面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
新しいパックの情報出ましたー!「銀河眼の光波竜」とか「機械天使」とか、テンション爆上がりですよもう!この調子で早く「スターヴ・ヴェノム」でないかなー?
それでは3人組な第20話ドーゾ!
「手札事故」
「ドロー!うっげ、またかよォ…」
「白星さん、何してんの?」
「遊矢か。実は試作デッキ回してんだけど、何回やっても手札が事故ってばかりでさー……」
「手札が事故って?どういう意味?」
「…え?いやいや、言葉通りだって、手札が異常に悪いって意味。モンスターばっかだったり、魔法ばっかだったり…」
「モンスターばっかだったり?権現坂のフルモンデッキみたいだね」
「……お前、こっから5枚引いて」
「え、うん」
「……何この超いい手札。僕が、引いて、見ると……」
「うわ、全部が全部罠カードだ」
「チクショー!なんだこの格差は!?このアニメ補正どもがー!悔しいー!!」
LDSに呼び出されてかれこれ3週間……スタンダードに来て、1ヶ月の月日が経った。何とか赤馬社長との交渉デュエルを経て、同盟(仮)の約束を取り付けと僕の人生を守る事(重要)ができた。この次元に来た目的の1つは……まぁ、達成出来たということになる
3週間の間に少ない回数ながらも、赤馬とは様々なことを話し合った。具体的にどうやって融合次元と戦うのか、スタンダード次元の戦力はどう整える気なのか、渡したアカデミア製のデュエルディスクの解析具合はどのようなものか……課題は非常に多くあり、何から手をつければいいか僕は分からない。だから、その辺の采配は赤馬に任せることになった。最初は社長という立場上、それ以上の負荷を掛けるかもしれないことに流石の僕も躊躇った…のだが、向こうからの申し出を無下に断るのもアレだから頼むことにした。その代わり…気分次第ではあるものの、赤馬の命令はできるだけ実行するように心掛けることに決めた
………あれ?これ、僕が最も回避したかった社畜道にまっしぐらなような……気のせいだよな?…うん、気のせいだ
とにかく、赤馬の指示でLDSに行く以外の日は普段通りに過ごしている……のだが、何というかやる事があまりにも無さ過ぎるのだ。いや違う、本当は多すぎて困るくらいなのだが…どうすればこの次元の人間を強くできるのか、自分の中での答えがあまりに曖昧過ぎる。長い間アドバンス召喚と儀式召喚だけでデュエルしてきたスタンダードの
…長々と説明したが、最終的に何が言いたいのかといえば……
全員……全員、に………
「……無理だろ……」
『無理だな』
己の分身と同調しながら、あんまりな難易度に頭を抱えて嘆く。インフェルノである、クソゲーである、魔界村である…それくらいに難し過ぎる難題なのだ
別に、今のゆるふわとした平和な雰囲気でも構わない。僕が変えたいのは、要はデュエルでの意識の問題なのだから。けど、ビートダウンだけを良しとしてアクションデュエルの妨害(勝鬨は流石にダメ)を卑怯の一言で片付ける奴らの考えを変えるのは、本当に無理くさく感じる……何故攻撃力だけでカードの良し悪しを決めつけるんだか
実にアホらしい…と、呆れながらため息を吐き、ペットボトルのオレンジジュースを呷るように飲む。あ゛ぁ゛〜…糖分が五臓六腑に染み渡るぅ〜……
「………ん?」
突っ伏すようにテーブルに倒れ込みながらジュースを飲んでいると、腕のデュエルディスクが振動で小刻みに揺れる。通信機能も併せ持つデュエルディスクが、誰かからの連絡を受け取った際の振動であった。おかげでスマフォの存在意義がまた少し弱くなったのはつい最近の話だ
ディスクを一旦取り外し、通話モードをONにする際に表示された名前は…非通知?誰だ?僕の連絡先を知ってるのは遊矢と柚子と修造さんと権現坂、それに砕羽と赤馬の6人だけ……でも、僕は特に考えずに通話をONにして左耳に当てる。そこから聞こえてきたのは……知っている男の声だった
『白星だな?』
「…中島さん?あれ、なんで僕の連絡先を……?」
声の主は赤馬社長の側近こと中島さんであった。非通知だったからせいぜいが間違い電話くらいだと思ってたのに…中島さんナンデ?
「いや、だいたいなんで中島さんが…赤馬は?」
『社長は会議で忙しく、今日は会う余裕がない。私がお前に連絡を取ったのは、その赤馬社長からの要件を伝える為だ』
違う。1番聞きたいのはそこじゃなくて、何故僕の連絡先をあなたが知っているか、なのだが……。まさか赤馬の野郎、人に無断で連絡先を教えたというのか…!忙しい身だとしても、そこは僕に一声掛けるべきじゃないの!?それくらいの筋は通せよブラック社長!
だが、内心の憤りは黒星を除けば誰にも届くことはなく、中島さんはデュエルディスク越しに淡々と用事を告げる
『「君に依頼しておきたいことがある。LDSで中島から詳しい要件を聞け」……とのことだ。今すぐにLDSに来てくれ』
「それ、今聞くのダメなんですか…?」
『直接見て話した方が分かりやすい。LDSの受付で待つ』
ブツッ!…と、向こうから通信が切られる。いつもながら唐突に呼び出してくるが、せめてそれなら迎えくらいよこしたっていいんじゃない…?LDS本社は遊勝塾からじゃクソ遠いから、移動が長いんだよなぁ…なんたる面倒くささ……
「あ……そういや昼飯食ってねえや……」
太陽は既に真上から傾き始めており、時計の短針は12と1のちょうど中間……待つって言ってた手前、遅めに行くこともできない。ゆっくりご飯を食べる時間すらないし……
しゃーない、適当にサンドイッチでも買い食いしながら行くか
先ほど掛けられた電話番号で「LDS」と登録しながら、外出を伝えるために修造さんの元へ足を運んだ
「ングムグ……
LDSについて早々応接室で待たされる羽目になった僕は、少し遅めの昼食を食べていた。途中で買ったカツサンドを一口で全部頬張りながらポツリと感想を呟い……てたら、噛んだカツサンドの一部から口の中からちょっとはみ出してきた。ヤベ!
手で口を押さえ閉じさせながら口内を器用に動かし咀嚼する。芳ばしく焼かれたパンといい感じにソースがかかったカツが、絶妙なハーモニーを奏でながら味として下に染み込む。あぁ美味い……これだから一気食いは止められない。けど、一口で全部は流石にやりすぎたから次からは止めとこ。すぐに忘れるであろう約束を脳内で己に課しながら、押さえる必要もなくなった口を動かしパンとカツが混ざった流動体を喉に通す。ハムスターよろしく頰いっぱいの状態が通過したところで…ドアノブが捻られ、応接室の扉が開かれる。見覚えのあるサングラスの人が入室した
「すまない、他の要件で遅れてしま……お前は何をしているんだ?」
「
「食べながら喋るな」
どうやら急いで食べようとしたことが逆に仇になったらしい。とりあえずジェスチャーで待ったを伝えながら、口の中のカツサンドを飲み込む。モグモグ……
「……フゥ、すみません、待たせまして」
「応接室に食事を持ち込むな」
「返す言葉もない……」
腰を90度曲げ、口元のソースを見えないように舐めとりながら謝罪する。でもねぇ、人の連絡先を許可なく教えたり、呼び出しておいて待たせるのも同じくらい非常識じゃない?……まぁ、別に良いんだけど
「それで、なんで僕を呼んだのですか?」
「それは見せながら説明する。ついてこい」
「…?見せながら……?」
言葉の意味はまったくもって理解出来ないが、着いて行けば分かるだろうと思い中島さんの後を追う。廊下を少し渡った後、見えたエレベーターのスイッチを押したので、扉が開いたら鉄の箱の中に入る。上層に移動する34のスイッチが光り、エレベーターが密室になると身体に浮遊感を感じた
長い機械音が小さく鳴り響く中、上昇していた床はゆっくりとその速度を落とし……34階に着いたと伝えるチャイムと共に、動きを止めた。再び開いた扉をくぐり抜け、閉じる鉄扉を背に歩を進める。そうした先で辿り着いたのは……以前赤馬とデュエルをした時よりも広いデュエル場、それが幾つの区画にも分けられた大部屋を見渡せる観戦室であった。そこでは当然デュエルが行われているのだが、見ているうちにあることに気付いた
「……ん?あれ、「パンツァードラゴン」か?」
『おい、向こうの見ろよ。「ガイアナイト」がいるぞ、シンクロモンスターの』
「「グレンザウルス」までいる…中島さん、まさかここって……」
デュエルコートで行われているデュエルで使われているモンスターは、戦車に機械でできた竜の首がついている「重装機甲 パンツァードラゴン」、馬に跨り両手に槍を持った騎士「大地の騎士ガイアナイト」、大きく開けられた口から熱炎を漏らすティラノサウルス「グレンザウルス」など……どれも融合・シンクロ・エクシーズモンスターが使われていた。こんな奴いたか?って思うくらいドマイナーなモンスター使ってる奴も結構いるけどね…あんなクワガタの融合モンスターとか、マジで分からねぇよ……
「察しが良いな。お前の考えているように、ここに集まっている塾生たちはLDSの中でも特に実力のある者が身につけられる……融合コース・シンクロコース・エクシーズコースに所属する塾生たちだ」
「ハア、特に実力のある者が身につけられる、ねぇ……。それで、そんな子たちがいる場所まで連れてきて、いったい何を頼みたいんですか?」
「あそこのデュエルを見てみろ」
うん、あそこ?中島さんが促すようにデュエルコートの一角を見るので、僕もそちらを見てみる。すると、あるモンスターが目に映って……思わず叫んだ
「ゲッ、「プレアデス」!?」
視界に映ったのは、白と黄の眩い光を放った防具を身に包む戦士。その左手にはレイピアのような剣が逆手に持たれており、7つ星な形状のマントの裏側に星輝く宇宙が広がっていた
「セイクリッド・プレアデス」。フリーチェーンで相手カード1枚を
『これで終わりだ!「セイクリッド・プレアデス」の効果発動!
ガラス越しのデュエルが終局に近づく。赤く熱された岩の刃を両腕に装備された溶岩の戦士「ラヴァル・ツインスレイヤー」は「プレアデス」の効果によって光の粒子へと掻き消され、「プレアデス」の使用者はニヤリと笑みを浮かべた
「プレアデス」…そのモンスターを使役するのは、後ろに反り返った紫色の髪が特徴の男…
「彼は志島北斗。エクシーズコースの首席で、公式戦での勝率は58戦中53戦を勝利におさめている。LDS内でもトップクラスの実力者だ」
そりゃそうだろうね、先行プレアデスなんでガチ戦法相手とか僕でもデッキによっちゃかなりキツいのに、それがスタンダード次元のカードプールだけだとなると……勝利なんて遥か彼方だろうよ。つーか、58中53って…勝率9割以上か?公式戦のみだとしてもよくそこまで勝てるもんだなぁ……あ、「プレアデス」のダイレクト決まった
「公式戦…って、他の塾の試合とか?」
「その通りだ」
なんだ、エクシーズ知ってない奴相手じゃ、勝てても当然じゃね?僕の中での志島への関心度がグッと下がった
そして中島さんは、今度は別のデュエルを見るように指示する。まぁ、志島が出た時点で何となく予想はつくんだけどね〜
次のフィールドのモンスターは、煌びやかな宝石で装飾された鎧を着ていた。7色の7つの丸い宝石をはめ込まれた大剣を地に突き刺し、指が…頭部から生える2本の角が…胸部に埋め込まれた巨大で大きな宝石が、ダイヤモンドで出来た騎士であった
そのモンスターの名は「ジェムナイトマスター・ダイヤ」、墓地の「ジェムナイト」モンスターを除外することで墓地から手札に戻す「ジェムナイト・フュージョン」を使い、連続融合召喚を行い展開していく融合デッキのカテゴリの1つである「ジェムナイト」……そのデッキでワンキル能力が実に高い、「ジェムナイト」の切り札とも言える融合モンスターであった
その「ジェムナイト」デッキを使っているのは、緑がかった黒髪を切り揃えたロングヘアーの女の子…
相手の場には硬質な黒い岩の生命体「ガチガチガンテツ」が守備に徹した状態で伏せはなしで、残りライフは800。墓地に「ジェムナイト・ルビーズ」がいれば「マスター・ダイヤ」で「ルビーズ」を除外、「マスター・ダイヤ」は自身の効果で「ルビーズ」の効果の貫通能力を得るからそのままトドメまでもっていけるが……
『「ジェムナイトマスター・ダイヤ」のモンスター効果!墓地の「ジェムナイト・ルビーズ」をゲームから除外することにより、エンドフェイズまで「マスター・ダイヤ」は「ルビーズ」の名前と効果を得る!これで「マスター・ダイヤ」は、「ルビーズ」の貫通効果を得る!』
あ、これは光津の勝ちだわ。「ガチガチガンテツ」の人、お疲れっしたー
「あそこで今戦っている融合使いの光津真澄が、融合コースの首席だ。宝石商の娘で、宝石の石言葉などにも詳しい」
「だから「ジェムナイト」を使ってんのかね〜。……ところで、後半の説明は何か意味があるんですか?」
「いや、何もない」
なら何故説明したし。なんたる無駄知識…デュエルにもLDSにも関係ねーじゃん。でも強面サングラスで怒られると怖いので黙って心の内に潜めておく
そして流されるように顔を動かし……これまた一方的な試合を目撃する。透き通った声が、脳内に響く
『あれは……「ガトムズ」がうわっ、3体いやがる…つーことは……』
うん、間違いなく……シンクロコースのあいつだろうね
最後のデュエルコートにいたのは、白銀の鎧を輝かせる3体の総司令。そのうちの1体が赤きマントを翻し、真っ直ぐ2つに枝分かれした巨剣を…「
無限ループが存在するほどのソリティア力を誇るシンクロカテゴリ「
そんな「
刀堂と相対する
『まだまだァ!俺の場に「
既に敗北濃厚にも関わらずまだ特殊召喚を続ける刀堂を見て、相手の女の子は顔を絶望に染めて涙目である。やめて!相手の心のライフはもう0よ!やめたげてよォ!
「あの竹刀を背負った男がシンクロコース首席の刀堂刃だ。あれほどのシンクロ召喚を行う塾生は、我がLDSでも刀堂くらいだ」
「あれ以外にも居てたまるか…「
「何か言ったか?」
「いーえ、何にも……」
しかし…志島北斗、光津真澄、刀堂刃か。正史の未来じゃあLDSがペンデュラム召喚目当てに遊勝塾に乗り込んでくるのだが、彼ら彼女らはその際の交渉デュエルの戦力として現れた。その後もちょくちょく遊矢たちとは色々あったが……何だって中島さんは僕にあいつらのデュエルを見せたんだ?
「中島さーん、ホントそろそろ教えてくれても良いんじゃないですか?わざわざ各コースの首席のデュエルなんて見せて、一体全体どんな依頼だっていうんですか?」
……いや、ここまでされれば結構考えが浅い僕でも分かるんだけど、察せるんだけど……いい加減こう、隠されると腹立つものがあるから…教えてもらえないとへそ曲げて帰るつもりですらある
するとそんな僕の雰囲気を感じ取ったのか、中島さんはやれやれ…といった感じで首を振る。何で呆れた奴だ…って態度を僕に返すの?呆れたいのこっちなんですけど
「今日お前を呼び出した理由は……社長が言うに「上には上がいることを教えてやれ」とのことだ」
「ハァ?俺たちがデュエル?この男と?」
刀堂の訳が分からない、といった意味を含めた言葉を口にする。他に呼び出された志島、光津も訝しげな表情で中島さんを見るが、特に態度を変わらさせずに刀堂の疑問を答える
「そうだ。この男はとある塾の講師なのだが、赤馬社長のご意向でその塾と交流デュエルを行うことになり、彼はそこから選出された人物だ。そうだな、白星?」
『…という設定らしいが?』
「………あーはい、そうですそうです。最近出来た塾なので名前はまだ決まってませんが、そこのデュエル講師を務めております…白星風斗と言います。以後、お見知りおきを」
なるべく自然に、淀みなく嘘を吐く。ばれない嘘をつくコツは、嘘と真実を混ぜ合わせることと、ところどころ一呼吸の休憩を挟むこと。無理過ぎる設定だろうけど、まさか遊勝塾の所属だとは言えるはずがないし、これなら疑念は抱かれても、確信には至ることはない。……いつから僕は処世術を身につけてたんだろうか…?
巨大なデュエルコートのセンターど真ん中で、そんなことを僕は考えていた。余所行きの面を被って挨拶をするものの、3人は不敵かつ勝ち誇った表情を浮かべるだけだった
「中島さん、そんな無名塾の
「私たちは各デュエルコースの首席よ。私たちを相手に勝てるの思っているのなら……あなたの目、くすんでるわ」
エクシーズコース首席の志島と融合コース首席の光津は、僕をそれぞれ見ながら勝てるわけがないと侮蔑し、見下す。このガキども…!こっちが
あんまりな対応に途轍もなく腹が立ったので、怒りを込めた疑問を中島さんだけに聞こえるように小さな声でぶつける。八つ当たりじみてるが知ったことか
「随分斬新な挨拶の返し方ですねぇ中島さん……相手の見下し方を教えるのが、LDSの教育なんですか?」
「……それに関してはこちら側の非だ、すまない。…だが、これで赤馬社長の依頼の意図は理解しただろう?」
「そーですね……嫌という程分かりましたよ。…あとすんません」
皮肉たっぷりで投げ掛けた僕の質問を謝罪も含めて返してきた中島さんに謂れもない八つ当たりをしてしまったことを謝りながらも、赤馬社長の伝言である「上には上がいることを教えてやれ」という言葉の意味を理解した
とどのつまり、赤馬は負けなしで舞い上がってるこのLDS首席どもの鼻っ柱をへし折ってやれ……そう言っているのである。自信を喪失させるようなことをしていいのか…などと一瞬考えたが、この先のどこかで敗北を味わって挫折するよりは、今ここで実力が拮抗する人間がいることを知った方が後々の為にもなるだろう
ようはこいつらを「デュエルでぶちのめせ」……そういうことなのだろう。なるほど、赤馬自身は忙しくて無理で環境的に周囲の人間は敵なし…だから融合・シンクロ・エクシーズを使える僕を指名してきたってわけか……単純明快で分かりやすく、何より面白い
「へっ、俺は構わないぜ。どうせデュエルしたところで、勝つのは俺だからな!」
竹刀をこちらに突きつけて、分かりやすく刀堂は挑発する。こいつは見下してはいないな……異常な自信で、どっちにしろ増長を招いはいるが
頭の中が煮沸するかのように熱くなる。既に僕はデュエルディスクを構えて、カバンから取り出したデッキケースの蓋を開ける
「挑発のつもりか?だが無駄だ、そもそも僕は負けてやるつもりがないからな……さぁ、最初は誰が相手をする?」
しかし冷静さは失わない。こいつらガチデッカー3人を相手にするには、ペンデュラム抜きという縛りはあまりにも重過ぎる。だから、向こうに選出させるように誘導する
そうして出てきた初戦の相手は……融合使いの光津であった。長い髪を手でなびかせながら不敵な笑みを浮かべるその姿は、やたらと絵になる仕草だった
「大した自信ね……けれど、あなたの実力が通用するのは弱小
「デュエル形式はスタンダード、互いのライフは4000から……さぁ、ゲームを始めよう」
「「デュエル!!」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
光津 真澄 LP4000 手札 5枚
この初手は……中々に、強い
「先行は私からよ!私は手札から魔法カード「ジェムナイト・フュージョン」を発動!」
「ッ…早速か」
「手札・墓地からモンスターを墓地に送り、「ジェムナイト」融合モンスターを融合召喚する!私は手札の「ジェムナイト・ルマリン」と「ジェムナイト・エメラル」で融合!」
突如現れた渦が、トルマリンを象徴する「ジェムナイト・ルマリン」とエメラルドの輝きを放つ「ジェムナイト・エメラル」…2体の戦士を飲み込み、光を放つ
「雷帯びし輝石よ!幸運を呼ぶ緑の輝きよ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!」
トパーズの戦士が、濃緑のマントをはためかせて現れる。目がチカチカするほど鮮やかなオレンジの鎧をそのモンスターは着ており、両手に握られた2つの刃は漫画で見るような雷の形状をしていた
「融合召喚!現れよ!勝利の探求者「ジェムナイト・パーズ」!」
ジェムナイト・パーズ
レベ6 ATK1800
「パーズ」が出てきたか…高校の頃にメチャクチャ強い奴が「ジェムナイト」使ってたから、その効果はよーく覚えている。というか
過去のおびただしい敗北の1つを思い出して苦い顔をしていると、光津は自慢げに髪をかきあげ語りかけてきた
「どう?これが融合カードを使うことで召喚できる、融合召喚よ。あなたのくすんだ目でも、手札融合の凄さは分かったみたいね」
「いや、これのどこが凄いってんだよ」
「……え?」
いや、だってねぇ?
「融合召喚は召喚権を使用しないで融合モンスターをポンと出せるのが強みだろ?融合召喚のメリットを改めて説明されただけで、凄いとは言い難いだろ?」
しかも「パーズ」って先行1ターンで出すモンスターじゃないし。まぁ、他に融合召喚するってなら話は別なんだけど
釈迦に説法だろうなぁ、と思いながら素っ気なくそう返す…返したのだが、何でか光津は目を丸くしてこちらを見ていた。予想外の返答に驚いているご様子で、観戦している刀堂や志島もポカンとした表情である。え…何、その反応?常識でしょ?融合召喚の
なんかとても悔しそうな顔で光津がこちらを睨んできている…が、少ししたら落ち着いたのか、先ほどの顔つきに戻っていた。……目は僕を睨めつけたままだが
「……どうやら、少しは融合召喚の知識はあるようね。けど、知っているだけじゃ、私に勝つことなんてできないわ!私は墓地の「ジェムナイト・フュージョン」の効果を発動!墓地の「ジェムナイト」モンスターである「ジェムナイト・エメラル」をゲームから除外することで、墓地の「ジェムナイト・フュージョン」を手札に加える!私はこれでターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
光津 真澄 LP4000 手札 3枚
ジェムナイト・パーズ
レベル6 ATK1800
「よーし!真澄のお得意の融合召喚が出たぜ!」
刀堂と志島は初ターンから融合召喚を決めた光津に、このデュエルの勝利を確信していた。いつも三人で切磋琢磨してきた仲だからこそ、所属も分からないあんな男に負けるはずがないと……
このまま3連勝を決めてやろう、なんて気の早いことを考えながら志島はデュエルコートに立つ光津にエールを送る
「あいつの言ってることなんてハッタリだ!そのまま押してしまえー!」
「うるさい!気が散るから2人とも黙ってて!」
しかし、応援の言葉に返されたのは怒気の孕んだ言葉。思いもよらない光津の態度に怯みながらも、2人は言葉通りに従う
「な、なんだよ…急に大声上げやがって……」
「僕なんて応援しただけなのに、なんで怒られたんだ…?」
豹変するような光津を疑問に思いながらも、男2人はそれぞれ愚痴を漏らす。そして、ターンを明け渡した彼女の胸中を支配していたのは……言いようもない敗北感と、それによる怒りだった
(私の融合召喚が…マルコ先生に教えてもらった融合召喚が、あんな飄々とした当然のような態度で返されるなんて……なんて屈辱!マルコ先生の融合召喚をバカにして、ただでいられるなんて思わせないわ!)
自分の恩師に教えてもらった力……それを何ともないように返されたのが、彼女の心の琴線に触れたのであった。大切な融合召喚を侮辱されたと思い込んだ光津は、このデュエルに必ず勝つという感情で己の内で燃やしていた
「僕のターン、ドロー!……初手といい、引きといい……ナイスな展開じゃあないか」
そんな中、風斗は口角を上げた笑みを顔に張り付かせながら、動き始める
「手札から「封印の黄金櫃」を発動!デッキからカードを1枚除外し、発動後2回目のスタンバイフェイズに手札に加える。僕は「精霊獣 カンナホーク」をゲームから除外する」
黄金櫃がフィールドに現れる。緑色の翼を持った鳥のイラストが描かれたカードが黄金の箱に収まると同時に、黄金櫃は閉じられる。あのカードは、おそらくデッキのキーカードなのであろう。だが、2ターンもの猶予があるならばその間に倒せば…!
そんな淡い希望は、即座に叩き潰された
「手札から「霊獣使い ウェン」を召喚!このカードが召喚に成功した時、ゲームから除外されている「霊獣」モンスターを1体特殊召喚できる!さっき「封印の黄金櫃」で除外した「カンナホーク」を特殊召喚する!」
どこか不思議な雰囲気を感じされる、瞳が薄く閉じられた少女が現れる。彼女はその手に持つ青く大きな宝石がはめ込まれた身の丈以上の杖を振るう…すると、「封印の黄金櫃」がガタガタ揺れだしたかと思うと箱の蓋を弾き飛ばして、何かが飛翔した。それは、先ほど黄金櫃に封印されていた人間大の緑鳥であった。脚とトサカと翼のあちこちが黄色の電気でできており、空のような水色の瞳を瞬かせた
霊獣使い ウェン
レベル3 ATK1500
精霊獣 カンナホーク
レベル4 ATK1400
「「霊獣」モンスターはそれぞれ1ターンに1度しか特殊召喚できない効果を持つ……「カンナホーク」はこのターン特殊召喚できなくなり、「封印の黄金櫃」の効果も無意味となった」
「最初から特殊召喚する為に除外したのね…けれど、そのモンスターたちじゃ私の「ジェムナイト・パーズ」を突破することはできないわ。モンスターも召喚したし、一体どうやって私を倒すつもりなのかしら?」
「今に分かる……だがその前に「カンナホーク」のモンスター効果!その効果はデッキの「霊獣」カード1枚をゲームから除外、除外してから2回目のスタンバイフェイズに手札に加える「霊獣」限定の「封印の黄金櫃」効果だ。これによりデッキの「精霊獣 ラムペンタ」をゲームから除外する」
雷の鷹が吠えると共に、緑色のキザったらしいポーズをとったペンギンのモンスターカードが除外ゾーンに放り込まれる。また除外…一体何を企んで……
「僕は「霊獣使い」モンスターである「ウェン」と「精霊獣」モンスターの「カンナホーク」を、ゲームから除外!」
除外される為の暗く、空虚な空間への穴が開く。そこへ「ウェン」は何かしらの呪文を唱え、「カンナホーク」は甲高い鳴き声を上げながら……
「なっ…?!」
光津は目を疑った。そして、意味のない否定を繰り返す。そんな筈がない…あり得ない…と
しかし、奇妙な確信が彼女の心を貫く
「稲妻迸らせし鷹よ!災厄に身を潜める少女と心通わせ、力と知恵と勇気を示せ!」
デュエルフィールドの外へ繋がっているであろう渦巻く次元……そこから翼を羽ばたかせ現れたのは、先ほど見た緑の鳥よりも大きな巨鷹。幼さゆえの丸みがあった身体や目つきは歴戦の猛者特有の鋭さを得て、その背に力を熟練させた初老の男性が乗っていた。人と霊獣が1つとなったその姿は……まさに獣騎
両掌を、正面で強く叩きあわせる
「融合召喚!レベル6!「聖霊獣騎 カンナホーク」!!」
尖ったクチバシを開けて、「カンナホーク」は野太い咆哮で大気を揺らした
聖霊獣騎 カンナホーク
レベル6 DEF1600
「そんな…LDSでもないのに、融合召喚!?それも、融合カードを使わない融合なんて……!」
光津は瞳孔を揺らしながら動揺する。自分のアイデンティティとも言える融合召喚…それを、正体不明の男が使用したのだ。しかも、融合カードを必要としない未知の融合召喚を……
「おい真澄!しっかりしろ!まだ始まったばかりだろうが!」
「あんなモンスター、君の融合モンスターなら簡単に倒せるだろ!融合コース首席の力を見せてやれー!」
ハッと、意識が横に向けられる。視線の先には声を張り上げて自分に喝を入れてくる級友の姿……喉を痛めてむせてる北斗とそれを叱責しながらも応援の声を投げかけてくる刃。そんな2人をみて、光津真澄は気を強く持ち「カンナホーク」を見据えた
(そうだ、相手が私の知らない融合召喚を使ってきたとしても…マルコ先生の、私の融合召喚がある!その誇りの為にも、私は勝つ!)
闘士の込められた視線を感じたのか、風斗は楽しそうに笑ってみせる
「「聖霊獣騎 カンナホーク」のモンスター効果!ゲームから除外されている「霊獣」カードの「精霊獣 カンナホーク」「霊獣使い ウェン」を対象に発動!対象のカードを墓地に戻し、「霊獣」カードを1枚デッキからサーチする…だが!ここでさらに「聖霊獣騎 カンナホーク」をエクストラデッキに戻し、「精霊獣 ラムペンタ」と「霊獣使い ウェン」を対象に効果発動!対象のモンスターを僕のフィールド上に守備表示で特殊召喚する!」
「「融合解除」の効果を内蔵した融合モンスター!?」
「正確には「精霊獣」と「霊獣使い」1体ずつだがな……。「ラムペンタ」と「ウェン」を特殊召喚!」
精霊獣 ラムペンタ
レベル4 DEF400
霊獣使い ウェン
レベル3 DEF1000
「そして「聖霊獣騎 カンナホーク」の効果で「精霊獣 カンナホーク」「霊獣使い ウェン」を墓地に戻してサーチを行うが…「聖霊獣騎 カンナホーク」自身の効果で「ウェン」は僕のフィールドに存在する……よって「カンナホーク」のみを墓地に戻し、「霊獣の騎襲」を手札に加える!そして「ラムペンタ」の効果!エクストラデッキの「霊獣」モンスター「聖霊獣騎 ガイアペライオ」をゲームから除外し、除外したモンスターと同じ種族の「霊獣」モンスターをデッキから墓地に落とす!「ガイアペライオ」はサイキック族、よって同じサイキック族の「霊獣使い レラ」を墓地に落とす!」
「止まらない…!」
絶えず効果を発動させる風斗のプレイングに、光津は戦慄し、額から汗を流す
唐突だが、融合召喚の弱点とは何かご存知だろうか?融合召喚の基本的な特徴は、召喚権を行使せずに強力なモンスターと1回で召喚できるカードの強力さとサポートカードの豊富さにある。ならば融合召喚の弱点とは…?それは、手札消費の激しさにある
主に融合カードと素材のモンスター2体を最低でも必要とする融合召喚は手持ちのカードを枯渇しやすく、せっかくだした融合モンスターが破壊されればリカバリも効かずそのままやられることもある
光津の使用カテゴリの「ジェムナイト」は「ジェムナイト・フュージョン」を使い回すことにより連続で融合することができるものの、やはり手札の消費は著しいのである。…だが……
「あれだけモンスターを特殊召喚していて、手札をたった1枚しか減らしていないなんて……!」
風斗の場は次の融合の布石であろうモンスターが2体、墓地と除外にそれぞれ2枚と1枚…そして、手札は5枚。たった1度の融合召喚と数回の特殊召喚だけで手札の補充と展開の補助を行ったのである。「霊獣」モンスターのデメリットである「1ターンに1度しか特殊召喚できない」がなければ、今頃光津は地に這いつくばっていたところだ
「「霊獣使い ウェン」と「精霊獣 ラムペンタ」をゲームから除外し、融合!精神に入り込みし人鳥よ!災厄に身を潜める少女と心通わせ、力と知恵と勇気を示せ!融合召喚!」
再び現れる、巨大な雷鳥
「レベル6!「聖霊獣騎 カンナホーク」!!」
聖霊獣騎 カンナホーク
レベル6 DEF1600
「「カンナホーク」の効果、除外ゾーンの「ウェン」と「ラムペンタ」を墓地に戻して、デッキから「霊獣の連契」を手札に加える。そして魔法カード「魂の解放」を発動!僕の墓地の「ウェン」「レラ」「カンナホーク」「ラムペンタ」と、光津の墓地の「ジェムナイト・ルマリン」…計5枚のカードをゲームから除外する!」
「「ルマリン」を除外!?」
魔法カードの発動と共に、5枚のカードが墓地から除外の穴に吸い込まれてゆく。風斗が「魂の解放」を使った意図は2つ、1つは自分の墓地の「霊獣」モンスターを除外ゾーンに溜め込むこと。そして、もう1つの理由は……
「真澄の墓地の「ジェムナイト」を除外だと!?」
「マズい!あいつ、「ジェムナイト・フュージョン」の再利用を防ぐ気だ!」
そう、「ジェムナイト」デッキの性質上、墓地に「ジェムナイト」を残すことの危険性を身を持って理解していたゆえに、風斗は墓地の「ジェムナイト」を除外したのであった。たった1枚…しかしその1枚で、足元を掬われる可能性があるのだから
「カードを3枚セット、これで僕はターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
聖霊獣騎 カンナホーク
レベル6 DEF1600
伏せカード 3枚
VS
光津 真澄 LP4000 手札 3枚
ジェムナイト・パーズ
レベル6 ATK1800
着々と場が整えられてゆく中、光津のターンが回ってくる
「私の…ターン!」
互いのフィールドを見比べる。頭の中でシミュレートし、先の展開を構築する
(手札は同じ3枚…いや、こちらが1枚多くても向こうはリバースカードが3枚もある…あのうち2枚は、「カンナホーク」の効果で手札に加えたカードに違いない。ならばその効果は?攻撃の迎撃?召喚反応?あるいはどちらともという可能性がある…ならば私が取るべき手は……!)
「私は手札から「ジェムナイト・フュージョン」を発動!手札の「ジェムナイト・オブシディア」と「ジェムナイト・サフィア」を融合!」
黒曜石の堅さを持つ「オブシディア」とサファイアの美しさを感じさせる「サフィア」が、渦の中で交ざり込み……新たな輝きの石を生み出す
「鋭利な漆黒よ!堅牢なる蒼き意志よ!光渦巻きて新たな輝きと共に1つとならん!」
青紫色の鋼を身に纏う騎士が降り立つ。流動するようにスカイブルーの石が両手で蠢き、右手にレイピア、左手に丸い盾を作り上げ光を放つ。色褪せない紫を反射させるその宝石の名は……アメジスト
「融合召喚!現れよ!高貴なる守護者!「ジェムナイト・アメジス」!!」
ジェムナイト・アメジス
レベル7 ATK1950
「「ジェムナイト・フュージョン」の効果で墓地に送った「ジェムナイト・オブシディア」のモンスター効果!私の墓地のレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する!「ジェムナイト・サフィア」を守備表示で特殊召喚!」
優しみ溢れるオーラを放つサファイアの化身が、黒曜石の堅き意志によって現れる
ジェムナイト・サフィア
レベル4 DEF2100
「墓地の「ジェムナイト・フュージョン」の効果発動!墓地の「オブシディア」をゲームから除外して、「ジェムナイト・フュージョン」を手札に加える!」
「真澄の場には、3体の「ジェムナイト」……刃!」
「ああ、来るぜ!真澄の切り札が!」
「そしてもう1度「ジェムナイト・フュージョン」を発動!フィールドの「パーズ」「アメジス」「サフィア」の3体で…融合!」
勝利の探求者が、高貴なる守護者が、高潔な意志が。1つの光に導かれて……7色へ形を変える
「知性の
全身から様々な色を放つ、ダイヤモンドの騎士がその剣を手に現れる。使い手によっては全ての色に変わり得ることのできる至高の宝石の化身……その石言葉は「永遠の絆」
「融合召喚!現れよ!全てを照らす至上の輝き!「ジェムナイトマスター・ダイヤ」!!」
ジェムナイトマスター・ダイヤ
レベル9 ATK2900
「「ジェムナイトマスター・ダイヤ」の攻撃力は、自分の墓地の「ジェムナイト」モンスターの数だけ100ポイント上がる!私の墓地には「パーズ」「アメジス」「サフィア」の3体…よって300ポイントアップ!」
ジェムナイトマスター・ダイヤ
レベル9 ATK3200
「そして「マスター・ダイヤ」の融合素材によって、フィールドから墓地に送られた「アメジス」のモンスター効果!フィールド上のセットされた魔法・罠カードを全て持ち主の手札に戻す!」
「ッ!?ヤッバ…!」
どこからともなく吹き荒れる紫色の突風。それらが風斗のフィールドの伏せカード3枚を、全てめくり上げていく
「うまい!相手のリバースカードを全部取り除く為に、真澄は融合召喚を2回やったのか!」
「しかも墓地には「パーズ」もいる!「マスター・ダイヤ」の効果で「パーズ」の能力、2回攻撃と戦闘破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を使えば!」
「「カンナホーク」の攻撃力1400の効果ダメージと「マスター・ダイヤ」のダイレクトアタックで、真澄の勝ちだ!」
級友の確定的な勝利の道筋を解説しながら、自分の勝利のように喜ぶ刀堂と志島
だが、当然のことにタダでやられるほど風斗は甘くなかった
「チェーンして罠カード「霊獣の連契」を発動!このカードは自分フィールドに「霊獣」モンスターがいる時のみ発動可能!その効果は、自分の「霊獣」モンスターの数までフィールドのモンスターを破壊する効果!「ジェムナイトマスター・ダイヤ」を破壊する!」
「カンナホーク」が、空高く舞い上がる。全身から放電された眩しいほどの電撃は、初老の霊獣使いの杖に誘導され、蓄えられる。そして、耳を覆いたくなるほどの爆音と共に轟雷が「マスター・ダイヤ」に降り注がれ…直撃。岩を砕き、鉄をも溶かすほどに焼き焦がす高熱の連撃がダイヤで生成された全身を破壊し尽くし……「マスター・ダイヤ」は爆散した
「キャアッ!」
「そして、「アメジス」の効果が適応される。うおっ!」
遅れてやってきた紫風に伏せカードは全て手札に戻される。もっとも、「連契」の使用により戻ったカードは2枚だが……
「あぁ、「マスター・ダイヤ」が破壊されてしまった……」
「これじゃ、次のターンで反撃を食らって負けるぜ。どうする気なんだよ、真澄」
「…あなたの目、くすんでるって言ったわよね……訂正するわ。どうやらくすんでたのは、私の方みたい」
「…?なんだ、急に?」
唐突に、光津はそんなことを言い出した。マジでどうしたの?何だか心なしか目もキラキラ輝いてる気がする
「あなたを過小評価してたってこと。どうせ他の塾生と同じで、いつも通り勝てるものだと思っていたけど…どうやらその考えはダメだったようね」
「そうかよ。だが他人の評価なんざこっちは知ったこっちゃない、何故ならハナから僕は勝つ気でいるからな」
「そう…なら、改めて言わせてもらうわ…」
髪を、搔き上げる。埃が舞っていたからべたついてる筈なのに、滑らかに黒を反射させながら髪が宙を舞う
「……あなたの目、くすんでるわ!手札から魔法カード「死者蘇生」を発動!この効果で、「ジェムナイトマスター・ダイヤ」を復活させる!」
「ハァ!?」
「蘇れ!「マスター・ダイヤ」!!」
ジェムナイトマスター・ダイヤ
レベル9 ATK3200
こ、こで…「死者蘇生」ィィ!?まっさか、さっき引いたのか!?この世界の住人は、どいつもこいつもどんな引きしてんだよマジで!
「「死者蘇生」!真澄の奴、「マスター・ダイヤ」がやられることも想定していたのか!」
「これでさっきの有利な状況に戻った!リバースカードもない!今度こそ間違いなく勝ちだ!」
畜生!嬉しそうに解説しやがって!
「「ジェムナイトマスター・ダイヤ」のモンスター効果!墓地の「ジェムナイト・パーズ」をゲームから除外することで、エンドフェイズまで「パーズ」と同じ名前と効果を得る!」
ジェムナイトマスター・ダイヤ(ジェムナイト・パーズ)
レベル9 ATK3100
「パーズ」の意志を継いだかのように、身体が明るいオレンジのオーラに覆われる「マスター・ダイヤ」。すると身体中のダイヤも淡く橙色に発光し、その色はまさに宝石の1つ「トパーズ」の色であった
いかん、高校のトラウマ再臨だ!
「バトル!「ジェムナイトマスター・ダイヤ」で、「カンナホーク」を攻撃!「パーズ」の効果を得た「マスター・ダイヤ」は相手モンスターを戦闘で破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!これで1400の……!」
「攻撃宣言時に「聖霊獣騎 カンナホーク」のモンスター効果で、このカードをエクストラデッキに戻し、除外ゾーンの「霊獣使い レラ」と「精霊獣 カンナホーク」を守備表示で特殊召喚する!」
「な……その効果、相手ターンでも使えるの!?」
紫電を身体の節々から漏らす「カンナホーク」と、明るく長い金髪を縦長でグルグルに巻いた活発そうな少女「レラ」が現れる。蔦で作られた杖の先端の石は、炎のように明るく光を発していた
霊獣使い レラ
レベル1 DEF2000
精霊獣 カンナホーク
レベル4 DEF600
正直「聖霊獣騎」は取っておきたかったんだが……この際、文句は言えない
「クッ……なら攻撃対象を「レラ」に変更!「マスター・ダイヤ」!」
杖を横に構えて、防御の姿勢をとる「レラ」。しかし全身がダイヤモンドの戦士に蔦の杖など紙切れ同然であり…「マスター・ダイヤ」の硬質な一閃が、悲鳴をあげる「レラ」を一撃で斬り伏せさせた
100ちょびっとだが、「レラ」の攻撃力がダメージとなり僕に襲う
白星 風斗 LP3900 手札 5枚
「チィッ!」
「「パーズ」の効果を得た「マスター・ダイヤ」は、2回の攻撃を行える!「マスター・ダイヤ」で「カンナホーク」を攻撃!」
同じく、豪質な大剣の剣撃により雷鳥は切り倒され、黄色い粒子に形を変え宙に霧散した
「「カンナホーク」の攻撃力、1400の効果ダメージを与える!」
「クッソ……」
白星 風斗 LP2500 手札 5枚
「仕留めきれなかった……墓地の「ジェムナイト・アメジス」をゲームから除外して「ジェムナイト・フュージョン」を手札に加える。私はこれでターンエンド!」
光津のエンド宣言と同時に、ダイヤの騎士に宿っていた「パーズ」のオーラが消えていく
白星 風斗 LP2500 手札 5枚
VS
光津 真澄 LP4000 手札 1枚
ジェムナイトマスター・ダイヤ
レベル9 ATK3000
さてと…正直「マスター・ダイヤ」を突破することはできる。手札には「精霊獣 ペトルフィン」がいる…こいつの効果で手札の適当な「霊獣」カードを除外して「マスター・ダイヤ」をバウンスすれば、まだどうにかなると思うんだが……あいつの手札には「ジェムナイト・フュージョン」がまだ残っている。もし「ジェムレシス」という「ジェムナイト」をサーチできるモンスターカードを引かれてしまえば「ジェムナイト・ジルニコア」を融合召喚されて、結局パワー押しで敗れる可能性もある。…これだけ魔法・罠カードがあれば問題ないんだけど、念には念を入れる必要がある……このターンで4000ライフを削りきるという必要が
とりあえず、カードはドローしておくか
「僕のターン!」
引いたカードは…「霊獣使いの長老」……いけるか?このターンで…?回しながら考えるか!
「「霊獣使いの長老」を召喚!」
先ほどの「聖霊獣騎 カンナホーク」に乗っていた老人が姿を現す。しかし、「カンナホーク」に乗っていた時ほどの覇気が今は存在せず、片手には辞書のように分厚い本があった
霊獣使いの長老
レベル2 ATK200
「「霊獣使いの長老」が召喚に成功したターン、僕はもう1度だけ「霊獣」モンスターを通常召喚できる。「精霊獣 ペトルフィン」を召喚!」
バシャリ…と。小さな水溜りのように浮かび上がった
精霊獣 ペトルフィン
レベル4 ATK 0
「「ペトルフィン」のモンスター効果で、手札の「ラムペンタ」をゲームから除外して「ジェムナイトマスター・ダイヤ」を対象に発動!対象のカードを手札に戻す!」
歯並びの良い口を小さく開けながら、「ペトルフィン」は空気を歪めるほどの超音波を奏でる。攻撃を直に食らった「マスター・ダイヤ」は頭を押さえながら悶え苦しみ、粒子となり消えていった
「「マスター・ダイヤ」ッ!」
「そして「長老」と「ペトルフィン」を除外して融合!大河に潜みしイルカよ!時を積み重ねし老人と心通わせ、力と知恵と勇気を示せ!融合召喚!再度現れよ!「聖霊獣騎 カンナホーク」!!」
聖霊獣騎 カンナホーク
レベル6 ATK1400
あ、サーチすれば倒し切れるな
「「聖霊獣騎 カンナホーク」のモンスター効果!除外されている「霊獣使いの長老」と「精霊獣 ペトルフィン」を対象に発動!「長老」と「ペトルフィン」を墓地に戻し、「霊獣の相絆」を手札に加える!」
白星 風斗 LP2500 手札 5枚
聖霊獣騎 カンナホーク
レベル6 ATK1400
VS
光津 真澄 LP4000 手札 1枚
「そしてバトルフェイズ!「聖霊獣騎 カンナホーク」でダイレクトアタック!」
「聖霊獣騎」の成熟しきった肉体を駆使し、脚の電撃を強く弾けさせながら下降し、脚爪で攻撃する「カンナホーク」。まぁ、幼体も成体も同じ攻撃力なんだけどね
「クゥ…!」
「そして「聖霊獣騎 カンナホーク」のモンスター効果で自身をエクストラデッキに戻し、除外ゾーンの「精霊獣 ラムペンタ」と「霊獣使い ウェン」を特殊召喚する!」
白星 風斗 LP2500 手札 5枚
精霊獣 ラムペンタ
レベル4 DEF400
霊獣使い ウェン
レベル3 DEF1000
VS
光津 真澄 LP2600 手札 1枚
「このタイミングで、融合を解除させた……?だけど、それでもこのターンは凌げて……」
「何言ってやがる?まだ最後の攻撃が終わってない!僕のフィールドの「ラムペンタ」と「ウェン」を除外して速攻魔法「霊獣の相絆」を発動!エクストラデッキから「霊獣」モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する!」
「今度はバトル中の、融合…!」
熱気が、気温を上昇させる。炎のように真っ赤なタテガミを揺らし、大地を踏みしめるその太い四肢は火で覆われていた。王の貫禄を漂わせる獅子の背中には心を通じ合わせた少女…否、女性の「レラ」が乗っていて、凛々しい顔つきで太陽のような杖を構えていた
「来い!炎を身に宿し百獣の王!「聖霊獣騎 アペライオ」!!」
「アペライオ」の唸る咆哮が、肌をピリピリと震わせた
聖霊獣騎 アペライオ
レベル6 ATK2600
「「聖霊獣騎 アペライオ」で、ダイレクトアタック!」
獅子の口内に、女性の杖の先端に、火炎が凝縮される。煌々と光り、赤から青に、青から白に色彩を変化させ……充分に力を蓄えた2つの聖炎が、同時に放射される。その炎は混ざり合い、膨大なエネルギーを放出させながら…残りのライフを、完全に焼き消した
「キャアアアァァァァァ!!」
白星 風斗 LP2500 手札 4枚
聖霊獣騎 アペライオ
レベル6 ATK2600
VS
光津 真澄 LP 0 手札 1枚
「おい!大丈夫か真澄!?」
「大丈夫……油断したつもりはなかったけど、詰めが甘かったわ」
「まさか真澄が負けるなんて……信じられないよ、僕」
デュエルが終わって
……ダメダメ、たった1ヶ月でホームシック?とか何考えてんだ…。僕には僕のやるべきことがある、それを終わらせる為にも…アカデミアを倒す為にも、何としてもこのスタンダード次元で頑張らなきゃ
まぁとりあえずは……
「へへ、真澄を倒すとはな…お前なかなかやるじゃねぇか。けど、1人倒したくらいでいい気になってんじゃねえぜ!この俺が、シンクロ召喚の極意ってやつを直々に教えてやるぜ!」
……後に残った、ガチデッカーどもを相手取らないとなぁ……
地震のどうこうで爺ちゃんと連絡取ってたら投稿遅れました。あと普通に難産でした、すみません。色々あって2話かけて3人組の話書くことになりました
次回予告を書き綴ったあとで、どうやってこの話まで持っていこう?!という計画性のなさゆえに投稿が遅くなる事態になってしまいました。リアルが忙しいのもあるので、これからもペースが落ちてしまうかもしれませんが、どうか堪忍してください。完結だけはするつもりですから
次回予告
融合使いの光津を倒した風斗のあとに待っていたのは、また
シンクロのあとに生まれ出た欲望と絶望
エクシーズが生み出した4ランクの環境
ハンデスとループ、先行とバウンスとをコンクリートミキサーにかけてブチまけた、ここはスタンダード次元のLDS
次回「ガチ」
来週も風斗と地獄に付き合ってもらう
本当の次回予告
ハンデスループに先行プレアデス、悪夢のようなガチ
「お前の「ガトムズ」を吸収。少年よ、これが絶望だ」
「俺のファンサービスだ!受け取れェ!」
面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語
第21話 「それぞれのデュエル」
デュエル・スタンバイ!
※予告の9割が詐欺です