面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語 作:ジャギィ
まあ気が向いたら…本っ当に気が向いたら別の方も更新するかもしれませんね。エタ率が75%まで上昇しますけど……
それでは、忍!殺!な第28話ドーゾ!
「疲れた……そして疲れる……」
少し曇り気味な空の下で愚痴が響き渡る。声の発生源は、項垂れながらゾンビのような足取りで街中を歩き続ける僕のものであった
昨日の「モリンフェン」デッキで不良を制裁したデュエル。あの後の負けた不良による執拗なまでの舎弟懇願を何とか退けた僕は、何事もなく遊勝塾に戻ることができた。もう下手にあのショップには行けないなと深い悲しみに包まれるが、それを必死に乗り越えながら僕はいつも通りLDSに向けて歩を進めていた。流石にLDSに近くなってきたら背筋はピンと伸ばした
舞網市で1番高〜いビルの前までたどり着くと、普段は見かけない黒服の人たちが数人入り口で待機していた。そしてサングラス越しで僕の方を見て…おそらく僕の姿を確認してるのかなと考えていると、数人のうちの1人が近づいてきて頭を下げてきた
「白星風斗様ですね?赤馬社長の命により、貴方をデュエルコートまでご案内いたします。こちらへ」
「あぁ…うん……ありがと」
黒服さんのあまりに殊勝な態度に思わず萎縮してしまう。ただでさえ年上だというのに、さらにガタイのいい人が腰を90度曲げて頭下げてくるとか悪いことしてる気分にしかなれないので止めてくだしあ
「…赤馬社長と中島さんは?」
赤馬からの召集連絡が来たのは一昨日だ。いつもなら社長の執務室か応接室、あるいは中島さんに直接案内されるから今回の対応には少し疑問を抱いたのだが、案内人の黒服さんは想定していたのかスラスラと質問に答える
「本日、社長は今朝入った緊急の会議に参加しており、会議が終わり次第こちら側に向かうとのことです。中島主任も別件の仕事があり、当分は我々が案内役として派遣されます」
「別件?」
「ええ、カード開発部の派遣に」
あぁ…なるほど、尻を叩きに行ったのかあの人
僕が提供した一部の融合・シンクロ・エクシーズのカードを基に、このスタンダード次元でもかなりのエクストラカードが量産されていると中島さんが言ってたことがある。しかしそれだけではダメなのだ。ただ召喚する技能を身につけるだけでは、それぞれの召喚法を1歩も2歩も先に行っている融合次元・シンクロ次元・エクシーズ次元の
この差を埋めるためには、思いつく限りの方法は3つ。1つは融合・シンクロ・エクシーズ全てを使いこなせるようにすること…赤馬兄弟がこれに該当する。2つ目はそれぞれの召喚法を特化してものにすること…後の柚子や権現坂はこれだな。そして最後のが…そのどれでもない、全く未知の召喚法を武器にすること。そう、遊矢が体得するペンデュラム召喚のことだ。ペンデュラムに関しては物語の最中で結成されるランサーズのメンバー殆ど(黒咲などは除く)が使用できる。…まぁ、おかげでデニスとかにもペンデュラム召喚を使われるわけだが……
でも、これらの未来を知っているのは僕だけなのだ。だからこそペンデュラム召喚など影も知らない赤馬は、他の召喚法をランサーズ候補になり得るLDS生に…スタンダードに馴染ませようと先を見据えた開発をしているのだろう。僕のせい(多分)とはいえ、身を粉にして働いている開発部の人たちには同情を禁じえない……まぁ、デュエルの明るい未来の為に我慢してもらうしかないけど
そうこう考えているうちに、周囲に生徒の気配を感じさせないだだっ広い部屋に到達する。極秘で開発されたカードのテストプレイなどに利用される場所であった。あるいは、誰の目にもつかないようにデュエルするためのところでもある
「ここでデュエル?何か隠す必要のあるデュエルでもするのか……?」
いつの間にか他の人たちはデュエルコートから退出していて、気配は当然ながら僕1人分しか感じさせない。こんな状況で一体何をしろって言うんだ?いや、デュエルだってのは分かるけど、対戦相手らしきものが影の1つも見当たらなーーー
「…お主が、零児殿の言う客人でござるか」
「何、ッ………ッ?!」
唐突に背から掛けられた声に思わず反応し、即座に振り向く…と、そこには2人の男が忍び立っていた
それぞれ赤と青に染められたニンジャ装束、背につけられたあからさまにデュエルに必要なさそうな刀、素顔を隠す役割の布メンポにバイオクローンのような瓜二つさ……その、何が言いたいのかというと……
双子のニンジャがエントリーしてきた
「アイエエエ!ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」
『ゴボー!ゴボボボー!!』
あり得ない…訳ではないけど、少なくとも予想外な人物の登場に尻もちをついてネタを叫んでしまった。心の相方もそれに合わせてか必死にリバース音を声に出している
「…どうやら驚かせてしまったようでござるな」
そしてそんな僕の反応を見て、驚くように目を丸くしているのは双子ニンジャの青い方…弟の月影であった。兄である日影からの視線も心なしか申し訳なさが混じってる気がして、逆にこっちのストレスがマッハな始末。自重しよう、ふざけ過ぎた
「いやいや、こっちこそ悪かった。叫ばずにはいられなくてな…お前ら、赤馬との関係者か?」
謝罪を口にしながら起き上がり、改めて2人のニンジャを見つめる。……どこからどう見てもごまかしようがない程あからさまにニンジャなのだ!
兄の風魔日影と弟の風魔月影、僕が口にしたように赤馬とは主従の関係…忍者らしく隠密等の仕事を身を挺してもこなすできるアニメでも大活躍なニンジャ
まあ今そんなことはどうでもいいや。重要なのは、今この場に風魔兄弟が揃って僕の前にいるという事実である。でもここはデュエルコートで2人はすでにデュエルディスクを構えている…ということは、だ
「さよう。拙者たちは零児殿の指示により、今日ここに来る者と2対1のデュエルを行うよう言われたでござる」
「その零児殿から言伝を頼まれている…『今回のデュエルは、戦場での君の実力が如何程のものかを再確認するためのものだ。そのためにこの次元有数の実力者を派遣した、存分に腕を振るうがいい』……とのことでござる」
「あぁ…そういうことか。だからわざわざこんなところまで」
よく周り…正確には天井の角などを見渡せば、キラリとレンズを光らせる黒々しい監視用カメラと視線が合わさる。それに部屋の中腹辺りにあるガラス張りの部屋には訳の分からない機材がゴチャゴチャと設置されており…おそらくあれでカードエネルギーの観測でもしているのだろうか?
今回の仕事をメールで伝えて来なかったのには何かと不審感が拭えなかったけど、社長という立場だしきっと忙しかったんだろう。仮に赤馬が僕を利用して何か実験をしようとしていたのだとして…ダメだ、あいつの考えることはまるで想像がつかん。それとも本当に力を測る為のデュエルなのだか……まあ、多分大丈夫だろ。手段を選ばない節はあるが良識がない訳ではないのだ。むしろ歴代ライバルキャラにしては断トツで常識と良識がある方だし
不意に、部屋が光で覆われ変化が訪れる。眩しい白が徐々に収まると、目に映った光景は黒…否、夜景であった。都会のような喧騒さを感じさせない静かな灯火、自然が生い茂ってると暗闇でも分かる山。そして今自分の立っている場所が、天を貫かんばかりの天守閣の屋根の上にいることに気づく
「アクションフィールド「魔天の天守閣」。お主の全力を測る以上、拙者たちも全身全霊を持って相手にさせてもらおう」
「ルールはこちらがライフ・フィールド・墓地を共有する変則タッグマッチデュエル……我ら風魔兄弟のデュエル、捉えることができるござるか?」
デュエルディスクを起動させ、こちらを正面切って見据えるニンジャ
デュエルの際に毎回見る光景、そしてフィールドは高低差の激しい暗黒の中、そしてタッグでは猛威を振るうであろう2人が相手だ。結構不利な気がする……だというのに何故だろうか、口角が上がりまくって仕方がない
「こういうデュエルは、エクシーズ次元のアカデミアを相手するとき以来だな」
日影は分からない…が、月影が守りに徹したデュエルを仕込まれている以上、日影はその逆の攻め込む戦いのはずだ。フレンドシップカップで月影が使ったアクションマジックをコストにバーンを与える永続魔法…「朧手裏剣」、だったか?あれのことを考慮すれば速攻で倒すのが望ましいが、2人は身体能力が高いニンジャ。アクションマジックをフル活用される以上、下手なワンキルはかえって危険……
それならと思って、デッキから対多人数用のデッキケースを取り出し、デッキを流れる手つきでセットする。すると連鎖的にデュエルディスクから赤い光が流動的に動き出し、立派な
「名乗るのが遅れたでござるな。拙者は風魔デュエル塾代表が1人、風魔日影!」
「風魔日影の弟、風魔月影と申す。同じく風魔デュエル塾の代表でござる」
「ご丁寧にアイサツありがとう…そして返すのが流儀!ドーモ 風魔日影=サン 風魔月影=サン 白星風斗です」
カードを武器に戦う戦士が睨み合う天守閣ピラーの頂点で、尋常じゃないデュエル的アトモスフィアが漂う!
「「「デュエル!!」」」
白星 風斗 LP4000 手札 5枚
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 5枚&手札 5枚
ウシミツ・アワーのような暗き夜に、電子音による先行後行が決定される。誰から動くのか…それは月影がバックステップすることにより誰もが理解できた
「拙者の先行!拙者は「黄昏の忍者−シンゲツ」を召喚!」
月夜に照らされ降り立ったモンスターは、淡い青銅のニンジャ鎧装束を纏った細身のニンジャ。バイオ技術により複製されたかのごとき4本腕を組み、マスターに仕えるよう月影の前にエントリーした。背中には2本のライト・カタナが収納されている
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
『生きていたのかぁ!真月ぅ!』
「なら見せてやろうかぁ?もっと面白いものをよォ!」
真月ネタは拾わずにもいられないので即座に対応する。さっき自重すると決めておいてこの始末である。ま、まあ向こうには聞こえないように言ったんだしノーカンとしよう
さて、今召喚してきた「シンゲツ」には厄介…というか面倒な効果がある。戦闘あるいは相手の効果によって破壊された時、デッキから「忍者」モンスターをサーチできる効果だ。サーチしてきたとしても「ニチリン」か「ゲツガ」だろうが、もし手札にもう1枚「シンゲツ」があるなら「ゲツガ」を手札に加えられるのは普通に大変なことになる
「ゲツガ」は自身を守備表示にすることで「ゲツガ」以外の「忍者」を墓地から2体も蘇生できる効果がある。そして「シンゲツ」はサーチ以外にもフィールドにいる限り、自身以外の「忍者」を攻撃・効果対象にできなくなる効果を持つ。つまり何らかの形…具体的には「ゲツガ」で「シンゲツ」を2体蘇生などされれば、攻撃も大体の効果除去も受け付けない強固なロックが完成してしまうのだ。それだけならまだデッキのカードでどうにかできるのだが、問題は対戦相手がもう1人…しかも「シンゲツ」ロックの範囲内である「忍者」デッキの使い手の日影がいるから、悠長に時間を掛けてロックを解く暇がない可能性がある
ならばやることは1つ…相手のロックが完成する前に、先にこっちのロックを完成させる!
「先行は最初のターン、攻撃は行えぬ…しからば別の手よ!拙者は永続魔法「幻影忍法−朧手裏剣」を発動!このカードの効力によって、手札に加えられたカードを墓地に送る度にお主に300ポイントのダメージを与えられるでござる」
「げっ、初ターンからそいつかよ……」
発動されたカードに思わず顔をしかめる。それは手札に加えたカードをわざわざ墓地に送ってまでしょっぱいバーンダメージを生み出す何とも微妙なカード…というのが僕の評価である。たった300ダメのためにドロー&サーチカードを墓地に送るというのは、例えOCG用に600に調整されたとしても絶妙に使いどころが限定されたカードといえよう。エラッタ前の「キラースネーク」があればループバーンの14連発スリケンでゲームエンドとかもできたけど…OCGなら27で勝ちである
だが忘れてはいけない。今行っているのはテーブルデュエルでもスタンダードデュエルでもなく…アクションデュエルなのだ。瓦の上のアクションカードを流れるような所作で拾う月影
「手札に加えたアクションマジックを墓地に送り、「朧手裏剣」の効果!イヤッ!」
手札に加わったカードが量子化したかと思うと、そのエネルギが十字の形作りピンクのスリケンを生成し、投擲されたそれは僕の頭部に直撃…というか、デコにぶつかったら何故か軽く破裂した
「グワーッ!?」
白星 風斗 LP3700 手札 5枚
脳に対する軽い衝撃で目眩を覚えながらも、デコをさすりながら仰け反った身体の姿勢を正す
そう、その辺に散らばっているアクションマジック。それらをコストに「朧手裏剣」の効果を適応すれば、アクションカードが尽きぬ限り延々とライフを焼き尽くすことが可能なのだ。…一応ささやかながらも時間制限はあるから遅延しながらバーン、なんてことはできないだろう。それでも僕や日影のターン中にもチマチマダメージを与えてくるのは面倒極まりなくて、ジリー・プアー(徐々に不利)に陥る羽目になる
「カードを1枚伏せるでござる。拙者はこれにてターンエンド」
白星 風斗 LP3700 手札 5枚
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 5枚&手札 2枚
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
幻影忍法−朧手裏剣
伏せカード 1枚
中々に良いスタートを切られてしまった。あの伏せはなんだ?忍法シリーズだとは思うんだが…多分僕が覚えないカードだよなぁ。でも切実にそっちのほうが良い。「変化」や「超変化」を打たれてもこっちが困るだけだし
「僕のターン、ドロー!」
月影の動きを注視しながら引いたカードも含め手札を確認する。「
「魔法カード「おろかな埋葬」を発動!デッキの「サモンプリースト」を墓地に落とし、「死者蘇生」を「サモプリ」を守備で蘇生する」
仙人…というより、何かの術式を極めたかのような色白の老人が姿を現す。紫の衣服のダボダボの両袖にそれぞれ逆の手を隠すように入れ、人とは思えない赤だけの眼に4本腕の「シンゲツ」が映った
召喚僧サモンプリースト
レベル4 DEF2000
そしてモンスターを特殊召喚すると、隙を突くように月影がアクションカードを拾いに動く。させるか!
瓦の段差に足を引っ掛けぬよう気をつけながら青ニンジャに向かって駆ける。月影たちの身体能力は凄まじく高いが、戦場で戦った僕とてそれは同じ。互いに常人の三倍の脚力で落ちているカードを拾うため走り、あとはどうやって先に取るべきか……そこまで考えて、目の前に青を翻す影が降り立つ。ニンジャである!
「「シンゲツ」ゥ!」
邪魔に参ったのは月影が使役するモンスターであった!思わぬ妨害に一瞬足を止めている間に、「シンゲツ」の身体の隙間を縫って淡いピンクが右肩に命中!1秒にも満たないスリケン投擲!
「グワーッ!」
白星 風斗 LP3400 手札 4枚
「くっ…そういや「シンゲツ」がいたっけか……日影の妨害も残ってるのに厄介な」
『こうなった以上、こっちもサポートするしかないな。状況の変化は僕が教える、デュエルに集中しとけ!とりあえず初期位置のアクションカード!』
「頼んだぞ!」
本格的な共同戦線を組みながら、黒星のいう最初のところにあったアクションマジックを取る。拾ったのは「加速」だが、いちいち発動の度に拾ってられっか!
「アクションマジック、魔法をコストに「サモプリ」の効果!デッキのレベル4モンスターを特殊召喚できる……特殊召喚するのは「忍者マスター
赤い月明かりで金に輝くシャチホコの上に影が浮かぶ。薄いニンジャ装束、布メンポ、マフラー、全てが黒で統一されたニンジャが佇んでいた。腰にはニンジャカタナが1本装備されてある
忍者マスター
レベル4 ATK1800
新たに現れたモンスター…それもニンジャの姿を目にして、風魔兄弟は心を揺すられた気分を味わう
「なんと…我ら風魔一族の証でもあるモンスターを使用してくるとは……!」
「なるほど、零児殿が本気でかかれと言った意味が少し分かった気がするでござる。何が出てくるか分からんでござるからな」
驚き、しかしすぐに気をひきしめ直す2人を見ながら、モンスター効果を発動していく
「「
「「
どうやらお二人さんは「変化の術」くらいは知っているようだ。でも普通に考えれば当然か、ZEXALとかでの1人2人を除けば「忍者」カードはスタンダードよりのばかりだからな
「「
「伏せを破壊」「サーチ重点」「俺もいるぞ!」。空から舞い降りた青いバイザーとスーツのヒーローが仁王立ちのまま瓦を踏み鳴らす。背中に背負ったバイオ・ファンが空虚に回る
レベル4 ATK1800
「召喚に成功した「エアーマン」のモンスター効果により、デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加えることができる!デッキから「
「レベル8…最上級クラスのモンスターでござるか」
デッキからサーチしたモンスターを見せると、日影、月影と揃って警戒を強める
『ーーッ!月影が動いた!』
「あいよ!」
その言葉を耳にして、屋根の天辺を飛び越える感じで前へジャンプ!その先には青いニンジャがアクションカードを掴むべく全速で駆け抜けており、再び妨害するために「シンゲツ」がカタナを手に進路を遮る……
が、フィールドには2体の有能な
しかし深く考えてもニューロンの海に溺れるだけなので、走ることに集中する。日影も近くまで接近するが、「エアーマン」が立ち塞がり立ち往生している現状だ
「取らせるかよ!」
「ヌ…!」
足の速度が落ちるのを見て、どうやらアクションカードは一先ず諦めたようだ…と思ったのだが、それは大きな間違いだった。背中のカタナを抜き逆手で持つと、カードを庇うようにこちらを迎え討つ。どうやら諦める気は毛頭ないようである……ならば決断的にイクサだ!
「イヤーッ!」
「ムゥ!」
勢いを乗せた拳がカタナの腹にぶつかる。破壊する勢いで放たれたカラテは無情にも力が足りなかった。殴られた反動でアクションカードまでダイブし、拾われてしまう。ウカツ!カラテの打撃力をうまく利用されてしまったのだ!このままでは風斗は3度に渡るスリケンの攻撃を受けてしまう!
『マズイ!』
「対策はある!「エアーマン」で「黄昏の忍者−シンゲツ」を攻撃!」
「何!」
足止めしていた「エアーマン」が日影に背を向け、風斗の早口指令を実行すべく青のニンジャとの距離を詰める。ある程度距離が縮んだところでファンの回転によるトルネド・ジツが「シンゲツ」を襲う!「
「クッ…拙者の場に「忍者」が存在する時、永続罠「幻影忍法−朧ガマ」は発動することができる!」
しかし月影、ここで罠カードを発動!「シンゲツ」の背後に煙の爆発が起こり、煙が晴れるとそこには巨大な金のガマ・カエルが存在していた!アクションマジックをディスクの墓地に入れ込むとカエルからエネルギが視覚化され、前方の「シンゲツ」に流れ込む。するとどうだろうか、二刀流でなお不利だった「シンゲツ」がイアイドーで「
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK2500
「攻撃力が2500に?!」
「「朧ガマ」は相手のバトル時に1度だけ手札を捨てることにより、バトルフェイズ終了時まで「忍者」モンスター1体の攻撃力を1000ポイント上げることができるでござる!」
荒れ狂う暴風が目の鼻の先まで迫る!だが「シンゲツ」は余ったカタナをあろうことかトルネド・ジツに向かって振るったのだ
するとなんたることか!その一振りだけで竜巻は縦に斬り裂かれ、攻撃の余波が風の英雄のスーツとバイザーとバイオファンをズタボロにする。ワザマエ!うめき声にしかあげれぬまま「エアーマン」は爆発四散!
白星 風斗 LP2700 手札 5枚
「グワーッ!」
『うおぉぉ落ちる落ちる落ちるゥ!?』
爆風に煽られ、屋根の上を転がり落ちる僕。しかし咄嗟に掴んだ瓦がブレーキとなり、天守閣から落ちることは防がれた
うぅ…結果的に「朧手裏剣」よりデカいダメージを負ってしまった。でも伏せが分かっただけまだ儲けと考えるべきだ。これ以上の妨害がないって分かったんだからな!
「メインフェイズ2、カードを2枚セット…これでターンエンドだ!」
白星 風斗 LP2700 手札 3枚
召喚僧サモンプリースト
レベル4 DEF2000
忍者マスター
レベル4 ATK1800
伏せカード 2枚
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 5枚&手札 2枚
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
幻影忍法−朧手裏剣
幻影忍法−朧ガマ
「流石に厳しいでござろうな…しかしこれも任務!悪く思われなかれ!拙者のターン!」
「日影のスタンバイフェイズにリバースカードをダブルオープン!チェーン1「宮廷のしきたり」、チェーン2「忍法 変化の術」!!リリース対象は「
「
1枚1枚が大きな羽根の黒翼、鋭い爪を生やした大地を踏み揺らす脚、そして己を誇示する咆哮で空を震わせながら…「ダーク・シムルグ」は威圧的アトモスフィアを発した
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
「知ってるとは思うが、「変化の術」の効果によりリリースした「忍者」のレベル+3以下、つまりレベル7以下の獣族・鳥獣族・昆虫族モンスターを手札・デッキから特殊召喚する。鳥獣族でレベル7の「ダーク・シムルグ」を特殊召喚させてもらった」
「2700…「朧ガマ」を使った上での「シンゲツ」の攻撃力を上回ってきたでござるか」
「そしてチェーン1の「宮廷のしきたり」の効果が適応され、「宮廷のしきたり」以外の永続罠は敵味方問わず破壊されなくなる」
「フム…そのモンスターの破壊はモンスター自体を狙わねば不可能、と」
「そういうことだ」
回り道だが「しきたり」を破壊して「変化の術」を除去するって手もあるけどね。でも普通に「シムルグ」の打点を超えた方が楽か
「確かに「忍者」モンスターに強力な攻撃力のモンスターは少数…だが、風魔一族の戦いは力だけにあらず!手札から「忍法 朧分身の術」を発動!手札の「黄昏の忍者−シンゲツ」を特殊召喚!」
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
「そして「シンゲツ」をリリース!「黄昏の中忍−ニチリン」をアドバンス召喚!」
「シンゲツ」をリリースし現れた新たなニンジャは、赤褐色の肌をした金の鎧と兜をつけた筋骨隆々のニンジャである。沈みゆく夕日のようなリングを兜の裏につけており、右の手には夕日のように輝く小刀が握られていた
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK2300
「このタイミングで「ニチリン」召喚!?…てことは……」
「手札の「忍者」モンスターである「ゲツガ」を墓地に捨て、「黄昏の中忍−ニチリン」のモンスター効果!1ターンに1度、自身のフィールドの「忍者」及び「忍法」カードに発動ターン中破壊耐性を付与するか、「忍者」1体の攻撃力をターンの終わりまで1000ポイントアップさせることができる…「ニチリン」自身を対象にエンドフェイズまで攻撃力を上昇させるでござる!」
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK3300
猛々しいシャウトと共に「ニチリン」の肉体に光が灯る。「ニチリン」の体内に宿る血中カラテが加速し、一時的に「ニチリン」自身のカラテが
「ウッソだろおい?!」
「バトルでござる!「黄昏の中忍−ニチリン」で「ダーク・シムルグ」を攻撃!」
『また「朧手裏剣」が来るぞ!』
そしてこのクソ忙しい時に黒星の警告が木霊する。クソ、こんなタイミングで月影か!?面倒にもほどがあるぞ!
月影の妨害か「ダムルグ」を守るか、一瞬頭の中で迷いを見せるがタッグフォースルールだったことを思い出し即座にシャチホコの上のアクションカードを乱暴に取って発動する
「アクションマジック「回避」を発動!「ダムルグ」への攻撃を無効にする!」
己のカラテの漲りに任せて魔鳥に接近する黄昏の中忍。その明確な殺気を感知した「ダーク・シムルグ」はその翼を広げ、軽い跳躍と同時に大きく翼を振るい空を舞う。当たらなければ高い攻撃力は意味をなさない!だが別方向からのスリケンは肩を掠め、ライフを小さく減らす
白星 風斗 LP2400 手札 3枚
できれば「ハイダイブ」とかの方が「ニチリン」を破壊できるからそっちの方が良かったんだがなぁ…どうもアクションカードの引きに関しては僕はあまり良くないみたい
「防いだでござるか……」
「先に言っておく。「ダムルグ」が僕の場に存在する限り、お前たち2人はあらゆるカードのセットを封じられる。こいつを倒さない限り、罠は仕込めない」
同じ場所を低空飛行している黒い巨鳥を指さしながら僕はそう告げる
「厄介な効果でござるな…拙者はこれにてターンエンド」
白星 風斗 LP2400 手札 3枚
召喚僧サモンプリースト
レベル4 DEF2000
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
忍法 変化の術
宮廷のしきたり
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 2枚&手札 2枚
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK2300
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
幻影忍法−朧手裏剣
幻影忍法−朧ガマ
さて、どうしたもんか。未だライフは1も削れず、フィールドアドは向こうが若干有利。「朧ガマ」がある以上最低でも2600は打点がないとダメだし、そもそももう1体「シンゲツ」出されればロックが完成してしまう。ロックに関しては「
「拙者のターン、ドロー!」
(アクションカードがある以上、下手にここで攻めれば兄者のターンに返り討ちの布陣を晒し復帰が効かなくなるやもしれぬ。ここは守りに徹し、兄者にターンを渡す!)
「拙者は「黄昏の忍者−シンゲツ」1体をリリースし、「黄昏の忍者将軍−ゲツガ」をアドバンス召喚!」
背負われた2つの旗を揺らし参上したのはニンジャの将軍。刃の太い槍を片手に携えながら、ウルシのような滑らかな鎧に手を当てた
黄昏の忍者将軍−ゲツガ
レベル8 ATK2000
「「ゲツガ」の効果!攻撃表示のこのカードを守備表示に変更することにより墓地の「忍者」モンスターを2体、特殊召喚するでござる!兄者と拙者の「シンゲツ」の双方を攻撃表示で特殊召喚!」
「ゲツガ」がどこから取り出したか分からない実際古めかしい折りたたみ式の椅子に腰を下すと、日影と月影のそれぞれの墓地から別々のニンジャが1つのフィールドに召喚される
黄昏の忍者将軍−ゲツガ
レベル8 DEF3000
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
「「黄昏の忍者−シンゲツ」が場に存在する限り、自身を除いた「忍者」を攻撃対象にすることはできぬ。2体の「シンゲツ」により、お主は攻撃が行えぬようになった」
そしてまた月影はアクションフィールドを駆け抜け、シャボンのような球体に収まったカードを拾おうと試みる
「そう何度もやらせるか!「ダムルグ」!!」
暴風。空中で待機していた「ダーク・シムルグ」の羽ばたきによる風圧により、風斗を除いたプレイヤー・モンスターの動きが封じられる。加えて凄まじい強風は足元の瓦ごと、アクションカードを囲う球体を吹き飛ばす。吹き飛んだカードが風下の方へ流れていく
「思いの外痛いんだよそいつは……んで、どうする?」
「ムウ、拙者はこれでターンエンド」
白星 風斗 LP2400 手札 3枚
召喚僧サモンプリースト
レベル4 DEF2000
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
忍法 変化の術
宮廷のしきたり
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 2枚&手札 2枚
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK2300
黄昏の忍者将軍−ゲツガ
レベル8 DEF3000
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
幻影忍法−朧手裏剣
幻影忍法−朧ガマ
「僕のターン…ドロー!魔法カード「マジック・プランター」を発動!永続罠である「宮廷のしきたり」を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドロー!」
引いたカードは…「ソウル・チャージ」と「魔封じの芳香」か。残りの手札は「ダーク・シムルグ」にサーチした「
「問題はあれだよなぁ……」
永続魔法ということで常時公開されている「幻影忍法−朧手裏剣」を見ながらごちる。僕の手札に召喚できる下級モンスターがいないから「ダムルグ」を残した状態で「
「…………」
『…………』
無言の「サモンプリースト」の後ろ姿を見つめる。そうだ、色々あって頭からすっぽり抜けていたが「サモプリ」にはデッキからレベル4モンスターを特殊召喚する効果がある。アクションマジックで実質ノーコストと考えると…デッキから「
「そうか!」
ニューロンの中で浮かび上がった勝利への方程式。それに希望を見出せたことで歓喜しながら顔を上げ……
パァン!
「グワーッ?!」
スリケンが眉間で爆裂した。ぁぁ、ピンクの光が見える
白星 風斗 LP2100 手札 5枚
『……悪りぃ、見んの忘れてた』
ズザザザザーッと再び瓦の上を滑り台しながらも起き上がると、天守閣の上空から見て角の位置にあるカードをさりげなく拾う。上を見ればニンジャの2人…月影の方はさっきいた所とは少しずれた位置で、揃って腕を組んで立っていた。にゃろう……!
「上等だ!世にも恐ろしい布陣を見せてやる!アクションマジックをコストに「サモンプリースト」のモンスター効果!デッキの「忍者マスター
再度登場する「
忍者マスター
レベル4 ATK1800
「「
ドロン!と典型的な擬音が煙と同時に巻き上がる。モクモク煙たい白い煙の中から現れたのは、肥満体型な小柄の緑ニンジャ装束のニンジャ。オジギにしながらも目元の笑みを崩さない胆力には実際凄みがあり、額には同じく笑みを浮かべたフクスケ・メンポが備えられていた
覆面忍者ヱビス
レベル4 ATK1200
「「ヱビス」以外の「忍者」…「
懐に手を伸ばし「ヱビス」が取り出したのは丸いバクチクであった!赤・青・緑と彩りのあるバクチクを2つ取り出し、それを「朧手裏剣」「朧ガマ」の足元に投げつける。花火のように打ち上がり軽快な音と共に爆発すると、ヒラヒラと緑と紫のカードが舞う。華麗にそれをキャッチしながら、月影は呻いた
「「朧ガマ」をも封じてきたでござるか。「朧手裏剣」での追撃も拙者のターンまではお預け……」
「いーや、ずっとお預けにしてもらうぜ…僕は「ダムルグ」と「
「「ダーク・シムルグ」をリリース?」
なぜ「サモンプリースト」を使わないのか?そんな疑問を挟む余地もなく、禍鳥とニンジャ2体が蒼い液体…否、血液に飲み込まれ姿形を変容させる
悪夢のような赤紫の骨格を身に纏った人型。その右手の悪魔の口は邪悪に開き、悪魔の左の巨手は爪を鈍く光らせる。背に生えた翼は膜がボロボロであり、身の丈ほどの長尾はユラユラと揺れる。そして背中から上に伸びる3本の腕ほどの指と爪を見て、「手」を錯覚させたはずだ
巨大な手のような悪魔。しかし信じ難いことに、そのモンスターはヒーローと呼ばれるべき存在である
「贄の血を蒼き鮮血に混ぜ合わせ、全ての英雄の頂点に君臨せよ!現れろ!レベル8!「
それは、「
レベル8 ATK1900
「「
「
「これは!?」
「これが「
「なるほど、「シンゲツ」の守り、そして「ニチリン」の反撃を無効化してきたというわけでござるか」
「さらに「
針の刺さった部位から「ゲツガ」の身体が液体化、そして気化してゆく。青い蒸気とかした元「ゲツガ」を「
レベル8 ATK2900
(装備)黄昏の忍者将軍−ゲツガ
「「ゲツガ」が…!」
「吸収したモンスターの元々の半分の攻撃力分、攻撃力をアップさせる。そして、本当の地獄はこれからだぜ……まずは手札の「ソウル・チャージ」を発動!墓地のモンスターを任意の数特殊召喚する代わりに、このターンバトルは行えず特殊召喚したモンスターの数×1000のライフコストを支払う。「
白星 風斗 LP1100 手札 3枚
忍者マスター
レベル4 ATK1800
「「
闇の瘴気が烈風で巻き上がり一箇所にまとまることで、その中から漆黒の巨鳥のゾンビーが復活する
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
「自己再生持ちでござったか!」
「さぁ、こいつが最後のダメ押しだ!レベル4の「忍者マスター
「
それぞれのソウルが共鳴し、溶け合い、新たなソウルが生まれ落ちる
「鈍く輝く金剛の騎士よ!闇に染まり、あらゆる光に歪みを!エクシーズ召喚!」
光の柱から這い出てきたのは、灰色のくすんだ色合いの鎧だった。ジルコニアと呼ばれる宝石でできたハンマーのような太い腕がジワリと光を灯す。頭部には幽鬼のように忙しなく揺れる黄色の髪、そして以前は眩く光っていた宝石から恐ろしげなアトモスフィアが漏れていた
「ランク4!「暗遷士 カンゴルゴーム」!!」
暗遷士 カンゴルゴーム
ランク4 ATK2450
ズズズ…と天井を踏み抜きそうなほどの重量を持つ岩石の遷士が、その眼光で膝をつくニンジャを射抜く
「エクシーズモンスター…これほどの展開をたった1ターン、それもこれほどの逆境で……!」
「これが未だ無敗のプロ
僕の周りのモンスターたちをそれぞれ見比べ、各々戦慄の表情を浮かべている。確かにまぁ、壮観だよな。手札の「ヱビス」が別の闇属性のモンスターだったらそいつと「巨神鳥」除外して「ダムルグ」蘇生した後、墓地の「
モンスター効果抑制役で2900の「
だが慈悲はない
「「ソウル・チャージ」の制約でバトルフェイズには移行できない。僕はカードを1枚伏せてターンエンド」
白星 風斗 LP1100 手札 1枚
レベル8 ATK2900
(装備)黄昏の忍者将軍−ゲツガ
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
暗遷士 カンゴルゴーム
ランク4 ATK2450
忍法 変化の術
伏せカード 1枚
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 2枚&手札 4枚
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK2300
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
「なんと禍々しい…拙者のターン!」
「日影のスタンバイフェイズに永続罠「魔封じの芳香」を発動!」
発動したカードから毒々しい緑の淀んだ空気が噴出する。甘く、ニューロンの神経部位を溶かし尽くすような危険が満ち溢れている
白星 風斗 LP1100 手札 1枚
レベル8 ATK2900
(装備)黄昏の忍者将軍−ゲツガ
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
暗遷士 カンゴルゴーム
ランク4 ATK2450
忍法 変化の術
魔封じの芳香
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP4000
手札 2枚&手札 4枚
黄昏の中忍−ニチリン
レベル6 ATK2300
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
黄昏の忍者−シンゲツ
レベル4 ATK1500
そして「魔封じ」の発動に、とうとう日影、月影の小さな希望をも摘まれる。赤い月がインガオホーと笑う
「なっ……?!さらに魔法の発動を抑制するカードも…!?」
「つまり拙者たちは、モンスターと罠はおろか、アクションマジックを含めた魔法全てを封殺されたと……ッ!」
完全に勝機が消失したことで、2人の心が敗北を認める。己のデッキを把握しているからこそ……互いのデッキを理解しているからこその敗北感であった
しかし、2人は膝だけは絶対に折らない。それは風魔一族としての誇り、意地、矜持ゆえに。そして…
「…しかし、膝だけは折るわけにはいかぬでござる!」
「風魔一族の、そして
「そうだァ!それでこそだ、
魔王めいたセリフ、そしてポージングを取る風斗に向かって、誇り高きニンジャたちは飛びかかった
暗き漆黒の夜のウシミツ・アワー、レオ・コーポレーション本社の赤馬零児の執務室に、僅かな光が灯っていた
「…なるほど……やはり、謎の深い男だ……」
赤馬零児は指示により録画していた白星と風魔兄弟のデュエルを見て、小さく呟いた。部屋を灯していた光は、デュエルの映像による光だった
『これでお前たちのモンスターは尽きた!「
白星 風斗 LP1100 手札 2枚
レベル8 ATK2900
(装備)黄昏の忍者将軍−ゲツガ
ダーク・シムルグ
レベル7 ATK2700
暗遷士 カンゴルゴーム
ランク4 ATK2450
覆面忍者ヱビス
レベル4 ATK1200
忍法 変化の術
魔封じの芳香
VS
風魔 日影&風魔 月影 LP 0
手札 2枚&手札 4枚
『む、無念…!』
『我らの、敗けだ……』
悪魔のような風貌のヒーローが自身の血を操り、針の雨ともいうべき攻撃で無防備状態のプレイヤーのライフを残らず削り取るシーン
しかし、今回の映像に置いてこのシーンはさしたりて問題ではないのだ。真に問題なのは……その直後の場面
『あぁホントに、アクションデュエルって疲れるな〜。ただでさえ運動は苦手なのに、なんで身体能力が化け物なニンジャを2人同時に相手しなきゃ…………黙ってろ黒星!そもそもお前のせいで1回エライ目に遭ったのを忘れて……』
映像が止まる。ストップがかけられたシーンでは、あらゆる角度で確認しても白星と風魔兄弟以外の存在は見当たらない。そもそも彼ら3人以外の人間は入れぬよう、人払いがされているエリアでデュエルを行っているのだから
ならば、彼は一体誰に語りかけているのか?会話の中に出てきた「黒星」という名前の人間は部屋の中にはおろか、研究者の中にもいない。デュエルディスクでの連絡のやり取りもデュエル終了の直後なため不可能。彼と共にスタンダードに来た人間も砕羽竜太郎と黒咲瑠璃の2人…常に名前の方で呼んでいる以上、黒咲瑠璃も該当はしない
(白星は独り言を呟くことが多いと報告があったが…おそらく独り言ではない、彼は確かに「会話」をしている。問題は何と会話をしているか……何かが見えている?それか…自分自身と語り合っている?)
自分自身と語り合う。字面だけ見ればただの頭が危ない人なのだが、赤馬零児には既に1つの考えがまとまっていた
(……解離性同一性障害……)
解離性同一性障害。俗に言う二重人格、あるいは多重人格と呼ばれるものの正式名称である。自分にとっての辛い感情や記憶、それらを忘却することで人の人格は保たれるものだが、中にはその感情や記憶が成長し、別の人格となって表に現れる症状のことである
とても飛躍した話に聞こえるだろうが、何も自分に語りかけているからだけではないのだ。彼を多重人格者だと裏付ける理由は、常々思っていた些細な疑問であった
(何故あれほどまでに多くのデッキ、戦術を手足のように使いこなせる…複数のデッキを所持する
この次元で彼のデュエルを見続け数ヶ月、同じデッキを使ったところを赤馬零児は見たことがなかった。ただし常に違うカードはおろか、違うカテゴリのデッキを使い続けたというわけではない…が、同じカテゴリでも複数のコンセプトに分かれたデッキを使用してくるのだ
例えば「セイクリッド」。同じ使い手である志島北斗と同じよう…それ以上にバウンスに特化したデッキもあれば、融合・シンクロ・エクシーズを複合した同じカードを使い回したバーンデッキなども使用していた。あまりに長過ぎるループを見た時は軽く目眩を覚えた
例えば「ジェムナイト」。光津真澄のような連続融合による「ルビーズ」「トパーズ」のワンキルデッキも凄まじい火力であった。全く関係のなさそうなデッキに入った「ジェムナイト」をうまく有効活用した様子は、新たなカード開発の参考になったものだ
例えば「
前置きが長くなったが、何が言いたいのかといえばたった1人の人間がここまで大きく異なるデッキ、戦術を使いこなすのは並大抵では不可能だということである。赤馬零児自身も彼と同じことができるのかどうか問われれば…容易に首を振らないだろう
そう、1人ではありえないのだ……
(彼が数多の人格の持ち主であるならば、これまでの彼のデュエルの実力も説明がつく。他の人格を操作することにより、多くの戦術を使役する……しかし、それでもまだ謎は残る)
彼が多重人格者だと仮定して、どのような環境に身を置けばそれほど多くの人格を有することになるのか。エクシーズ次元はそこまで凄惨な地獄だというのだろうか?だが、報告によれば同じエクシーズ次元出身の黒咲瑠璃には彼のような変化は見られなかったとのことだ。ならば、やはり白星自身が別の環境にいたことになる
忘れたい感情と記憶が人格を作り出すならば……
(彼も…零羅と同じく、被害者といえるのか……)
己の義理の弟を思い浮かべて、2人を並べる
自己というものを殺すことで生き延びたのが零羅だとするならば、自分以外を忘れ続けたのが白星風斗だと……
(…まだ推測の域だ。彼の大きな謎、これを解明できればすぐに理由が分かるだろう…というのは流石に楽観的か。それに、それよりも気になることがある)
ディスプレイに映る男の陰りある表情…あまりに不満足、というより満ち足りてない様子であった。それは、赤馬零児の警鐘の打ち鳴らすには十分過ぎる材料だった
(彼のデュエル…何かが欠落している。こんな曖昧なことを考えるとは私らしくもないが……彼のデュエルは、まだ何かを隠してーー)
突如、執務室の扉からキィ、と音が鳴る。その音を聞きつけた赤馬は扉に目を向け…大きな扉の陰に小さな人影を見つけた
青と黄の横縞の服と先を大きく折ったズボン。黒いツバ付きの帽子を被った状態で青緑のフード付きパーカーをフードを被って羽織っている。テディベアといえるクマのぬいぐるみを大事に抱きかかえて赤馬零児を見やる目は、深い青と不安に包まれていた
「……にい…さま………?」
赤馬零児の義理の弟、
「…零羅か。なぜここにいる?」
零児としては淡々と質問しただけなのだが、それがいけなかった。零羅は「いつもならば寝ている時間のはずだ」という副声音が聞こえてしまい、兄が怒っているのだと勘違いし怯える
「ひ…っ……に…にいさま、が…ずっと、おきている…ってき、きいて……」
「……中島か……」
「ご……ごめんな、さい……にいさま……!」
テディベアを強く抱きしめ、その場に立ち止まってしまう。いつも通りにしなかったから、余計なことをしたから、嫌われてしまったのだろうか?そんな考えが、恐怖の感情を増幅させる
嫌われたくない一心で小さく謝り続ける零羅。そんな弟に対して零児は……
「……私の心配ならば不要だ、零羅」
優しい声音で、そう返した
「……?にい、さま……?」
零羅は不思議に思った。普段ならば業務をこなすように「早く部屋に戻れ、零羅」とくらいは言われると思っていたからだ
「確かに最近は深夜の時間帯まで仕事に費やすことが多くなったが、私からすれば1、2時間と誤差の範囲内だ。しかしお前はまだ子供だ。睡眠不足は身体に良くない」
「にいさま………」
零羅はとても嬉しい気持ちだった。体調の管理は何度も注意されていることだし、今言われたこともそれらと大差はない
けれど、今の兄はとても優しいと思った。厳しくも優しかったのが、より優しく…何より、零羅自身を見てくれていると感じたから
「すぐに片付ける。私も部屋までついていく、そこで待っていろ」
「…っ……うん!」
滅多に見せない笑顔を見せる零羅を横目に微笑みながら、零児は停止した動画に目を移す。その憂いを帯びた瞳には、一体何が見えているのか
「……君は次元戦争の終わった世界に、何を望んでいる……」
答えが返ってくるはずのない質問を口にしながら、ディスプレイの電源をオフにした
…というわけで忍殺なデュエル回でした!正直忍殺語は上手く書けてるか自分では分からないのであります…楽しんでいただければ幸い。あと冒頭でもあったことの練習ついでで書きました
「ダムルグ魔封じ」までは上手くいくのですが「
それと最後にとんでも勘違いを受けていますが、別に勘違いと言い切れないのがミソ。それと今回日影及び月影が使用した「シンゲツ」と「ゲツガ」はアニメ効果のカードです。OCGでも勝敗変わらなかったけど一応ね?
次回予告
スタンダードで長く過ごした半年、いよいよ遊矢の元にストロングからの挑戦状が来た。父さんの代わりにエンタメデュエルをすると意気込む遊矢だが、最後の一歩が踏み出せずにいた
「……なら、僕なりの後押しをしてやるまでだ!」
「貴様を倒すため、この半年修練に費やした……あの時のリベンジを果たすぞ、サウザンド・フェイス!!」
「面白い。ならば今回は
面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC−V物語
第29話「逆襲の聖騎士!」
お楽しみは、これまでだ!