面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
ドラクエにハマってたのが原因です。ストーリーだけで終わらせようとしたらどハマりしてしまった……おかげでどんな話書くつもりだったのか完全に頭から消去されて、書き直すのに必死でしたの……この作品読んでる方、本当にゴメンなさい
少しずつ投稿速度は取り戻していきますが、それまでは間隔が長いかもしれませんしクオリティ低いかもしれませんが堪忍してください
では気を取り直して、平和で非日常な第17話ドーゾ!
「アクションカード」
「アクションカードかぁ…不確定だが、便利ではあるんだよなぁ…」
「あ、白星さん!何してるんですか?」
「遊矢か。いや、アクションカードって面白そうだなぁって思って…」
「そうなんだ!じゃあ俺と一緒にアクションデュエルしましょうよ!」
「そうだな、いっちょやってみるか!」
「アクションマジック「奇跡」!」
「「サモプリ」の効果でアクションマジックをコストに」
「「回避」を使って、攻撃を防ぐ!」
「自分のアクションマジックを無効にして「ヴァンダルギオン」特殊召喚!」
「「ミラーバリア」で破壊を防ぐ!」
「アクションマジックを拾ったことで増えた3枚の手札を除外し「左腕の代償」を発動!」
「もう!普通にアクションカード使ってよ!」
「「汎神の帝王」が1枚だけだから使いまわせるように「イデア」と「エイドス」は3積み…けど「イデア」を引く確率が欲しいから「増援」を追加して……」
「風斗くん?なんだか目が虚ろな気がするのだが…大丈夫かい?」
『相手が一気に攻めてきたらどうする気なんだ?』
「そうならないように出来るだけ相手の場を崩しながら戦いたいから「轟雷帝ザボルグ」は3積み…いや、手札でダブったら対処に困るから2積みにして「アイテール」を3積みにして……」
「風斗くん?!かなり身体が震えてるんだが大丈夫なのか!?」
『手札の邪魔なカードは手札交換カードでどうにかできるだろ?「手札抹殺」とか「トレード・イン」とか』
「…そういや「トレード・イン」があったな…あれを使えば「ザボルグ」や「アイテール」を捨てても「エレボス」で吊り上げることができるから、残りの枠に「連撃の帝王」も積んで……」
「風斗ーー!?正気を保て!熱血だぁぁーーー!!」
「…ッ……?!あ…僕は、一体……」
塾長の無駄に暑苦しい絶叫が両耳をつんざく。思わず耳を塞ぎそうだったが、両手で抱えた荷物の重さと身体の揺れと脳への強いショックによる覚醒のおかげで、一歩手前のところで踏みとどまることができた。僕の肩に置いた手を離して、修造さんはホッと息を吐く
「よ、良かった…何を言ってもまた反応なしだったから……」
「…すみません、またボーッとしてたみたいです……」
「疲れているのならば、休んでくるかい?」
「いえ、本当に大丈夫ですから……」
中指の腹で撫でるように目を擦りながら、僕は修造さんにそう言い返した。本当はクソ眠いから休みたいけどね…という、余計な言葉は頭の中だけにとどめておいた。社畜精神でもある僕は雇い主の機嫌を損ねることなどできないのである…これが現代社会の黒い側面か……
かれこれ遊勝塾に住み込みで働き始めて1週間、本当ならばそれほど苦でもなんでもない仕事なのだが……コンマイの策略によって明かされた
つーか黒星、お前あからさまに疲労とは無縁…無縁?無縁なのか?……無縁と決めつけさせてもらう!とりあえず僕の思考がヤバい方向に向いてたんなら止めてくれよ…つーか助長すんなよ、修造さんに喝入れてもらうまで完全に上の空だったんだぞ僕
(別に大丈夫だったんだからいいだろ?それに僕はめっ、言わなくても特に問題ないと思ったから黙ってただけだ)
今完全に面倒くさいって言いかけたぞコイツ!めっ…ですぐに別のこと言ったけど、面倒くさいって言おうとしたぞコイツ!この野郎……身体動かすのが僕だからって、他人事にようにしやがって。お前の肉体でもあるんだからもう少し関心持てよ!倒れたら困るのは僕なんだぞ!
…あ、だからコイツ、こんなにドライなのか
「……早く、全部終わ…らせよ……」
愚痴っても仕方ないと割り切り、重みのある段ボール箱をせっせと運ぶ。後ろで何か言っていたが、まだまだボーッとしているのか細かく聞き取れない
働きアリの気分で歩きながら、途中で脳と口に走る感覚に身を任せる。ピタリとその場で足を止め、込み上げてくる眠気と本能に従って、目を閉じ大口を開いた
「ふぁああ〜〜あぁぁ〜〜〜ぁ〜〜……」
天気は晴天、風はそこそこ吹き、雲は途切れ途切れにしか見かけないほどの空。車が走る街中、老若男女問わずの人だかりが凄いと思った。……まぁ当然なんだけどね、今日日曜だし
そう、日曜日である。誰もが1週間に1度の休日だと認識している、あの日曜。学生だろうと労働者だろう
………なのに……
「どうしたの?早く行きましょう」
「ショッピングなんて久しぶりね」なんて言いながら、僕の隣で瑠璃が街中を見つめる。いつも通りの変わり映えしない格好ではあるが、どこか楽しげにそう呟いた
だからこそ、僕も言わせてもらおう。この晴天の真下で、僕の心込めた言葉を……小さく吐き出した
「どういう……ことだ……?」
憂鬱な僕の不満は誰にも届かないし、届いてもきっと意味などない…と思う。急激な変化と予想外に弱い僕は、某ナンバーズハンターのセリフを呟くくらいこの急展開についていけなかった
ことの顛末は、昨日の修造さんからの頼み事が発端だった
どうも遊勝塾の電球などの蛍光灯の予備がなくなってきたらしく、本来なら修造さんか柚子が買いに行くらしいのだが、そんな時に限ってで2人とも別件で用事が発生。とても買い出しの方を優先できないが、とはいえ無ければ困ることも事実……そこで白羽の矢がこちらにたった、というわけである。……その用事とやらの話が、のちに陰謀だと気付かされたのはまた別の話
……あぁ、僕の理想の休日…仕事の疲れを癒す、唯一のひと時……
「クッソゥ、本当なら…今頃、遊勝塾に引きこもって惰眠でも貪りながらデッキ作りに勤しんでたはずなのに……」
「そんな生活してたら、どう考えても身体に良くないでしょ」
「知ってる……けどな、そんなことどうでも良くなるくらい、今僕は非常に動きたくねえんだよ。…あぁ、働きたくない……」
思わずため息が出る。社会人にあるまじき発言だが、本来の僕は特に何もせずにゴロゴロしたいという…なんというか、結構自堕落な人間なのだ。前世で汗水流して働いてた理由だって、自堕落な人生を送るための貯金目的だったし
しかし…だ。今更ながら思ったのだが、何故瑠璃もついてきているのだろうか?特に理由も考えもせずにその訳を直接問う
「なぁ、なんで瑠璃もついてきてんの?」
それを聞いてみると、なんだか非常に申し訳なさそうに俯いて、上目遣いで僕を見る
「ダメだった?」
「いやそうじゃなくて……ホントに何も怒ってないよ?ホントだから」
その大変心苦しそうでがっかりしたような雰囲気止めて、罪悪感で胃がキリキリするから。あと見られたらクロワッ咲の怒りゲージが1億ポイント貯まりそうだから。…貯まったらどうなるんだろ?「ライズ・ファルコン」?「ブレイズ・ファルコン」?「レヴォリューション・ファルコン」?それとも「サテライト・キャノン・ファルコン」?それか「アルティメット・ファルコン」?……まさか全部はないよな…?
一瞬考えたあり得る未来に戦慄を抱きながらも、
「ほら、僕が頼まれた仕事だろ?別に付き添う必要ないだろ?それとも、何か買いたいものでもあるの?」
仮に何か買いたいのだとしても、何か欲しいものがあるなら言えばついでで買うくらいするのに…
「え…っと……その……」
「……別に言いづらいなら言わなくてもいいけど?」
「ち、違うの!確かに、買いたいものもあるけれど…言いづらいとかじゃなくて……」
いや、何か言おうと思ってもすぐに考え直すその行動は、言いづらいって言葉が1番当てはまると思うのですが……
それでも何かを伝えるべく意を決したのか、ごにょごにょと口元を震えるように動かす
「……一緒に……どこか、出掛けたかったから…風斗と……」
モジモジとしながらちょっと頬を赤く染めて、恥ずかしそうにそう言う姿は……すごく、いいと思いました。だけどよろしくないとも思いました。主に僕の精神衛生上的に
なんだこの可愛い娘。その女の子特有の指を絡めるような仕草……とてもグッときたよ、恥ずかしそうな表情も非常にいい。女の子ってこんな可愛いものなのか…?母親と妹と祖母という前例のせいで女の「可愛いらしさ」に対する評価が底辺同然だったのが原因なのだろう、ギャップという奴だ。あの3人、普段が雄々しいからなぁ…貧乏ゆえの必死さがあの性格を作り上げたのかもしれん。…つーか今は瑠璃だ瑠璃
「僕…と一緒に出掛けたかった?なんで?」
「なんでって……えぇっと……」
言い淀む瑠璃。何も言えない…ではなく、答えを出せないといった感じから察するに特に理由などないのかもしれない。すると、僕の中で1つの考えが思い浮かぶ
理由がない…ということは、少なくとも荷物持ちとかそういう意図がない、ということになる。特に理由はないけど一緒にいたい、という感情に関しては僕にも思い当たりがある。毎日いざこざがあっても家族と一緒にいたい気持ち……なんだかんだ言いながらも、僕はあの場所に愛着と好意を抱いていた。死ぬときの未練になる程度には
そのことから考えるに、彼女は僕に対して何かしらの好意を抱いている…のだろうか?仮にそうだとしたらそれはなんだ?恩情?親愛?……恋愛は絶対ねえな。そんな感情抱くほどのこと、僕瑠璃にしてねえし
『せいぜいやったことは、アカデミアから瑠璃を助け出したことくらいだしなぁ……』
だよねぇ。それだけじゃあ、異性として人を好きになるには無理があるだろ。こじつけもいいところだ、今思ったことは痛々しい妄想だと思って忘れよ。そもそも瑠璃は中学生だし…止めろ、僕はロリコンではない
頭の中で響き渡る黒星と意見を同調しながらも、先程の考察によって得た疑問を問い掛ける
「…特に理由がないのか?」
質問を再度投げかける僕を見ながら、きょとんとして少し間を空けながらも、瑠璃は頷いて僕の言葉を肯定した
「……じゃあ答えようがないな…さっきの忘れてくれ。とりあえず、行こっか」
「…そうね。行きましょう」
そう微笑みながらついてくる瑠璃をよそ目に、活気のある街並みに向かって一緒に歩き出した。出掛ける前にも確認はしたが、カバンの中に財布もスマフォもあるし、この1週間で作り直したり変えたりしたデッキもある。ちなみにデュエルディスクは常に左腕にセッティング済み、飯時と風呂と寝る時以外は常につけている。遊戯王世界じゃいつ何が起こるか分からないからね!
そして僅か十数歩で、思わず思ったことをポロっと口に出してしまった。足は依然歩き続けている
「……こうなるなら、砕羽も連れてこれば良かったな……」
ボディガード兼荷物持ちとして。おそらく長く歩くことになるであろう今回の買い物に、道連れくらい用意すべきだったと後で思い至った。あと、横で少しムッとなった瑠璃を見て、やはり女って理解できないと再度思った
「買ってきたぞー目的の物」
「中身は間違ってない?」
「修造さんから貰ったメモ渡したら用意してくれた。一応僕も確認したけど合ってると思うよ」
買い物を始めてだいたい30分。言われた電球をしっかり予備も含めて買ってきたので、店の中で瑠璃と買ったものの確認をしていた。うん、名前は合ってるし型も合ってる……予備の数も問題なしっだな
これで今日の仕事は終了、家に帰ってゴロゴロしよう……とはいかないんだよなぁ、これが。瑠璃と一緒に電器屋の外に出て、振り向きながら話しかける
「…それで、何を買いに行きたいんだ?」
「実は、服を買いに行きたくて……」
「服?」
そうか、そういや瑠璃って1着しか服とか持ってなかったな……今は柚子からパジャマとか借りてたり、その間に洗濯したりしてどうにかなっていたが、流石にそろそろ替えの服が必要…といったところか
「……やっぱ、連れてくるべきだったか……」
瑠璃に聞こえない程度の小声で小さく呟く。理由は分からんが、また不機嫌になられても困るし
僕はまだいい、全く同じ服が予備を含めて数着あるのだから。それに対して、瑠璃と砕羽は自分の服が1着しかないのだ。はっきり言って罪悪感がぱない。子供に我慢なんてさせて何やってんだ僕は……
何か服やズボンを買ってやるべきだろうが、瑠璃はともかく砕羽がどんな服を好むかがさっぱり分からない……。とりあえず長袖シャツとジーパンでいいかね…?柄?…チェック柄は止めておこう、特別な理由はないが止めておく
「じゃあ、適当に見てまわるか。それでいい?」
「ええ、良いわ」
「分かった」
僕の言葉を皮切りに、街の横道を並んで再び歩き始める。100mくらいの距離だけでも随分な数の人とすれ違ったものだ。親と手を繋いでる小さい子供やカード片手にはしゃぐ小学生の集団、散歩でもしてるのか緩やかに歩く爺さんになんだかラブい雰囲気な大人のカップル……ふむ、別に彼女が欲しいわけではないが爆発しないかな?イチャイチャするなら見えない範囲でやりやがれ、ペッ!
『酷い嫉妬を見た気がする』
るせえよ、「他人の不幸は蜜の味」って言うだろ?つまりはそういうことだ…おっと思考が黒く染まりそうだ、別の物でも見て気を紛らわそう
「しっかし、この街には随分色んなデュエル塾があるんだな〜…」
「そうね、どの塾もたくさんの塾生がいるみたいらしいけど…どうして遊勝塾だけあれだけの人しかいないのかしら?」
「その辺はデリケートな問題だと思うからあんまり聞かないほうが良いと思うぞ……なんだアレ「野獣塾」?……「シーホース」載ってやがる。ヤベェあの塾見てみてぇ」
あまりにも心踊らされる看板につい足が止まってしまう。「もけもけ」とか「森の番人 グリーン・バブーン」とかも描かれてるあたり、獣族カードでも指南しているのだろうか?だが「シーホース」のチョイスはグッジョブ、あの塾の人間絶対エンタメ精神が出来上がってるよ
他にも何か面白いものはないか軽く看板とか見てまわるが……特にめぼしいものはなく、どれも近くに必ずと言っていいほどある塾の名前がデカデカと挙がっている。「
街から突き抜けるようにそびえ立つ「LDS」のビル、その存在感が激しい建物は、いつか僕が向かわなくちゃいけない場所……しかしどうやって行くべきか…うーん……
「…どうしたの?」
「……あ、ゴメン。ちょっと考え事…別に気にしなくていいから」
「そう?ならいいけれど…」
わりかし深刻に考えてるところで瑠璃に声を掛けられてしまい、思考の海から脱する。今はあまり無理に考えないでおこう…心配かけるのもあれだし、何が悲しくて休みの日にまで悩まなくちゃあならないんだ
「ん…瑠璃、服屋がある。あそこでなんか見繕うか」
そう言って見つけた視線の先には、木造で建てられた大きめの洋服店があった。
静かで落ち着いたクラシックが、店内をBGMのように流れる。棚などは全部が全部木というわけではないが、
「……ん?瑠璃?」
横を見てみると、何故か瑠璃がいない。周りを見渡すが、やっぱり瑠璃はいない……どこに…?
『左前を見ろ、左前。そっちに瑠璃は行ったぞ』
「え?……あっホントだ、いた」
黒星がしっかり意識の外にいた僕の代わりに見ていてくれたのか、言われた方向を見てみると確かにそこに瑠璃はいた。こういう時に黒星みたいな存在は本当にありがたい……
近づいてみると、気に入った服でもあったのかその手で白い服を持っており、ネームプレートを見比べている。サイズでも確認してるのか?
「瑠璃」
「ひゃっ!……あ、風斗」
声を掛けると物凄くビクつかせて驚いた。そしてこちらをおそろおそろと見る。そこまで驚かなくても良いんじゃないの…?
「良さげな服でもあったのか?」
「え…うん。試着でもしてこようかなぁって…感想も聞いておきたいから……」
「僕に感想?…まぁ別に良いんだけど。とりあえず着てきたら?その間にこっちもちょっと服とか見とくから」
「分かったわ」
そう言って試着する服を片手に試着室に入る瑠璃。シャッ…とカーテンが閉まる音が聞こえた頃には、既に近くの棚のズボンをそれぞれ見比べながらネームプレートの値段と格闘していた
6980円…!?たっけぇ…約7000円じゃねえか!しかもこれで安い方という。頭おかしいんじゃないの?クッソ、今まで服とか親に任せてたからなぁ…服やズボンの平均金額がこんなものとは思いもよらなかった。ゴメンお母さん、今まで服とかを簡単に買えば良いんじゃないの?とか言って
サイズは……ズボンはこのベルトでも使うタイプので良いか。4980円とかさっきのよりはずっと安いしサイズは気にしなくて良いし、薄い茶色とか結構あいつに似合うかもしれないし。他には服は……
「あの、着替え…終わったんだけど……」
そうやって砕羽の格好を脳内でシミュレートしていると、少し小さい瑠璃の声が後ろから投げかけられた。どうやら先ほどの服に着替えたらしい。手に持った服とズボンを綺麗にたたみ直しながら、ゆっくり試着室の方に振り向く
「あいよ。……まぁ自分で選んだんだから、多分似合」
出掛かった言葉が、途中で止まる。首を振り向かせた先に居たのは、全身が白に包まれた紫髪の美少女
サイズが違うのか首元がズレているが、肩から腰…膝のちょい下まで濃い白色に染め上げられた涼しげなワンピース。半袖の右腕の先には、普段からつけられている黄色の小さな宝石と羽根を形取られた装飾品がついたブレスレット。そして少し困惑そうにしながらも、長い紫色の髪を揺らしながらはにかみ笑いを浮かべる瑠璃。背反している紫と白がそれぞれを引き立てて、より見た目の印象が強くなる
一言だけの、だがこれ以上ないほどの…最適な感想が浮かび上がった
「ふつくしい……」
「え?」
僕の発した何かを聞いたのだろうか、少し間の抜けた返事を返してくる
「…………ッ?!」
そして、瑠璃は長くボーッとしてると思ってたら急に顔をとても紅潮させて、試着室に逃げ込むように入り込みシャッ!とカーテンを締めた。僕が言葉を発してだいたい7秒くらいの出来事
…………ッハ!僕は一体何を?!
『ふつくしいっつってたぞ。瑠璃に』
「マジかよ!?」
特に考えもしない自分の思考力の低さを呪いながらも、人生で最大とも言える羞恥に思わず頭を抱えながら悶絶してしまう
うおおぉぉぉぉ僕のバカァ!!感想言うにしても綺麗とか可愛いとかもっと他にあったろ!なんだよふつくしいって!?どこの海馬社長だよ!?あまりに清楚な白さに「
「落ち着け…こういう時はフードを被れ……!」
フードはいい。実にいい。深く被れば自分も相手も顔が見えないし、暗い視界は己の世界に浸れる……落ち着けぇ…!忘れろぉ…!
手で無理矢理パーカーのフードを引っ張りながら顔を隠す。今はとても服とか選べる状態ではないので、必死にさっきの事態を忘れようとこめかみを指で押さえる…というより自身に対してアイアンクローをかます。周りの視線が少々痛いが気にするな!
痛い痛い痛い頭痛い!けど忘れられそうだ!この調子でさっきの瑠璃のとても似合っていたワンピース姿を……忘れられてねえじゃねえか!……あっヤバい心なしか
『お前もう落ちるとこまで落ちてるよロリコン』
テメエエェェェふざけんじゃねエエェェェ誰がロリコンだブッ殺すぞゴラアアァァァ!!
「ふ、風斗…?大丈夫……?」
フードを押さえながら脳内で規制が入りそうなほどの汚い言葉で黒星に罵りまくっていると、いつの間に着替えたのか瑠璃の声が背から掛けられる。未だに真っ赤であろう顔を隠しながら身体を180度反対に回転させると、たたまれた白いワンピースを手にいつもの服装で靴を履きながら試着室から現れた。……その頬を、朱色に染めながら
それだけで、とてつもなく恥ずかしい気持ちになってきた。なんとも言えない空気が、店内の一角を支配する
……フゥー…、一旦冷静になれ……別に僕は間違ったことは言ってない……うん、言ってない。彼女の姿を見た時の評価を包み隠さず言っただけなのだから、何も間違ってない。だから……特に恥ずかしくはない、恥ずかしくない…うん、普段通りだ、大丈夫
『賢者モードって奴だな』
お前は余計なこと口走るな!頑張って取り繕ってんだから黙ってろ!情緒不安定に再びなりかけながらもやかましいそいつを無理矢理黙らせて、改めて瑠璃に思ったことを言う
「あー、瑠璃?その服、瑠璃にとても似合っていたよ……買う?」
小さく、頭を縦にふる。まだ恥ずかしいのか顔は伏せられているものの、それは了承のサインととって良いものだろう。この場にずっと居たんじゃ瑠璃は(羞恥で)辛いだろうし、とっとと砕羽の分の服も選んでレジにつこう……として、あるところに目が止まった
アクセサリーなどの小物品売り場だ。安物なのかペンダントやイヤリング、指輪までなんでもござれだった。そしてイヤリングを見て、瑠璃…正確には、顔のある一点に目がいった
「…………」
気がつけば、僕は
……そのあとに
あれから約1時間くらい経った。流石に外で景色でも見ながら街中を散策していれば色々忘れられたのか、僕も瑠璃もいつも通りな状態に戻っていた。スマフォを取り出し時計を見る。12時27分……もう昼飯時か、腹減ったなぁ。適当に何か選んで…って訳にもいかないよなぁ、瑠璃いるし。どうしたも…
グウゥゥ〜〜ゥウ〜〜〜……
人や車などで周りがかなりうるさいにも関わらず、突然耳に響いた腹の音。発生源は僕の腹。こちらを向いた瑠璃に対して何か言わないといけないような気がして、どうせだからと思って聞いておく
「瑠璃、そろそろ昼飯時だけど何が食べたい?」
「……ふふふ、お腹の時計でも鳴ったの?」
僕の問いに対して茶化しを入れてくる瑠璃。ちょっそういう反応は止めて、別に傷つかないけど色々増えるからさ……黒歴史とか
返しに困る返答をされてしまいどう答えるべきかと迷っていると、瑠璃は辺りを軽く見渡してとある店を指名してきた。ハンバーガーショップ……いわゆるジャンクフードとかが食える店だが、なんというか意外であった。もっとこう、喫茶店とかレストランとか選ぶと思っていたのだが…いや、これは偏見か?だが予想外だったのは事実なので、一応再度確認を取る
「…本当に良いのか?あそこで売ってるの、ハンバーガーとかだけど……」
「流石に食べたことくらいはあるわよ。それに、近くにある店はあそこに以外にないみたいだし」
……どうやら、僕は彼女に気を使わせてしまったみたいだ。確かにこの1週間、睡眠時間のズレとかで朝抜きも1、2回はあったが…それで、今日も朝食ってないのバレたのかな?思いの外、心配を掛けさせてたみたい。悪いことをしたなぁ…
「……ゴメン。あと、ありがとう」
「どういたしまして」
さて、謝罪と礼も済ませたことだし、とっとと飯食うか。そう思いながら2人でバーガーショップに入った。入った、のだが……
異常と言っていいほどの人数がいて、子供の走り回る音と泣き叫ぶ声とポテトを揚げる油の音が店内を響き渡る。うっるせ?!鼓膜が破れるかと思った…今日という日が日曜日だというのをすっかり忘れていた
『ーーーったく、柿本たちはまだか?なんで俺が、こんな所で待たなきゃならねぇんだよ……』
「かなり席が埋まってるわね…どうする?」
「席が空いてるなら今食っときたいんだが……殆ど埋まってるなぁ、どうしよ……」
席が空いてないんじゃ注文しても意味ないしなぁ。待つのは面倒だから当然却下だし……テイクアウト出来るのか?この店
『おい、向こうの奥…1人だけ座ってるのがいるぞ。聞いて合席させてもらったらどうだ?』
「ん?お、本当だ。瑠璃、ちょっと待ってて」
「え、風斗?」
手間を取らせる訳にはいかないので、瑠璃を置いて移動を始める。人混みがすごいので人影しか分からないが、確かに大きなテーブル席を1人で座ってる人がいる。話が分かる…というか合席を許してくれる人なら良いが……
席が近づくにつれ、影が明確に人を映し出す。後ろから見える茶髪、その上から遊戯王特有の上に跳ね上がったかのような形状の金髪…そして、遊矢が羽織るように来ていた白い制服を着込んでいて……あれ?なんか既視感があるような……
「すみません。もしよろしければ、合席してもよろしいでしょうか……ッ…?!」
きっと今の僕は、信じられないものを見るような目をしているだろう…でも、実際仕方がないのだ。その席をふてぶてしく座っていたのは、こんな
「あん?なんだお前は…合席?俺が誰だか、分かって言ってんのか?」
ーーーソファに座りながら大仰なポーズをとるそいつは、遊戯王ARC-Vの主要人物の1人…
「いやぁ、ありがとね沢渡くん。わざわざ合席を許してくれて」
「なぁに!レアな俺は寛大だからな、これくらい俺の器を知らしめるためと思えば軽いものよ!」
「さすがだなーエリート沢渡くん、すごいなーあこがれちゃうなー」
『そこにしびれるあこがれるぅー』
白黒コンビで棒読み気味に褒め称えながら、オーイエー!とハイになる沢渡の愉快な姿を脳内フィルムに焼き付けておく。こんなレアな光景はホントに覚えとかないとなぁ。転生時の目標が知らない間に達成した瞬間だった
「何コレ……風斗、この人は誰?どうしてこうなったの?」
この場において唯一状況を飲み込めてない瑠璃が、現在進行形で当惑しながらも僕に説明を求めてくる。目が若干笑ってない。まぁ、端から見ればアホか狂ってるとしか思えないよな沢渡のテンションって……大多数の人間が前者を取るとは思うが
騒いでるのを利用して、沢渡に聞こえない音量で瑠璃に小声で何があったのかをボソボソと答える
「簡潔に答えると、褒め称えたら合席を許可された」
「一体何を言ったの…?」
別に変なことは言ってないよ。ただ、沢渡の襟元のバッチ見ながらLDS所属なんですかすごいなー的なことを機嫌を損ねないように言ったらなんか気に入られてしまった…といったところである。だから瑠璃、その変な人を見るような目を僕にも向けないように。僕のガラスハートが粉砕!玉砕!大喝采!!してしまうから
ちなみに沢渡、何故不機嫌になりながらもバーガーショップに居座っていたのかというと、なんだか取り巻きたちから相談を受けたらしく、その待ち合わせ場所でここを取り巻きたちに選ばれたらしい。なんだかんだ言いながらも取り巻きたちに慕われてる理由はこの辺にあるんだろうなー…なんて思った
ちなみに沢渡を君付けなのは一応初対面だから。いや、流石の僕でも表面上の礼儀くらいはちゃんとあるよ?君付けとかはあまりしないけど
「アグ………沢渡くん。改めて聞くけど、君ってLDSの所属なんだよね?」
ダブルチーズバーガーの1/4を一口で頬張りながら、僕は沢渡に質問をする。正直に言えば、このタイミングで沢渡…LDS所属なら誰でも良かったが、一般人よりは贔屓されてはいるであろう沢渡と会えたのは物凄くラッキーだったのだ。もしかしたらこいつ経由で、赤馬社長に出来る可能性が浮上してくるかもしれないから。会える確率すら0である今の現状からすれば、とてつもない
「ん?あぁ!このLDS所属を証明するバッチが、何よりの証拠だ!」
そう言いながら、襟元につけられた金ピカのバッチを見せつけるようにズイズイアピールしてくる。ウザいというより鬱陶しい……瑠璃もウンザリとしたご様子だ。ゴメンね
「ーーー赤馬零児に、会ったことってある?それも、個人的な形で」
「赤馬零児に、だと?…そんな事はねえな。なんでンなことを聞いたんだ?」
「あぁーーー……会っ、てみたいって思ったんだよ。あの歳であのデュエルの腕、どれほどの実力があるのかをね」
「へ!デュエルの実力なら、俺だって負けちゃいねえよ!いや、レアで持っている俺なら、赤馬零児をギッタンギッタンにすることだってできるぜ!」
「そうなのかーすごいねー」
良い加減この棒読みも飽きてきたな。赤馬社長との接触も無理くせえし、適当にあしらって……
「テメェら全員動くなぁ!!」
えらく不愉快で野太い声がバーガーショップの店内を響き渡らせる。音源の元をたどってみると、いかにも怪しい!って感じの覆面の2人組の男が拳銃を1丁ずつ手に持ってうち1人が店員を脅していた。これって、もしかしなくても……強盗?
一瞬で、店内は混乱に陥る。悲鳴と泣き声が飛び交い、逃げを試みる者、怯える者、子供を抱きしめる者など、日曜の平穏な光景が嘘のようである。そこを黙らせるような銃声が1発
「全員静かにしろォ!!今からテメェらは全員人質だ!余計なことをすれば撃つぞ!」
ヒェ、銃声なんて生で初めて聞いたよ。しかもガチで撃つとは…この世界にはここまでのリアリストも居たんだな。……2人とも左腕にはデュエルディスクが付いていることは見なかったことにしよう。強盗にデュエルディスクは必要なんですかねぇ…?
銃身の端を光らせながらそう脅されれば皆黙ることしかできず、怯える声や嗚咽を漏らす声も聞こえる。僕も例に漏れず黙ってしまう側であり、瑠璃の背をさすりながら静かにテーブルの下に無理矢理隠れさせる
あいつらは僕たちを人質と言った。つまりは何かしらを罪を犯して警察に追われている身…といったところだろう、あるいは脱獄犯か。なんにせよ、銃を持っている奴相手に抵抗するなどバカのすることだ
『なんか、初代遊戯王のバーガー店の強盗事件を思い出すな』
まったくだ。なんだってせっかくの休日にこんな目に遭わなきゃ…もとい、瑠璃を危険な状況に遭わせなきゃならないんだ……。とりあえず、ここは大人しくしているのが吉。要求が通って人質が解放されるか警察がどうにかしてくれるのを待つしかない。……もし、人質を解放する気がないなら、全力で抵抗してやる
出来れば何事も起こりま……
「テメェら!俺にこんなことして、タダで済むと思ってんのか!?」
「沢渡ィッ?!」
強盗たちの前に堂々といきり立ったのは、ついさっきまで己の伝説(自称)を悠々と語っていた沢渡だった。顔は怒りと妙な確信に満ちていた。おそらく、自分の父親のことを言えばこいつらもこんなことは止めるだろう…という、ゆとり教育ゆえの確信
しまった…!こいつはシンクロ次元でもセキュリティ相手に喧嘩を叩き売りするほどの大バカだった…!なんでそのバカをこんな妙なところで発揮しちまったんだよ沢渡ィ!!
「あん?なんだこのガキ?」
「ガキだと!?テメェ、舞網市次期市長の息子である沢渡シンゴを知らねえのか!」
「おいバカ止めろ沢渡!相手は銃を持ってんだぞ!刺激するな!」
先ほどの口調などかなぐり捨てて沢渡の蛮行を必死に止める。マジで良い加減にしろよ!なんで僕がここまで胃が痛むような事態に引っ掻き回されなきゃならねえんだよ!?ストレスでどうにかなってしまいそうだ!
「へ!ガキの分際で調子に乗りやがって!こうなりゃテメェのデッキを貰ってやるよ!」
「あ、返しやがれ!俺のレアカードデッキ!」
「ほおぅ〜?レアカードが入ったデッキなのか?こりゃ高く売れそうだぜ」
無理矢理腰に入ったディスクとデッキの入ったケースごと、沢渡が強盗にカードを奪われる。これに関してはハッキリ言って沢渡の自業自得だ。普段なら少しは突っかかるんだが、今回は相手が悪いしイライラしてもいる。悪いが僕は元の場所に戻らせて……
「良いことを思いついた!この店の人質のカードを全部いただいてやる!」
それは、この場の大多数の人間からして最悪の宣告であった。自分の分身たるデッキを奪われる…デッキなどいくらでも作れば良いと思うかもしれないが、この世界は窃盗の対象になる程戦力になるカードは高価になるし……思い出詰まったデッキが消えて無くなるのは、耐え難い苦痛というものがあるのだ
そして男は、理由は分からないが僕のデュエルディスクに手を伸ばし……
「まずはお前のデッ」
「オ゛ラ゛ァ゛ッ!!」
「ブガッ?!」
ーー黒い布越しの顔面に僕が繰り出したシャイニングウィザードをクリーンヒットさせた。鼻血と思わしきものを少量床にポタポタ落とすが、構いもせず銃を持った手首をがっしりと掴む。強盗たちは唖然としている。店員も客たちも沢渡も唖然としている。瑠璃だけはため息を吐いていた
今、僕の胸中を支配するのは、敵に対する恐怖でもなければ、立ち向かう勇気でもない。では怒り?答えはノー…ではないが、正確に言うならば……
「テメェ……!何……僕のデッキに手ェ出してんだゴラァァァーーー!!」
「ギャアッ!」
そのまま手を勢いよく地面に叩きつけて銃と、ついでに沢渡のデッキケースを手から離させる。転がった銃を見ながらもう1人の強盗を見据える僕が行動に出した理由は……言葉に出した通り、私怨丸出しの理由であった
「…テ、テメェ!抵抗はするなと…!」
「ラァッ!」
無理矢理立ち上がらせた強盗に蹴りを見舞いして、もう1人の奴に吹っ飛ばす。横から迫る成人男性1人分の重力は重かったようであり、ぶつかった衝撃でそいつは銃を手放す。それに近づき指を引っ掛けながらこちら側に寄せ、銃を失った強盗共に出来る限りの怒りを込めて話し掛ける
「……抵抗が、なんだって?」
「グ、グゥ……」
「おい、起きろ!……チクショウ!こうなったらデュエルだ!せっかく脱獄したのに、務所に戻るなんざ2度とごめんだ!」
ゆっくりと起き上がりながら、僕を睨みつけながら、強盗共はデュエルディスクを起動させる
なるほど、想像の1つが当たったみたいだな。しかし脱獄にバーガー屋に強盗……ホントどこまでも初代遊戯王のあの話みたいだな。違うところは、こいつらが
「デュエルだと?…良いだろう、構えろクソ共が」
だが、そんなことは知ったこっちゃあない
余談だが、ガキの頃から今にかけて3回ほどデッキを盗まれる経験があった。1回は小学生の時、2回目は中学の時、最後の3回目が高校の時……初めて盗まれてからは本当に周りを警戒した。むやみやたらにデッキを見せないようにした…けどまた盗まれた。3度目は見つけにくい場所に隠したし、学校だから取り出すにしても必ず時間が掛かるからその間に他の目撃者によって止めざるおえないだろう。…けど、それでも、結局は盗まれた
盗られた時の気持ちは、ただひたすらに悔しかったのと腹が立った。今こうやって悔しがってるのをほくそ笑んでる奴がいるのだと思うと、血管がブチ切れそうだった。失くしただけと周りから言われたが、あれは絶対に盗まれた!少なくとも2回目と3回目は絶対に間違いない!だからだろうか…カードを盗まれるという行為が、僕には無性にムカついて仕方がない。自分のカードならば尚更だ
こいつらは、僕の触れちゃいけない逆鱗に触れた。そのツケは、利息マシマシでたっぷり払わせてやる!!
「「「デュエル!!」」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
&
強盗男B LP4000 手札 5枚
『オイ!俺様を差し置いて、何勝手にデュエルしてんだよあいつ!しかも2対1で戦うとか、勝てるわけねえだろ!』
『ううん、正直風斗が負ける心配は一切ないわ…どちらかというと、あの2人の方が危ないかもしれない……』
『ハァ?何のことだよ』
「僕の先行!僕は「クリバンデット」を召喚!」
毛むくじゃらの茶色い何かが現れる。その小さく短い手足から鋭い爪を見せつけて、黄色いバンダナをつけた毛玉悪魔がその眼帯で隠してないもう1つの青い目を瞬きさせる
クリバンデット
レベル3 ATK1000
「攻撃力1000だと?そんなクズカードで何ができる!」
「エンドフェイズに移行…そしてエンドフェイズに、このターン召喚に成功した「クリバンデット」の効果が発動する。このカードをリリースすることで、デッキトップを5枚めくり、その中に魔法・罠カードがあれば手札に加える!」
できるだけ手早く終わらせるため、デッキトップを順に素早く5枚めくっていく。「
「僕は効果で「ギャラクシー・クィーンズ・ライト」を手札に加える!残りのカードは墓地に送られる!これでターンエンドだ!」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
&
強盗男B LP4000 手札 5枚
僕のエンド宣言を聞いて、周囲から落胆の声が聞こえる。フィールドがガラ空きなだけでここまでガッカリされる謂れがあるのか?寧ろほんの少しくらいは警戒しろよ。強盗共は笑ってるし、沢渡はなんか切れてるし
「とんだ素人だな!元プロの実力を見せてやる!俺のターン、ドロー!」
デッキからカードをドローし、ニヤリを気持ち悪い薄ら笑いを浮かべる男。何か来るか…
「俺は「ツインバレル・ドラゴン」を召喚!」
銃をモチーフにしたような容姿をした、2本足だけの青い機体のドラゴンが唸り声を上げる。その頭部の上顎と下顎の先には大きな銃口があり、文字通り
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
「「ツインバレル・ドラゴン」でダイレクトアタックだ!喰らえ!」
「グッ…!」
2つの銃砲から破壊の衝撃がこちらに向かって撃ち放たれる。強い衝撃は身体の上半身の2箇所を狙っていたが、咄嗟に構えた2本の腕のおかげで言うほどの痛みはなかった
白星 風斗 LP2300 手札 5枚
「ハハハハ!これが俺の力だ!どうだ、思いし…ん?」
撃ちつけられた箇所の煙が、黒い瘴気に徐々に変わってゆく。それがフィールドに集められていくと人の形を形成していき……黒く細い、銀の装飾を施された鎧の男が姿を現す。その両腕には歪曲に2回曲がった大きな刃、腰にはそれ以上に巨大な大剣が装備されている。赤い腰巻をマントのようにたなびかせ、後ろに剣山のように伸びた紅い髪の頭部の目元は、感情を悟らせないような黒いバイザーをつけられていた
突如僕の前に立ち塞がった人を模した悪魔に、強盗たちが目に見えて狼狽する
「な、なんだ!?こいつは!」
「…自分の場にカードが存在しない時に相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、「冥府の使者ゴーズ」は手札から特殊召喚できる」
冥府の使者ゴーズ
レベル7 ATK2700
「こ、攻撃力2700のモンスターを、いきなり召喚だと…!?」
『なるほど、場にカードを残さなかったのはあのモンスターを召喚するためだったのか。…だが!あんな超絶レアカード、俺にこそ相応しいってもんだろうが!』
『……レアカードだからどうとかいうの、止めた方がいいと思うけど……』
「さらに「ゴーズ」は、自身の効果で特殊召喚した際のダメージの種類によってもう1つ効果を発動する!」
「なんだと!?」
「戦闘ダメージを受けた時、そのダメージ分の攻撃力・守備力を持つ「冥府の使者カイエン・トークン」を特殊召喚する!」
次に出現したのは、薄い紫と灰色の兜と鎧を身につけた赤いロングスカートの女型の天使。だが、どこまでも冷たい見下すような目と右手に持った長剣が、イメージされる天使とは180度違うものだと認識させた
冥府の使者カイエン・トークン
レベル7 ATK1700
「俺のターンなのに、2体もモンスターを……」
「そうだ、まだお前のターンだ。どうする?」
「グウゥッ……!「ツインバレル・ドラゴン」の効果!コイントスを2回行い、2回とも表だった場合、相手フィールドのカードを1枚破壊する!」
キィン…と、
「外したな」
「クソ!俺はこれでターンエンド!」
自分の運に悪態をつきながら、男はターンを終了させた。喜びの歓声が、湧き上がる
白星 風斗 LP2300 手札 4枚
冥府の使者ゴーズ
レベル7 ATK2700
冥府の使者カイエン・トークン
レベル7 ATK1700
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
&
強盗男B LP4000 手札 5枚
「次は俺のターンだ!ドロー!…へへ、俺は「ツインバレル・ドラゴン」を召喚!」
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
「さらに魔法カード「
2口の銃砲の頭を持つ竜が生贄のために粒子と消え、再構築されて現れたモンスターは「ツインバレル・ドラゴン」に類似した赤い竜。しかし、その頭部の銃口は2つではなく…1つだけ。下顎を除いた頭の全てが、オートマチック型の頑丈で巨厚な銃に変化していた
ブローバック・ドラゴン
レベル6 ATK2300
「「ブローバック・ドラゴン」は1ターンに1度だけコイントスを3回行い、うち2つが表ならば相手フィールドのカードを1枚破壊できる!…だが、俺は相棒のようなヘマはしねえ。永続魔法「セカンド・チャンス」を発動!これがあればコイントスの効果を失敗しても、1度だけ効果をやり直すことができる!」
その効果を聞き、周囲に巻き起るのはブーイングの嵐。やれ「卑怯」だの「正々堂々戦え」だの……鬱陶しい観衆だな。自分の身可愛さとはいえ、しっかりルールに則ってデュエルしてるにも関わらずここまでプレイングに文句を言うか?これで卑怯なら、僕のデュエルはどうなることやら……
『酷い民度だなぁ、スタンダード次元。知ってたとはいえ』
まったくだ。瑠璃を見てみろ、信じられないものを見ている顔だ。沢渡だって気分の良さそうな顔はしてないぞ
「うるせぇ!デュエルは勝てば良いんだよ勝てば!」
「…それに関してだけは同意だな。……僕からは何もない、コイントスを始めろ」
「そう余裕こいていられるのも、今のうちだ!」
上空に放り上げられる3枚のコイン。垂直に、斜めいて、放物線を描いてそれぞれ地に落下し、コイントスの結果が硬質な音とともに公開される。コインは……驚くべきことに、全て太陽が描かれた表。「セカンド・チャンス」の意味はなさなかったものの、この状況で奴は豪運を発揮したのだ
「コイントスの結果は、全て表!よって俺は、お前の最大攻撃力のモンスターを破壊するぜ!」
銃竜が、獲物に狙いをつける。スナイパーライフルのような標準も何もない銃口は、だが的確に「ゴーズ」に向けられ……火と銃弾を吹き、薬莢が吐き出される。巨大で強力な凶弾を「ゴーズ」は無防備な状態で受けるしかなく、着弾と同時の爆発に「ゴーズ」はなす術もなく破壊された
「これでお前の場には低い攻撃力のモンスターだけだ!「ブローバック・ドラゴン」で「カイエン・トークン」に攻撃だ!」
「ツインバレル・ドラゴン」よりも強い1発の銃撃が、「カイエン・トークン」に襲い掛かる。銃弾を剣で必死に受け止めようとするも…「ブローバック・ドラゴン」の方が攻撃力は勝っているために、銃弾は白い鋼の剣を貫通する。「カイエン・トークン」が破壊され消えるのは必然だった。壊された命は黒い何かに変質し、流動しながら床の上に
白星 風斗 LP1700 手札 4枚
「どうだ!これでお前のモンスターは全滅…ッ?!」
だが、この程度で勝ち誇るようでは…僕には絶対に勝てない。目を見開く強盗を
「カイエン・トークン」の成れの果てだった黒のそれは、グズグズと煮え
蜘蛛のような胴体から生えた6本の脚、そこに禍々しい上半身がついており、2本の腕の先にはハサミのような手がつけられている。非対称な2本の角が横に伸びた頭部には…黄色い眼光を迸らせる邪神が、醜悪な顔面でおぞましい表情を浮かべていた
トラゴエディア
レベル10 ATK1800
「戦闘ダメージを受けた時、「トラゴエディア」は手札から特殊召喚ができる」
「レベル10のモンスター、だと…!?だ…だが、そのモンスターの攻撃力は1800!2300の「ブローバック・ドラゴン」を倒すことはできない!」
「そうでもないさ、「トラゴエディア」は自身の手札枚数によって攻撃力が決まるモンスター…今手札が3枚だから600ずつ上がって1800。次のターンでカードをドローすれば2400に攻撃力は上がる」
「そ、そんな効果が…!?」
ま、このカードを採用している最大の理由は、
「グググ…!俺は、ターンエンド…!」
白星 風斗 LP1700 手札 3枚
トラゴエディア
レベル10 ATK1800
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
&
強盗男B LP4000 手札 2枚
ブローバック・ドラゴン
レベル6 ATK2300
セカンド・チャンス
この次元には、手札誘発のカードが採用されるようなことはまずあり得ない。何故なら、殆どの人間が攻撃力でカードを比べるから。つまりカードを1枚も伏せないということは、迎撃の手段が何もないというに等しい……カードプールの問題だとしても、このプレイングで元プロ?
「元プロっつっても、所詮はこの程度か」
「何だと!?」
「人のプレイングにとやかく言うのは失礼だとは思うが、いくら何でもお粗末すぎるだろ。テメェの実力の底が見えたよ」
「このガキィ!負けてるくせに調子に乗りやがって!」
「ガキっつうなよ、僕はもう19だぜ。……それに、負けてる?残念だが、負けるのはテメェらの方だ!僕のドロー次第では、このターン以内にテメェらのライフを0に出来んだよ!僕の、ターン!!」
力強く、怒りと本能に任せてカードを引き抜く。通常召喚可能なモンスター…「レベル・スティーラー」とかを引けば、このターンでぶちのめせるが……あ
「…………」
「どうした!このターンで俺たちを倒すんじゃなかったのかよ?」
「どうやら目的のカードは引けなかったみたいだな!」
……うん。この状況で引きたかったのは確かにモンスター…それも、通常召喚できる下級レベルの奴だ。僕が引いたのはモンスターですらない魔法カードだ……けど……
「…お前らも運がないな。モンスターよりも極悪なの引いちゃったよ」
「何?」
デッキにピンで刺してた除去カード…もっと言うなら、モンスターを除去できるモンスターを特殊召喚できるカードを引いてしまった……ってところか。マジで同情するよ
「僕は今引いた「
白星 風斗 LP700 手札 3枚
「このカードの効果により、エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを、融合召喚扱いで特殊召喚する!」
「ハァ?!融合モンスター!?」
沢渡が素っ頓狂な声を上げるが無視する
巨大な渦が背後に出現する。薄く形取られた1つ目と千眼、2体の悪魔が飲み込まれ……混ざり合う
「生贄を強いる1つ目の悪魔よ!かりそめの千眼と混じり合いて、新たな邪神へと生まれ変われ!」
姿を現したのは、歪な形の顔…ともとれる身体を持った存在。だが、防具のように広がった肩と鋭い爪を持った太い腕には筋肉が縄めいて浮き上がり、黄緑色の目と丸い大きな口が開かれたと同時に……全身の閉じられた眼が一気に開眼する。そして額と思わしき部位から、謎の液体を滴らせながらうねらせ…先端についた眼の形をした何かが、金色の光を反射させた
「融合召喚!開眼せよ、レベル1!「サウザンド・アイズ・サクリファイス」!!」
サウザンド・アイズ・サクリファイス
レベル1 ATK 0
「サウザンド・アイズ・サクリファイス」。どう見ても悪魔な…それ以上の見た目でありながら、魔法使い族という「ビッグ・アイ」並みの種族詐欺なモンスターで…今回の禁止制限で10年ぶりに禁止解除された融合モンスターである。今となってはただの対象をとる除去カードなだけの扱いだが、最初期はそのチートな効果で猛威を振るいまくったモンスターといえよう。流石遊戯王最初のボス、ペガサスの切り札
その異質なモンスターを見たせいか、周囲からは悲鳴と泣き声が聞こえる。…そこまで怯えられたら「サウザンド・アイズ・サクリファイス」が可哀想に思うぞ
「何だ?!一体何をしたんだ!?」
「融合召喚、だと…!?知らないぞ、そんなもの!」
そして、明らかに僕の想像とは別ベクトルで動揺している強盗2人組。ん?こいつら、融合召喚を知らないのか?LDSが広げたっつってたのに……
『脱獄、って言ってたからな。もしかしたら務所では情報が出回ってなかったのかもな』
あぁ、納得。LDS直々に情報操作をして…たよね?…してたならそもそもシャバの情報があまり入らないであろう務所で生活を送ってたこいつらが、融合・シンクロ・エクシーズを知らなくても不思議ではないか
だからってぶちのめすことに変わりはないが
「「
「俺たちのモンスターを、装備だと!?」
「「ブローバック・ドラゴン」を対象!「ダーク・ホール」!」
「サウザンド・アイズ・サクリファイス」が口を胎動させながら空気を吸い込む。「ブローバック・ドラゴン」は凄まじい力で徐々に引き寄せられていき…とうとう、身体の半分が口の中に収まってしまう。身体をよじらせジタバタと最後の抵抗を試みるものの、既に時遅し。無慈悲に「サウザンド・アイズ・サクリファイス」に吸収された「ブローバック・ドラゴン」は、「サクリファイス」の肩部位の内側から浮き上がるように現れ、その惨状を周囲に知らしめた
サウザンド・アイズ・サクリファイス
レベル1 ATK2300
(装備)ブローバック・ドラゴン
あまりに
けど、ここまでやったからには何としても勝とう。つーか、勝たないと空気がヤバいだろ…
「……手札の「時械神メタイオン」をコストに「ワン・フォー・ワン」を発動!デッキからレベル1のモンスターを特殊召喚する!「レベル・スティーラー」を特殊召喚!」
背中に黄色の星マークの模様が1つだけ描かれた小さなてんとう虫が現れる
レベル・スティーラー
レベル1 ATK600
「さらに墓地の「レベル・スティーラー」の効果発動!自分の場のレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げて、墓地からこのカードを特殊召喚できる!「トラゴエディア」のレベルを9に下げて特殊召喚!」
「トラゴエディア」のレベルが下がると同時に、墓地から「レベル・スティーラー」が登場する。何も描かれてない赤い背に光る星が1つ現れる
トラゴエディア
レベル9 ATK600
レベル・スティーラー
レベル1 ATK600
「手札の次は、墓地からモンスター効果だと!」
「いや、そもそもそんなカードをいつ墓地に!」
「最初の「クリバンデット」の時に落ちたんだよ。そのためにあのカードを採用してんだ」
「だが、たかが攻撃力600のモンスターを3体を揃えたところで何になる!そんな攻撃力じゃあこのターンで倒すどころか、「ツインバレル・ドラゴン」すら倒すことができない!」
エクシーズ召喚を知らないからな、そう考えるのも無理はないが……エクシーズを知ってるはずの沢渡までなんか文句言ってんのは訳が分からんが…瑠璃、ちゃんと止めといてね
だが、これから地獄を見せてやる
「「トラゴエディア」のモンスター効果!墓地の「時械神メタイオン」を対象に発動!エンドフェイズまで「トラゴエディア」は、対象モンスターのレベルと同じになる!「時械神メタイオン」のレベルは10!「トラゴエディア」のレベルを10に戻す!」
トラゴエディア
レベル10 ATK600
「そして最後!魔法カード「ギャラクシー・クィーンズ・ライト」を、レベル10の「トラゴエディア」を対象に発動!僕の場のモンスターは全てレベル10になる!」
サウザンド・アイズ・サクリファイス
レベル10 ATK2300
(装備)ブローバック・ドラゴン
レベル・スティーラー
レベル10 ATK600
レベル・スティーラー
レベル10 ATK600
準備…完了!
「僕はレベル10の「トラゴエディア」と「サウザンド・アイズ・サクリファイス」で、オーバーレイ!」
邪神と邪眼、それぞれがオレンジ色の光の球となり宇宙のような穴に入り込み……激しく光を弾かせる。そこから最初に見えてきたのは…どこまでも長い砲塔
「牙城を撃ち抜く砲台よ!地を鳴り響かせ、鉄路の彼方より現れろ!」
それは、本来ならば見上げるほどに巨体な列車。前方上部に敷き詰められた深い緑のブロックが花のように上方に開かれ、そこから全長の2、3倍はあるであろう黒鉄の砲塔を伸ばし、その力の象徴を光らせた
「エクシーズ召喚!ランク10!「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」!!」
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
召喚したのは、OCGでもワンキルでトドメ役を買うほどの凶悪効果を持ち合わせたエクシーズモンスター「グスタフ・マックス」。前の世界ならOCG経験者は誰もがこの呪文を耳に、あるいは口にしたはずだ。「グスタフオラァ」と
予想に反して無骨なモンスターが出てきたからか、みんなは呆気を取られている。男の子たちは大はしゃぎしていた。沢渡はギャーギャー喚き、強盗たちは完全に青ざめている
「な…なんだよ……このモンスターは……攻撃力3000…?」
「エクシーズ召喚だと…!?俺たちが務所に入っている間に、こんなカードが作られていたのか…!?」
『その辺の事情はちょいと違うんだけどねぇ。あいつらどんだけ服役してたんだよ』
全くだ。少なくとも3年以上は服役していたことになるからなぁ…昔のカードだけじゃ今の環境には絶対ついてこれない、可哀想にねぇ
「だが慈悲はない。レベル10となった「レベル・スティーラー」2体で、オーバーレイ!エクシーズ召喚!ランク10!「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」!!」
再び、かなり縮小された「グスタフ・マックス」が、2体目として僕のフィールドに轟音を唸らせながら登場した
ここに来て、完全に僕と敵の優劣は逆転を果たした
白星 風斗 LP700 手札 0枚
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
&
強盗男B LP4000 手札 2枚
セカンド・チャンス
「「サクリファイス」に装備されていた「ブローバック・ドラゴン」は墓地に送られる……さぁ、バトルフェイズだ!「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」でダイレクトアタック!」
「グスタフ・マックス」が
「グブゥッ!?」
豚のような悲鳴を上げながらやられる中年男は、見ていて憐れで仕方なかった
白星 風斗 LP700 手札 0枚
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
&
強盗男B LP1000 手札 2枚
セカンド・チャンス
「余生は
「ちょっグワァッー!」
流石に2度も轢かれればその肉体は耐えきれなかったのか、
白星 風斗 LP700 手札 0枚
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
VS
強盗男A LP4000 手札 5枚
ツインバレル・ドラゴン
レベル4 ATK1700
&
強盗男B LP 0 手札 3枚
「な、気絶した…?
「バトルフェイズ終了、メイン2。さぁ、懺悔のお時間だ。お前のライフを数えろ」
「懺悔、だと?た、確かにそのエクシーズモンスターとやらは強力だが、お前の攻撃はもう終わっている!俺の手札には「ライトニング・ボルテックス」があるんだ!これでエクシーズモンスターを破壊すれば……」
「「グスタフ・マックス」には効果があってな。1ターンに1度、
「……ハ?」
「あぁ、
あぁ、こういうネタばらしは本当に楽しい…愉悦。我慢ができなかったので思いっきり口角を上げて笑ってみせるが、よほどゲスかったのだろうか、周囲の人間があからさまに引いている。強盗の片割れはガタガタ奥歯を鳴らしていた
「もう1度聞くぞ、お前のライフを数えろ」
「お、俺のライフは、よんせ…ん……」
金属が擦れ合う音が聞こえる。僕の斜め後ろで2両の戦闘列車がそれぞれ砲台を男に向ける。発射は……秒読みでやるか
「よく言えました♪……というわけでフィニッシュだ。「グスタフ・マックス」の効果、
指を順に折りたたんでいく。最初に親指、次に小指……薬指、中指と立てられた指が1秒ごとに減ってゆき……
「4、3、2、1……発射!」
ーーー初期ライフを一瞬で刈り取る爆裂が、男の全身に痛みとしてくまなく駆け巡った
「ギャアアアァァァァァーーーーー!!」
白星 風斗 LP700 手札 0枚
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
超弩級砲塔列車グスタフ・マックス
ランク10 ATK3000
VS
強盗男A LP 0 手札 5枚
&
強盗男B LP 0 手札 3枚
勝利と同時になぜか歓声が沸き上がった。何ゆえ?だがまぁどうでもいいことなので、それよりは重要な強盗たちの状態を確認する
一応男たちを1箇所にまとめて、気絶してるかを平手打ちで2、3発殴って確かめて…それでも起きなかったので、腕を後ろで固結びに縛り付けて……
「……さて、飯の続きでも食うか」
ポテトとか絶対冷めてんだろうなぁ…まぁそれもうまいんだが……なんてことを呑気に考えながら、1番重要な昼飯の続きを食べようと振り返った
「ウオァ?!」
…だが、何故かさっきまで怯え泣いていた子供たちが揃いも揃って僕の元に集合。みんな輝いた目で僕を見ながら笑っていた
「かっこいいー!」
「お兄ちゃん、すごーい!」
「さっきのって、なんてモンスター!?」
「もっかい見せてー!」
「やかましい!鬱陶しいぞガキども!そこ通れねぇんだからどけ!」
マジでどうしてこうなった!?せっかくの休日なのに、ゆっくりと休みたいのに…何故僕はガキどもにもみくちゃにされてる!?飯だってまだなんだから退いてくれよホント!
「おいテメェ!なんでLDSが教えてる融合召喚やエクシーズ召喚が使えんだよ!説明しやがれ!」
「元を辿ればお前のせいでもあったな沢渡ィ!」
ちっくしょ!こいつを使ってLDSへのパイプでも作ろうと考えた僕がバカだった。とんだ災いの種だよこいつは!
『おい、サイレンの音が聞こえるぞ。もしかして警察が来たんじゃないか?』
え、警察?耳を澄ますと、ファンファンと遠くからだがサイレンが耳に響き渡る。ついでに言えばパトカーと思わしき赤いランプも遠目に見えてきた。……マズい!本能的危機能力が全身に警報を鳴らし、頬に汗が幾つも伝う
手遅れだとは思うが、すぐにフードを被る。ガキの包囲網を無理矢理抜け出し、大きめの窓を全開に開ける。風が髪を浮き上がらせるが放っておいて、ソファのカバンを持ち、紙袋を両腕に通し、瑠璃の膝裏と背中…お姫様抱っこの状態で持ち上げる。急に持ち上げられたことで驚き、可愛い悲鳴をあげる
「キャッ!…え、風斗!?」
「ゴメン!ちょっと我慢して!」
許可もなく男に身体を触られるのが嫌だとは思うけど、今は緊急事態だから!
瑠璃、紙袋、カバン…そして身体を窓枠にぶつからせないように身体を丸めて開け放した窓から飛び込み、着地と同時に警察から離れられてかつ遊勝塾に近づける方角に全力でダッシュする
『テッメェ逃げんな!俺が誰だか分かってんのかー!』
バカとアホとダメと三拍子揃った沢渡シンゴだろうが!あぁもうちくしょう!日曜なのに!休日なのに、どうしてこうなった!?答えろ、ルドガアアァァァーーーー!!
ようやくある程度の距離を離れられたので、瑠璃を地面に降ろして近くの壁に手をつけながら激しく乱れた息を整える。つ、疲れた…本当にっマジで疲れた……!
「だ、大丈夫……?」
「ぜんぜ、ん……ハァ、ハァ…大丈夫じゃない…!休ませて…ハァ、ハァ…!」
身体が嫌な熱で火照り、早く冷ますべくパーカーを脱ぎ腰に巻く。涼しい空気が皮膚の表面を撫で、すぐに身体が冷えていくのを感じ取った
「……あの、ゴメンなさい……」
「うん…?」
呼吸も段々と落ち着き、結構余裕が出来始めたところで瑠璃が唐突に謝ってきた
「私のワガママに付き合わせて、こんなことになっちゃって……」
こんなこと、というのは、今ここで疲れるような現状のことであろうか?それともさっきの強盗事件?どっちも一緒か
まぁ確かに、瑠璃と一緒にいたから長いこと歩き続けたし、強盗事件には巻き込まれるしで大変な目にあったのは確かな事実。そこは覆せない
「別に気にしなくていいよ。あれ、瑠璃が悪いって訳じゃないし」
強盗が悪いのも当然だが、僕からすれば諸悪の権化は沢渡と言えよう。あの野郎…次会ったら外道カウンター(マリク風味)でジワジワといたぶってやる……!別に嫌いな奴ではない。…ただ鬱陶しいのと災いを招き寄せるって点が色々とアウトなのだ
「風斗……」
「それに、久々に誰かと出掛けて楽しかったよ。買い物とかさ……ありがとう」
さて、と。気分と体調も元に戻ったし、街には今行ったら巻き込まれそうだから、その辺ぶらつきながら……
そう思い腰巻代わりのパーカーをパンパンと埃を払い……ポッケに入ってた小さい
「?風斗、何か落としたわよ」
「あ」
急いで拾おうとしたが、既にそれには瑠璃が手を伸ばしており、細い指で摘まれた白と黒が瑠璃の瞳に映った
「……星?」
そう、星である。薄く小さい透明なクリスタルで立体的に作られた五つ星、裏表のあるそれには片方それぞれが白と黒で染められており、光を通すと灰色に輝いた
「……えーっとですねぇ、それはなんというか、そのー…お詫び、みたいなー……」
「お詫び?」
「…イヤリングなんだよ、それ」
その五つ星の先端のうち1つを見てみると、少し伸びた先に耳を通すためのピアスがつけられており、イヤリングとして機能するアクセサリーだと理解できる
そして、それを何故僕が買ってきたかというと……
「左耳のピアスの羽飾り…千切っちゃったろ?ずっとそのままなのもあれだと思ったから、何か良いのないかなーって探してたんだけど……」
本当のことを言うと、今回の仕事を請け負ったのはただのついでだった。スタンダードで数日を過ごして瑠璃を見た時に、ふと千切れた血が染み付いた羽飾りを思い出した。すると罪悪感が胸の中を押し寄せてきたのだ…どうにかしてやるべきだと思いはしたが、仕事のこともありなかなか外に出る機会がなかった
だが、出る機会ができた。オマケに内容はものを買ってきてくれというもの。だから、何か代わりになるものでも買えたらと思って、良さそうなものを買ったのだが……よくよく考えれば、似合いそうなものがこれだけとはいえ何故片方だけを買ってきてしまったのか……
「…ゴメン。片方だけじゃやっぱいらないよな……」
本当にアホなことをしでかしたと頭を掻きながら心の中で自虐する…
「…ううん、そんなことないわ。とても、嬉しい…」
だけど、瑠璃はいると言ってくれた。思わず、ピタリと静止してしまう
自分の左耳のピアスを外し、僕が買ってきた星飾りのピアスをつける。左右が非対称で、やはり見てるとバランスが悪いと感じる……はずなのだが
「ありがとう、風斗」
羽飾りが、揺れる。星が右に回って白になり、左に回って黒になる。羽根と星の間で微笑む彼女を見ていると、さっきまで自虐してたのがバカバカしく思えてきた。こちらも思わず笑みが溢れ、それが可笑しくて一緒に笑ってしまう
『似合うな』
「…そうだな」
「?何か言った?」
「いや、何でも。…昼、そういや食い損ねてたな。適当にアイスとか買って帰るか」
今日は出掛けて正解だったな…と、まっさらの空を見上げながら…僕は本気でそう思った
「……それで、目撃者はなんと?」
「大多数が灰色のパーカーをきた青年と……召喚反応の場所と時刻も一致しております」
「そうか、ご苦労だった……先ほどの映像をもう1度」
「ハッ!」
舞網市の情報が飛び交う広く暗い空間。電子の光で照らされたそこで端末を操作する音が常時響き渡る中、銀髪の少年はデスクに両肘を立て寄り掛かり、口元を隠すように手を口の前に置きながら、眼鏡のレンズ越しである映像を見る
『牙城を撃ち抜く砲台よ!地を鳴り響かせ、鉄路の彼方より現れろ!エクシーズ召喚!ランク10!「超弩級砲塔列車グスタフ・マックス」!!』
フードを風で揺らしながらデュエルをする男……彼の眼は、戦いというものを知っている眼だ
戸籍情報が一切ない謎の青年、アクションフィールドでもないにも関わらず実体化するモンスター、融合とエクシーズを手足のように使いこなす技量…見たこともない融合・エクシーズモンスター、異常なほど強力な召喚エネルギー、そして……アカデミアで会った彼女と
(何としても、正体を知る必要がある……)
何としても、奴の陰謀を止めるためにも…この次元のためにも
「彼が、この次元にとっての槍となり得る存在なのか……」
赤いマフラーを宙に浮かせながら、小さくそう呟いた
特に書くことはありませんが、強いて言うなら謝辞を
本当に遅れて申し訳ございませんでした。待つ側の辛さを分かってるはずなのに待たせてしまうとは…!頑張って投稿し続けますんで許してください!
次回予告
突如LDSに呼び出された風斗たち、そしてそこで待ち受ける赤馬零児。赤馬社長の態度に風斗は怒りを募らせ、案の定デュエルをする流れに!?
「こんの陰険野郎が!そのマフラーへし折ってやる!」
「そこは鼻っ柱じゃないのか白星!?」
面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC–V物語
第18話 「異次元の悪魔」
デュエル・スタンバイ!
※相変わらずな予告詐欺です