面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語   作:ジャギィ

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エクシーズ次元編突入ー!正直予想外ー!完結させるとしてもどう終わらせようー!

……はい、うるさいですよねすみません

では、交渉な第18話ドーゾ!



「デッキ」

「白星さんって、色々なデッキ使うよね」
「そう言われてみればそうね」
「なんだお前ら?僕のデッキに興味があるのか?」
「うん!白星さんはどんなデッキをよく使うの?俺は「EM(エンタメイト)」デッキ!」
「私は「幻奏」デッキね」
「僕は基本的には「オッドアイズ魔術師」「DD」「帝フォート」「インフェルノイド」「アンデシャドール」「サイバー」……」
「ちょっと!ストップストップ!」
「凄い数ね……いったいどれだけあるの?」
「どれだけって、うーん……最低でも3桁?」
「「多いよ!」」


異次元の悪魔

カリカリカリ…と、机の真正面と左隣から鉛筆で書く音が二重で鼓膜に響き渡る。黒鉛が削れ、細かい粉になって文字という形になってプリントに書き綴られる。そんな中で、僕はソファにゆったりと座りながらカードを弄っていた。当然だがペンデュラム関連のカードは抜きで、ガチとは少し趣向の離れたネタ…というよりロマン寄りのデッキを、脳内会話で黒星と相談しながら作っていた

 

そしてデッキの7割方が完成してきた…といったところで、正面のトマトヘアーが脈絡もなく机に突っ伏した。難しそうに唸る遊矢に注意を掛けたのは、遊矢の右隣にいた権現坂。ついでに僕も呆れながらため息を吐き、カードを整理しながら遊矢に問う

 

「…お前なぁ、また詰まったのかよ。これで何回目だよ…10回くらいか?」

「いやいや、そんなに聞いてないから!」

「6回だな」

『権ちゃん、ナイスサポート』

 

権現坂のフォローに感謝しながら、だいたい同じじゃねーか…と心の中で1人ごちた

 

 

 

バーガー店強盗事件(命名:僕)に巻き込まれた日、その後事件と呼べるようなものは特に巻き込まれずに無事遊勝塾に帰還

 

だが、砕羽と小学生組からその日は柚子はどこにも出かけてないことが判明…そして、実に楽しそうに今日の出来事を話す瑠璃と色めき立った声を上げながらそれを聞く柚子を見る。……つまりだ、その…どういう意図があったのかは知らんが、僕はハメられた…というわけだろう。中学生の策略にハメられる僕って……!

 

思いの外楽しかったし目的もあったとはいえ、休日出勤を押し付けられたのは流石にイラッ☆…ときたので、まだ残っていた遊矢をそそのかして柚子に差し向けてた。何を吹き込んだのかといえば、「柚子は遊矢のこと、どう思ってんだろうなー?」という話題を使って自然な流れで柚子に直接聞いてこれば?といったのだ。正直者の遊矢はそれを即実行、顔を赤くする柚子に気付かずガンガン聞いていき……いつものように、遊矢はハリセンで柚子に張り倒された。恥ずかしそうに唸る柚子を見ながら逆襲成功!と心の中で喜ぶと同時に、これで少しは進展するかねぇ?とニヤニヤ笑いながら思っていた。あと遊矢、分かりきった結果なのに差し向けてゴメン…と、聞こえない謝罪をした

 

とにかく、特に変わったこともないまま翌日を迎え、いつも通り仕事で荷物運んだり何もしなかったり小学生組にデュエルを教えてたりしていて……そしたら、いつ帰ってきたのか遊矢が絶望した顔で必死に僕に縋り付いてきた。その手には、学生の義務たる宿題と思わしき物がドッサリ

 

……それが、遊矢が悩みながらもシャーペンを握り、僕が未だにデッキを完成させてない…というか、途中で中断せざるをえない原因であった。権現坂も手伝ってくれたのは本当に有難い

 

「……ハァ、どの問題?」

「えっと、この問題なんだけど……」

「…お前これ、さっき式教えただろうが!この方程式にはこの式を当てはめればいいって言ってんだろ!」

「いや、だってそうしたら途中で解けなくなるんだって!ほら、変な式になってるだろ!」

「……よく見直せ、途中で式間違ってんぞまた。そこ掛ける時、マイナスになってない」

「え!?そんなはず……あ、本当だ」

 

指摘され再度式を見直し、計算違いに気づく遊矢。…確かに、そういう計算ミスは結構あるけどね。僕も学生の頃…つーか今もかなりやらかしてるし。でも6回も教える度に忠告してんだから、少しは間違いに気づけよ……面倒くさいよこのやりとり

 

見た感じ、権現坂は順調に宿題を説いているので少し周りを見渡す。計5人…2人組と3人組でそれぞれグループを形成していた

 

「ありがとう瑠璃、宿題を手伝ってくれて」

「いいのよ、これくらい」

「ちょっと疲れちゃったし、ドーナツでも一緒に食べない?今日の学校の帰りに買ってきたのよ」

「本当?じゃあ、いただくわ」

 

2人組のグループは、瑠璃と柚子。実に華やかなメンツである。瑠璃は僕と同じように、柚子の宿題を手伝っていたのだが…どうやらあの様子だと終わったみたいだ。はっや、まだこっちは4割くらい残ってるのに……

 

礼を述べながら、カバンから白を基調としたカラフルな箱を取り出す柚子。そして2人揃って席を離れ、部屋から出ていった。おそらく手を洗いにでも行ったのだろう。……こっちもとっとと終わらせてくれねえかなぁ

 

「待った鮎川、「サイクロン」は魔法・罠を()()()()()()だから、原田の「らくがきちょう–とおせんぼ」の発動に対して使っても効果を無効にすることはできない」

「え〜!?そうなの?」

「でも、いつも俺がアユのカードでやっても無効にできるぜ?なんでアユがやるとダメなんだ?」

「鮎川のカードは殆どが永続魔法とかだから、チェーンして「サイクロン」で破壊するとチェーン順によって効果が…」

「砕羽お兄ちゃん、ちぇーんって何?」

「しびれるくらい難しいぜ〜」

「……そっか、まずそこからか……」

 

もう一方の3人組…先日買ってきたTシャツとジーパンを着込んだ砕羽が率いる小学生組は、お手軽なテーブルデュエルでデュエルを教えてるのだが……まだ自分でも分からないところが多いのか、チェーンの説明に難航している様子。捕虜の際から僕が砕羽にテーブルデュエルでコンマイ語を教えていたのだが、教えたコンマイ語も初歩の初歩だから解説がしどろもどろである。テーブルデュエルをスムーズにやる為にとりあえずは簡単に教えたのだが、簡易説明がどうやら仇になったようである

 

砕羽がこちらを向き手招きする。その悲哀に満ちた目が、僕に救済を求めている目だと理解し……無視してデッキ作りを再開した。いやだって、僕が遊矢たちの宿題手伝ってるのは、あくまで基本的には自分で解くからって条件でやってんだぞ?じゃないとデッキ弄りができない

 

だというのに、そこにあいつら(小学生組)の面倒まで見ることになってみろ?休む暇なんかなくなって、どこぞのブラック企業のようにこき使われるに決まってる。何よりサービス残業はこれ以上お断りだ。そういう気持ちを伝える為に、再度アイコンタクトを投げ掛けてくるバカに拒否の意味でしっしっ…と左手で追い払う

 

『そんな犬を追い払うかのように…』

 

別にいいだろ?面倒って点でも両方同じだ。さて、続きでも再開して……

 

 

『だから、確かに知ってはいますが、彼は今はこの塾の講師なんです!理由もなしに連れて行かせることなどできません!』

『理由ならばある。だが、それをわざわざ教えてやる必要はない。もう1度言う、この塾で匿っている灰色のパーカーを着た男を呼べ』

『匿っているなど、人聞きの悪いことを!』

 

 

閉まりきった部屋にも聞こえてくるほどの音量が外から小さく響き渡る。砕羽たちはデュエルに夢中で気づいていないが、遊矢と権現坂は今の声が耳に届いたのだろうか、2人とも怪訝な表情で扉を見る

 

「なあ、権現坂、白星さん。今、塾長の声が聞こえなかったか?」

「あぁ、聞こえた。それも普段とは別ベクトルの感情がこもった、デカい声だったな」

「一体何事だというのだ?」

 

権現坂の疑問に、僕も遊矢も同意する。普段は静かで大人し…くはまったくないが、日常的を怒ることのない修造さんの怒声が聞こえるなど…何があったのだろうか?少なくとも只事ではなさそうだ

 

「……この場で1番暇してんのは僕だし、僕が見てくるよ」

「そう?俺たちも付いていったほうがいいんじゃ…」

「お前らはそのバカみたいに多い課題を終わらせてから来い。明日、学校で怒られてもいいってなら話は別だが」

「うぅ……わ、分かったよ…」

「気をつけるのだ、白星殿」

 

権現坂を忠告を背に、ドアノブに手を掛けて声の元へ小走りで移動する。ある程度進んだ先…玄関前で待っていたのは、サングラスを掛けた厳つい黒スーツの男たちと、剣幕な表情で黒服の男に話しかける修造さんの姿があった

 

「修造さん、一体どうしたんですか?」

「白星くん!?ま、マズい!」

 

修造さんに少し大きめに声を掛ける。修造さんは僕が来たことに気づいたのか、こちらを向いて驚きと苦い表情を織り交ぜた顔をした。まるで、僕が現れたのがマズいといった感じに

 

先頭にいた黒服の男が、サングラス越しを視線を送る。人を品定めするような不愉快な感触だったが…確認のようなものが終わったのか、僕の前に詰め寄ってくる。友好的とは言えない奴らに、僕は疑問符を浮かべる

 

「誰だお前ら?」

「我々と共に来てもらおうか」

 

ほんの少し…見上げるような体格が、威圧感を醸し出す。あからさまに脅しかけているのだ

 

「……誰の差し金だ?」

 

YesかNoかの前に、誰がこいつらを差し向けてきたのかを考えながら、質問を投げかける。アカデミアは絶対にあり得ない。時期的にもないし、あいつらならこんな回りくどいことはせず、すぐにカードにするからだ。それに僕を捕まえる理由が……あ、瑠璃があったか……でも、可能性は低いだろう。そもそもこいつら、デュエルディスクを付けてもなければアカデミアの服も着てないし

 

ならば…理由は不明だが、こいつらを送りつけてくる男に心当たりはある。こういうのを従えてるって条件を満たしている、この街にいる男が

 

「答える必要はないな」

「いいから答えろ。お前たちの返答次第なら、お前たちについていったっていい」

「ダメだ白星くん!この男たちはLDSの人間だ!何をされるか分からない!」

 

LDS?マジで?

 

男たちの服の襟元を見てみる。だが、どう注意深く見ても沢渡がつけていたようなバッチは見当たらない。LDSだとは分かりきってはいるが、確証が欲しいな……

 

『白星、外にある黒ベンツを見てみろよ。LDSのマークがある』

「………本当だ……」

 

僕の呟きと視線に訝しむ黒服たちをスルーしてベンツをじっくり見てみる。すると確かに、前のナンバープレートの上の部位に金色に装飾された「LDS」の文字が書かれた紋様が刻まれている。さっきから引き止めようとする修造さんの言葉は正しかったというわけだ

 

なぜ僕を指名してきたのか……昨日のデュエルでも見られたのか?とにかく分かることは、赤馬零児は僕に用がある…そう捉えていいはずだ。そして、これは願っても無いチャンスだ。アカデミア、次元戦争、ランサーズ……そして交渉。エクシーズ次元の戦いをユートたちに任せてきた以上、この交渉だけは何としても上手くやらなければならない…!

 

「……お前たちがLDSなら、早く連れてけ」

「な…!?何を言ってるんだ!」

「大丈夫ですって修造さん。…僕も用がありますから、赤馬零児には」

 

制止を無視された修造さんは素っ頓狂な声を上げる。が、それを静かに宥めて、僕は赤馬零児の名をしっかりと指名する。どう考えても頼み込む立場のはずなのに、上から目線の態度が気に入らなかったのでちょっとした意趣返しだ

 

だがこの意趣返しは、予想外の形で返された

 

「待て。一緒にいた女も連れて来い」

「………ハ?」

「長い紫の髪の女もいるのだろう。その女も共に来てもらう」

 

ドスの利いた声で男はそういう。暗に「(とぼ)けるな」と言いたいのだろうが……あいにく、そんな高度な会話術ゆえに(ほう)けたつもりはさらさらない。完全に不意を突かれたことにより漏れた声だった

 

こいつらのいう女…長い紫の髪というのは、瑠璃と考えて間違いない。デュエルをした僕だけならば分かる。LDSが独占しているはずの召喚法を、よそ者な僕が使用したのだから。だが、瑠璃だと?何故ここで瑠璃が会話に出てくる?赤馬零児がそんなことを果たしてするのか?何が目的だ?

 

「断る。連れてくなら僕だけにしろ」

「それは出来ない。お前と女の2人を連れてくることが、赤馬社長の命令だ。早く連れて来い」

「断るっつってんだろうが!」

 

話を無視してでも瑠璃を連れて行こうとする奴らに、苛立ちを込めて言葉を吐き捨てる。交渉のことがどうでもよくなるくらい、異常と自分でも分かるほど頭にきていた

 

赤馬社長の命令、だと?あんの陰険眼鏡マフラー…!遊戯王主人公のライバルキャラにしてはかなりの人格者だと記憶していたが……それにしては、随分強情な奴らを寄越したもんだ…!

 

「あくまで連れてこないのならば、デュエルで……」

「どうしたのよお父さん?珍しく怒ってたみたいだけど…」

「風斗?その人たちは…?」

 

デュエルディスクを懐から取り出すこいつらを見ながら、どうやってお帰り願おうか、なんて考えているところに運悪く…柚子が瑠璃を連れてやってきてしまった。なんて間の悪い!

 

伝えられた特徴の人間が現れたことにより、男たちは僕から聞き出すことを放棄し、男の1人が瑠璃に迫る。見知らぬ人間の接近によって身構える瑠璃に、黒袖に包まれた太い腕が伸びーーー

 

 

 

 

 

ガアァン!!

 

「うわ!…なんだ、今の音」

「塾の入り口の方から聞こえてきたぞ」

 

風斗が小さく開けておいた扉の隙間から、何かと何かがぶつかる音が通過する。少しの間響き渡るような音に遊矢は驚き、砕羽は音源を冷静に察知する。耳をよく澄ませば、柚子の短い悲鳴も聞こえてきた。風斗が部屋を出て数分……ただならない雰囲気を砕羽は感じ取っていた

 

「俺、ちょっと見てくる!」

「む、待て遊矢!…竜太郎、遊矢が先に行ってしまった!お前も早く!」

「分かった!」

 

柚子の声に遊矢は不安を感じ、飛び出すように部屋から出る。制止するものの、声を掛けても止まらなかった…ゆえに、権現坂と砕羽は急いで遊矢を追いかける

 

だが、砕羽からすれば気になっていたのは、何故悲鳴をあげたか…よりも、()()()()()()()()()()()()、だった

 

(嫌な予感しかしない…!)

 

今聞こえた音と悲鳴が、悪質な訪問者による妨害や暴力ならば…正当な手段を持って追い出せば良いだけで済む

 

しかし……もし仮に

 

その何かをやらかしたのが、こちら側の人間だったら……

 

正直な話、やらかしそうな奴がその場にいることを考えれば……確率は、そっちの方が遥かに高い。冷や汗が、砕羽の白髪を少し濡らす

 

そして遊矢、権現坂と共に辿り着いた場所で……悲しいことに、砕羽の予想通りの出来事が展開されていた

 

「瑠璃に手ェ出そうとしやがって…!人の忠告無視するっつーことは、どんな目に遭わされても構わねぇってことだよなテメェー!」

「し、白星くん、落ち着いてくれ!気持ちは分かるが、これ以上手を出したら君の立場が余計に悪くなる!」

「私は何もされてないから!お願いだからやめて!」

 

少しドアを凹ませたベンツの前の、高い身長と立派な体格のダークスーツを着込んだ男。……しかし、自身より高い身長の男を、風斗はその顔を怒りに歪ませながら、両手で首を掴みながら持ち上げていた。右手で強く握りながら持ち上げ、もう片方の左手は添える程度だが親指の爪を男の喉仏に軽く食い込ませていた。いかん、あれは完全に殺る気である。少なくとも喉は潰す気だ

 

この場にいる…遊矢・柚子・権現坂…それと黒服の男たちはみんな、風斗のあまりに暴力的な一面に怯んで動けていない。唯一彼を止めているのは、彼を理解している瑠璃と大人な修造の2人だけである

 

だが、それでもまだ止められていない現状を見るに、自分も加勢に行ったほうがいいと思い砕羽は風斗の左側に回り込む。添えられた左腕を必死に抑え込んで、風斗の激情に任せた行動を大声で(たしな)める

 

「おい白星!いくらなんでもやり過ぎだ!」

「あぁん!?何言ってやがる砕羽!先に手ェ出してきたのは向こうだ…つまり、これは正当防衛なんだよ!良いから離せ、こいつを殺れない!」

「どう考えても過剰防衛だろうが!お前が問題を起こしたら、瑠璃だってここ(遊勝塾)に居れなくなるんだぞ!?それで良いのか白星!」

 

ピタリと、感情に任して震えていた身体が静まる。上空方向へ持ち上げられていた男の身体が、重力に従って地に落ちた。首を掴んでいた手を離したのだ。顔つきも、先ほどの怒気がはらんだものは鳴りを潜めている。どうやら「瑠璃」というワードがよほど効いたらしい

 

頭を乱暴にガシガシ掻く風斗。いつもの面倒くさそうな表情に戻ったが…代わりに目は先ほどとは正反対の、冷徹そのものを表していた

 

「あぁもう、分かったよ……おいアンタ」

 

左手をパーカーのポケットに突っ込んで、右腕だけで尻餅をついて咳き込んでいる黒服の男を立ち上がらせる。急に優しくされたことに、男は頭を少々混乱させる

 

「やり過ぎたのは悪かった……が、先に手を出したのはアンタだってのは理解しろよ…?」

 

前言撤回、全く優しみなどなかった。それどころか自分が起こした暴力沙汰を相手になすりつける辺り、図太い精神の持ち主だというのが発覚した。相手がさほど大怪我を負ってないことを確認すると、パーカーを翻しながら風斗は遊勝塾に歩を進める

 

「待て貴様!どこへ行く気だ!」

「大事な荷物とってくるだけだ。別に逃げたりはしねぇよ……そうだ。おい砕羽」

 

途中で足を止め、身体を捻らせながら風斗は砕羽に振り向き、声を掛ける

 

「今回の話にはお前の存在が必要不可欠だ。…瑠璃の代わりと言ってはなんだが、お前を連れてく。車に先に乗っとけ……お前たちも、それで良いよな?」

 

その口から、衝撃的な言葉を発した。遊勝塾の皆は、風斗が何を考えているのかが分からなくなり、瑠璃と砕羽は、目的は分からないが何か理由があるのだと察した。…そしてLDSの男たちは、ごく自然に自分の要求を通させようとする白星風斗という男に対して、危機感と戦慄を覚えた

 

 

 

 

 

 

 

滑らかな色とツヤに加工された木製の扉が開かれる。先に広がっていたのは、遥か上空から見下ろした舞網市の光景であった。巨大な執務室であろう部屋の壁一面だけ、ガラス張りで作られており…透明な壁そのものであった。そのガラス越しに見渡せる、かなりに高さにも関わらずまだまだ町の全貌が見えない舞網市……夜景はさぞ綺麗なんだろうな、とこの場で関係のないことを頭に思い浮かべた

 

そんな特徴的過ぎる部屋で待ち構えていたのは、紺の長袖と裾の先を少し折り曲げた白いジーンズを着て、物理法則に喧嘩を売るかのように浮き上がった赤く長いマフラーを身につけた少年と、彼に付き添うように綺麗な姿勢で微動だにしない、先ほどの奴らと同じサングラスに黒スーツの男。少年は靴下を履いていなかった

 

「………来たか……」

 

鈍い銀とも暗い灰色ともとれる髪色の少年……いや、男は端正な顔立ちを無表情のまま、赤い縁の眼鏡越しに僕を見据える。僕を試すような視線に思わず顔を(しか)めてしまった。だが、いきなり呼び出されてこのような対応を受けてしまえば仕方ないだろ…と心の中で自己完結させた

 

そのまま…赤馬零児(あかばれいじ)は、素朴ながらも疑問を投げかけてきた

 

「もう1人の少女はどうした?それと、その少年は?」

 

それは僕でも、ましてや後ろ隣の砕羽でもなく、ここまで僕たちを案内した己の部下に対しての言葉であった。上司…それも社長にそれを言われた男は、ビビって萎縮してしまう。目上の人間にそんなことを言われたら…僕には耐えられないな、こいつと同じように何も言えなくなるだろう

 

けど、このまま黙ってたんじゃラチがあかない。何より、ここまでようやく来れた以上、歩み寄るのは交渉を願い出る僕の方である。バックバクになる心臓の鼓動を抑えながら、赤馬に向かって距離を詰める。黒服の男がボディガードのように赤馬の前に出るが、赤馬はそれで片手で制して止める

 

出来るだけ冷静な顔と声を装え……大丈夫、僕なら出来る…!

 

「初めまして、赤馬零児社長……僕の名前は、白星風斗と言います」

「……ご丁寧にどうも。…だが、そこまで(かしこ)まる必要はない。君たちは私が招いた…いわば客人なのだ、もっと普通に接してくれて構わない」

「……分かった。正直、堅苦しいのは苦手だったんだ…助かるよ」

 

張り詰めた感覚を、一気に崩す。ガチガチに固めて話すと絶対どこかで舌は噛むだろうし、向こうがそう言うならば…と僕はいつもの口調と雰囲気で赤馬に話し掛ける。とりあえず、瑠璃がいないことの説明はする

 

「後ろのこいつは砕羽竜太郎、これからお前と話したいことに必要だと思って、無理言って連れて来た。瑠璃に関しては…すまない、かなり個人的な理由で、連れて来なかった。ハッキリ言えば、これからする話に関わって欲しくなかった」

「なるほど……彼に関してはよく分かった。だが、私は君に最初に聞いておきたいことがある」

「…なんだ?」

「君は、一体何者だ?」

 

何者。その質問の答えを安易に答えかけようとして、途中で踏み止まる。言おうとしたのは、念のために考えておいたダミーの情報……僕がエクシーズ次元のレジスタンスメンバーの1人、というものだ。別に嘘というわけでもないが…そもそもな話、何故僕が呼び出されたのかが気になる。単にLDS専売特許の召喚法をどこで学んだかを聞くとかならば、誰か別の人間を派遣するなり調査するなりで済む話だ。社長自ら聞こうとするだろうか?

 

次元戦争の話で呼んだとは確信を持って言えないし、それに……ダメだ、確定情報が少な過ぎて考えが纏まらない。なんと答えるべきか…そうだ!今この場で聞けばいいんだ…赤馬零児が、融合次元や次元戦争のことを知ってるのかどうか。ならばやることは1つ

 

「……僕からも、先に2つ聞いておきたい。結構重要なことだ」

「貴様!先に社長の質問に…」

「よせ中島……なんだね?聞いておきたいこととは」

 

側近?の男…中島さん、だったか?そうだ、磯野と中島…サザエさんだサザエさん。うん、思い出した。その中島さんが、僕の態度を無礼ととったのか声を荒げるが、社長の一言で渋々引き下がる。アニメ見たときにも思ったが、遊戯王キャラにしては磯野さんに続くくらい有能なんだよなぁこの人。赤馬社長に対して忠誠心みたいなのもあるし…年上だし、さん付けで呼ぶかこの人。まぁ、年上には一応そう呼ぶようにしてんだけどね……社畜精神もたまには役に立つ

 

そして、そんな中島さんを抑えて僕の話を聞いてくれる赤馬に感謝しながら……3つのワードを口にする

 

「赤馬零王、アカデミア、次元統一」

「ッ…!」

 

レンズ越しの薄い紫の瞳に、動揺が走る。同時に赤馬が纏っていた雰囲気に少々の敵意が入り混じるが、この際どうでもいいことだった

 

この反応から察するに、間違いなく赤馬零王との接触は果たしている。100%だ。3つの召喚法をスタンダードに広めてる時点で既に高確率ではあったが、ほんの僅かに残っていた自分の疑心が完全に消え失せた

 

「その反応だと、事情は知っているみたいだな」

「……君の情報がどこにもない時点などで察しはついていたが…君はスタンダードの人間ではないな?」

「その質問は、次の質問の後に答える」

 

たった一晩で僕の情報を探し尽くしたLDSの情報網の広さを認識しつつも、僕は赤馬に問う……こいつが、味方か敵かを判別する言葉を

 

「お前は………赤馬零王を、倒すべきだと考えているのか?」

「…………」

 

空気が、重く緊張感漂うものとなる。今僕は、どんな顔をしているのだろうか?怒りに打ち震えた表情か?よその喧嘩を見るかのように無関心で無機質な顔か?分かるのは、赤馬零児は未だ変わらない無表情だということだけである

 

沈黙が、場を支配する。いつまでも続きそうな静寂……それは、赤馬零児の返答によって終わりを迎えた

 

「今の君の言葉で、理解した。君は、スタンダード次元…ひいては、この世界を守ろうとするにふさわしい人間であるということが」

「それは、つまり」

「赤馬零王…私の父が企む次元統一の目的は分からないが、その目的の為に多くの犠牲を強いることを、私は良しとしない。私はアカデミアを打倒する為に、今の立場についているのだからな」

 

赤馬零児の口から直接聞いた言葉は、僕が望むべき…望んでいた答え。彼は僕の知っている物語通りに、自分の父親を倒すべき悪だと考えている

 

聞くべきことは聞いた。次は、僕の番

 

「……そうか。ありがとう、教えてくれて」

「私は問いに答えた。次は君の番だ」

「分かっている、順番に言わせてくれ。…僕は、赤馬零王が率いるアカデミア……そいつらを滅ぼす為にスタンダード次元に来た。赤馬社長、あんたと接触し交渉する為に」

「ほう…?交渉……私とか?」

「そうだ。改めて、名乗らせてもらう。僕の名前は白星風斗……エクシーズ次元のアカデミア対抗組織、レジスタンスの一員として、このスタンダード次元に同盟を結びに来た」

 

今もエクシーズ次元では、ユートたちが必死の抵抗を続けているに違いない。だが、ランサーズがエクシーズ次元に行くのだとしても……それはペンデュラム召喚が発見されてからの舞網チャンピオンシップが始まって、シンクロ次元に行った後だろう。シンクロ次元編は、柚子がセルゲイに攫われて以降のストーリーが僕は分からない。何とか同盟を結ぶことができたのか…それとも途中でアクシデントが起きたのか、そこから先は何も知らずに行動しなければならない。それが、少し不安で怖い

 

だが、長い……本当に長い年月、僕は皆を待たせなければならない。虫のいい言い訳だが、僕は物語の完結がどうなるのか分からない……だから出来る限り最善は尽くすものの、知っている未来通りにしか僕は動けない。ここから先、本来僕は異物(イレギュラー)なのだから。ならば、異物として…皆を強くするのが僕の役割。それが出来るのは……僕だけだ

 

「……同盟、か……君の要件は分かった。……だが」

 

眼光に、鋭さが増す。ただでさえ強者たるその眼は、全てを閉口させる王の睥睨を生み出した。16…は原作開始時か、だいたい15歳くらいでこれほどのプレッシャーを放つのだから、遊戯王キャラは恐ろしい

 

「君はまだ私の質問に答えていない」

 

質問に、答えていない?

 

「…?何を言ってるんだ?確かに僕は……」

「私の質問は「君は何者か」というもののはずだ。確かに名前と所属、目的……ありとあらゆる自分の情報を教えたつもりなのだろうが、君は無意識に隠しているはずだ……君という存在に強く根付いている、「何か」を」

「ッ?!」

 

突きつけられた一撃は、とてつもなく強烈な一撃であった。ハンマーで頭を強く殴られたような…それによる目眩が身体の平衡感覚を奪う。あまりのショックに、焦燥が脳内を駆け回り思考をメチャクチャにする

 

しかし、経験談もあってかそこまで露骨に取り乱すことはなかった。だが、赤馬が切り出した話題が心を乱したのは事実である。「何か」……まさか、僕の正体のことか!?

 

「…ッ……!何を、根拠に……」

「先日の君のデュエルを見させてもらった。その際に、君の召喚反応…モンスターを召喚する時に検知できるエネルギーは、私を大きく上回る数値を叩き出した。だいたいは融合・シンクロ・エクシーズ召喚のことを指すが、それだけならばまだ説明はつけられる。君が高エネルギーのエクシーズ召喚の反応を出したのも、発展途上の我々よりもエクシーズ召喚が馴染み深い…エクシーズ次元の人間ならばな……」

 

言動が弾丸となり、心の装甲を削り取る

 

「だが、君はエクシーズ召喚と同じく融合召喚でも高い数値の召喚反応を生み出している。それも融合素材を必要としない、高度な融合召喚……白星風斗、君がエクシーズ次元の人間だというのならば、2つの高エネルギーの召喚反応…この矛盾を、どう説明するつもりだね?」

「グゥ…!それ、は……」

 

バカなと、思いっきり叫びたくなる現状であった。まさか昨日のたった1度のデュエルで、ここまで自分の正体について追い詰められるとは全く思いもしてなかった。これが中学生の身で社長まで上り詰めた赤馬零児という男か

 

そして召喚反応。しまった、すっかりそのことを失念していた…!シンクロ次元編に突入してから全く出てこない単語だったから、完全に忘れていた。そうか、それで昨日のデュエルの時の召喚反応を感知されて、こうして接触してきたわけか…安易にデュエルするんじゃなかった

 

『どちらかと言えば、マズかったのは多数の召喚法を使ったことだな……』

 

鳴り響くような僕自身の声が、耳と脳を震わせる。黒星の言う通りだ。もしあの時に融合・シンクロ・エクシーズのどれか1つに絞る、あるいは使いさえしなければ…僕の正体に関して言及されなかったかもしれない。とはいえ、そんなことを今愚痴ったところで既に後の祭りである

 

なんて答える?転生のことなんて普通の人が聞けば、僕は危ない人扱い決定だろうし……とはいえその場しのぎ嘘を重ねたところで、赤馬社長にはまず間違いなく通用しない。簡単に嘘の(ほころ)びから矛盾を見つけ出す…この短時間でも分かるくらい、赤馬零児とはそういう男だ。何よりいけないのは、信用を得られないこと。仮に得たとしても、それは一瞬の幻……そうなれば、僕はスタンダード次元を無駄に過ごすことになるだけだ

 

そんなのは、絶対にダメだ

 

どうする?嘘もダメ、ゲロるのも当然ダメ……ならば、僕らしくいこう。バカな僕らしく、愚直で、正直に

 

「……それは、話せない」

 

こう、答えるしかない。答えられないと…答えたくない、と……。これが僕の思いつく限りの方法だ。情に訴えるなど、らしくない手だと分かってはいるが

 

「…答える気はないと?」

「…こればっかは、安易に言えない。…色々とマズいことになるから……」

 

こいつに言えば、それらの情報からペンデュラム召喚まで割り出してしまうかもしれない…。普通に考えればまずあり得ないけど……赤馬に限っては、なんでも出来てしまいそうだと思えるのだから恐ろしい。何というか、底の見えない奴だ…

 

何にせよ、ペンデュラム召喚だけは原作開始まで何としてもバレないようにしなくては。向こう(エクシーズ次元)に置いてきたカードでペンデュラム関連だけ抜いた意味がなくなるし、瑠璃に口止めしたのだって無駄になる

 

「それに…まず信じてもらえない、ってのがあるな…悪いけど……」

「あくまで、黙秘を貫く気か」

 

額から、汗が浮き出る。顔を横断するように眉間を…鼻の横を…上唇を一雫が通過する。乾いた唇に、汗が染み込む

 

やがて、赤馬が人差し指で眼鏡のブリッジをクイっと持ち上げ、整える。屈折して見えた瞳に映っていたのは、味方としての僕か…敵としての僕か

 

「例え同盟交渉を盾にしても、君は喋ろうとはしないだろう…それほどの決意を感じる。…ならばデュエルだ。君がデュエルで私に力を証明したならば、これ以上問い詰めないと約束しよう。そして、君たちレジスタンスの同盟を歓迎しよう。さらに、君が望むならば何か1つ要望を応えようではないか」

 

赤馬が提案してきたのは、デュエルの申し出。その提案に、僕は眉をひそめた。物事をデュエルで決めるこの世界からすれば、デュエルで最終的に決めるなど珍しいことではない……ここで僕が不審に思ったのは、デュエルで決着をつける流れなどではない

 

『……どう考えてもこっちのメリットが大きい…何を狙ってるんだ?』

 

そう、条件が破格すぎるのである。もちろん破格というのは、僕にとって良い意味で…でだ。僕の出自…向こうからすれば蛇でも出るかもしれない情報1つのために、願いを1つ聞き入れる。あまりにも釣り合ってなさ過ぎて、もはや隠す気もないほど怪しさ満点…マジで何が狙いだ?

 

「私が勝った場合は、君の秘密を聞いた上で君の身柄を我が社に引き受けさせてもらう」

「……なーるほど、そういうことかぁ……」

 

これは、ある意味酷い条件だ。僕が勝ってもこいつからすれば赤馬零王を倒すための味方が手に入る、負けた場合…僕を飼い慣らして、ランサーズ発展の駒にできる。どっちに転んでもまさに損がない、といったところだ。汚いなさすが社長きたない

 

「分かった。そのデュエル、受けよう」

 

だが、現状今の僕はまさに詰んでいる状態だ。だから前に進む為には、勝たなければならない。勝って、何も出来ないこの状況を打開しなければ

 

「中島、デュエルフィールドを1つ手配しろ。それと、彼らの案内を」

「了解しました」

 

部屋から出て、砕羽と一緒に中島さんに案内される。道中で横切る生徒に気をつけながら、どのデッキを使うべきか…思考を張り巡らせた

 

 

 

 

 

 

 

遊勝塾のデュエルフィールドよりも数段広い、LDSのデュエルフィールド。何も変わり映えのない無機質な白い空間に、僕と赤馬零児は互いに対峙していた。2階ほどの高さについてあるガラス張りの向こうに、砕羽と中島さんが待機していた

 

しかし、アクションデュエルか…。エクシーズ次元の戦場では、走り回ることなんて日常茶飯事だったが……

 

これから始まる新しいデュエルに少しウズウズさせながら、周囲を見渡す。これから人生賭けたデュエルをするも同然なのに、相変わらず不謹慎だな僕……

 

「ふむ…白星、君の様子から見て、アクションデュエルは初めてやるのか?」

 

そんな僕の様子を見ての疑問だろうか、デュエルディスクを起動させながらそんなことを聞いてきた

 

「そうだなー…周りがやるのを見てはいたが、やるのは今回が初めてだな。正直なところ、結構楽しみではある」

 

アニメじゃアクションデュエルをする度に「はいはい「回避」「回避」」なんて言ってたが、合法的にモンスターに乗って飛び回れたりなんてできることを考えると、ちょっと楽しみではある

 

だがまぁ、デッキは流石にネタとかそういうのは抜きのデッキを使う。禁止制限で1番変化が小さいと言えるデッキが幾つかあったので、そのうちの1つを今回は使うつもりである。…期待はしているのだが、不安もいっぱいではある…モンスターの見た目上……

 

「アクションフィールドはどうする?」

「そっちで決めてくれ。どうせどれを選んでも僕からしたら同じだし、いつものことだから問題ない」

 

テーブルデュエルの時は毎回ジャンケンで負けることもあって、先行後攻の取り決めはハッキリ言って投げやりである。基本的には後攻慣れだが…どっちでも大丈夫だし、向こうが決めてもデュエルに支障はないだろう

 

「同じ?いつものこと?…なるほど、君はそういった思考をするのか」

「先行後攻もそっちが決めてくれ」

「私にばかり決めさせれば、君が不利になっていくはずだが?」

「わざわざ考えて決めるのは面倒くせえ。…それにこれくらい、僕からしたらハンデにならねえよ」

 

確かにアクションデュエルに関してで言えば、僕はどの決闘者(デュエリスト)よりも劣っているといえよう……

 

だけど、何かが劣っているという点ではそれは向こうも同じ……前世での10年間とこの世界に来て約2ヶ月半の経験に、融合・シンクロ・エクシーズにペンデュラム……全ての召喚法をマスターして当たり前のOCGプレイヤーとしての自信が、最低限だろうと僕には備わっている。簡単に負けてやる気は、さらさらない

 

一長一短、といったところだ。向こうの一長がアクションデュエルで、僕の一長がOCGのガチデュエル。違う者同士でも、僕と赤馬は既に拮抗している…と思いたい

 

「…では、そろそろ始めるか」

「そうだな…楽しいデュエルを、始めよう」

「中島!」

 

赤馬が、別室の中島さんに声を投げ掛ける。フィールドが、立体映像投影(リアルソリッドビジョン)による粒子で次々と構成されていく

 

「アクションフィールド、オン!フィールド魔法「リビングデッドの墓場」!」

 

粒子を積み重ねて解き放たれた、作り上げられたフィールドは…薄暗い墓場。おどろおどろしい雰囲気が部屋全体から発せられており、英語と思わしき文字が刻み込まれた墓石が地面に点在する光景は、今にも何かが化けて出てきそうだった。枯れた細い木が、立体映像投影(リアルソリッドビジョン)の風によって揺れる

 

うーわ…こういうのダメなんだよなぁ僕……グロいのも当然のごとくダメなんだが、なんていうかビビらせてくるタイプのが1番苦手なんだよ……。まぁ、デュエルしてる時くらい忘れられるだろ…そう思い込もう

 

そして、空に球状にかき集められていた大量のカード…アクションカードが、フィールド全体に散らばる。砕けるような破砕音が、デュエルを開始する合図

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者(デュエリスト)たちが!」

 

赤馬零児の声が、墓場を反響させる。お前が言うのよ!と心底驚きつつ、声帯を空気で震わせながら覚えている限りに口上を交互に述べていく

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

 

「「アクション……!」」

 

僕の初めての、駆け巡る決闘が幕を開ける

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 5枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 5枚

 

 

「先行は私が貰おう。私は永続魔法「地獄門の契約書」を発動!このカードは、私のスタンバイフェイズごとに1000ポイントのダメージを私自身に与えていく。そして1ターンに1度、デッキからレベル4以下の「DD」と名のついたモンスターを手札に加える。私は「DDケルベロス」を手札に…。さらに永続魔法「魔神王の契約書」を発動!これも「地獄門」と同じく、自分スタンバイフェイズがくる度に1000のダメージを受けることになる。そして「魔神王の契約書」の効果により、「融合」なしで私は融合召喚を行う。手札の「DDケルベロス」と「DDバフォメット」で融合!」

 

「魔神王の契約書」のカードから、渦が現れる。幾つもの皮の輪で拘束された3つ首の凶悪な番犬と、2本の腕がついて、欠けた左腕の代わりに悪魔のような羽を生やした山羊の頭を持った悪魔が天翼を翻して、魔神の渦に飲まれてゆく

 

「牙剥く地獄の番犬よ!異形の神よ!冥府に渦巻く光の中で、今1つとなりて新たな王を生み出さん!」

 

生まれ出てきた人型の悪魔は、炎のような熱を纏っていた。焦げた茶色の装甲を身につけた悪魔の両手には、燃え上がる烈火のように赤い剣と盾があり、埴輪(はにわ)のように細く開かれた眼から青白い光が漏れた

 

「融合召喚!生誕せよ!「DDD烈火王テムジン」!!」

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンドだ」

 

見上げるほどに巨大な悪魔王「烈火王テムジン」。DDデッキの展開要員として呼び出されることの多い融合モンスターを召喚した赤馬は、これ以上出来ることはないのか残り手札2枚を伏せて、ターンを終了させた

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 5枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 0枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

 

地獄門の契約書

魔神王の契約書

 

伏せカード 2枚

 

 

手札0…か。初ターンから思い切ったことをする。僕じゃ怖くてとても出来ない…まぁ、嘘だけど

 

『少なくとも、あの伏せの1枚は「契約洗浄(リース・ロンダリング)」だろうな。あと、気づいてるとは思うが…』

「分かってる。…アニメ効果だ、あのカード」

 

「地獄門の契約書」の効果を使う際、赤馬は()()()4()()()と断じた。ペンデュラムカードがないからそこまで脅威とは思っていなかったが…複数枚揃えば、(ばく)アドになってしまう。毎ターンそれを維持するには「DDD神託王ダルク」を召喚する必要があるが……墓地融合がないとはいえ「魔神王の契約書」がある以上、それも時間の問題だろう。急いで倒す必要がある!

 

「僕のターン、ドロー!」

 

…むう、「ツイン・ツイスター」と「ハーピィの羽箒」が手札にないか……どっちかがあれば、赤馬のフィールドは致命的な隙を晒すことになるんだけどなぁ…アニメの「契約洗浄(リース・ロンダリング)」って、回復がないだけだったよな?

 

だとしても、攻勢に出ることはマズい。手札が0とはいえ「契約洗浄(リース・ロンダリング)」と次のターンドローで、仮に使わなくても「地獄門の契約書」が残るからその効果で蘇生効果を持つチューナー「DDナイト・ハウリング」を持ってこられる可能性がある。「テムジン」を倒す手段が今はない以上、次の返しでやられることを考慮すれば……

 

「僕はモンスターをセット!カードを2枚伏せる!」

 

ここは、守りに徹する

 

「さて、エンドフェイズ…次の社長のスタンバイに「契約書」カードで2000のデメリットを受ける訳だが……どうする気だ?」

「ふ…契約……?そんなものは、破棄だ!リバースカード「契約洗浄(リース・ロンダリング)」を発動!このターン私の全ての「契約書」カードは効果が無効となり、エンドフェイズに破壊される。そして破壊した「契約書」カード1枚につき、カードを1枚ドロー!」

 

2枚の表側表示の「契約書」が破壊され、破壊した枚数…2枚のカードをデッキから引き抜く赤馬社長。ちょっとした挑発のつもりで聞いてみたが、まさか使ってくるとは思わなかった。僕からしたらデメリット無視してでも好きなカードサーチ出来る「地獄門」の効果を取るんだがなぁ…。まぁそこは4000ライフってのもあるし、個人の問題だろう

 

「ターンエンド」

 

しかしアニメ「契約洗浄(リース・ロンダリング)」、カードを破壊するタイミングも遅かったんだな。つまり魔法・罠除去で「契約洗浄(リース・ロンダリング)」のドロー枚数を減らすことが出来る…。次「地獄門」を使われたら、何としてでも破壊しないとな

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 3枚

 

セットモンスター

 

伏せカード 2枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 2枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

 

伏せカード 1枚

 

 

「やはり守りを固めてきたか…だが、あの2枚のリバースカード……私のターン!」

 

このドローで、赤馬の手札は3枚…どう動いてくる…?

 

「私は再び永続魔法「地獄門の契約書」を発動!効果でデッキから「DDスワラル・スライム」を手札加える!」

 

うえっ?!「地獄門」引いたのはまだしも「スワラル・スライム」!?これはまさか…!

 

「手札の「DDスワラル・スライム」のモンスター効果!1ターンに1度、このカードは手札のこのカードを含む「DDD」融合モンスターの融合素材を墓地に送ることにより、「DDD」融合モンスターを融合召喚できる!私は手札の「DDスワラル・スライム」と「DDリリス」の2体で融合!」

 

青色の、ゲル状の1つ目がついたスライム…それが融合召喚の為の渦へと形を変化させ、大きな草の葉が束ね重ねられできた蛇のように細長い下半身の女型の悪魔を飲み込む

 

「自在に形を変える神秘の渦よ。闇夜にいざなう妖婦を包み込み、真の王と生まれ変わらん!」

 

渦が、翼を形成する。外側が青く内側が血のようなそれは、悪魔の羽であった。粘着質な渦は、美しい白さを持つ甲冑を着た女騎士へと姿を変える。清廉さを感じさせるはずのその騎士は、頭部と背から生やした相反する翼と青白い肌が邪なる者であることを証明していた。神託を受け取る悪魔騎士は、右手に握られた細身の剣を振るう

 

「融合召喚!出でよ!神の威光伝えし王!「DDD神託王ダルク」!!」

 

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

 

やっぱり……けど、ここで「ダルク」かよ!しかも場には「テムジン」もいる…まだ何か出てくる!

 

「私の場に「DDD」モンスターが特殊召喚に成功した時、「DDD烈火王テムジン」のモンスター効果。墓地から「DD」と名のついたモンスターを特殊召喚する。「DDリリス」を守備表示で特殊召喚!」

 

DDリリス

レベル4 DEF2100

 

「DDリリス」……効果が使えないことを考えると、僕の伏せカードを警戒したのと念の為の守備カードといったところか?抜け目がない奴……

 

「バトルだ。「DDD烈火王テムジン」でセットモンスターを攻撃!」

 

炎が吹き上がる。全てを燃やし、溶かし尽くさんとする巨剣が、セットモンスター共通の球体モンスターを破壊する為に振り下ろされる。ひっくり返ったカードから、フワフワと透けたデフォルメされた羊の幽霊が現れる。これから自分の身に降りかかる惨事に気づかず、呑気に欠伸をする

 

スケープ・ゴースト チューナー

レベル1 DEF 0

 

そして、ようやく自分に向かって斬りかかってくる剣の存在に気づいた「スケープ・ゴースト」はパニックになり……それぞれ4色の小さな自分の霊体をポコポコ生み出した

 

「何…?」

 

そんな抵抗も虚しく、「スケープ・ゴースト」は風圧と熱で溶かされ宙へと消えたが……新たに現れた4体の羊の幽体が、ガラ空きになる予定だった僕のフィールドを埋めた

 

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

 

「「スケープ・ゴースト」のリバース効果…リバース時に自分のフィールド上に任意の数だけ「黒羊トークン」を特殊召喚できる。リバースの瞬間、残りの4つのモンスターゾーン全てに「黒羊トークン」を特殊召喚させてもらった」

「……なるほど、罠カードと見せかけて防御用のモンスターを仕込んでいたか…となれば……「DDD神託王ダルク」で「黒羊トークン」を攻撃!」

 

守備能力皆無の「黒羊トークン」には何もできず、「ダルク」の一瞬の剣撃に斬り伏せられた

 

「私はこれでターンエンドだ」

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 3枚

 

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

黒羊トークン

レベル1 DEF 0

 

伏せカード 2枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 1枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

DDリリス

レベル4 DEF2100

 

地獄門の契約書

 

伏せカード 1枚

 

 

「僕のターン!……よし!僕は伏せカード「愚かな埋葬」を発動する!」

「…やはりブラフだったか……」

「効果でデッキからモンスターカードを墓地に落とす!「ゾンビ・マスター」を墓地に!そしてフィールド魔法「アンデット・ワールド」を発動!」

 

フィールド魔法を発動しても、アクションフィールドには何の変化も訪れない…いや、僅かにより薄暗い雰囲気になった気がするが……どちらにしろ永続魔法扱いということか、アクションデュエルでは

 

「このカードがフィールド上に存在する限り、お互いのフィールド・墓地のモンスターはアンデット族になり、アンデット族以外はアドバンス召喚ができなくなる!」

「ッ!そのような効果があるとは……しかし、フィールド魔法とは珍しいカードを」

「そんなでもないだろ」

 

今、ほんの些細な変化だが息を詰まらせた。「戦乙女(ヴァルキリー)の契約書」の恩恵を受けられなくなったと分かって、少し動揺したのだろう。いや、先ほどから使われなかったあのカードが「戦乙女(ヴァルキリー)の契約書」なのかもしれない。どちらにせよ、好機なのは確か!

 

「僕は手札からチューナーモンスター「ユニゾンビ」を召喚!」

 

二人三脚で肩を組む、太った男と痩せた男のゾンビが現れる。軽快でノリノリに歌っている細身のゾンビ…だがその声はダミ声であり、逆に引きつった表情でつられて歌うファットマンなゾンビは…驚くほど美声であった。不協和音にも程がある

 

ユニゾンビ チューナー

レベル3 ATK1300

 

「何!?チューナーだと!」

 

ここに来て、ようやく赤馬が驚愕した声を上げる。まぁ、エクシーズ次元の所属を名乗る人間が融合だけでなく、シンクロまで使うと分かったならそういう反応するよな

 

「「ユニゾンビ」のモンスター効果で、「ユニゾンビ」自身を対象に発動!手札の「ゴブリンゾンビ」を墓地に捨て、「ユニゾンビ」のレベルを1つ上げる!さらに「ユニゾンビ」を対象にもう1つの効果!デッキからアンデット族モンスター「馬頭鬼(めずき)」を墓地に送り、効果対象である「ユニゾンビ」のレベルをもう1つ上げる!ただしこの効果を使用した後、このターン僕はアンデット族以外のモンスターでは攻撃できない」

 

「ユニゾンビ」が唐突に歌いだす。美と醜が混じり合った不協和音はどういう理屈なのか分からないが、1回ずつを2回繰り返し「ユニゾンビ」のレベルを2つ上げた

 

ユニゾンビ チューナー

レベル5 ATK1300

 

「レベル1の「黒羊トークン」3体に、レベル5の「ユニゾンビ」をチューニング!」

 

レベルの上がった「ユニゾンビ」は本来より2つほど多い5つの光輪を生み出し、そこに死した存在の魂が3つの星となり…新たな命へと昇華する

 

「異界より来航せし超越者たちの王よ!その衝動の欲するまま、全ての事象を掻き乱せ!」

 

現れたのは、エネルギーを迸らせる生命力溢れた超能力者。だが、金属で包まれた肉体が、グズグズと腐る

 

「シンクロ召喚!レベル8!「PSY(サイ)フレームロードΩ(オメガ)」!!」

 

理性が崩れ、魂を穢し、生きし者を屠る屍の王へとその身を堕とした。それでなお、生前のパワーは何1つ劣っていなかった

 

PSY(サイ)フレームロードΩ(オメガ)

レベル8 ATK2800

 

「シンクロモンスター…シンクロ召喚までも扱えるというのか……!」

「さらに墓地の「馬頭鬼(めずき)」の効果発動!墓地のこのカードをゲームから除外することで、墓地のアンデット族モンスターを1体蘇生できる!墓地から「ゾンビ・マスター」を特殊召喚!」

 

墓のうち1つの地面が盛り上がる。そこから薄くボロボロの服を身に纏ったゾンビが復活する。そのモンスターは「ゾンビ・マスター」…死人を蘇らせ操る、死霊術師(ネクロマンシー)のスペシャリスト

 

ゾンビ・マスター

レベル4 ATK1800

 

「さらに残りの手札をコストに「ゾンビ・マスター」のモンスター効果!対象は墓地の「ゴブリンゾンビ」!1ターンに1度、自分あるいは相手の墓地のレベル4以下のアンデット族を対象に発動でき、効果で対象のモンスターを墓地から特殊召喚する!蘇れ、「ゴブリンゾンビ」!」

 

黒い体躯をした成人サイズのモンスターが、盗賊のような曲刀を手に地を突き抜けて姿を現す。白みのある線が、外骨格のように上半身全体を駆け巡り覆う。両肩にピタリとはめ込まれた青く丸い宝石と、感情を感じさせない赤い虫のような眼が濁りのある光を反射させた

 

ゴブリンゾンビ

レベル4 ATK1100

 

「同じレベルのモンスターが2体…」

「察したようだな!レベル4の「ゾンビ・マスター」と「ゴブリンゾンビ」の2体で、オーバーレイ!」

 

2体のアンデットは闇を象徴するような紫色の球体となり、銀河のようなそれの中心部に入り込み……誕生の小爆発を起こす

 

「天に従える聖なる者よ!光を地に落とし、新たな可能性を生み出せ!」

 

天から舞い降りたのは、醜悪な死食鬼(グール)から生まれたとは想像もつかない天女であった。ところどころ金が装飾された白い衣と前が開け放たれたローブを身につけ、明るい何本にも纏められた茶色の髪を揺らしながら、錫杖を手に天使の翼を広げて微笑みながらフクロウとともに現れた

 

「エクシーズ召喚!ランク4!「ライトロード・セイント・ミネルバ」!!」

 

…だが、それもつかの間。瘴気に侵された死の世界に舞い降りた「ミネルバ」とフクロウは、邪悪な魔素に身体を蝕まれ、肌を黒く染め翼を朽ちさせる。苦しみに震える彼女は既に生きる者にあらず、赤い瞳孔を拡げながら狂喜の笑みを浮かべ、悠然と立った。何という早すぎる闇堕ち……

 

ライトロード・セイント・ミネルバ

ランク4 ATK2000

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

「「ライトロード・セイント・ミネルバ」のモンスター効果!ORU(オーバーレイユニット)を1つ使い、デッキの上からカードを3枚墓地に送る!この際、墓地に送られたカードに「ライトロード」と名のつくカードがあれば追加効果があるが……墓地に落ちたのは「シャドール・ファルコン」と「冥界騎士トリスタン」と「生者の書–禁断の呪術」……「ライトロード」はないから効果は発動しない。そして効果で墓地に送られた「シャドール・ファルコン」の効果発動!このカードをモンスターゾーンにセットする」

 

チッ、他の「シャドール」カードが墓地に落ちない……墓地肥やしの多いアンデットデッキじゃ、結構「シャドール」カードが落ちる時があるのだがなぁ…まだ回し始めたばっかだから回らないのだと思いたい

 

けど、相手の場には「ミネルバ」と同じ攻撃力の「テムジン」がいる。「アンデット・ワールド」のおかげで赤馬の「DDD」モンスターたちは「戦乙女(ヴァルキリー)の契約書」で強化することができない……「ミネルバ」で「テムジン」を道連れにして、メイン2でさらにぶん回す!

 

「バトルフェイズ!「ライトロード・セイント・ミネルバ」で「DDD烈火王テムジン」を攻撃!」

 

「ミネルバ」が、穢されてなおも光を失わない錫杖を「テムジン」に構え…そこから光のレーザーを発射する。巨体の異次元の王も負けじと炎を纏った剣を振るい、光線を相殺させる。拮抗する両者の攻撃は徐々に力を増し、互いに力尽きる……

 

そこで、「ミネルバ」の肉体に変化が起きた。錫杖を持った右腕が、ふと崩れ出したのだ。攻撃の手段が地に落ちた時、耐えに耐え忍んでた烈火王の剣撃が堕ちた天女を両断する。朽ちた肉体を火炎で残酷に燃やされながら、「ミネルバ」は灰と煙となり消えた

 

 

白星 風斗 LP3700 手札 0枚

 

アンデット・ワールド

 

PSY(サイ)フレームロードΩ(オメガ)

レベル8 ATK2800

 

セットモンスター

 

伏せカード 1枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 1枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

DDリリス

レベル4 DEF2100

 

地獄門の契約書

 

伏せカード 1枚

 

 

「な、何……が…!?」

 

受け入れなれない現状が、目の前で起こった

 

バカな!?「ミネルバ」と「テムジン」は同じ攻撃力…伏せカードもさっきの赤馬の動揺から考えるに「戦乙女(ヴァルキリー)の契約書」で間違いないはず!現にセットカードは使用されていない…なのに何故!僕のモンスターだけがやられてライフが削られて…!

 

「ハッ!」

 

周囲を見渡す。最初に赤馬がいた位置には誰もおらず、いつの間にか僕の右斜め前にいた。そして、そこで公開された見覚えのない魔法カード。「死者の怨念」…?

 

…………アッ!

 

「あぁ!アクションカード!!」

 

そうだ、このデュエルは()()()()()()()()()……つまり、アクションカードによる攻撃の防御や反撃ができるということ…!

 

「そうだ。私は君の攻撃時にアクションマジック「死者の怨念」を発動していた。このカードは自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、自分の墓地のモンスターの数だけ戦闘する相手モンスターの攻撃力を100ポイント下げる。私の墓地には「DDケルベロス」「DDバフォメット」「DDスワラル・スライム」の3体が存在している為、君の「ライトロード・セイント・ミネルバ」の攻撃力は300ポイントダウンしていた、という訳だ」

 

アクションカード……毎回運頼りで前世のアニメじゃ、えらい酷評を受けていたが…たった1枚のカードで計算が狂わされる…!

 

これが…アクションデュエル……!

 

眼鏡のブリッジを指で押して位置を整えながら、赤馬零児は言葉を続ける

 

「君のデュエルは実に素晴らしいものだ。融合・シンクロ・エクシーズを使いこなし展開できる技量、展開の過程で相手を妨害し追い詰める戦術……」

 

そこにいるのは、絶対強者。最初の自信が吹き飛ぶほどの気迫を発する赤馬を見て、唾を飲み込む

 

「だが、まだまだ全力を出し尽くしていないぞ…私は…!」

 

王の名を冠するモンスターたちを背にこちらを見据えながらそう言い放つ姿に、思わずたじろいでしまう。イカン、壮大なBGMが脳内再生されてきた…こいつ、ラスボスすぎるだろ……!

 

異次元をも支配する王「DDD」。しかし、それすらも容易く扱ってみせるプレッシャー放つその姿に僕は……

 

次元すらも征服してみせる、赤馬零児を幻視させた




今回のデッキは「アンデシャドール」!リアルでも結構な回り具合!ガンガン回せる時があるのでお気に入りの1つなのですが…最近相手いなくて寂しい

あと、今回の話の「DD」カードは殆どが何らかの効果を失ったアニメ仕様の奴ばっかですが、これらのカードは決着がついた後のデュエルではOCG仕様に戻っているので一気に強くなります。アニメと同じですね!…都合がいいのは分かっていますがご了承ください

あと、社長の喋り方とか違和感なかったでしょうか?一応頑張って社長感出していますので温かい目で見守っていてください

それと、こちらが今回出たアクションカードの効果テキストです


死者の怨念

①自分のモンスターが相手モンスターとバトルを行うダメージステップ開始時に発動できる。自分の墓地のモンスターの数×100ポイント相手モンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで下げる


これからもこんな感じのアクションカードは出ると思いますが、できるだけ控えるようには頑張ります



次回予告

ほぼ互角な実力。そしてカードプールと情報アドで上をいっても、アクションカードに翻弄されまくる風斗。果たして風斗はデュエルに勝利することができるのか!?もれなくギンギンのブラック企業に入社する羽目になってしまうのか!?

「社畜ライフを過ごすのは、もうコリゴリなんだよォ!」

面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC–V物語
第19話「融合の極致」
デュエル・スタンバイ!
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