面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
というわけで、エンタメな第26話ドーゾ!
※若干ソリティア気質。実際注意
透き通るような空…見てるだけで心が晴れてくる青の下に、海に囲まれた巨大な1つの大都市が存在していた。その中心部には斜めに傾いた巨大な多角柱の上に、立派な建造物が幾つも立て並ぶ高層都市が賑やかに溢れかえっていた
「シティ」。シンクロ次元に存在するその大都市で暮らす人々は、常軌を逸する競争社会によって2つの階級に分かれていた。シティの市民の1%にも満たない「トップス」と、残りの大部分を占めた「コモンズ」の2つである。トップスは街の人口の1%未満ほどの人数しかいないにも関わらずシティの資産の99%を独占し、贅沢三昧な暮らしを送っている。逆にコモンズたちはシティの下層地区で貧困な生活を強要されており、生きる為に窃盗などの犯罪行為に手を染めてしまうことも余儀なくされているほどである。トップスはコモンズを蔑み、コモンズはトップスを憎む。お互いの行動がそれぞれを軽蔑し合う理由になっているとも気づかずに……
そんな次元の街でも、デュエルは存在する。ただし、自身が成り上がる為の道具と、弱者を押さえつける暴力としてーーー
「「氷結界の龍 トリシューラ」でダイレクトアタック!全てを零に還せ!「トリニティ・アブソリュート」!!」
「グワァーーー!!」
サウザンド・フェイス LP4000 手札 0枚
氷結界の龍 トリシューラ
レベル9 ATK2700
煉獄龍 オーガ・ドラグーン
レベル8 ATK3000
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン(インフェルニティ・ネクロマンサー)
レベル8 ATK3000
インフェルニティ・デーモン
レベル4 ATK1600
インフェルニティ・ネクロマンサー
レベル3 DEF2000
伏せカード 3枚
VS
セキュリティ LP 0 手札 4枚
&
セキュリティ LP 0 手札 3枚
男…セキュリティの1人は、シティの支配者とも言える治安維持局の駒の1つに過ぎなかった。敗北が人生の転落に繋がるシティという名の盤面からの退場が決定した男たちを無感情に見つめながらも、未だに囲まれている現状に仮面の下で風斗は舌打ちした
「チッ、1人2人ずつだからまだマシなものを…それでも面倒くさいことに変わりはないな、オイ」
3連続で満足(デュエル)出来ても、彼はちっとも満足(心)していなかった。ただ休憩していただけなのに理由も聞かされず連行されそうになったのだから、当然といえば当然であった。しかも場所を選んで貧民街の裏路地で休んでいたのに、だ。予定を大幅に変更せざる得ない状況に過度なストレスを感じてしまい、感情の赴くままにストレスを発散していた
そして、そんな風斗の要らぬ怒りを買ってしまったセキュリティの男たちは、仮面の
当番制の暇な見回りの日である今日。いつも通り適当な理由をでっち上げてコモンズを捕まえて、カードでもいただこうと思っていたところをターゲットのフードの男は抵抗した。捕縛する正当な理由を作ってくれた目の前のコモンズの男をバカな奴と見下しながらデュエルで拘束しようとしてみれば…最初に1人、また1人、次に2人と挑むも途轍もないタクティクスの前にあっさり返り討ちにあった
「何なんだこいつは!」
「コモンズのクズの分際で、治安維持部隊に刃向かうとは!」
あり得ない事態に、ただひたすら罵倒を飛ばすセキュリティたち。しかし、そんな彼らにはお構いなしと言わんばかりに、振り向きながら苛立ちを込めた声を風斗は張り上げる
「なあ、お前も
……こいつ、狂っていやがる
追い詰められている状況なのにひたすらデュエルを仕掛けてくるデュエル
残りのセキュリティのうちの1人が、バズーカのような筒状のものを取り出し、その標準を黒ずくめの男に合わせる。
「やったぞ!」
「今だ!一斉に取り掛かれ!」
「ウオォーーー!」
あの網に捕まってしまえば、もうあの男は何も出来ない。今まで前例がなかったこととようやく訪れた好機に気を緩め、皆が腰につけられたの警棒を手に取り、「ゴヨウ・ディフェンダー」や「ゴヨウ・チェイサー」を操り、風斗に接近する。確かに、地の利はセキュリティ側にあり風斗からすれば多勢に無勢、加えて身動きも取れないと分かっているならば、彼らの行動は非常に正しい決断だと言えるだろう
……だが、相手が悪過ぎた。強いて言うならば、タイミングも悪かった
「結局リアリスト行為に走るわけねん……けど!」
風斗は次のデュエルが始まるまで、デュエルディスクにセットされたカードを元に戻さなかった。その理由は決して動作が遅かったから、ではない。彼の警戒により出来た、一種の防衛線の1つ
近くにいた「インフェルニティ・デーモン」を呼び掛ける。すると、狩猟民族の祭司のような装束を身に纏った悪魔はその長い指の爪を1本に束ね、自らのマスターに対してその凶爪を振り下ろした。周囲に響く、太く頑丈な張った縄を断ち切ったような音
モンスターの力により拘束網から解放された風斗は、3体のシンクロモンスターに指示を飛ばす。ハンドレスコンボにより誕生した満足龍たちは、それぞれの方向から押し寄せてくる「ゴヨウ」モンスターたちを容赦なく爆散させていった
「グワァッ!」
「ウワァーーッ!」
汚い花火のオンパレードにより、セキュリティたちは腕で前面を庇って怯む。咳き込みながらも対象を捕らえようとするも、男の姿がどこにも見当たらない
「クソ!一体どこに……」
「ーー上だ!あそこを見ろ!」
その声に反応し、思わず上を見上げる。見上げた先には、下層地区の多くある質素な住宅…そのうちの1つ、すぐ近くの屋根の端の上で不遜に佇んでいた。夕焼けになりかけてる太陽の逆光が、男たちの目を刺激する
「……この次元の人間は、ガチカードは使うが民度が本当に底辺だな。どっちにせよ、この程度か」
「何!?」
「先に言っておくが、俺は何も悪くはないぞ。お前たちが先に手を出してきたから反撃しただけ…そう、お前たちが原因なんだよ」
諭すように彼はそう言う。しかし、未だ彼をコモンズの人間だと勘違いしているセキュリティは、こちらに罪をなすりつけようとしているのだと思い、憤慨する
「俺たちが原因だと?ふざけたことを!」
「お前の大量のレアカード、さてはトップスの居住区から盗んできた物か!」
「貴様は収監施設ではなく、強制労働場行き決定だ!覚悟しろ!」
しかし、勝手で理不尽な理屈を振りまくバカなど相手にする必要はない、と言わんばかりにガン無視を決め込み見下す風斗
「お前たちの下らん理論など知るか。…ここに留まる理由はなくなった。2度と会わないことばかりを願うよ、シンクロ次元の住人たちよ」
彼は懐から別のデュエルディスクを取り出し操作したかと思うと、ディスクから眩しい光を発し出した
「……ホントクソ過ぎる次元だな。アーククレイドルでも落ちれば良いのに……」
最後に溢した過激過ぎる愚痴が、調律の次元の青空に溶けていった
「あぁ〜〜〜んもぅやっと帰って来れたァ〜〜〜〜マジ疲れた〜〜〜!!」
「気持ち悪い声を出すな」
遊勝塾が誇る融合使いから苛烈なツッコミをかまされた。「うっせ」とソファに思いっきりもたれかかり軽口を返しながら、僕はマスコミとセキュリティに対して激しい恨みを燃やしていた。さっきまでシンクロ次元で謂れのない罪に問われていたのだから当然であった。そもそも何故僕がシンクロ次元に次元跳躍したのかといえば、原因はこの次元の非常に…ひっじょ〜に無駄に熱意のあるマスコミたちにあった
サウザンド・フェイスとしてプロ活動を始めて早1ヶ月。OCGでも環境が激変するのに充分過ぎる期間の間に、舞網市はサウザンド・フェイスという新たな
雑誌では「千顔の
……とまあ、たった1ヶ月でここまでの騒ぎになる程、「サウザンド・フェイス」という存在の出現の影響は大きかったようである。おかげで「LDSに多くの入塾者が増え、母様が大変喜んでいた」とのお言葉を赤馬社長からもらったほどである。赤馬のお袋さんかぁ。会ったことはまだないが、ケバい化粧と髪型がヤバくて
とにかく、舞網市で今1番注目の浴びてるプロ
そう、僕はクソ鬱陶しいマスコミたちから逃れる為に、シンクロ次元まで次元転移を行っていたのである。技術の無駄遣い?良いじゃん別に!僕だけのデュエルディスク、僕だけの活用法で使って一体何が悪い!……実はさっき、赤馬から連絡が来て次元跳躍を無闇に使うなと怒られたけど。一応その話は、今度何か埋め合わせをすることを条件に許可を得た。段々赤馬に逆らえなくなってきているような気がするのは、きっと気のせいではないのだろう。ちなみにシンクロ次元を選んだのは、残りの次元は非常に行きたくないから。融合次元はアカデミアの本拠地だし、エクシーズ次元に行けばユートたちに引き止められる可能性がある
それに偵察などの意味も含めて、シンクロ次元に移動し裏路地で休憩していたのだが…そこでセキュリティに見つかりカツアゲされ、撃退してスタンダードに戻ってきた…といったところだ。今回のカツアゲ事件で新しく分かったのだが、僕のデュエルディスクは次元間を移動すれば、次に跳躍するまで長いインターバルがいることを知った。その時間、ざっと1時間…それだけの長い間、別次元に留まらなければいけない事実は僕を30分ほど凹ませるほどの衝撃の真実だった
「次からどうしたものか……」
問題を解決したと思ったら、別に問題が浮上する。身バレ…というか名バレを避ける為に試作のディスクを使っているものの、これからシンクロ次元に行く度にセキュリティとことを構えなきゃいけないと思うと、憂鬱になってきて仕方ない。対シンクロメタのデッキでも作ろうかな……よし、思い立ったが吉日だ。僕はカバンからカードを取り出し、テーブルの上にそれらを広げる。さて、特殊召喚メタに「
「あ、いた!白星さん、ちょっといい?」
「…ん?榊か?」
デッキ作りに横槍を入れて部屋に入ってきたのは、我らが遊戯王ARC-Vの主人公の榊遊矢であった。朗らかに笑いながら僕の名前を呼ぶ遊矢の方に向かって、顔を後ろに向け話し掛ける
「一体何の用だ?また塾長が呼んでるの?」
「いや、そうじゃなくて……白星さん、俺とアクションデュエルをしてくれない?」
どうやら遊矢の目的は、僕に対してのアクションデュエルのお誘いらしい。特に断る理由もないので、二つ返事で快諾する
「別に僕は構わないけど、なんで僕?いつも柊や権ちゃんや砕羽とデュエルしてんじゃん。どういう心境の変化?」
「俺たちって、
「あの、だから急に誘ってきた理由を……まぁいいか。どうせ売られたデュエルは買うだけだ」
買うのはいつも気まぐれだけどね
……しかし、今の遊矢の物言いだと、何か違和感を感じるんだよなぁ。遊勝さんが教えてくれたエンタメデュエルを、間近で見る?……考えてても何も分かんねえし、今はよしとくか
思考の中に湧き上がった異物感を隅っこに除ける。とりあえず色んなデッキを選べるように、カバンを肩にかけて僕はデュエルコートへ移動する為に部屋を出た
……遊矢の声に含まれた、暗い感情に気がつかないまま
若干の青空が広がっている遊勝塾のデュエルコート。そこに着いた僕はいつもの遊勝塾メンバー(権現坂含む)が観戦している中、カバンに手を突っ込んでいた
「悪いな遊矢、デッキ選ぶからちょっと待っててくれ」
「そういえば、白星さんっていくつもデッキを持っていたんだっけ。珍しいなぁ」
「そこまで?いや、1つのデッキを極めるのは大切なのかもだろうけどさぁ」
後頭部をポリポリ掻きながら、視線を観客の方へ移す。鮎川や原田のチビッ子2人は初めて見る僕のデュエルに想像を膨らませているのかワクワクしていて、権現坂もテーブルデュエル以外のデュエルをしっかり見る気なのか真剣な表情そのものだ。瑠璃も砕羽もいつも通りで……柚子だけが心配そうに、陰りのある顔をしていた
『柚子、どうかしたの?元気がないみたいだけど……』
『え……うぅん、なんでもないの。私は平気だから……』
瑠璃が柚子の様子のおかしさに声を掛けるが、手を振って大丈夫であることを伝えると、再びツラそうな目をデュエルコートの下に向ける。視線の先には、僕の対戦相手である遊矢。…何かあったのか?
「白星さん、早く早く!」
普段と違う柚子を見ていると、前からそんな声を掛けられた。そう言えば、デッキを選んでいた最中だっけ
「分かってるって、そう急かすな」
……よし、これにするか!使うデッキが決まったのでそれをデュエルディスクにセットし、起動させて遊矢へと向く。遊矢もディスクを構えてこちらと向き合う
「そんじゃあ修造さん、よろしく頼みまーす!」
『任せてくれ!アクションフィールド・オン!フィールド魔法「アスレチック・サーカス」!』
快晴が見える屋内の広場は、
準備が整ったのを互いに確認し合い、遊矢が最初にセリフを言ったのを合図に、交互に口上を述べていく
「戦いの殿堂に集いし
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ!これぞデュエルの最強進化系!」
「アクショ〜ン……」
「アクション……」
「「デュエル!!」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
榊 遊矢 LP4000 手札 5枚
「先行は俺からだ!俺は「
『ヒッポー!』
ポンッ!とコミカルな効果音と同時に現れたのは、顔に星型のペイントがあり小さなシルクハットを乗せるように被ったピンク色のカバのモンスター。遊矢がアクションデュエルでよく使用する愛用カードが1つ、「ディスカバー・ヒッポ」であった
レベル3 ATK800
「俺はこれでターンエンド!…よっと!」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
榊 遊矢 LP4000 手札 4枚
レベル3 ATK800
ターンの終了を告げると同時に遊矢は召喚したモンスターの背に乗り、フィールド内を駆け巡る。あいつのデュエルはアクションマジックが戦術の軸に入っていると言っても過言ではない。正直OCG出身者である僕からすれば、運要素の絡むアクションカードを主軸に戦うなんて正気の沙汰とは思えないのだが……まぁ、アクションフィールドに置かれてあるカードには一応規則性はあるらしい。「回避」の居場所だけでも覚えていればそれは立派な防御になるし、何よりそこらへんは個人の自由。これが「榊遊矢」のデュエル…と、言ったところなのだろう
「行くぞ、「ヒッポ」!」
『ヒッポ!』
……しかし、どうして
「そんじゃ僕のターン、ドロー!僕は「マスマティシャン」を召喚!」
召喚したのは顔の鼻から下が全部白く長い髭で隠された、丸い眼鏡をかけたこじんまりとした老人。左手には珍妙な生物?の顔を模した杖が握られていた
マスマティシャン
レベル3 ATK1500
「「ヒッポ」より高い攻撃力のモンスターか!」
「「マスマティシャン」の召喚に成功した時、モンスター効果を発動する!デッキのレベル4以下のモンスター1体を選択して、墓地に送る効果だ。僕は「
「モンスターカードを自分で墓地に送った?」
『え〜?せっかくのモンスターカードをなんで墓地に送っちゃったの?』
『しびれるくらいもったいないぜ〜』
『鮎川、原田、あいつに限って意味もなくあんなことはしない。むしろ、墓地にカードを送るのは白星の基本戦術だからな』
『うむ、俺も1度だけデュエルを見たことがあるが……白星殿のデュエルは、まさに驚愕という言葉がふさわしいな』
『今度は何を狙っているのかしら……』
観客側から聞こえてくる、柚子を除いた至って普通な会話。ふ〜む、やっぱり小学生組に墓地肥やしの概念はまだ理解出来んか。この世界の一般
「バトルフェイズ!「マスマティシャン」で「
モンスターを墓地に送るという行動にボーッとしている遊矢の隙をついて、「マスマティシャン」に攻撃指令を送る
「クッ…走れ「ヒッポ」!まだ間に合う!」
その数瞬後にバトルが行われていることに気づいた遊矢は、攻撃目標である「ディスカバー・ヒッポ」を走らせてアクションカードを取りに行く。しかし、そんなのはお構いなしと言わんばかりに「マスマティシャン」は古代文字のようなものの列を纏わせた光弾を、その杖を振るうことでその後ろ姿に向かって発射した
カバと光弾の距離が徐々に縮まり、あと3秒もしたら命中する……
「よし!アクションカード、ゲット!アクションマジック「回避」!モンスターの攻撃を1度だけ無効にする!」
……といったところで、遊矢は柱のねずみ返しの上にあったアクションカードをすれ違いざまにキャッチ。そのまま発動された「回避」の効力により、「マスマティシャン」の光弾は不可視のバリアによって防がれてしまった
『やったぁ!遊矢お兄ちゃんが攻撃をかわした〜!』
『しびれるぅ〜!!』
「……むぅ、流石に躱してはくるか。リバースカードを1枚伏せる。これで僕はターンエンド」
白星 風斗 LP4000 手札 4枚
マスマティシャン
レベル3 ATK1500
伏せカード 1枚
VS
榊 遊矢 LP4000 手札 4枚
レベル3 ATK800
「俺のターン!ドロー!」
ドローしたカードを見る遊矢。そして何か意を決したように目を瞑り…顔に笑みを
「レディース エーンド ジェルトルメーン!これより
『ハァ?なんだコイツ?』
「おい、それミッチーのセリフ」
遊矢の打って変わった口調に対してネタで返す我が分身にツッコミを入れる。遊矢のあの喋り方は、多分榊遊勝のエンタメデュエルのやり方を真似ているのだろう。若干手慣れてない感じが何よりの証拠だ
しかし早いな。遊矢のあのセリフは、大体デュエルの決着をつける時(3割ほど失敗)に言うセリフだ。快活に笑って楽しんでいるように見えるが……僕にはあの笑顔が、引きつって見える
『来た!遊矢お兄ちゃんのエンタメデュエル!』
「私のフィールドには攻撃力800の「ディスカバー・ヒッポ」が1体、対して相手は攻撃力1500の「マスマティシャン」!このままでは彼を倒すどころか、返り討ちにあってしまいます……そこで!新たな仲間の登場です!「ディスカバー・ヒッポ」はアドバンス召喚する時、1体で2体分のリリースとして扱うことができます!「ディスカバー・ヒッポ」をリリースして、アドバンス召喚!」
「ディスカバー・ヒッポ」から遊矢が離れると、白く光ってから数多の粒子に姿を変え消えていった
カバ1体をリリースして遊矢のフィールドに降り立ったのは…鮮やかな2つの光彩に分かれた瞳を持つ赤いドラゴン。ドラゴンと言っても空を飛べるような翼は存在せず、その太く勇ましい両脚で大地に立っていた。蒼く透明感を感じさせる水晶の球体が、胸部にはめ込まれていた
「さぁ、拍手でお迎えください!本日の主役、世にも珍しい二色の目を持つ龍!「オッドアイズ・ドラゴン」!!」
赤と青、2つの眼光を輝かせながら、「オッドアイズ・ドラゴン」がその雄叫びをテント内に轟かせた
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
「オッドアイズ」…ここでか。「オッドアイズ」の効果は戦闘破壊したモンスターの元々の攻撃力の半分のバーンダメージを与える劣化「フレイム・ウィングマン」とも言える効果……あ、アニメ効果ならレベル5以上のモンスターか?だとしたら単純に「マスマティシャン」の攻撃力を越してきたのか?
背中にある角のような2つの突起物に掴まりながら「オッドアイズ」に乗り、エンターテイナーはフィールドを見渡す
「さて、「オッドアイズ・ドラゴン」で「マスマティシャン」を倒すことはできますが、相手のライフまで0にすることはできません。ただし、このカードを使えば話は別です!私は永続魔法「ワンダー・バルーン」を発動!」
「「ワンダー・バルーン」?攻撃力を下げる気か…?」
確か手札1枚をコストで払う度に相手モンスターにカウンターを乗せて、カウンターの数だけ攻撃力を下げる効果だったような……
そんな呟きは、このアクションフィールドではよく音を反響でもさせたのか。僕の疑問に対して遊矢が大仰に答える
「その通りでございます!このカードは手札を1枚捨てるごとに相手モンスターにバルーンカウンターを1つ乗せることができ、このカードを墓地に送ることでバルーンカウンターの乗ったモンスターは、ターンの終わりまでカウンターの数×1000ポイント攻撃力がダウンします!」
「え…?あれ?」
効果が少し違う…?確かフィールドにある限りカウンターの数だけ攻撃力が少し下がるだったはずじゃあ……あ、アニメ効果か。よくよく考えれば今使ってる「ワンダー・バルーン」、第1話でチャンピオンの石なんとかにワンキル狙った時に使ってたな
そしてこの効果のミソが、手札コストがあればいくらでもカウンターが貯めれるって点なんだよな〜…なんせ、アクションデュエルじゃそこら中に手札コストにできるカードが落ちているんだから
「私は先ほど拾ったアクションマジック「奇跡」を墓地に送り、効果発動!「マスマティシャン」にバルーンカウンターを1つ乗せます!」
いつ拾ったのか、おそらく「ディスカバー・ヒッポ」から離れた直後に拾ったのだろうが、アクションカード1枚を遊矢が墓地に送るとハテナ文字が描かれたカラフルな箱から大きな風船が飛び出す。それが「マスマティシャン」の左腕近くで弾けると、どういう原理か「マスマティシャン」の杖ごと左腕がバルーンで覆われており、いくら抵抗してもバルーンが離れることも割れることもできなかった。ここまでやって割れない風船って、一体どんな材質なんだよ…ゴム風船なのか?
「さらにもう1枚!アクションマジック「飛翔」を墓地に送り、「マスマティシャン」にもう1つのバルーンカウンターを乗せます!」
「あ、いつの間に!」
もう1つ、膨らんでこっちに向かってくるゴム(おそらく)風船。それが今度は老人の胴体に当たり、胴体全体が風船で囲まれる。必死にもがくも、胴と左腕を封じられた「マスマティシャン」では風船を割ることはとてもかなわない
どうやら「ワンダー・バルーン」の効果動作を見ている間に、もう1枚のアクションカードを手に入れたみたいである。遊矢を乗せた「オッドアイズ」の位置が若干こちら側に寄っていた。その手には、このターンで3枚目のアクションカードが握られている
「「ワンダー・バルーン」を墓地に送ることで、カード効果を発動!「マスマティシャン」の攻撃力を、ターンの終わりまでカウンター2つ分…つまり、2000ポイント攻撃力を下げます!」
マスマティシャン(バルーンカウンター2)
レベル3 ATK 0
「「マスマティシャン」の攻撃力が……」
「そして、私の最後のアクションカードは「ワンダーチャンス」!これを「マスマティシャン」に攻撃した後の「オッドアイズ・ドラゴン」に使うことで、もう1度攻撃することが可能になります!」
『じゃあ、攻撃力0の「マスマティシャン」への攻撃とダイレクトアタックの2回で……』
『合計5000ダメージが入れば、遊矢の勝ちになる』
『しびれるぅ〜〜っ!!』
「バトルです!「オッドアイズ・ドラゴン」で「マスマティシャン」を攻撃!「スパイラルフレイム」!!」
「オッドアイズ」の口から放出される、激しくうねる炎の渦。それは拘束された「マスマティシャン」の全身を覆うように直撃させ、苦しそうな叫び声をあげながら「マスマティシャン」は破壊された
白星 風斗 LP1500 手札 4枚
「よし!俺は手札からアクションマジック「ワンダーチャンス」を……」
直後、耳にこびりつく風切り音と共に巻き上げられた炎が霧散する。炎が支配していた中心、そこにいたのは顔全体を隠すマスクを付けて赤いプロテクターを装備している戦士。両腕のそれぞれには、合わせたら円形になるであろう半円形の盾と思わしきものを1つずつ付けていた
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
レベル4 DEF1800
「な…?!なんでモンスターが!?それに、減らしたライフが元どおりに……?!」
「「マスマティシャン」での戦闘ダメージを受けた時、僕は手札から「
「相手ターンに、手札からモンスター効果だって!」
そのリアクション、飽きたなぁ……
「「ベイル」は戦闘ダメージを受けた時、手札から特殊召喚することができる。そして受けた戦闘ダメージ分、自分のライフを回復させる。だから僕の場に「ベイル」が特殊召喚され、ライフが元の数値の4000に戻ったってわけだ。さらに戦闘破壊された「マスマティシャン」のモンスター効果、デッキからカードを1枚ドローする」
「モンスターを特殊召喚してライフを回復したどころか、手札まで増やすなんて……!でも、そのモンスターだけでも破壊する!アクションマジック「ワンダーチャンス」を発動!「オッドアイズ」はこのターン、もう1度攻撃することができる!いけ、「オッドアイズ・ドラゴン」!「スパイラルフレイム」!!」
先ほどまでの余裕
「もっとも、今は使う気ないんだけどね!相手の攻撃宣言時に手札の「工作列車シグナル・レッド」のモンスター効果!」
「また手札からモンスター効果!?」
「このモンスターをフィールドに特殊召喚!守備表示!」
響き渡るサイレンの音。その正体は爆走しながらフィールドに現れた、アームが2本ついた朱色の小型列車。赤いランプと黄色いライトで前面を照らしながら、
工作列車シグナル・レッド
レベル3 DEF1300
「そして攻撃対象をこのカードに移し替えて、バトルを行う!」
「な、「オッドアイズ」!?」
「シグナル・レッド」の登場によって、遊矢の「オッドアイズ・ドラゴン」はボクサーの戦士ではなく朱の列車に向かって螺旋の火を吐きつける。しかし破壊されるはずの「シグナル・レッド」は、二色の眼の竜の火炎を食らってもその機体の表面を軽く焦がしただけにとどめていた
「この戦闘での「シグナル・レッド」は、戦闘では破壊されない」
「そんな……」
「さぁ、一体どうする気だ?榊」
「…ッ…!俺は…カードを1枚伏せて、ターンエンド」
遊矢は眉間にシワを寄せながら、ターンエンドを宣言した
白星 風斗 LP4000 手札 3枚
レベル4 DEF1800
工作列車シグナル・レッド
レベル3 DEF1300
伏せカード 1枚
VS
榊 遊矢 LP4000 手札 2枚
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
伏せカード 1枚
『え?え?何が起こったの?』
『いつの間にかモンスターが増えてるよ〜』
『あいつ、手札誘発の防御カードを2枚も使うとは…他にも防御カードがあると見ていいな』
『むう……俺のデッキにも相手ターンに手札から発動するモンスターが入ってはいるが…あのようにフィールドに出しながら効果を発動するモンスターもいるとはな。それに、アクションカードを1枚も使わずにあの状況を無傷で突破するとは……』
『それよりも、あいつのフィールドにはレベル3と4のモンスターが1体ずつ…仕掛ける気だな』
『遊矢……』
「僕のターン!ドロー!僕はフィールド魔法「チキンレース」を発動する!」
手札の順をさりげなく入れ替えながら、僕はプレイングを開始する。シャカパチはしてないよ?
アクションデュエル中は永続魔法扱いなフィールド魔法は、アクションデュエルに変化を出さない程度で景色が変わるのだが…今回使った「チキンレース」は、フィールド魔法なのにフィールドに何の変化も起こさなかった。フィールド魔法とは一体……
「「チキンレース」…?」
「このカードがフィールド上に存在する限り、相手よりライフの少ないプレイヤーは一切のライフダメージが発生しない」
「ダメージが一切、発生しない?そんな相手が有利になるカードを……」
「そして1000ライフを支払うことで、3つのうち1つの効果を使用することができる。この効果の発動時、あらゆるカード効果は発動することができない…。1つ目はデッキからカードを1枚ドローする、2つ目は「チキンレース」自身を破壊する、3つ目が支払ったプレイヤーから見て相手プレイヤーのライフを1000回復させる効果だ」
その効果を見て、訳の分からなさと未知に対する恐怖を混ぜ合わせたかの表情を遊矢がした。まぁ、はたから見れば1000支払ってでもカードを1枚だけドローしたいかっつったらNOと答えるだろうな〜……一般人の解釈、ならばな
「僕は1000ライフを支払って、デッキからカードをドローする。そして墓地の「
白星 風斗 LP2600 手札 5枚
レベル4 ATK1600
「そして再び「チキンレース」を発動!もう1回1000ライフを払うことで、デッキからカードをドローする!」
白星 風斗 LP1600 手札 5枚
チキンレース
…クソ、結構カードドローしたのに全然引かねえな……やっぱり制限になったのが痛いか。あと「チキンレース」で引いたお前、出来れば初手に来てくんない?今引いてもあんま展開できねえんだよ、出来れば場にモンスターいない時に来てください!…あぁもう、ホント仕方ない……
「やれやれ。手札から「エッジインプ・シザー」を召喚!」
ハサミがいくつも重なったモンスターがジャキジャキと恐怖を煽る音を立て、鋭い刃を前後させる。持ち手の穴には飢えた野獣のような赤い眼光が爛々と輝いていた
エッジインプ・シザー
レベル3 ATK1200
「さてと、おっ始めますか!僕はレベル4の「精鋭のゼピュロス」と「ベイル」の2体で、オーバーレイ!」
「ゼピュロス」が闇を、「ベイル」が炎を宿した球体に姿を変質させると、それらがブラックホールのような闇の渦に飲み込まれ…新たな力を誕生させる
「これは…!?」
「音色導きし栄誉の魔人よ!その一振りで、世界を彩れ!」
その見た目は、どこかの軍隊の指揮官を想像させる軍服のようなものを着込んでいた。身の丈ほどのレイピアを手に持ち、その紅い双眸を世界に晒す
「エクシーズ召喚!出ろ!ランク4!「交響魔人マエストローク」!!」
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK1800
破壊耐性を有する、元汎用4エクシーズとしてOCG世界で活躍したエクシーズモンスターがフィールドに現れる。そして僕の行ったエクシーズ召喚に、遊矢は歯噛みしながら言葉を漏らす
「エクシーズ召喚!?白星さん、エクシーズ召喚ができるのか!LDSだけの!」
「別にLDSってだけじゃないんだがな…その通り、僕はエクシーズ召喚ができる」
『エクシーズ召喚?』
『自分フィールドに存在する同じレベルのモンスターを複数体重ねることで、召喚することができる召喚法のことよ。エクシーズモンスターはレベルの代わりにランクを持つの』
『ランク?』
『じゃあじゃあ瑠璃お姉ちゃん、あの周りに浮いてるフヨフヨしているのは?』
『あれは
『へえ〜…砕羽お兄ちゃん、ものしり〜』
観客席で執り行われている、エクシーズ講座。今度、塾の皆を集めてエクシーズのことでも教えようかね?エクシーズ素材になったモンスターはフィールドから離れないけど離れた扱いになるとか、軽くコンマイ語とかも
『や め ろ』
冗談だって
「まだ終わっちゃいないぞ。今度はレベル3の「工作列車シグナル・レッド」と「エッジインプ・シザー」で、オーバーレイ!音色震わせし栄誉の魔人よ!その響きで、世界を彩れ!」
次に現れたのは、真っ黄色のレインコートのようなブカブカの服を着た2頭身の魔人。天辺が少しへこんだ麦わら帽子からは青紫の小さな2本の角が突き破って出ており、背中にエレキギターを背負いながら2つに繋がったアコースティックギターを弦を震わせていた
「エクシーズ召喚!出ろ!ランク3!「弦魔人ムズムズリズム」!!」
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
「連続でエクシーズ!?」
「エクシーズ召喚は別に1ターンに1度、って訳じゃねえぜ。ここ、テストに出るぞー」
『何のテストだよ』
2体目のエクシーズモンスターの登場に、激しく動揺する遊矢。そして僕のジョークを指摘してくる黒星。まぁ、テスト云々に関しては別に冗談のつもりではないんだがなぁ
『かわいい〜!柚子お姉ちゃんのデッキのモンスターみたい!柚子お姉ちゃんもそう思うでしょ?』
『え…?……あ、うん、そうね。私の「幻奏」モンスターと一緒ね』
『…?柚子お姉ちゃん、どうしたの?元気がないみたい』
『柚子、ここ最近様子が変よ。何かあったの?』
『べ、別にそんなこと……』
どうやら向こうは向こうで、何かがあったみたいである。まぁ柚子の不調の原因は……間違いなく、こいつにあるんだろうな
そんなことを思案しながら、目の前の
だからだろうか……僕の吐いた言葉が、あまりに無作法だったのは
「……榊、お前何があった?」
「…!何が、って……」
「今のお前の様子は、僕から見ておかしいって分かる。別に言いたくないなら言わなくてもいいが……言うだけでも、楽にはなるかもしれないからな」
思えば、遊矢相手にこの物言いはあまりに不用意すぎた。この時期の遊矢が悩み苦しんでいることといえば……僕の知る限り、たった1つなのだから
遊矢は、いつも頭につけている片方に星模様がうっすらと描かれているゴーグルをつけた。心を守る為の、守備体制をとる
「………皆が……」
ポツリと、呟かれる。水を打ったような静けさを、遊矢が言葉で埋め尽くしていく
「皆がまた、バカにするんだ…父さんのことを……!」
父さん。ここでの父さんとは、現在行方不明中の榊遊勝のことを指しているのだろう
遊矢の父親は今から2年前、とあるプロ
聞いただけでムナクソの悪くなる話だ。いなくなった本人だけならまだ分かる……だが、息子という理由だけでたった1人の人間を叩き上げるとは、一体どういう神経をしていたらそんなことができるのか。まだ世界の善し悪しも分からない、当時は小学生だった子供をだ
けど、この話を外で蒸し返されても遊矢がここまで悩むことはなかった。ましてやこんなデュエルを誘ってくるほど追い詰められるなんて、一体何が……
「皆が、サウザンド・フェイスの方が本当のプロ
「ッ…?!」
心臓が跳ね上がる。遊矢の口から飛び出してきた単語…自分の異名が出てきたことに、僕自身が強く動揺していた。喉を掴まれたような息苦しさを錯覚している間にも、遊矢の叫びは大きく反響する
「確かにあの人のデュエルは凄いよ…見ている皆を、デュエルする相手も笑顔にするあの人は、凄いエンタメをするけど……どうして!どうして俺の父さんがバカにされなくちゃならないんだ!!父さんだって凄いエンタメデュエルをするのに…なんで!!どうして父さんだけ!!」
大切な父親の大好きなデュエルを否定されれば、それは遊矢の半身を引き裂くほどの痛みとなるだろう。遊矢にとって、それほど父親のエンタメデュエルは偉大で、大きくて……自分のデュエルそのものなのだから
遊矢の独白は続く。その慟哭は僕の心臓を大きく打ち鳴らし、リズムを大幅に狂わしてくる。痛みで顔が歪まない己のポーカーフェイスを褒めたいほどである
ようやく、合点がいった。遊矢が執拗に父親のエンタメデュエルを見せようとするわけが、柚子が不安そうに遊矢を見つめていたわけが。そして…正直、罪悪感で胸いっぱいであった。瑠璃を守る為に、デュエルの未来…それを勝ち取る為に取った僕の行動が、他ならない遊矢のデュエルを奪っていたのだから
「……榊………」
誰にも聞こえない程度の音量で、僕は彼の名を小さく口にする。あぁ、本当に…本当に人生ってのはままならない。完璧超人なわけじゃない、それどころかちょっと今の周囲と育った環境が違うってだけの一般人ってのが、自身のプロフィールだ。見知らぬ誰かの為まで考えて僕は動くわけでもない
……けれど、知っている人くらいなら視野に入れて行動出来たはずだ。それの放棄の結果が、今回のデュエルに繋がった。全くもって情けない大人だ
「俺が…俺が証明してやるんだ!父さんは最高のエンターテイナーだったって!父さんのデュエルを見せて……!!」
「榊」
言葉を、投げ掛ける
「お前がどれほど自分の親父さんを誇りの思っているのか、それはまあ分かった……けど、それは今のデュエルと関係があるのか?」
「何?」
遊矢を追い詰める原因を作った…人が聞けば許されることではない。けど…それでも僕にできるのは、甘ったらしい慰めじゃなくて、立ち上がらせる為の叱咤激励なのだ
「これほどの塾を作り上げ、アクションデュエルを使ったエンタメデュエルの始祖……それだけで、十分過ぎるくらい評価されてるじゃあないか。他人の戯言なんざ、適当に流しておけばいいんだよ」
「ふざけるな!俺はただ、父さんのデュエルするだけーー」
「いい加減のしろバカ遊矢ッ!!」
「ッ……?!」
僕の怒号に目を丸くして怯む遊矢。だが当然、この程度では終わらない。口から機関銃のように吐き出される、心を抉る弾丸
「さっきからオウムみてえに父さん父さんと繰り返しやがって!今この場に榊遊勝はいない!いるのは僕とお前だけだろうが!目の前の
「そんなことないだろ!父さんのデュエルは、皆を幸せに……」
「なら目の前の相手に集中しろよ!人を無視したデュエルをしやがって…!そういうの、腹立つんだよ!」
飛び交う、ぶつかり合う本音。心は冷静そのものだから僕は大丈夫だが…遊矢は違う。父親の背を、影を追い続けてきた遊矢の心は疲弊しきっている。泣き出しそうな声音で、俯きながら弱音を吐く
「そんなの…だったら、どうすればいいんだよ……。俺はただ、知ってもらいたいだけなのに……父さんの…エンタメデュエルの、素晴らしさを……」
今にも崩れ落ちてしまうそうなその表情は、いつも憂いを帯びたユートの顔を思い出させる。……本っ当に、手間がかかるなぁ遊矢シリーズは
「…榊。僕はな、お前が苦しい時に、泣きたい時にまで無理して笑えなんて酷なことは言わん」
「……え?」
「だけどな、悲しいことも苦しいこともあるからこそ……嬉しくて楽しい時が来た時、心の底から笑えるんだ。その分だけ、人は前に進める」
奇しくも、その言葉は榊遊勝のセリフと似たようなものだろう。「どんなに苦しくて悲しい時でも笑え。そのうち、本当に心から楽しいと思えてくる」……だけど、生憎そこまで僕は前向きじゃないし器用でもない。だからこの持論は、僕だけのものだ
「どうして、父さんの言葉を…?もしかして、父さんに会ったことがあるの!?」
「質問はデュエルのあとだ。僕が言いたいのはとりあえず1つ……お前のデュエルで証明しろ、エンタメの素晴らしさって奴を」
「ッ!」
説教垂れるのはここまでだ。あとはデュエルの決着をつけるのみ!
「バトルフェイズ!「交響魔人マエストローク」で「オッドアイズ・ドラゴン」を攻撃!」
「なッ!?攻撃力は俺の「オッドアイズ」の方が上なのに!」
「当然攻撃する意味はあるぜ!「魔人」エクシーズモンスターが攻撃した時のダメージステップ時に「ムズムズリズム」の
「何だって!?」
実に手慣れた手つきで弦を弾く「ムズムズリズム」。その音色は「マエストローク」の力を増幅させる、奮起の音色
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK3600
交響魔人は光り輝いたレイピアを掲げ、流麗な一撃を遊矢が乗っている竜に向かって斬りつける。高まった攻撃力に「オッドアイズ・ドラゴン」は倒れ伏し、遊矢はトランポリンの上まで吹き飛ばされ、そのまま跳ね上がった
榊 遊矢 LP2900 手札 2枚
「クッ!俺は罠カード「
宙に浮いた遊矢を地面の激突から防ぐように、コブラ型の蛇が高く跳躍し遊矢をバネのように巻いた身体に乗せる。「
レベル4 ATK1700
「追撃は無理か……僕はこのままターンエンド。そしてエンドフェイズに「ムズムズリズム」によって倍になった「マエストローク」の攻撃力は、元に戻る」
白星 風斗 LP1600 手札 4枚
チキンレース
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK1800
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
伏せカード 1枚
VS
榊 遊矢 LP2900 手札 1枚
レベル4 ATK1700
ここからは、遊矢のターン。榊遊勝ではなく…榊遊矢としての、エンタメデュエルの時間だ
「俺の……俺の、ターンッ!!」
強く降り抜かれた、雑念を断ち切った渾身のドロー。流れるように宙を滑るドローカードが、虹色に輝き、軌跡を描いたように見えた
そして遊矢は、楽しそうに笑う
「レディース エーンド ジェントルメーン!!これよりこの俺榊遊矢の、真のエンタメデュエル劇場を開幕いたします!」
……なんだ、いい笑顔ができるじゃないか。この状況でどう逆転してくるのか、実に楽しみになってくる
「俺の場には「
『いいぞー!遊矢、熱血だー!』
『己の信念を貫いてみせろ、遊矢ァ!』
『遊矢ー!頑張れー!』
『遊矢お兄ちゃん、ファイトー!』
『しびれるぅ〜〜!!』
『白星!お前も負けるなー!』
『頑張れ、2人ともー!』
観客側から、デュエルコートのコントロール室から、7人の喝采が響き渡る。たった7人…しかし最高のギャラリーたちによって、僕たちの気持ちは最高潮に達していた
「いくぞ、
「やっぱり破壊はしてくるか…」
榊 遊矢 LP1900 手札 2枚
これで「チキンレース」によってライフを守ることができなくなった…けど、まだ僕には「リビングデッドの呼び声」が残っている。これで「マスマティシャン」を出して時間を稼げば……
「そして、速攻魔法「サイクロン」を発動!風斗のリバースカードを破壊する!」
「何!?…グゥ!」
細長い竜巻が伏せカードを飲み込み、巻き上げ破壊する。「リビングデッドの呼び声」が塵に消えたことにより、防衛手段が本当に尽きてしまった
「このままじゃ…マズい!」
「さらに「死者蘇生」を発動!蘇れ、「オッドアイズ・ドラゴン」!!」
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
再び「オッドアイズ」に飛び乗る
「「
「ヤベ!」
蛇が、素早く跳ねる。距離を一気に詰め、「ムズムズリズム」の手に噛みつき毒を注入する「ウィップ・バイパー」。それだけで「ムズムズリズム」はバランスを崩すほどの不調をきたし、奏でる音楽は不協和音と化す
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1000
「バトルだ!まずは「
バネの要領で高くジャンプをした「ウィップ・バイパー」は、落下の重力も合わせて強烈な尾の一撃を叩きつける。頭を強かに打ちつけられたデフォルメな魔人は、目を回してやられた
白星 風斗 LP900 手札 4枚
クソ!かなりしてやられたが、このまま「マエストローク」が「オッドアイズ」の攻撃を食らってもダメージは700だからギリギリ残る。次のターンに反撃すれば……ッ!!
目を疑う。しかし現実、遊矢に近づく「ウィップ・バイパー」の口には…アクションカードが咥えられていた。まさか!攻撃の際にアクションカードを取りに行かせたのか!?なんつー破天荒な!
「サンキュー、「ウィップ・バイパー」!「オッドアイズ・ドラゴン」で「交響魔人マエストローク」を攻撃!そしてアクションマジック「ハイダイブ」を発動!「オッドアイズ」の攻撃力を1000ポイント上げる!」
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK3500
走る、疾る、翔けるーー!すぐ近くにあるアクションカード!何か分からんが、助かるやつであってくれ!拾ったカードを見もせずに、それをデュエルディスクにセットする
「アクションマジック発動!」
「これでフィニッシュだ!「スパイラル・ハイフレイム」!!」
最初の時よりも強い「オッドアイズ」の火炎、それが「マエストローク」と僕の周りでより激しく燃え上がるものの……
白星 風斗 LP50 手札 4枚
残念ながら、決着をつけるには一押し足りなかった
「な、ライフがまだ残って……」
「…どうやら、攻撃の直前に使ったアクションマジック「奇跡」だったみたい。その戦闘でのモンスターの破壊を防いで、戦闘ダメージを半分にする効果。これにより戦闘ダメージ1700の半分…850のダメージを受けたものの、ギリギリ50は残ったってことだな」
『首の皮一枚繋がった…って所だな』
いやもう、本当にギリギリだよ。攻撃を防げる「回避」とか遊矢が使った「ハイダイブ」とかで良かったのに、なんだってよりによって「奇跡」なんだ。どちらかっていうと50なんてライフになったのが奇跡といえるよ
「…けど、50しかライフが残っていないのなら、迂闊に攻撃表示にはしないはず……俺はこれでターンエンド!」
白星 風斗 LP50 手札 4枚
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK1800
VS
榊 遊矢 LP1900 手札 0枚
レベル4 ATK1700
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
まだどうにかできるか…?いや、やってやる!
「僕のターン…ドロー!……遊矢、お前のエンタメデュエル…見せてもらったよ。心躍るデュエルだな」
「俺のデュエル、楽しんでもらえたのか?」
「あぁ、本当に楽しいデュエルだよ……だから」
引いたカードに口角を上げる。まだデュエルは続けられる。ことデュエルにおいてなら…僕は数倍諦めが悪いからな!
「お礼に見せてやるよ!僕なりの、エンタメデュエルって奴をな!」
「え!」
「まず手札から魔法「死者蘇生」を発動!蘇らせるのは「マスマティシャン」!」
マスマティシャン
レベル3 ATK1500
「そして手札を1枚デッキの上に置くことで、墓地の「エッジインプ・シザー」はフィールドに特殊召喚できる!」
エッジインプ・シザー
レベル3 ATK1200
「魔法カード「モンスター・スロット」を場のレベル3の「エッジインプ・シザー」を選択、墓地に存在する同じレベルの「シグナル・レッド」をゲームから除外し、効果発動!デッキから1枚ドローし、引いたカードを互いに確認する。そのカードがこのカードの発動コストで除外したモンスターと同じレベルだった場合、ドローしたモンスターを特殊召喚できる!」
「デッキの1番上のカードは、「エッジインプ・シザー」の効果で固定されている…まさか!」
「そのまさかだ!ドロー!当然、レベル3!よって効果により、ドローした「
フィールドに揃い踏む、一昔前の玩具を模した2体のモンスター。コマの連なった身体を「ベイゴマックス」はくねらせ、「タケトンボーグ」は竹とんぼのごとく、グルグル腕を回して空を舞っていた
レベル3 DEF600
レベル3 DEF1200
「レベル3のモンスターが4体も…来るか!」
「レベル3の「マスマティシャン」と「エッジインプ・シザー」で、オーバーレイ!音色打ち鳴らし栄誉の魔人よ!その叩音で、世界を彩れ!」
次に出現したのは、背中に巨大な2つの太鼓を背負った魔人。紅いテンガロンハットを緩やかに揺らしながら、ベルトの位置につけられた太鼓を打ち鳴らした
「エクシーズ召喚!出ろ!ランク3!「太鼓魔人テンテンテンポ」!!」
太鼓魔人テンテンテンポ
ランク3 ATK1700
「エクシーズモンスター!」
「まだまだ続くぜ!同じくレベル3の「ベイゴマックス」と「タケトンボーグ」の2体で、オーバーレイ!音色吹き鳴らし栄誉の魔人よ!その吹奏で、世界を彩れ!」
渦から姿を現す、これまた巨大な管楽器。チューバかトランペットかは忘れたが、その楽器に腰掛けて華麗に吹き鳴らす緑髪の2頭身の女の子。当然ながら魔人
「エクシーズ召喚!出ろ!ランク3!「管魔人メロメロメロディ」!!」
管魔人メロメロメロディ
ランク3 ATK1400
ここまで揃えばいけるだろ。それぞれ3体の魔人に、指示を出す
「さぁ、奏でろ!」
……〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜〜♬
「マエストローク」が細剣をタクトのように振るい…演奏が開始される。タタン!タタン!タタタタターン!と「テンテンテンポ」がテンポよく太鼓を叩き、「メロメロメロディ」が合わせて管楽器に息を吹き付ける。まだ足りてはいない…が、それは間違いなく1つの曲調を作り上げていた
「……歌……?」
軽快なメロディを聞いて、遊矢が呟く。そう、歌である。というか、思いっきり「Believe×Believe」である。ARC-V最初のOPの
最初は演奏なんてするつもりはなかった、ただ見た目の受けが良さそうだから「魔人」モンスターのエクシーズデッキを選んだのだが……遊矢が頑張って前へ踏み出した以上、僕も頑張らないとな
「自分フィールドに2体以上エクシーズモンスターがいる時、手札の「エクシーズ・ギフト」を発動!
ッ!ようやく引いたか!
「「魔界発現世行きデスガイド」を召喚!」
赤い髪の女性が姿を見せる。ところどころ赤いツギハギが入った濃紺の帽子とスーツとタイトスカートを着込んでおり、黒い額縁のようなバックを肩にかけていた。帽子と胸元とカバンにつけられたドクロマークが、彼女の悪魔めいた雰囲気をより醸し出していた
魔界発現世行きデスガイド
レベル3 ATK1000
そんな「デスガイド」が手に持った小型マイクで何かを伝えると、どこからともなくやってきた闇色のバスから、「クリッター」と呼ばれる3つ目の毛むくじゃらが降りてきた。「手違い」で冥界に行ったり、「相乗り」したら「取り違い」られ「濡れ衣」を着せられた、なんとも哀れなモンスターである。
クリッター
レベル3 ATK1000
「「デスガイド」は召喚に成功した時、手札・デッキからレベル3の悪魔族モンスターを効果を無効にして特殊召喚することができる。そして「デスガイド」のレベルも3だ…レベル3の「魔界発現世行きデスガイド」と「クリッター」で、オーバーレイ!音色奏でし栄誉の魔人よ!その旋律で、世界を彩れ!エクシーズ召喚!」
金色に光るピアノが現れる。鍵盤は本来とは逆方向の内側に向いており、その隙間で明るい紫髪の女の子の魔人が演奏を奏でる
「出ろ!ランク3!「鍵魔人ハミハミハミング」!!」
鍵魔人ハミハミハミング
ランク3 ATK1100
「「ハミハミハミング」が特殊召喚に成功した時、墓地の「魔人」エクシーズモンスターである「ムズムズリズム」を対象に効果発動!「ムズムズリズム」を特殊召喚し、手札2枚までを「ムズムズリズム」の
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
「手札の「彼岸の悪鬼 スカラマリオン」を
そして、最後に「ムズムズリズム」がフィールドに参戦し……エクシーズモンスターによる楽器団が完成する
白星 風斗 LP50 手札 1枚
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK1800
太鼓魔人テンテンテンポ
ランク3 ATK1700
管魔人メロメロメロディ
ランク3 ATK1400
鍵魔人ハミハミハミング
ランク3 ATK1100
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
VS
榊 遊矢 LP1900 手札 0枚
レベル4 ATK1700
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
壮観。この2文字が似合うほど、フィールドにはエクシーズモンスターによる旋律が鳴り響き、賑わっていた。「アスレチック・サーカス」の中で幾重にも重なった音楽が響き渡る
「……ははは………」
それを見ていた遊矢の顔は、自然と笑みが溢れかえっていた
「あはははははは!!凄い!凄いよ!こんなエンタメ、初めて見た…まるで父さんのエンタメデュエルを見てるみたいだ!」
「どうだ遊矢、楽しいか?」
「うん!楽しい!最高だよ!」
満面の笑みを浮かべながら、遊矢は「魔人」モンスターたちを見渡す。最初の気の張った表情はどこへやら、まるで幼い子供の頃に戻ったかのように笑いまくる。観客の皆も笑う
『本当に凄い!先輩にも引けを取らない、素晴らしいエンタメデュエルだ!』
『綺麗な音〜!ものすごく楽しくなってきちゃった!』
『し・び・れ・るぅ〜〜〜!!』
『遊矢…!』
『どうやら、遊矢も吹っ切れたみたいだな。白星殿には感謝してもしきれん』
『良かったわね、柚子』
『あいつ、こんなデュエルも出来るんだな…本当に凄い奴だ……』
……そうだ。これだ、これがデュエルだ。僕のデュエルは何1つ変わっていない。どんな時でも自分の思いを、善も悪も含めたその時の感情の全てを全力でデッキに託して乗せて……それを相手に思いっきりぶつける
そんなデュエルを、この世界にいる人間は皆できるのだ…良くも、悪くも。遊矢には立ち上がってもらわなくちゃならない。勝手な言い分なのは分かっているが、こいつは
「さてと…遊矢、楽しんでもらえてなによりだが、どんなものにも終わりというものが付き物だ……このデュエルは、僕の勝利で締めくくらせてもらう!お楽しみは、これまでだ!」
「ッ!」
「まずは「マエストローク」の効果!
「「ウィップ・バイパー」のモンスター効果!「太鼓魔人テンテンテンポ」の攻撃力と守備力を入れ替える!」
「ウィップ・バイパー」の毒噛みにより、攻守を反転させてしまう「テンテンテンポ」。太鼓のリズムが徐々にずれてゆく
太鼓魔人テンテンテンポ
ランク3 ATK1000
最初は喜んでいたが、そうも言っていられない。真後ろで交響魔人の剣を使い行われたタクト捌きに、「ウィップ・バイパー」は言いようもない恐怖を覚え、遊矢の方へ逃げ込み裏側表示になってしまった
「
「メロメロメロディ」が優しい音を吹くことで現れる光る音符。それが「マエストローク」の身体に入り込むと、新たな力を得てパワーアップする
「「マエストローク」が、2回の攻撃を!?」
「さあ、終幕のバトルフェイズだ!まずは「テンテンテンポ」で、裏側表示になった「ウィップ・バイパー」を攻撃!」
曲を奏でながら生み出した音符を、裏側表示の時のモンスターにぶつけてゆく。やたら硬質な音符なのか、ガツンガツン痛そうな音を立てながら、セットモンスターは破壊されていった
白星 風斗 LP50 手札 1枚
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK1800
太鼓魔人テンテンテンポ
ランク3 ATK1000
管魔人メロメロメロディ
ランク3 ATK1400
鍵魔人ハミハミハミング
ランク3 ATK1100
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
VS
榊 遊矢 LP1900 手札 0枚
オッドアイズ・ドラゴン
レベル7 ATK2500
散々アクションカードを取ったせいで、僕たちの周りのアクションカードは既に枯渇している。何より遊矢と「オッドアイズ」を取り囲み演奏を続ける「魔人」モンスターの包囲網……決着の形が見えた瞬間だった
「「交響魔人マエストローク」で「オッドアイズ」と遊矢の順に連続攻撃!そして攻撃時に「ムズムズリズム」のモンスター効果!
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK3600
レイピアを縦に構え、目を閉じる。せめてもの抵抗に二色の眼を持つ竜は炎を口に蓄えるものの…全てはもう終わっている。剣の舞のように流麗に、華麗に、ふつくしくその細剣を振るい……「オッドアイズ・ドラゴン」は苦しみながら倒れ伏した
……しかし、遊矢だけは優しく地面に下ろして…赤と青の瞳を揺らしながら、青い粒子に量子還元されていった。「マエストローク」の攻撃により、僕の初めてのエンタメデュエルは終劇を迎えた
白星 風斗 LP50 手札 1枚
交響魔人マエストローク
ランク4 ATK3600
太鼓魔人テンテンテンポ
ランク3 ATK1000
管魔人メロメロメロディ
ランク3 ATK1400
鍵魔人ハミハミハミング
ランク3 ATK1100
弦魔人ムズムズリズム
ランク3 ATK1500
VS
榊 遊矢 LP 0 手札 0枚
「…風斗……」
「どうだ遊矢、悩みを解決したか?」
つっても、それは聞くまでのないことだろう。憑き物が落ちたかのようなこいつの顔が、何よりそれを証明している
「……俺、ずっと父さんのデュエルだけを目指してただけのような気がするんだ。父さんの真似をして、嫌なことには目を逸らして……」
「…………」
「でも、もう俺は逃げないよ。いつになるか分からないけど、父さんにも最高って言ってもらえるようなエンタメデュエルがしたいんだ。俺だけの、エンタメデュエルを」
「…そうか……良かったな、遊矢」
こいつは、きっと最高のエンタメ
とにかく、無事悩みが解消できたようで何よりだ
「…そういえば、名前で呼んでくれたね」
「うん?……あ、ホントだ」
どうやらデュエルに熱中になるあまり、心の声が完全に表に出てしまったらしい。基本他人行儀な僕にしては、珍しいミスだ
「やっぱ嫌だったか?いきなり呼ばれて」
「うぅん。俺、嬉しいんだよ」
嬉しい?
「いつも風斗って、瑠璃や竜太郎以外には苗字で呼んで、何だか寂しい感じがしたんだ……けど、俺は今日のデュエルでようやく風斗と仲間になれた気がしたんだ。この遊勝塾の、仲間として」
「……仲間、かぁ……」
本当に、遊矢はユートと似ているな。顔がとか、そういうことじゃなく…心からデュエルが好きで、優しいところとかがだ
仲間、仲間か……悪くない響きだよな、ホント
というわけで、遊矢覚醒(ちょびっと)回でした!誰だこれ!状態の人はこの先厳しいかもしれません。この作品の遊矢は若干主人公気質が強いですから
アイデアが湧かなくて、延々とデュエルをして、就活もしていたら1週間なんて既に通り過ぎていました。自分で定めたノルマがドンドン遠ざかってゆく……
今回のデュエルで出てきたアニメカードは「
さて、次回予告!……と行きたいのですが、今回はありません。…ネタが切れたわけじゃないよ?ちゃんと考えているんだからね。ただ時期が来たもんですから
そんなわけでまた次回!お楽しみは、これまでだ!