が……?

 

ほう?

 

「…白星……白星、風斗だ」

「そうか…白星風斗!紫雲院素良を倒し、ユーリをも撃退したその力……見せてもらうぞ!」

「ならばデュ↑エル↓だァ!楽しい楽しいゲームの始まりだ!」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 5枚

VS

バレット LP4000 手札 5枚

 

 

バレットのデッキのカード……勲章なんちゃらのカードしか把握していない。それも1枚2枚レベルで…しかも名前しか覚えてない始末……

 

だから、かなり楽しみだ

 

「私の先行!私は手札から「キャリア・センチネル」を召喚!」

 

現れたのは、巨大なキャタピラを回しながら地を鳴らす輸送機。勝手なイメージだが、戦場らしく無骨なデザインと思った

 

キャリア・センチネル

レベル4 ATK1000

 

「「キャリア・センチネル」が召喚に成功した時効果発動!デッキから獣戦士族モンスター1枚を手札に加える。これにより、デッキの「漆黒の豹戦士パンサーウォリアー」を手札に加える!そして永続魔法「獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)」を発動!これにより1ターンに1度、手札・フィールドのモンスターを素材に「獣闘機(ビーストボーグ)」融合モンスターを融合召喚できる!」

 

何だそれ、召喚だけとはいえそれだけで獣戦士サーチとかなかなかに強くね?そして、場には「獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)」がある…来るな!

 

「「獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)」の効果で、手札の「漆黒の豹戦士パンサーウォリアー」と場の「キャリア・センチネル」で融合!」

 

紫色の鮮やかな体色の豹戦士…立派な装飾品の曲刀と盾と鎧をつけた「パンサーウォリアー」は緑のマントをバタバタ揺らしながら、輸送機とともに作り出された渦に飲み込まれてゆく

 

「獰猛なる黒豹よ、歴戦の番兵と交じり合いて、新たな雄叫びを上げよ!」

 

半分、である。身体の右半身だけ、間違いなく「パンサーウォリアー」その者である。しかし、残りの身体は漆黒の豹戦士を形取っていても、滑らかなメタルカラーを放つ金属で形成されていた。背中の左側だけから戦闘機のような片翼を伸ばし、左の赤い義眼から敵を捉えるセンサーがレーザービームのように光らせる

 

「融合召喚!現れ出でよ!「獣闘機(ビーストボーグ)パンサープレデター」!」

 

盾を捨てた半獣人半機械の猛者は、獣と機械音の混じり合った雄叫びを上げた

 

獣闘機(ビーストボーグ)パンサープレデター

レベル6 ATK1600

 

「「パンサープレデター」は1ターンに1度、自分の攻撃力の半分のダメージを相手に与えることができる!くらえ!」

 

閃光めいた赤い視線が僕を貫く。「パンサープレデター」はその剣先をこちらに向けると、黄色いレーザーをこちらに放ち、僕に着弾する。縦横無尽に駆け巡るスパークが、身体中の神経を痺れさせる

 

白星 風斗 LP3200 手札 5枚

 

「グッ……お前も開幕バーンかよ…やってくれる!」

「フッ、私がカードを3枚伏せてターンエンドだ」

 

 

白星 風斗 LP3200 手札 5枚

VS

バレット LP4000 手札 0枚

 

獣闘機(ビーストボーグ)パンサープレデター

レベル6 ATK1600

 

獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)

 

伏せカード 3枚

 

 

「僕のターン!ドロー!まず「サイクロン」を発動!あんたの真ん中の伏せカードを破壊する!」

 

破壊したのは……「紅鎖の獣闘機勲章」?効果は覚えていないが、舌打ちしたところを見ると良いカードだったのだろう。心の中でザマァ!と罵る

 

「相手の場にモンスターが存在し、自分の場にモンスターが存在しない時、手札の「サイバー・ドラゴン」は特殊召喚出来る!」

 

蛇のような形状の白い機械竜が、突如僕の前に現れる。「サイバー・ドラゴン」は独特な声を発しながら、「パンサープレデター」を威嚇する

 

サイバー・ドラゴン

レベル5 ATK2100

 

「己が追い詰められている時に真価を発揮するカードか…そのモンスターで「パンサープレデター」の破壊を狙っているのだろうが、甘い!永続罠「鉄鎖の獣闘機勲章」!」

 

2つのうち、公開される1枚のカード。そのカードから黒い鎖が伸びたかと思うと、「サイバー・ドラゴン」を縛り付け締め上げる。金属の身体を捩らせながら、機械竜は苦しみに喘ぐ

 

「何!?」

「「鉄鎖の獣闘機勲章」は1ターンに1度、相手の場にモンスターが特殊召喚された場合発動できる。特殊召喚されたモンスターの攻撃・表示形式の変更・そして戦闘の破壊を封じるカードだ」

「?戦闘の破壊もだと?」

「そしてお前が何かしらのダメージを負うたびに、そのダメージ分「鉄鎖の獣闘機勲章」の効果でお前の全てのモンスターの攻撃力を下げる」

「…なーるほど、そういうカードか……」

 

「パンサープレデター」には効果ダメージを与える効果がある。それでダメージを受ければ、その分「サイバー・ドラゴン」の攻撃力が低下し、さらにそこに「パンサープレデター」による戦闘のダメージを稼がれれば「サイバー・ドラゴン」の攻撃力はさらに下がり……文字どおりサンドバッグになるというわけだ。効果ダメージを軸にしてるのはそういうカードとの兼ね合いも含めてか?

 

「ただし、「獣闘機(ビーストボーグ)」が私の場から居なくなれば「獣闘機勲章」は破壊される」

 

あっ、マジで?……伏せ次第だが、このターンで勝てるか…?

 

「…さて、この布陣をどう突破する?」

「こう突破する!「サイバー・ドラゴン・ドライ」を召喚!」

 

「サイバー・ドラゴン」よりも細長く、滑らかな身体の機械竜が身を滑らせて僕のフィールドに登場する

 

サイバー・ドラゴン・ドライ

レベル4 1800

 

「「サイバー・ドラゴン・ドライ」の召喚成功時、効果発動!今僕の場にいる「サイバー・ドラゴン」全てをレベル5にする!「ドライ」はフィールド・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱われる!よって「ドライ」も効果の範囲に入る!」

 

サイバー・ドラゴン・ドライ

レベル5 ATK1800

 

「やらせてもらうぞ!レベル5の「サイバー・ドラゴン」と「サイバー・ドラゴン・ドライ」で、オーバーレイ!」

 

「サイバー・ドラゴン」を拘束していた鉄鎖が千切れ、砕ける

 

2体の「サイバー・ドラゴン」は光球へと姿を変えると、僕のフィールドに広がっている宇宙の中心に飛び込み……そこから光の柱が天井を突き立てる

 

「進化の象徴の機械竜よ!その身を重ね合わせ、新たな進化の道を突き進め!」

 

新たな機械竜には…今までにない、巨大で硬質な翼があった。翼膜の中心部にはファンの様な丸いパーツが組み込まれており、身体の外殻が黒く刺々しい見た目になっている。そして、首と翼がつけられた上半身と尾だけの下半身を繋ぐかの様に……心臓部とも言える透明な球体が、光を解き放っていた

 

「エクシーズ召喚!咆えろ、ランク5!「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」!!」

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァ

ランク5 ATK2100

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

本来は融合召喚を軸に戦う「サイバー・ドラゴン」シリーズ。だが「サイバー・ドラゴン」自体の汎用性とのちに出た「サイバー・ドラゴン」系統のストラクチャーデッキにより、エクシーズ召喚ができる様になった。…融合も混ざっているが、基本的にはエクシーズのデッキといったところか…今回のデッキは

 

「カードを1枚伏せて、「手札抹殺」を発動!お互いに全ての手札を捨て、捨てた枚数分カードをドローする。お前の手札は0だが、僕には手札が1枚残っている。よって墓地に捨て、1枚ドロー!」

 

引いたカードは「サイバー・ドラゴン・コア」……だが、重要なのはカードを引くことじゃない。残りの手札1枚を()()()ことにある

 

「「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」のモンスター効果!ORU(オーバーレイユニット)を1つ使い、墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を特殊召喚する!「手札抹殺」で墓地に送ったもう1体の「サイバー・ドラゴン」を特殊召喚!」

 

サイバー・ドラゴン

レベル5 ATK2100

 

「…そして!「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」を素材に、オーバーレイ!」

「何だと!?」

「進化の象徴の機械竜よ!その力をさらに積み重ね、進化の極北に行き立て!」

 

身体が、書き換えられる。より細く、より禍々しく、より洗練とされた機械の体躯は紫電を放ち、細部に取り付けられた棘の様なものは光を反射させ……究極竜は、咆哮する

 

「エクシーズ召喚!震わせろ、ランク6!「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」!!」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2100

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

「「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は、ORU(オーバーレイユニット)の数だけ攻撃力を200ポイントアップさせる。つまりィ……」

 

「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」の周りを漂う2つの光の球。機械竜の力を宿すそれが輝きを灯すと、究極体の「サイバー・ドラゴン」は内なるエネルギーを迸らせる

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

「クッ…攻撃力を上げる効果か……」

(だが「獣闘機(ビーストボーグ)」モンスターには、共通して戦闘破壊時に融合素材のモンスター一式を特殊召喚する効果がある。1体は確実に残る…次のターンまで持てば……)

 

 

 

「そしてリバースカード「オーバーロード・フュージョン」を発動!」

 

先ほど伏せた…「手札抹殺」から避難させた、勝利を確実にするカードを使用する。場には「サイバー・ドラゴン」、墓地にもORU(オーバーレイユニット)として墓地に送った「サイバー・ドラゴン」。きたぜ、ぬるりと…!

 

「「オーバーロード・フュージョン」…ッ?!ここで融合だと!?」

 

さしもの伏せカードに驚きを隠せないバレット。伏せるとしたら罠カード、または速攻魔法と決まり込んだ世界なだけに、ブラフで伏せる概念があまり浸透してないのだろう……僕もブラフとかあんまりしないけど、それでも本当に大丈夫かアカデミア?なんか僕が直接手を下さなくても滅びる様な気がしてきた……まぁアニメ展開上、滅びるんだろうけどね

 

「このカードの効果により、場と墓地のモンスターをゲームから除外し機械族融合モンスターを融合召喚する!場と墓地の「サイバー・ドラゴン」2体を除外し融合!」

 

2体の「サイバー・ドラゴン」がゲームから除外される。2つの機械竜は混ざり合う。渦中の機械が砂嵐を起こしたかの様にバラバラに量子分解され……そこから、正体不明の影が映し出される

 

「進化を象徴する機械竜よ!その首幾重にも混じり合わせ、新たな進化の力を見せよ!」

 

黒い、多角形が幾つも不規則に集まったソレが姿を現す。血の様な赤いラインが全体に伸びきったそこから、2つの尾と頭が這い出てくる。「サイバー・ドラゴン」の首を伸ばした黒い塊は、コアであった。(いびつ)で巨大な心臓は胎動しながら、血脈の様な赤い線を発光させた

 

「融合召喚!打ち崩せ、レベル5!「キメラテック・ランページ・ドラゴン」!!」

 

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

 

「「キメラテック・ランページ・ドラゴン」が融合召喚に成功した時、このカードの融合素材の数だけ相手の魔法・罠を対象に効果を発動できる。残りの伏せカードと「獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)」を対象に発動!対象のカードを破壊する!」

「何だと!やらせはせん!リバースカード「名誉の獣闘機勲章」を発動!」

 

発動される、新たな「勲章」カード。そこには、2つの槍が打ち合っている絵柄の勲章が描かれていた

 

「私の「獣闘機(ビーストボーグ)」融合モンスターを対象に発動。そのモンスターを破壊し、融合素材一式を特殊召喚する!そして特殊召喚したモンスターの攻撃力の合計分のダメージを、お互いが受ける!「パンサーウォリアー」と「キャリア・センチネル」の攻撃力の合計…お互いに受けるダメージは3000!これでお前のライフは風が吹けば消えるほどに減る!」

 

しかしバレットの胸中は不安で埋め尽くされていた。そして、確信があった。相手の場にいる竜…それらには、この状況をも打破する力すらあるのだろうと。苦し紛れの罠は通用しない…どう次の攻撃を防ぐべきか、バレットは考えて……

 

「受ける」

「…何……?」

 

歴戦の戦士の、不意を突かれた声が聞こえた。思考を固まらせる暇もなく、発動したカードから強い衝撃波が2人を襲う。「パンサープレデター」を破壊しながらも発する3000ものライフダメージは半端ではなく、バレットは床に、僕は壁に勢いよく叩きつけられた

 

「グゥーッ!」

「ガッ…?!ダ、アー…ッ!!」

 

左半身と頭を打ち付けた痛みに、思わず呻き声を上げる。やっぱダメージ、受けるべきじゃなかったかなー……!

 

「……何故だ、白星風斗…」

 

身体を無理矢理立ち上がらせると、勲章男も同時に立ち上がる。僕と違ってまだ余裕がある…が、そんな痛みを無視してバレットは怒りを撒き散らす

 

「何故「名誉の獣闘機勲章」の効果を受けた!お前の顔を見れば、私の攻撃を防げたことなど分かる!私とお前との真剣勝負に手を抜くというのか!」

「…まったく、何を言ってんだが……。手抜きなんてしてねえよ…強いて言うなら、癖だ」

 

痛みを堪えながら、僕はそう反論する。その言葉を聞いて、バレットは眉をひそめる

 

「癖だと?」

「そうだよ。あいにくながら、僕そんなに頭がよくなくてね…俗に言う「賢いやり方」というのが出来ないんだよ。いつも損する様なことに自ら首を突っ込んで……」

 

本当に、偽善の塊だと思うんだよ僕。自分が痛いことややりたくない事は無視して知らんぷりする癖に、何か気に入らないことや気分の悪いものを見ると損得勘定無視して即行動に移す。面倒が嫌いなのに、その面倒ごとを避けるために別の面倒なことを解決したり……今の状況だってそうだ、ホント自分のやってることが割に合わなさすぎる。電波でも受信してんのかね?いや、こんなこと考えている時点で電波人間オンエアー!か、アホすぎる……

 

「だがな、今まで最悪の結果はいつも回避してきたんだよ。例えどれだけ僕が損しても、僕の行動は最高の結果を生み出しもしてんだよ」

 

埃を払いながら、パーカーのジッパーを下ろし、脱ぐ。赤いTシャツをズボンから出しながらパーカーの服部分を後ろ、腕部分を前に回しながら腰の前で軽く括りつける。灰色の腰巻の完成である

 

そもそもな話、僕は考えてデュエルするのが苦手な方だ。いつも途中でプレイングミスに気付いたりするし……

 

けど、最悪は考えている。「名誉の獣闘機勲章」のダメージを受けたのも喰らうのが()()()()だからだし、「インフィニティ」の効果…ORU(オーバーレイユニット)を使いあらゆるカード効果を無効にする効果を使わなかったのも、ORU(オーバーレイユニット)を温存するため……別にそこまで考えなしで動いたわけではない。それに遊戯王ではこんな格言がある

 

「死ななきゃ安い」……軌道修正も、全然可能だ

 

「デュエルすれば分かる。さぁ、プレイングを続けろ」

 

……しかし、デュエルすれば分かる…って、大概僕もデュエル脳になってきたなぁ…マジで

 

「…「名誉の獣闘機勲章」の効果で、私の場に「漆黒の豹戦士パンサーウォリアー」と「キャリア・センチネル」を守備表示で特殊召喚する」

「そして「ランページ・ドラゴン」の効果が作動する。「名誉の獣闘機勲章」と「獣闘機融合装置(ビーストボーグ・フュージョナー)」を破壊!」

「私の場に「獣闘機(ビーストボーグ)」が存在しなくなったことにより、「鉄鎖の獣闘機勲章」は破壊される」

 

 

白星 風斗 LP200 手札 1枚

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

VS

バレット LP1000 手札 0枚

 

パンサーウォリアー

レベル4 DEF1600

キャリア・センチネル

レベル4 DEF1600

 

 

「だが、貴様のモンスターでは私のライフを削りきることは出来ない!」

 

フラグ建設どうもー

 

「それはどうかな?」

「何だと?」

「この程度の盤面、僕のカードなら簡単に覆せる!お楽しみは、これまでだ!」

 

見せてやる、「キメラテック・ランページ・ドラゴン」……その能力を!

 

「「キメラテック・ランページ・ドラゴン」の効果!デッキから光属性で機械族モンスターを2体まで墓地に送ることで、通常の攻撃に加えて墓地に送ったカードの数だけこのターンの攻撃回数を増やすことができる!「サイバー・ドラゴン・コア」と「サイバー・ドラゴン・ツヴァイ」を墓地に!」

 

黒いコアから伸びている2つの「サイバー・ドラゴン」の首が大きく揺れる。すると赤く点滅させるコアから…緑に光る細部が「サイバー・ドラゴン」と少し違う「ツヴァイ」と、赤いコードを絡ませた丸っこいパーツが連なった首の「コア」が急激に生えてきた。しかし尾がないところを見ると即興で作った首であるようで、「ツヴァイ」と「コア」の首はパーツをポロポロ落としていた

 

 

白星 風斗 LP200 手札 1枚

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

VS

バレット LP1000 手札 0枚

 

漆黒の豹戦士パンサーウォリアー

レベル4 DEF1600

キャリア・センチネル

レベル4 DEF1600

 

 

「これが……お前の力か…」

「このデッキの本領ではあるな」

 

これでも回り方は微妙な方だが…やっぱし一部のデッキだけじゃなくて色んなデッキを回さないとなー…ただでさえプレイングが悪いし

 

伏せはない。手札もない。場には「インフィニティ」がいる……終わったな

 

「バトルフェイズ!「キメラテック・ランページ・ドラゴン」で「キャリア・センチネル」を攻撃!「エヴォリューション・ランページ・バースト」ォ!」

 

「ランページ・ドラゴン」の赤いエネルギーの奔流が口から放出し、「キャリア・センチネル」を覆い尽くした。強い衝撃の荒波に翻弄され、走行を剥がされボロボロになった輸送機は爆発四散した

 

 

白星 風斗 LP200 手札 1枚

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

VS

バレット LP1000 手札 0枚

 

漆黒の豹戦士パンサーウォリアー

レベル4 DEF1600

 

「「キメラテック・ランページ・ドラゴン」の2回目の攻撃!「エヴォリューション・ランページ・バースト」!」

 

豹戦士に「ランページ・ドラゴン」の口から放たれた熱線が直撃する。金装飾の鎧をドロドロに溶かしながら、「パンサーウォリアー」は地に朽ち果てる

 

白星 風斗 LP200 手札 1枚

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

VS

バレット LP1000 手札 0枚

 

 

「さぁ、オーバーキルだ!「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」、「キメラテック・ランページ・ドラゴン」のダイレクトアタック!「エヴォリューション・インフィニティ・バースト」ォ!!「エヴォリューション・ランページ・バースト」ォ!!」

 

狂いたくなるほどに眩しい赤・緑・赤のフラッシュ

 

コアを最大限まで稼働させながらブレスを吐く「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」、各々の首を熱で溶かし自壊しながらも熱線を放射する「キメラテック・ランページ・ドラゴン」の「ツヴァイ」と「コア」。暴力的な機械の息吹が、対峙する男のライフを一瞬で消し飛ばした

 

「グワアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

 

 

白星 風斗 LP200 手札 1枚

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ランク6 ATK2500

ORU(オーバーレイユニット) 2

キメラテック・ランページ・ドラゴン

レベル5 ATK2100

VS

バレット LP 0 手札 0枚

 

 

ライフが0になり、デュエル終了のブザーが鳴り響く

 

吹っ飛んでいったバレットはアカデミア兵を飛び越え、廊下の壁に激突した。流石に威力が強過ぎたのか、床に倒れ伏してしめやかに気絶した。赤い服のアカデミア兵は倒れ込んだバレットに近づく

 

「バレット隊長!大丈夫ですか!?」

「バカな…!隊長が負けるなんて!」

 

壊れた扉の枠に足を乗せる。部屋と廊下の境界線で、哀れな兵士に問いかける

 

「どうする?ここで戦うか…?僕は構わんぞ」

「グウッ……!」

 

苦々しい、苦痛の表情を浮かべるアカデミア兵。僕とバレットを交互に見ながら苦悶する。ここでバレットを安全なところに運ぶか、僕とデュエルするか……苦渋の決断であった。一介の兵士には重すぎる決意

 

「オイ!お前たちはバレット隊長を医務室へ運んで、その後に増援を呼べ!俺はコイツを足止めする!」

「バカなことを言うな!無茶だ!バレット隊長を倒すほどの奴だぞ!」

「俺たち3人でかかれば……!」

「話の通りならば、オベリスクフォースを簡単に返り討ちにする奴だぞ!1人も3人も意味がない!足止めは俺がする!行け、早く!」

 

唐突に目の前で展開される戦場ドラマ。これが画面越しで、かつ味方側だったら感動モノだったのだろう……。けど相手は敵兵、なんとも複雑な気持ちが胸中を支配した

 

「…すまない……!」

 

心からの謝罪と感謝を込めた言葉を勇者に残しながら、2人はバレットを支えてこの場から去っていった

 

恐怖に足を震えさせながらも、強い意志が篭った眼で僕を睨みつけながら、男はデュエルディスクの光を剣状に広げた。物凄く僕が悪役めいてる……

 

「ドーモ アカデミア兵=サン……」

 

だがここは敵地であいつは敵…戦闘意思があるならば優しく扱う必要なし。慈悲はない

 

「サウザンド・フェイスです……戦争ってのは虚しいなぁ…だが僕にも急ぐ理由がある。そこを通してもらうぞアカデミア」

 

太陽は真上、天気は良好

 

アカデミアでの長い1日は、まだ続く




というわけで勲章回でした。何がというわけだといったところでしょうが理解する必要はありません、深い意味はありませんから。それと全然立ち塞がってませんでしたねすみません、あまりにカード効果がしっかり判明してるの少な過ぎてワンキルでした。ドルベが何でもしますんで許して下さい!

新しいパックの「メタルフォーゼ」って見ましたか?何というか仮面ライダーめいてとても良い!実際良い!発売日が楽しみだなぁ…

それではまた次回!お楽しみは、これまでだ!
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