面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語   作:ジャギィ

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ヒャーハハハハハハ!!メリィ〜クリス↑マァス↓ッ!!俺からのプレゼントだぁ(ねっとり





上の茶番は置いといて、皆さんメリークリスマス!今年最後の更新になると思いますので、新しい話をプレゼントです!家族と過ごすクリスマスは楽しいですね(虚ろ目

あとすみません。今回の話ですが、前話の最後に書いた次回予告の内容とかすりもしません。あとデュエルもありません。予告詐欺って奴ですが、どうかご了承ください

それでは、思惑が交差する第32話ドーゾ!


到来の前兆

明るい光が閉じた瞼の上から瞳を刺激する。眠気から少し覚醒した俺の目に映っていたのは、見覚えのある俺の部屋の天井だった

 

「ふぁ〜ぁ〜〜…もう朝か」

 

昨日は本当に大変な目にあった。この世界で唯一俺だけが持っているペンデュラム召喚という力、ペンデュラム召喚するために必要な「時読みの魔術師」と「星読みの魔術師」を、舞網市次期市長の息子である沢渡シンゴに強奪されたという事件があったのだ。加えて、その時居合わせていた柚子たちを人質にして、デュエルを仕掛けてきたのである

 

最初こそペンデュラム召喚による「ダーツ」モンスターの猛攻で防戦一方にならざるを得なかったが、沢渡が「君にぴったりのクズカード」と言って渡してきたカードにあった「ブロック・スパイダー」というモンスターの力のおかげで、無事ペンデュラムを取り返すことができたのだ。沢渡自身がいらないと捨てたカードが俺に逆転のチャンスを与えたのだから、とても皮肉な結果といえただろう

 

しかし、デュエルに負けた沢渡はどうしても諦めきれなかったらしく、柚子たちを見張っている3人と一緒に強行手段でペンデュラムを奪おうとしたのだ。……もっとも、デュエル中にすでに柚子たちを救出していた風斗のおかげで、事なきことを得たけど

 

(沢渡のしたことは悪いことだから自業自得なんだけど…流石にあれは同情するよ)

 

その後、罰の名目のもと風斗が沢渡にアクションデュエルを仕掛けたのだが…どちらかといえばデュエルというより公開処刑と言えるものだった

 

リバースモンスター(実際は違う)によるドローとそれらを守る罠カードの数々。さらに沢渡が苦労して召喚した上級モンスターをリリースして召喚した「ラヴァ・ゴーレム」とかいったモンスターは、アクションデュエルの代名詞ともいえる“アクションカード”の使用を大きく制限させるモンスターであった。立体映像投影(リアルソリッドビジョン)とはいえ、溶岩で熱された檻の中は非常に熱かったことだろう

 

そんな「ラヴァ・ゴーレム」の攻撃力は3000。その攻撃力はモンスターの水準でも高ラインであり、それが敵に回った時の厄介さは権現坂の「ビッグベンーK」や砕羽の「サイバー・エンド・ドラゴン」、ストロング石島の「バーバリアン・キング」と戦ったことのある俺も良く分かっている。そんなモンスターを敵に渡してなお涼しげ、というより余裕を持ってデュエルするのだから、やはり彼は凄い人だと思う

 

そんな実力を持っていて人格も誠実。時々意地悪というか冷たい時もあるが、でも結局面倒見が良いからアユやフトシもとても懐いている。瑠璃や竜太郎からも信頼されているみたいだし、俺に兄がいたらこんな感じなのかなと思ってしまう

 

(もし、父さんと風斗がデュエルしたらどんなデュエルになるかな?やっぱり父さんが勝つのかな?でも実力なら風斗も負けていないし……)

「遊矢ーー!!いつまで寝てるの!もうご飯できたわよー!」

「うわっ!ヤバ……はーい!今行く!」

 

2人のデュエルを想像していると、部屋の出入り口である床の穴から母さんの声が聞こえてきた。どうやら考え事をしているうちに時間が経っていたみたいだ。急いでベッドから起き上がって服を着替える

 

(そういえば、あの後…紫雲院素良って子に弟子にしてくれって言われたっけ。今頃何してるんだろう)

 

水色の髪を後ろに束ねた快活な少年のことを少し思い浮かべたが、なし崩し的に返事をすることなく別れることになった。LDSに長居するのはまずかったとはいえ、悪いことをしたなぁ

 

ズボンに足を通して制服を羽織ると、学校に持っていくための荷物を確認する

 

「鞄は…オッケー。財布…もオッケー。デュエルディスクとカードデッキ……よし、オッケー!」

 

持ち物を完璧に確認した俺は、天井から部屋の穴下まで伸びたポールを伝って滑るように降りてーーー

 

 

 

「おはよーししょー!」

「ゴチになってまーす」

 

ゴツンッ!!

 

ーーーパンケーキを頬張る昨日の子供とハムエッグと一緒にご飯をかきこむ遊勝塾講師の姿を見て、そのまま滑るように落ちて床に激突してしまった。顔面から衝突した痛みに、俺は顔を手で覆いながら蹲って悶える

 

「うわ〜、痛そう…大丈夫?ししょー」

「まだ寝ぼけてんのか?」

 

その的外れな推測に、俺は内心2人のせいだろと毒突きながら顔を上げた。テーブルについていたのはやはり、昨日弟子懇願をしてきた紫雲院素良とかいう子供と、現遊勝塾最強決闘者(デュエリスト)といえる白星風斗の2人であった。鼻を手で押さえたまま、起き上がりながら俺は言う

 

「な、なんでお前と風ーー」

「お前じゃなくて紫雲院素良。素良って呼んで!」

「…そ、素良と風斗が、ウチで朝ごはんを食べてるんだよ!?」

「僕?僕はこいつを届けに来た」

 

そう言って風斗がテーブルの上から俺に見えるように掲げたそれは回覧板だった。いや、それはウチに来る理由になっても、朝ごはんを食べている理由にはならないんじゃ……

 

そんな俺の視線に気づいたのか、バツの悪そうに頭をポリポリ掻いて続きを述べる

 

「え〜っと、そんで、家の前に来た時にちょうど洋子さんが紫雲院を拾っていてな。どうせだから食べていかないかって言われて、今現在に至るわけ」

「…帰ってくるのが遅かったら、塾長や瑠璃が心配すると思うけど」

「……長い世間話をしてたとでも言うさ」

 

あ、こいつ誤魔化す気だ。それを理解した俺は、学校で柚子に会ったらこのことを報告しようと決めた。勝手なことをして心配させているのだから当然だ

 

そして幸せそうにパンケーキを食べている素良の方を向いて、俺はため息を吐く。奥のキッチンで俺の分の朝食を用意している母さんに対しても、呆れた気持ちになった

 

「母さん、どうして素良を家に入れたのさ」

「お腹を空かせてたみたいだし、家の前でウロウロしてたから拾ってきちゃったのよ」

「人間を拾っちゃダメだろ」

 

そうツッコミをいれると、俺の足元で白猫のミリが「にゃ〜」と小さく鳴いた。母さんは犬や猫を拾ってくることがよくある。そのおかげか家の中はペットがたくさんいるのだが、子供を拾ってくるなんて息子の俺にも予想外だった。というより、素良が俺の家を知ってたことが1番の予想外だったが…まさか昨日からついてきてたのか?

 

俺がテーブルについた時にはすでに風斗は食べ終わっていて、黒猫のシャノンと戯れていた。あぐらをかいた足の上に乗ったシャノンを頭から尻尾の付け根まで撫でると、気持ち良さそうな猫の鳴き声が響く。なんだか手慣れてるなぁ

 

「よーしよしよし。今日からお前の名前はソロモンだ」

「ニャー!」

「ぎゃあ!!」

 

あ、手を引っかかれた。さっきまで気持ち良さそうに撫でられていたのに、よほどソロモンって名前が不服だったみたいだ。風斗は引っかかれたことに不服な様子だ。手の甲の赤い線が実に痛々しい

 

そんな面白い光景を眺めていると、母さんがトーストとハムエッグをキッチンから持ってくる

 

「遊矢、早くご飯食べなさい。もう時間ないわよ」

「うわ、そうだった!…じゃ、いただきまーす!」

 

そうやって俺は、なんだか複雑な表情で風斗を見ている素良の視線に妙な違和感を覚えながらも、バターの染み込んだトーストに噛り付いた

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃ…とりあえず僕の知ってることを話すぞ」

 

遊矢ん家で朝飯をいただいたその後、遊矢が柚子と一緒に学校に向かい紫雲院がそれをストーキングしたのを確認してから、僕は遊勝塾の個室に瑠璃と砕羽を呼び出して話を切り出した

 

「紫雲院のことだが」と前置きを置いて、僕が知ってて不自然じゃない限りの紫雲院のことを話した

 

「まずあいつのことなんだが…実はあいつとは、エクシーズ次元で何度もデュエルをした。当然、紫雲院はアカデミアの尖兵という形でな」

 

思い返せば、あの時がきっかけで僕の異名が敵味方問わず囁かれるようになったのだ……今はいいが、当初はとても恥ずかしくて顔から爆裂疾風弾(バーストストリーム)吹くかと思ったわ。最終的に泣き出したあいつを慰めるハメにもなったし

 

その事実を伝えると、2人はそれぞれの反応を返した。瑠璃は目を丸くし、口に手を当てて驚いた様子。砕羽は眉間にシワこそ寄ったものの、特に驚いてない想定内といった様子

 

「……そういえば、お前元オベリクスフォースだったな。紫雲院とは面識があったのか?」

 

何気なくそれを言うと、これまた瑠璃が聞いてないって顔で砕羽を見つめていた。あ、そういえば瑠璃に砕羽が元アカデミアの人間だって伝えてなかったっけ?でもあまりに自然に受け入れてし、それに着崩していたとはいえ最初はアカデミアの軍服着てたから既に気付いてるもんだと思ってたし……説明してなかったっけ?

 

うん、これに関しては僕が悪いんだけど、今は大事な話だから後で説明することに決めた。ゴメンね瑠璃

 

「…噂だけはよく聞いていた。俺は早い段階でオベリクスフォースに昇格したからな、他の人間のことは噂になるやつしか聞いたことがない」

「それは良い意味でのか?」

「……アカデミアからすれば、な。最年少で最優成績を取った、素晴らしいデュエル戦士だって言われていた」

「なるほどなぁ」

 

少なくとも他の奴より一線を越しているのは間違いなさそうだ。そうでなければ、基本的に「古代の機械(アンティーク・ギア)」デッキで統一のアカデミア兵とは違う、“自分のデッキ”を持っていることの説明が難しい

 

「紫雲院がこのスタンダードにやってきたのは、多分偵察が目的だと思う」

「偵察だと?」

「私を捕まえに来たわけじゃなくて?」

 

素朴な疑問が投げかけられる。その疑問を解消するために、2人に問題を言う

 

「2人とも、よく考えてみてくれ。この世界にはスタンダード、融合、シンクロ、エクシーズの次元がある。僕が瑠璃を連れて融合次元から逃げたことを考慮すれば、アカデミアは融合以外の3つの次元に瑠璃がいると考える。当然ブラフも想定して自分たちの次元も捜索はするだろうが…ここで重要なのは瑠璃を連れ去った人間が、アカデミアからすればどんな存在なのか…ということだ」

「……アカデミアの計画の邪魔をした、恐ろしく手強い決闘者(デュエリスト)?」

「正解」

 

ここで返答を躊躇うと不安にさせかねないので即答しておく。アカデミアにそこまで恐れられているなんて自分で言ってたら自意識過剰かもしれんが、一応今の所アカデミアの決闘者(デュエリスト)には誰1人負けてはいないから、厄介な認識をされているのは確かだと思うし

 

「そんな奴が常に…ってわけでもないが、どうしても掌中に収めておきたい人間の近くにいるって想像してみろ。僕だったら絶対すぐに手を出さない」

 

だって警戒されてまた別の次元に逃げられてしまったら、また探し直さなきゃダメになる。そんなイタチごっこを繰り返していたら、計画の遅れどころの話じゃなくなるからな

 

僕が向こうの立場にいたら、瑠璃を守っている奴を闇討ちなりして排除してから捕まえるか、誰か足止め…エクシーズ次元でアカデミアがやったような、雑兵を壁にして本命で捕まえにいかせる

 

「結局何が言いたいのかっていうと、向こう(アカデミア)が僕を警戒してる以上、僕を排除してからか、あるいは何としても1回目のアプローチで瑠璃を捕獲しておきたいわけだ」

「つまり、私を確実に捕まえるための偵察ってことかしら?」

「そうだな。少なくとも僕はそう考えている……普通だったらな。だって人材が不適切だし」

「「……?」」

 

僕の付け足した言葉に、2人は首をかしげる。さーてと、上手い具合に誤魔化せるかどうか……

 

「瑠璃、お前を逃がすためにアカデミアに突入したときのこと、覚えてるか?」

「えぇ、覚えてるわ」

「実はな、あの時瑠璃が次元転移した直後にバレットっていうアカデミアの幹部の人間がやってきたんだよ」

「バレットたい…バレットと会ったのか?」

 

半年経ってもまだ感覚が残っているのか、バレット隊長と言いかけたのを言い直す。よほど部下からの信頼というものが厚いのだろうか。すでにアカデミアと敵対した砕羽に未だ尊敬の念を覚えられている眼帯おじさんのことを、素直に凄いと思った

 

「お前、まさかあの人に勝ったのか?それとも戦わなかったとか?」

「流石に逃げられはしなかったから真正面からデュエルして、なんとか勝ったよ。でも、あれは手札が良かったから勝てたようなもんだからな。アカデミア関係者とのデュエルではあいつにライフを1番削られているし」

 

あの時の大ダメージは防ぐこともできたけど、その場合あのターンでは仕留められなくなるから必然的にターンを渡す羽目になってしまう。全く知らないカードというほど恐ろしいものはないという意味では、自分のターンで確実に倒しておきたかったのが本音だし、万が一の手札誘発を防ぐためにも「インフィニティ」を残す必要はどうしてもあったからな

 

「正直な気持ち、もうあいつと次元戦争中にデュエルはしたくねえな。負けが許されない状況で未知のロックバーンデッキとか、何封じられるか分かったもんじゃなくて怖えよ」

 

どうせデュエルするなら、次元戦争が終わった平和な時にデュエルがしたいもんだ。……その時にアカデミアや融合次元が残っていたら、の話だけどな

 

「ーーっと、話が逸れた。とにかく、その時にバレットとデュエルのしたんだが、デュエル前にあいつが言ったんだ。「紫雲院を倒し、ユーリも撃退した実力者」…ってな」

 

全然気に留めてもいない言葉だったが、今回の説明にはもってこいだったので利用させてもらうとしよう

 

「…?それがどうかしたのか?」

「いいか?僕が紫雲院とデュエルしたのは瑠璃を攫うためーー」

 

とまで言って、話の当人の彼女の表情が暗く変化していることに気づく。しくった、瑠璃からしたら思い出したくないことのはずなのに…!

 

「ーーのアカデミアの襲撃があった日の数日前だ。…ゴメン、嫌なこと思い出させて」

「私は大丈夫…こっちこそ、話の途中だったのに」

「うん。じゃあ話を続けたいけど、大丈夫か?」

 

その質問に対して頷いて肯定の意を示してくれたので、2人に顔を向き直して話を続けた。そして砕羽が疑問を持ち出す

 

「……それで、瑠璃をユーリが誘拐した前日に紫雲院と接触した、だったか?だが瑠璃を攫うためのアカデミアの襲撃ってのはどういう意味だ?ユーリならアカデミア兵抜きでも瑠璃を攫おうとすると思うが……」

「もっともな質問どうも。でもハッキリ言ってそれは確実とは言えない。いくらあいつが強くたって、僕や僕とは別ベクトルで同じくらい強いユートや黒咲…あぁ、瑠璃の兄貴のことな。…もいるし、それに準ずる決闘者(デュエリスト)も大量にいる中で特定の1人を捕まえるのは難しい。しかも目的がバレれば次の襲撃に備えられるかもしれない。だからあいつらは策を弄してきた」

「策だと?」

「あの時にはオベリクスフォースも大量に居たんだが、お前は何も聞いてなかったのか?」

 

そう言うと砕羽は考え込む。蛍光灯の光を反射させれそうなほど色素の薄い白髪を揺らしながら、うんうん唸る。そして何か思い出したのか、人差し指を立てて語る

 

「そういえば、当時赤馬零王の護衛をしていたチームを除いた全員が、エクシーズ次元に送り込まれた時が1度だけあったな。俺はその数チームのうちの1つに入っていたから、あいつらが何をしに行ったのか何も知らないが」

「足止めだ」

「足止め?」

 

どういう意味だ?という風に聞こえた言葉に対して、コクリと頷いて答えてみせる

 

「あの時のアカデミアの作戦は、僕の考える限りこうだ……一般のアカデミア兵を絶えず戦線に送ることによるレジスタンスの足止め、そしてオベリクスフォースの団体で未知数であるサウザンド・フェイス…つまり僕も足止めし、その隙にユーリが瑠璃を拉致する」

 

僕の中での想像上の…でも多分大当たりな作戦を聞いて、砕羽はポカンとした顔になる。そして言葉の意味を飲み込むと、かぶりを振ってあり得ないといった感じに否定をするが、少し考え込むと眉間にしわを寄せて難しそうな表情を見せる

 

「いや、プロフェッサーの命令ならばあるいは…」

「そうじゃなくても、ただのアカデミア兵たちには本当の作戦を伝えなければ、そいつらの中ではただの掃討作戦になる」

 

オベフォの奴らは作戦を知っていたけどな

 

さて、これだけ長々と説明をしたんだ。答え合わせといこうか

 

「いいか?瑠璃を攫った時の作戦は、僕がどれだけ強いかを向こうが把握してないと成立しない。ただのアカデミア兵ならすぐに倒せる自信がある。それじゃあ一体…誰を使ってその実力を測った?」

「あっ」

「ッ!!」

 

瑠璃も、砕羽も、2人とも気づく。アカデミアの障害足り得る人物と、拉致計画の最も近い前日にデュエルを行ったアカデミアの決闘者(デュエリスト)

 

「…紫雲院、素良」

「ビンゴ」

 

呟いた砕羽に、正解だと指を立てて伝える

 

「そこまで分かれば、なんで紫雲院が偵察として不適切なのかも、察しがつくんじゃないか?」

「ああ。お前は紫雲院と会ったことがあって、その正体も知っている。もし紫雲院が潜伏先の次元で白星に見つかったら、間違いなくお前に警戒されてしまう…この場合は白星のことを知りつつ、白星が知らない奴を選ぶ方が良い」

「そんで何故紫雲院を選んだか。アカデミアが考えなしに選出するようなアホな連中だったと切り捨てるのは簡単だが、そうじゃなかったら?もし紫雲院を見つけさせ、そっちに注目させるのに意味があるとすれば……」

「ーー紫雲院素良はブラフで囮。本命は紫雲院とは別に送り込んだ奴」

「そういうことだ」

 

なんだかんだ軍隊のような教育施設で優秀ゆえにオベフォに選ばれただけあって、判断材料を用意させれば容易に結論に導いてくれた。瑠璃も頭の回転が速くて、僕と砕羽の話を苦なく理解している様子だ……お前らホントに遊矢たちと同じ中学生?いや、赤馬みたいな高校生がいる時点で愚問だったな

 

「とりあえず当面の目的は、赤馬社長はペンデュラムカードの解析と製作に夢中だから、それらの報告を待つ。それまでに砕羽は舞網チャンピオンシップに向けての出場資格を取得しておけ、って既に持ってたか?」

「いや、真澄たちとデュエルはする時があるが、最初の一戦を除けばどれも公式戦じゃないし、3人だけじゃ6連勝も成立しないからな」

 

腰の横にあるデュエルディスクの入ったホルダーを撫でながらそう言う

 

この半年、LDSに赴く際に時々アカデミアの情報を整理するために砕羽を連れて行くことがよくあったのだが、最初に光津から繋がっていったのか刀堂や志島とデュエルするようにもなり、今は名前で呼び合う程度には仲良くなっている。この間僕のことで3人から延々と愚痴を聞かされた、などとボヤいていたのは記憶に新しい

 

ちなみに勝率は光津、刀堂、志島の順で5:3:2とのことだ。「ジェムナイト」は互いに融合を精通しているだけあって勝率は五分五分。「X(エックス)−セイバー」はシンクロがまだ詳しくないのとソリティアのよる物量、先行ハンデスで「融合」カードを処理されて抵抗虚しくも負け、というので3割ほどらしい。そして「セイクリッド」に関しては…まだエクシーズに馴染みきれてない当初、「プレアデス」や「トレミス」にバウンスされまくって何度も負けたらしい。しかしエクシーズを使っているうちに「片方のレベルをずらせばエクシーズ召喚を防げる」ということに気づいて、僕が提供した「妖怪のいたずら」のおかげで最近かなり勝ち星を取り戻したとのことだ

 

「ま、LDSで試合をセッティングしまくれば大丈夫か」

「風斗はどうする気なの?」

「僕プロでは負けなしだから余裕で条件満たしてるし。そうじゃなくても他の塾に道場破りでも仕掛ければ」

「やめろ」

「やめて」

 

かなり切迫した顔で腕を掴んできた。痛い痛い。2人とも普通に握力強いんだからやめて

 

「紫雲院も僕のことは見て見ざるふりをしなければいけない。少なくともあいつは隠密のつもりで来てるだろうからな。だから2人とも、できるだけ紫雲院は刺激しない方向でいいな?」

「ええ、分かったわ」

「もしあいつが何か仕掛けてきたら?」

「その時は僕がもっぺんぶちのめすさ。だから安心しろ」

 

よし、これで違和感なくもう1人のスパイ…デニス・マックフィールドの存在を示唆することができた。あとは今の説明をだしに赤馬からLDS全塾生のリストをもらって、さりげなくデニスの情報を瑠璃に見せて怪しませれば完璧。ネズミは炙り出すのみ

 

邪悪に上がった口角を見られないように隠しながら、僕はあることを考えていた。エクシーズ次元のことを任せてきた、仲間たちのことを

 

(黒咲たち、もう既にこの次元に来てるのかねえ)

 

 

 

 

 

 

 

陽が沈みかけた、オレンジが空を支配する夕刻。舞網市の暗い裏路地で、LDSの塾生が1人の男にデュエルを仕掛けれられ……なす術もなく追い詰められていた

 

「う…うぅ……!」

 

襲撃者は長いコートを着、赤いスカーフのようなものを首に巻いて口元を隠し、サングラスで顔を隠す…有り体に言って不審者のような容姿をしていた。だがこの男こそまさに、白星風斗が信頼していると言える黒咲瑠璃の兄、黒咲隼であった

 

黒咲の後ろには、青銅のような深い青の金属でできた隼がいた。敵を切り裂かんとばかりの刃が羽根のように翼、尾の先から伸びており、そして全長と同じ長さの剣が尾から顔に向かって、胸元に添えるように装着されていた。その周りを旋回している2つのORU(オーバーレイユニット)の球こそが、そのモンスターがエクシーズモンスターであることを証明していた

 

その周囲には3体の機械めいた見た目の猛禽類である「バニシング・レイニアス」が、己のパーソナルカラーであるメタリックグリーンの輝きを反射させながら威嚇していた

 

「所詮この程度か……いけ!!」

 

黒咲隼の言葉とともに刃の翼を持った隼がその鋭利な鉄翼に、巨大な刀剣を紅蓮の炎を纏わせながら低空飛行で相手モンスターを攻撃する。熱風の衝撃にその身を焼かれ「磁石の戦士γ(マグネット・ウォリアー・ガンマ)」は破壊された

 

そしてその攻撃の余波は他のモンスターにも及び、残りの2体であった「磁石の戦士β(マグネット・ウォリアー・ベータ)」と「磁石の戦士α(マグネット・ウォリアー・アルファ)」も火炎旋風によって爆散した。たった1度の攻撃で自軍のモンスターが全滅した事実は、男にとって膝を折らせるのに十分過ぎることであった

 

「そ、そんな…!」

「3体の「バニシング・レイニアス」でダイレクトアタック!」

 

後ろで待機していた残りの猛禽たちは甲高い声を上げながら一方向に突進し、男にトドメを刺した

 

「うわぁぁーーーー!!」

 

実体化した映像投影(ソリッドビジョン)の衝撃に吹き飛ばされダメージを負ったことにより、男の意識はそこで途絶えた。モンスターが消え、倒れて動かなくなった男に近づいて黒咲はデュエルディスクを構え…そこで自分がいつもの戦場と同じように相手をカード化しようとしていたことに気づく

 

約半年ほど前、黒咲が所属しているレジスタンスからある男が手紙を置いて消えた。その男はお世辞にも意志も強さも感じさせるような者とは思えず…だが、デュエルにかける思いと情熱だけは誰よりも負けないであろう熱い決闘者(デュエリスト)であった

 

その男が残した手紙に書かれていた、「関係ない者までカードにするな。瑠璃が悲しむ」という一節を思い出す。この男を襲ったのは、LDSの頂点である赤馬零児を誘き寄せるためである。そして、黒咲が探している男との関係性を確認するため……だが、そのためにカードにする必要は果たしてあるのか?

 

「……チッ」

 

苛立つように舌打ちをすると、ディスクの操作を止めて身を翻す。負けた者に用はないと背を向けながら、黒咲隼はその場を後にする

 

そして裏路地から見えた街並みに映し出された映像投影(ソリッドビジョン)の映像から、それは聞こえてきた

 

『これから貴方方に魅せていきましょう!未知のデュエルを……新世界の(新しい)デュエルを!!』

 

聞こえてきたのは、ここ半年で無敗の伝説を打ち立て最高峰の決闘者(デュエリスト)として崇め立てられている“千顔”の異名を持つ男。まるで機械で押し込められたかのような声…だが、黒咲は知っているのだ。この男の姿も、サウザンド・フェイスという異名も、多くのデッキを使いこなすタクティクスも

 

間違いなくあの男はこの次元にいるのだろう。そしてそれは、自身の大切な妹を、黒咲瑠璃を救ってくれたという事実と同意なのだ

 

それでも、黒咲は許すことができない。拳を強く握り締め、サングラス越しに怒りの視線を映像に映った仮面の決闘者(デュエリスト)に向ける

 

「白星……お前は必ず俺が見つけ出す…!!」

 

感謝と憤怒が綯い交ぜになった複雑な気持ちを胸に抱いたまま、黒咲隼は舞網市の闇の中に消えていった

 

レジスタンスから去った友、白星風斗のことを思い浮かべながら




最後に現れた不審者さん!しかしその様子はあまりに重く暗い。一体何があったのだろうか……

さて、今回の話の予告詐欺のことについてとりあえず言い訳させてもらいます。実は書いてる途中に気づいたのですが、今回の話の段階で砕羽の正体を素良にバラすと何だか説教臭い決意めいた話から重い雰囲気になってしまうと思ったのですよね。少なくとも最初のARC-Vは苦難がありつつも楽しい雰囲気全開でしたから。それを大事にしたいと思った結果、砕羽VS素良のデュエルは先に見送りとなりました。…ん?いつデュエルするかって?いずれ分かるさ、いずれな……

とにかく、前回の予告詐欺。不快に思った方は誠に申し訳ございませんでした。これからも面白い話を書けるよう頑張りますので、どうか温かい目で見守っていてください

あと榊家で出てきた猫の名前ですが、適当に単位から拾って勝手に名付けました。白猫のミリはmm(ミリメートル)のミリからです。シャノンはどっから取ったか忘れました



それでは次回予告!

遊矢への報復を企てていた沢渡。それを察して止めるべく立ちはだかった柚子の前に現れたのは、1人の謎の男であった

「ちょうど良い。テメェには、このネオ沢渡の新しいデッキの試運転に付き合ってもらうぜ!」
「もう、俺は…誰も傷つくところを見たくない…!!」
「あなた……遊矢…?」

面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語
第33話 「反逆の黒竜」
お楽しみは、これまでだ!
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