面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC-V物語   作:ジャギィ

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5ヶ月間、お待たせして、申し訳ございませんでしたッッッ!!!!

言い訳させてもらえれば、この小説を書くのにチョイと疲れてしまったのです。あと初めての0評価をもらってとてもヘコみました。知ってる人だっただけにすごくショックでした

でもそれも糧にして頑張って書いていくところです。これからもよろしくお願いいたします

そんじゃ少し立ち直ったところで、ダークシンクロな第36話ドーゾ!

※26話「越えるべき壁」の志島北斗とのデュエル内容を大幅に変更しました。主にファンサービス方面に。そちらも読んでいただければ幸いです


風斗VS赤馬 その名もダークシンクロ!!

どうやら、間に合ったみたいだ。僕はコートを脱いで腰に巻きながら、赤馬日美香を見つつそう思った

 

…実は今、必死に表情を抑えています。正直赤馬母のこの独特過ぎる髪型は、厚化粧との相乗効果も合わせて、直に見るとかなり腹筋に悪い。写真越しでも何回も笑ったんだから。プフ…イカン、堪えろ僕…!社長がいるんだから抑えろ……!

 

『ハゲ』

「…ブッゥゥゥ……ッ!!」

 

黒星の一言により、脳内で赤馬日美香の隣にプロフェッサーこと赤馬零王が現れ、口元があっさり決壊してしまった。でも口を押さえたからまだセーフ!

 

でも他の人は不審がるわけで、案の定社長は不思議そうな顔をして話しかけてきた

 

「…どうした白星?」

「ゲホッ!オッホ!いやゴメン、ちょっと変な咳が出たみたい」

「そうか。体調管理は怠らないよう気をつけた方がいい」

 

うん、ホントゴメン。本当はキミのお父さんとお母さんの独特な外見に笑っていたのですとは、本人(赤馬母)もいる手前言えるわけがなかった。黒星、お前後で覚えてろよ

 

「…初めまして、零児さんの母、赤馬日美香です。LDSの理事長を務めておりますわ。あなたが、零児さんが話していたサウ」

「MA☆TTE!ストップです赤馬理事長!」

 

ご丁寧な挨拶とともにとんでもないことを暴露しかけそうだったので、手を前に出してストップのサインを出す。それを聞いて、赤馬親子と砕羽、瑠璃を除いた周囲の人たちは僕の急な制止に疑問符を浮かべ、赤馬母は何か勝ち誇ったかのように含み笑いをする。なんか腹立つなオイ

 

僅かに抱いた怒りを抑えながら、スマホを取り出しメモ帳を開いて文章を入力し、赤馬母にだけ見えるように見せる。文章の内容は「僕の正体をバラさないのも契約の1つですから黙っていてください」というもの。それを見て、なぜか不審そうなものを見る目で一睨みしてから理事長殿は口を閉ざした。危なかった

 

「風斗、その人は一体誰なんだ?」

「君が榊遊矢か。君のことは……白星からよく聞かせてもらっている」

 

赤馬と認識がない遊矢がそう問いかける。答えたのは僕ではなく、当事者である社長だった。なんか妙に間が空いてたけどなんでだ?

 

「私の名は赤馬零児、レオ・コーポレーションの社長だ」

「「「えええええ!!?」」」

 

赤馬社長の自己紹介を聞いて、瑠璃、砕羽などの事情を知っている人物を除いて遊勝塾関係者全員が驚愕の声を上げた。あ、紫雲院は耳を抑えて鬱陶しそうな顔してる

 

「レオ・コーポレーションの社長ってことは……」

「まさか、遊勝塾乗っ取りを企てた者が直接ここに来たということか!」

「赤馬零児!遊勝塾は父さんが頑張って作った場所なんだ!お前なんかに渡さないぞ!」

 

赤馬がLDSのボスだと聞いて勘違いを起こした遊矢たちが、決意の表情で赤馬の前に立ち塞がる。…まあ、事情が分からなければ、赤馬が何かを企んで来たとした思わんだろうな

 

「君たちは勘違いをしている。私は遊勝塾を乗っ取るつもりなどまったくもってない」

「え…?」

 

赤馬に対して、あまり敵意がなかった柚子や鮎川などの温厚派はキョトンとした顔をなるが、遊矢、権現坂、原田は敵意がむしろ増した

 

「そんなわけあるか!俺たちはさっきまで、遊勝塾を賭けてデュエルをしていたんだ!騙されるか!」

 

うーん、若干感情で喋ってるとこもあるが、遊矢の気持ちが分からないでもない。自分がこれまで暮らしていた場所を急に奪うというようなことをしてきた相手の親玉みたいなものなのだから、ごもっともな反応である

 

しかし赤馬はあくまで余裕の態度を崩さず、メガネのブリッジを抑えて言葉を紡ぐ

 

「言葉で君たちの信用を得ることはできないか。ならばデュエルだ。榊遊矢、私が遊勝塾ではなく君自身に用があるということを、私と白星のデュエルという行動で信じてもらおうか」

 

はいはい、デュエル脳デュエルの……え?

 

「あれ、赤馬?なんか僕の名前が出て…あれ?」

「俺に用が…?」

「そうだ。ペンデュラム召喚、ひいてはそれを生み出した君に私は強い興味を抱いている。そんな君に伝えるべきことを、これから行うデュエルで伝えようではないか」

「おーい、無視すんな、おい」

「本当に、遊勝塾に手は出さないんだな?」

「レオ・コーポレーションの社長として、君が提示した契約に従おう」

「オイ、当事者抜きで勝手に話進めんなコラ」

 

この不当な扱いには流石の僕もキレた。静かにキレた。これで僕が関係なかったから黙って見ているつもりだったが、勝手に巻き込んで勝手に話を進めたんだから、これぐらいの抗議は許されるべきだ

 

一通り話終わったのか、僕の方は顔を向ける赤馬

 

「移動の際に説明はしたはずだ。「これから向かう遊勝塾で私はデュエルを行う」と」

「「白星と」って部分が故意に抜けてるよなぁ!?」

 

必死に抵抗しても、しれっとした顔で赤馬は言葉を返してくる

 

「何、以前君が、私とのデュエルは本気で掛からねばと呟いていたからな。たまには気兼ねなくデュエルする機会も必要だと思い、サプライズも兼ねた私から君への労いだと思って、受け取ってほしい」

「公私混同してると思うんですがそれは」

 

できれば前以て言ってほしかったんだけど、何このファンサービス。いらねーよこんなサプライズとは名ばかりの接待デュエルの機会なんざ

 

そんな僕の心境など知る由もなく、赤馬は母親の説得を行なっていた

 

「そういうことです、母様。あなたが何を危惧して遊勝塾を取り込もうとしたのかは理解できますが、今回は引いてもらいたい」

「零児さん…!しかし……」

ここ(遊勝塾)は白星が大切にしている場所です。そこを土足で踏み荒らし彼を怒らせれば、計画に支障が出るほどの損害も十分あり得る」

 

説得は有難いんだが、その言い方はどうなんだ社長?まるで僕がキレたら手がつけられない、クレイジーモンスターみたいな言い方じゃん

 

「……あぁ…それはなんとなく分かる…」

「怒らせた風斗、情け容赦なんてないし…」

「白星なら、LDSすらも半壊させてきそうな気がするよ…」

「散々ひどい目に遭わされたものね、北斗は」

 

遊矢、柚子、志島、光津の順で、僕の人物像を邪悪に仕立て上げていく。本人目の前で言いたい放題言ってくれるなこのガキども。しかもお前らさっきまで敵同士だったよね?苛烈なデュエル繰り広げてたよね?なんでそんなに息ぴったりなの。仲良しか!

 

そんなこんな思いながらも改めて赤馬親子の様子を見てみると、赤馬母は息子の弁論に黙りこくっているご様子。あの、どうして押し黙ってるのですか?もしかして、さっきの脅しとも言える説得が効いているとでも?ハハハ、ワロス

 

………チクショウめぇ

 

「母様、あなたが危惧している問題はすでに解決の目処が立っています。問題はありません」

「ッ…!ということは、零児さん…!」

「それを、今回のデュエルで証明してみせましょう」

 

顔を上げる赤馬母。そして母に背を向けて、赤馬はデュエルコートにまで歩を進める…と、こちらへと視線を向けてきた。アメジストのように淡い紫の瞳が、僕に“ついて来い”と告げていた

 

「……はいはい。今行きますよっと」

 

コートを脱いで、それを簡素な腰巻きにする。カバンをベンチに置いて、中から無数にあるデッキのうち1つを取り出す。デッキケースのカードをデッキ、エクストラデッキにセッティングしながら遊勝塾のデュエルコートへと僕は歩いた

 

デュエルコート内で僕の目の前…デュエル相手がいる場所で、威圧感マシマシの赤馬零児が仁王立ちしていた。社長のプレッシャーマジパネェ

 

「気兼ねなくってことは、召喚法の縛りとか制限とか無しでいいってことだな?」

「その通りだ。気兼ねなく、君のやりたいデュエルを存分に行うと良い」

 

ならペンデュラム使っていい?…なんて口が裂けても言えるわけがないわけで。ペンデュラムが使えれば作ってるデッキの3割くらいは解放されるんだけど、それは欲張りというものだろう

 

「じゃ、今回はちょっと特別なシンクロを使うとするか」

「ほう…やはりまだ隠し球は残っていたということか。デッキ融合、そして特殊なエクシーズ召喚…今回はシンクロの先を見ることができるわけか」

 

んー、どちらかというとアクセルシンクロやダブルチューニングとは違うんだけどな。進化というより、別系統といったところか

 

「ま、退屈はさせないさ。……そんじゃあ、世紀のデモンストレーションといこうか!塾長ー!フィールド張ってくれ!」

『ああ、分かった!…とはいえ風斗はこれといって得意なアクションフィールドがないしなぁ。ならここは、遊勝塾らしいフィールドを選ぼう!アクションフィールド、オン!フィールド魔法「アスレチック・サーカス」発動!』

 

決意して修造さんが発動したアクションフィールドが景色を塗り替える。一昔前のサーカスみたいな巨大なテントの内装に変わり、トランポリン、空中ブランコ、玉乗り用のボールが次々に構築されていく

 

ようやく完成したフィールドを見て、僕はちょっと苦笑いしてしまう

 

「あー、こういうフィールドかー……なんともまあ、今からデュエルするには似つかわしくないというかなんというか」

『バリバリ悪役のデッキだもんな今』

 

内なる声に同意する。急に選ばれたことへの仕返しというか報復というか、今からやるデュエルで使うデッキはヒール感満載なデッキなのだ。あと社長にファンサービスしてやるためでもある。今からでも遊矢に変わろっかな?でも社長が許すとも思えんしなぁ

 

そんなことを呑気に考えていると、赤馬がメガネの位置を整えながら話しかけてきた

 

「白星、君は先攻と後攻、どちらがいい」

「うん?僕が決めてもいいのか?」

 

赤馬から降ってきた話題は、先攻後攻決定権に関することだった。確かにこのデュエルはいわゆるデモンストレーション、だから先攻後攻の有利なんて赤馬からすれば不必要なのかもしれないが……

 

「以前の君とのデュエルでは、私が決定権を譲ってもらった。それに対する礼だと思ってもらえばいい」

「ふーむ、そうかい」

 

そう言って軽く返す…と、赤馬は重圧な威圧を放ち僕と目を合わせる

 

「……そして君には、私が受けた敗北も受け取ってもらうつもりだ」

「ちょっ」

 

止めてもすでに遅し。赤馬の言葉に、ガラスの向こうでLDS主席3人が動揺した様子を見せて、遊矢たちが何事かと聞いている姿が見れた。赤馬母は眉間にしわを寄せてはいるものの、取り乱してはいなかった

 

「……おい、なんであいつらに余計なことを教えた」

「私はただリベンジを宣告させてもらっただけなのだがな…少し軽率だったか」

「前から思ってたけど、お前私情挟みすぎじゃね?」

 

そう言わずにはいられなかった

 

だって…ねえ?今回のこともそうだし、アニメでも遊矢を試すみたいにやらなくても良かったデュエルをしたり、シンクロ次元でも自分の弟がある相手とのデュエルをしたくない理由を聞けばすぐに代役を立てるし、何か非情になりきれないってイメージがわくんだよなぁ

 

『それより、先攻後攻はどうするんだ?』

 

ーーぉっとぉ、話が脱線してしまった。黒星に言われて、僕は思考を目の前の赤馬に戻して答えを言う

 

「あーっと先攻か後攻だが、今回も後攻でやらせてもらう」

 

1枚ドロー欲しいし

 

「フム、いいだろう。では始めようか」

「そうだな」

 

空中でアクションカードが弾け飛ぶ

 

「戦いの殿堂に集いし決闘者(デュエリスト)たちが!」

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ!これぞデュエルの最強進化形!」

 

そして、アクションデュエル開始の口上を遊矢、志島、柚子、光津が順に述べていった。お前らホントにその連帯感はなんなんだ

 

「「「アクショ〜ン……」」」

 

口上の終わりと共に、デュエル開始の宣言を叫んだ

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 5枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 5枚

 

 

「先攻は君の望み通り私だ。君を相手に、出し惜しみする気はないと宣言しておこう」

 

赤馬は手札のカードを流し目で見ると、そう呟いた。そして、あいつは初っ端からソリティアを始めた

 

「私は最初に「地獄門の契約書」を発動」

「やっぱそれか!」

「その効果は君も知っているはずだ。私のスタンバイフェイズ毎に1000ポイントのダメージを私は食らうことになるが、その代償を受け入れることで1ターンに1度、デッキからレベル4以下の「DD」モンスターを手札に加えることができる。この効果でデッキのレベル4「DDケルベロス」を手札に加える」

 

予想通りというかなんというか、使用したのは毎ターン1度のサーチを可能にする悪魔の永続魔法。当然のように初手から「地獄門」を発動してきて、積み込みでもしてるんじゃないかと思わんばかりだ。そして手札に加えたのはただの効果モンスターである「DDケルベロス」。僕の知る「DD」ならば、間違いなくここは「ケプラー」をサーチする場面である。少なくとも僕ならそうする

 

…どうやらまだ「ケプラー」や「ガリレイ」とかくらいしか、ペンデュラム製造の目処は立っていないみたいだ。情報アドはありがたいのだが、反面どんな回し方をしてくるのかが未知だから、少し不安でもある

 

「さらにもう1枚「地獄門の契約書」を発動。効果で「DDナイト・ハウリング」を手札に加える」

 

2枚目の「地獄門」でサーチしてきたのはチューナーモンスターの「ナイト・ハウリング」。出し惜しみしないっつってたが…もしかしてあいつ

 

「そして永続魔法「魔神王の契約書」を発動。デメリットは「地獄門の契約書」と同じであり、その効果で手札の「DDケルベロス」と「DDリリス」で融合召喚を行う」

「融合召喚!?赤馬零児は融合使いなのか!?」

 

発動された「魔神王」の効果に反応したのは観戦していた遊矢たち。僕と赤馬のデュエルを見たことがある砕羽と中島さん、事情を知ってる瑠璃、そして息子のデッキを知っていたのか赤馬母だけが赤馬の行動に驚かないでいた

 

2つ首の荒々しい見た目の番犬と崩れた花弁の花を擬人化させたような風貌の悪魔が、渦の中でかき混ぜられ、1つになる

 

「牙向く地獄の番犬よ!闇夜にいざなう妖婦よ!今1つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ!「DDD烈火王テムジン」!!」

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

 

地獄の業火が如き長剣を手に姿を現したのは、召喚のしやすさと簡易な蘇生効果を特徴とする「DDD」の融合モンスター。微妙に低い2000の攻撃力も、この世界のルールを考えればむしろ高いんじゃないかとさえ思えるほどだ。元の世界でも十分高いけど

 

「次に私は、チューナーモンスター「DDナイト・ハウリング」を召喚する」

 

空間に口と目だけが現出しているデザインのチューナーモンスターを赤馬が召喚する

 

DDナイト・ハウリング チューナー

レベル3 ATK300

 

「チューナー!?」

 

召喚されたモンスターがそんなに意外だったのか、柚子の驚いた声が聞こえる。遊勝塾でも1つのデッキに1つの召喚法しか使わなかったし、砕羽のデッキだって融合、エクシーズの複合型でも軸は融合だ。ゆえに、すぐに別の召喚法を行使する赤馬の「DD」が遊矢たちには異質に見えたのだろう

 

「「DDナイト・ハウリング」が召喚に成功した時、効果で墓地の「DDリリス」を攻守を0にし、特殊召喚」

 

DDリリス

レベル4 DEF 0

 

「私はレベル4の「DDリリス」に、レベル3の「DDナイト・ハウリング」をチューニング!」

 

異形の悪魔が夜の遠吠えをあげる。広がる音響と共に「ナイト・ハウリング」が3つのリングになり、力を失って蘇った妖婦の悪魔がその中央を通過し、4つ星の光に変わる

 

「闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!「DDD疾風王アレクサンダー」!!」

 

DDD疾風王アレクサンダー

レベル7 ATK2500

 

包まれた光の柱から吹き荒れる風の如く飛び出てきた、「疾風王」の名を冠する白い鎧を纏ったシンクロモンスター。「テムジン」と同じく同胞(「DD」)の特殊召喚に反応して「DD」の蘇生を可能とし…確かアニメ版ではモンスターに対する連続攻撃も可能だったはず。対面したのが半年前かつアニメ効果だから記憶が曖昧だな

 

「「テムジン」の効果。私の場に「DD」モンスターが特殊召喚された時、墓地の「DD」1体を特殊召喚できる。私は「DDリリス」を再度蘇生させる。さらに「リリス」が特殊召喚したことにより「アレクサンダー」のモンスター効果が発動、墓地の「ケルベロス」を特殊召喚する」

 

DDリリス

レベル4 DEF2100

DDケルベロス

レベル4 ATK1800

 

瞬く間に「DDD」たちによって出揃う、同じレベルの「DD」モンスター

 

「同じレベルのモンスターが2体…まさか!」

 

そのまさかなんだよなぁ遊矢

 

『レベル4の「DD」が2体……』

「言われるまでもなく分かってるっての」

「………私はレベル4の「DDケルベロス」と「DDリリス」でオーバーレイ!」

 

数秒無言になったあと、エクシーズ召喚を開始する赤馬。鮮やかな紫の小さな球体へと2体のモンスターが変化し、明るいアクションフィールドにはマッチしない荘厳な宇宙に飛び込んでいく

 

「この世の全てを統べるため、今、世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!「DDD怒涛王シーザー」!!」

 

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

大地が、荒ぶる王が降り立つことで揺れる。全ての支配を望む王は黒曜石のような漆黒の大剣を肩に乗せ、その黄色い眼光で周囲を見定める

 

「初っ端から融合、シンクロ、エクシーズとか、ずいぶん豪勢だなオイ。胃もたれしちまいそうだよ」

「その割にはあまり動じた様子ではないな。この布陣をも、君は覆すことができるというのか?」

 

デッキによっちゃ8000ライフでも後攻ワンキルが余裕だな。もっとも、向こうじゃロクに通用しなかったデッキがまともにデュエルできる世界なんだから、そんなジャンケンゲーとかする気はないけど

 

「…ならば、この盤面を覆してみるといい。私はカードを1枚伏せてターンを終了する」

 

 

白星 風斗 LP4000 手札 5枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 0枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD疾風王アレクサンダー

レベル7 ATK2500

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 2

 

地獄門の契約書

地獄門の契約書

魔神王の契約書

 

伏せカード 1枚

 

 

うーむ、怒涛の展開。一応予想くらいはしていたとはいえ、さすがに初ターンから来るのは想定外でした。しかもあのセットカード、絶対「契約洗浄(リース・ロンダリング)」だよ。アフターケアまで万全とかどういうことなの…

 

「僕のターン、ドロー!」

 

まあ、展開力という意味ではある意味「DD」以上のこのデッキならば充分過ぎるだろう。…思いっきりネタ構築だけれど

 

「手札のレベル10闇属性モンスターである「ナイトメア・ハンド」を墓地に送ることで、手札の「ダーク・グレファー」は特殊召喚することができる」

 

このデッキの中核であるカードを墓地に送りつつ、闇属性の墓地肥やしに最適な「ダーク・グレファー」を僕は特殊召喚した。常人ではあり得ぬ黒々とした筋肉質な肉体を持つ戦士が、静かに剣を握る

 

ダーク・グレファー

レベル4 ATK1700

 

「手札の「インフェルニティ・デーモン」をコストに「ダーク・グレファー」のモンスター効果!デッキの「インフェルニティ・ネクロマンサー」を墓地に!そしてカードを1枚伏せてから「手札抹殺」を発動!僕の残り手札は1枚。こいつを捨てて1枚ドロー」

「私の手札は0、よって「手札抹殺」の効果は適用されない」

 

デッキから引いたカードはモンスターカード「インフェルニティ・ビートル」。シンクロ要素を残すために入れてたカードをここで引くとは…欲を言えば「デーモン」が引きたかったですけどね

 

「…まあ、別にいっか。僕はさっき伏せた「ソウル・チャージ」を発動!これにより僕は「DT(ダークチューナー)ナイトメア・ハンド」と「インフェルニティ・ネクロマンサー」を蘇生し、その数×1000ライフを失う」

 

僕の体から緑色の球体が2つ現れ、それが死者の居場所へと続く穴に入る。2体のモンスターが緑光を淡く発しながら蘇る

 

違うものを無理矢理付け替えたかのようにアンバランスな細い腕脚と手袋とブーツめいた手足、角のようにせり上がった肩の先端は炎の色合いをしていて、首と顔のない頭部と思わしき部位から魔法陣が不気味に眩く。その背後では骸骨の死霊使いが静かに佇んでいた

 

白星 風斗 LP2000 手札 1枚

 

DT(ダークチューナー)ナイトメア・ハンド ダークチューナー

レベル10 DEF 0

インフェルニティ・ネクロマンサー

レベル3 DEF2000

 

赤馬はフィールドに召喚された「ナイトメア・ハンド」を見て、ポツリと漏らす

 

「ダークチューナー、だと?」

「そうだ。この世界にはあるんだよ。強大な力によって闇に染まった、闇のシンクロ召喚が!「ナイトメア・ハンド」の特殊召喚時効果で、手札のレベル2チューナー「インフェルニティ・ビートル」を特殊召喚!」

 

小刻みに聞こえる羽音を鳴らしながら、小型で深緑に染まったヘラクレスカブトが登場した。小型って言っても、普通に猫くらいのサイズはある

 

インフェルニティ・ビートル チューナー

レベル2 ATK1200

 

「さらにチューナーか。しかしこれで君の手札は0、一体どうするつもりかね」

「なぁに、コンボはすでに完成している。「ネクロマンサー」のモンスター効果!自分の手札が0の時、墓地の「インフェルニティ」モンスター1体を特殊召喚できる!「インフェルニティ・デーモン」を特殊召喚!」

 

インフェルニティ・デーモン

レベル4 ATK1800

 

「手札が0の時に「インフェルニティ・デーモン」が特殊召喚に成功した時、デッキから「インフェルニティ」と名のついたカード1枚を手札に加えることができる。永続魔法「インフェルニティ・ガン」を手札に加え、発動!」

「また手札を0に…なるほど、コンボが完成していたとはこういうことか」

「そう!手札がない時に真価を発揮するハンドレスコンボ、その力をとくと味わえ!レベル3の「インフェルニティ・ネクロマンサー」、レベル4の「インフェルニティ・デーモン」に、レベル2の「インフェルニティ・ビートル」をチューニング!」

 

「ビートル」が羽のスピードを早めると光り出し2つの輪を作る。宙に浮いた「ネクロマンサー」と「デーモン」がその中に入り、3つと4つの星に変容する

 

「破壊神より放たれし聖なる槍よ!今こそ魔の都を貫け!」

 

背後に現れた巨大な魔法陣から、凄まじい冷気とともにそいつは出てきた

 

このデュエル中に出てきたモンスターの中でも一際大きな体躯。影に光が通った時、透き通るような白が反射する。青い肉体の上から鎧のような白銀の甲殻を纏い、殺意を乗せた黄色い眼光が3体の王を射抜く

 

「シンクロ召喚!現れろレベル9!「氷結界の龍 トリシューラ」!!」

 

そして吹き荒れる吹雪の中で3つの首が揺れ、「トリシューラ」は凍てつく咆哮を放った

 

氷結界の龍 トリシューラ

レベル9 ATK2700

 

「いきなりレベル9のシンクロモンスターか」

「シンクロ召喚に成功した「トリシューラ」のモンスター効果!相手の手札、場、墓地のカードを1枚ずつ選択し、それらをゲームから除外する!」

「何!」

「更にこの効果は対象に取る効果ではない。さあどうする、赤馬社長よ」

 

一瞬沈黙する赤馬だが、すぐに考え込み結論を出した。答えを出すのも一瞬だった

 

「私は「怒涛王シーザー」のORU(オーバーレイユニット)を1つ使い効果発動。発動するカードは?」

「ない。だからご自由にどうぞ」

「では、更に罠カード「契約洗浄(リース・ロンダリング)」を発動。「契約洗浄(リース・ロンダリング)」の効果をより3枚の「契約書」カードの効果を無効にする。そしてこのターンのエンドフェイズに「契約書」を破壊し、私は破壊したカードの数だけデッキからドローする。そして「シーザー」の効果が成立。このターン、私の「DD」モンスターはバトルフェイズに破壊され墓地に送られようと、バトル終了時にすべて蘇生される」

 

藍色のオーラが「シーザー」から他の「DDD」たちに伝播していく

 

正直ドローされてもそこまで脅威ってわけではない。厄介なのはモンスターを残して大量展開されて盤面を返されること。残してて厄介なモンスターは……

 

「そんじゃ、「トリシューラ」の効果だ!赤馬の手札は0だから、場の「疾風王アレクサンダー」、墓地の「DDリリス」を除外する!「トリニティ・ゼロ」!!」

 

3つ首のうち2つの頭が口に冷気を溜め、レーザー状に発射した。フィールドの「疾風王」、墓地から出てきた「DDリリス」を貫き、2枚のカードはゲームから除外された

 

「くっ」

「続けて「インフェルニティ・ガン」の効果を発動!手札0の時にフィールドのこのカードを墓地に送ることで、墓地の「インフェルニティ」モンスターを2体特殊召喚する!蘇れ!「デーモン」と「ネクロマンサー」!」

 

インフェルニティ・デーモン

レベル4 ATK1800

インフェルニティ・ネクロマンサー

レベル3 DEF2000

 

「手札0で「デーモン」が特殊召喚に成功した時効果発動!罠カード「インフェルニティ・バリア」を手札に加え伏せる!そして「ネクロマンサー」のモンスター効果で「インフェルニティ・ドワーフ」を特殊召喚!」

 

巨大な斧を手に持った、ヒゲを蓄えた二頭身のドワーフが現れた

 

インフェルニティ・ドワーフ

レベル2 DEF500

 

「…なるほど、「手札抹殺」の時か」

 

赤馬の言うように、今召喚した「ドワーフ」は手札が1枚だけの時に「手札抹殺」で捨てたカードだ。初手に引いた時はどうしようかと思ったが、ちょうど「手札抹殺」も引いてたから良かった

 

そして……準備は整った

 

「さあ、ショータイムだ!レベル2の「インフェルニティ・ドワーフ」に、レベル10のダークチューナー「ナイトメア・ハンド」を()()()()()()()()()!!!」

「「「ダークチューニング!?」」」

 

外野から遊矢たちの声が響く

 

「……!!?」

 

そして赤馬は、目の前で起きた現象に目を見開く

 

闇の瘴気のような球体に変化した「ナイトメア・ハンド」が「ドワーフ」を包み込む。暗い闇の中で悶え苦しむ「ドワーフ」の2つの(レベル)が「ナイトメア・ハンド」の10ある内の2つの(レベル)と衝突し……漆黒の雷を放ちながら8つの暗い星の周囲で旋回する

 

「これは……」

「ダークチューニングは本来のチューニングと違い、モンスターのレベルを足していくのではなくダークチューナーモンスターのレベル分、モンスターのレベルから引く」

 

本来ならレベル−8なんだけど、タッグフォース仕様だからレベル8なんだよねえコレ

 

「漆黒の(とばり)降りし時、冥府の瞳は開かれる……舞い降りろ闇よ!!」

 

8つの星の中心から穴が開き、闇が降り立つ

 

「ダークシンクロォ!!!」

 

それは、異形の竜。全身のあらゆる部位に閉じられた眼があり、その眼は次々と目覚めるように開かれていく。毒々しい紫の瞳が生物の本能を恐怖させるかのように蠢き、やがて胸にある1番大きな眼が開き、藍色の光を発する

 

「出でよ、レベル8!「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン」!!!」

 

闇より生まれ落ちた龍が、フィールドに降り立った

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

レベル8 ATK3000

 

「これが、ダークシンクロ召喚」

「「ソウル・チャージ」を使ったターンは攻撃できない。僕はこれでターンエンド」

ORU(オーバーレイユニット)を無意味に消費させてしまったか……この時、私が発動した「洗浄契約(リース・ロンダリング)」の効果により「契約書」カードを3枚破壊し、その数だけデッキからカードをドローする」

「改めて、ターンエンド」

 

 

白星 風斗 LP2000 手札 0枚

 

氷結界の龍 トリシューラ

レベル9 ATK2700

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

レベル8 ATK3000

インフェルニティ・デーモン

レベル4 ATK1800

インフェルニティ・ネクロマンサー

レベル3 DEF2000

 

伏せカード 1枚

VS

赤馬 零児 LP4000 手札 3枚

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 1

 

 

「私のターン、ドロー」

 

赤馬がカードをドローする

 

「ライフは赤馬零児の方がまだ有利だな」

「でも白星は1ターンで一気にライフを持っていくことが多いからな。油断は全然できないぞ」

「どちらにせよ、これで勝負はまだ分からなくなったわね」

 

光津の言うように、まだまだデュエルの行方は分からない。……でも、相手があの赤馬で手札が4枚もあることを考えれば、自ずと嫌な考えが浮かぶんだよなぁ

 

「私は3枚目の「地獄門の契約書」を発動」

「その「地獄門の契約書」に対して「インフェルニティ・バリア」を発動!僕の場に「インフェルニティ」モンスターがいて且つ手札が0の時、相手の魔法・罠・モンスター効果を無効にし、破壊する!」

「カウンター罠か……」

 

「地獄門」に対して即破壊を行う。場合によってはこれでさらに展開されるかもしれないからだ。できればトドメの後押しに使いたかったが、赤馬相手に出し惜しみは敗北に直結するため、僕は発動を踏み切った

 

「……君は実に多種多様のデッキを使う。そしてその中で君が好んで使うのはモンスターを大量展開し、物量で押し潰すデッキ。その場合、1枚でこちら側の展開、あるいは攻撃の初手を妨害することが多い」

「……?何が言いたいんだ?」

 

赤馬が口を開く。その様子が、テレビでスローモーションになったように映る

 

「君が、「地獄門の契約書」を止めてくるのは分かっていたということだ」

 

ゾワッ

 

その言葉に全身の鳥肌が立つ。まるでこれから起こる何かを警告しているような、そんな心の奥底の湧き上がる感情

 

そして赤馬は観客席…そこにいる遊矢に紫の眼光を突きつけて言い放つ

 

「榊遊矢よ、しかと見るがいい。ペンデュラム召喚がもはや、君だけのものではないということを!!」

「え……」

 

赤馬の言葉をイマイチ飲み込めないでいる遊矢。しかし僕には理解できた、こいつが今から何をしてくるのかを!

 

ゆえに僕はアクションカードを拾いに足を動かし

 

「ーーー私はスケール1の「DD魔導賢者ガリレイ」とスケール10の「DD魔導賢者ケプラー」で、ペンデュラムスケールをセッティング!!」

「なっ!?」

 

それは一体誰の驚きの声だったのか

 

赤馬のフィールドの両端に薄く青い光でできた柱が立ち、その中に「ガリレイ」と「ケプラー」が静かに佇む

 

 

赤馬 零児 LP4000 手札 1枚

 

(スケール1)DD魔導賢者ガリレイ

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 1

 

(スケール10)DD魔導賢者ケプラー

 

 

「我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて、闇を引き裂く新たな力となれ!…ペンデュラム召喚!出現せよ、私のモンスターよ!」

 

空の巨大な穴から流星のように現れたモンスターは、1体の超越神。全身が鏡のような物質で構築された多面体、それの一部が開き、中から死の王が無機質な目を赤く光らせる

 

「現れよ!地獄の重鎮「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」!!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

レベル8 ATK3000

 

ペンデュラム召喚により現れた「ヘル・アーマゲドン」がアクションフィールドの中央に陣取る。それを見ていた遊矢は、絞り出すように言った

 

「なんで、ペンデュラム召喚が…!」

「私たちはいつまでも足踏みをしているわけではないということだ。そうだな…」

 

顎に手を当てる赤馬

 

「私が敬意を払う1人の決闘者(デュエリスト)の言葉を借りるとすれば…「デュエルはまだまだ進化する」と言ったところだ」

「ッ!」

 

遊矢が何かを言おうとしたのをやめる。赤馬の言った言葉を僕は知っている…つーか自分で言っている。サウザンド・フェイスとしてプロデュエル界にデビューした時に言った言葉なのだから

 

そうか…あいつ、僕なんかを尊敬してたのか…へへへ

 

『気持ち悪い』

 

うっさい。原作の強キャラからこうやって褒められたら、そりゃ頰くらい緩むわ。顔のニヤケを誤魔化すためにアクションカードを凝視しながら拾う

 

拾ったのは「回避」。できれば戦闘ダメージだけを0にするカードが欲しかったところだが、あまり欲張りはダメだ

 

「…では、デュエルを再開しよう。私は「シーザー」で「氷結界の龍 トリシューラ」を攻撃!」

「え、「シーザー」の方が攻撃力が低いのに!?」

「この時「シーザー」の効果でORU(オーバーレイユニット)を1つ使い、このターンのバトルで破壊されたモンスターをバトル終了時に墓地から特殊召喚する」

 

「シーザー」の周りにあった最後のORU(オーバーレイユニット)が消えて、そのまま漆黒の大剣で3つ首の龍に斬りかかる

 

しかし攻撃力は「トリシューラ」の方が上だ。巨体からは想像もつかないスピードで攻撃してきた「シーザー」を3つの口で掴み、力を込めて噛み潰した

 

赤馬 零児 LP 3700 手札 0枚

 

チッ、ここでアクションカードを使ってはダメだ…!

 

「フィールドから墓地に送られた「シーザー」のモンスター効果を発動!「契約書」カードを1枚、デッキから手札に加える!」

 

サーチしたのは「戦乙女の契約書」。でもあいつの墓地には「ケルベロス」と「ナイト・ハウリング」が残っている。「テムジン」も残ってる以上、わざわざ残り少ないライフを削ってまで「シーザー」の効果を使って自爆特攻してきたのを考えれば……「ダルク」か!

 

「私のフィールドのモンスターが破壊された時、「ヘル・アーマゲドン」の効果発動!このターンの終わりまで、破壊されたモンスターの攻撃力分「ヘル・アーマゲドン」の攻撃力を上昇させる!」

「そんな!」

「「シーザー」の攻撃力は2400…つまり攻撃力が5400になる!」

 

消えた「シーザー」の青いオーラが死偉王を覆い、攻撃力を上昇させる

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

レベル8 ATK5400

 

「「DDD死偉王ヘル・アーマゲドン」で「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン」に攻撃!「ヘル・アルマゲドス!!」

 

「ヘル・アーマゲドン」は「ワンハンドレッド・アイ」に狙いを定め、光を反射させるようにレーザー光線を発射する。禍々しい巨龍すらも飲み込む膨大な光は

 

「アクションマジック「回避」を発動!「ヘル・アーマゲドン」の攻撃は防がせてもらう!」

 

「ワンハンドレッド・アイ」に命中する直前に不可視の壁によって遮られた。「回避」というより「防御」って感じだが、細かいことは考えない方がいいだろう

 

「攻撃を躱した!」

「しびれる〜〜〜!」

 

ギャラリーは今の攻防で一喜一憂しているが油断なんか全然できない。僕が赤馬の立場ならば、ここで間違いなく…

 

「さらに「DDD烈火王テムジン」で「トリシューラ」に再度攻撃!」

「また攻撃力の高い方に攻撃!?」

 

「テムジン」で自爆特攻する!

 

「烈火王」の名を冠する様を見せつけるように「テムジン」は一振りの剣に炎を纏わせ、「トリシューラ」めがけて接近する

 

だが「トリシューラ」は無慈悲に、無意味に悪魔を消すべく3つの口から絶対零度の息吹を吐いた。燃える炎は直撃した白い線から侵食する冷気に抗うこともできず、冷たい世界の中で「テムジン」は粉砕した

 

赤馬 零児 LP3000 手札 1枚

 

「何を狙ってるのだ、あやつは…」

「「テムジン」が戦闘または効果で破壊された時、墓地の「魔神王の契約書」を対象に効果発動!対象のカードを手札に戻す。そしてバトルフェイズ終了時、「シーザー」の効果によってバトル中に破壊された「シーザー」自身と「テムジン」を墓地から特殊召喚する」

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 0

 

「そして私は手札の「魔神王の契約書」を発動」

「でも、フィールドには「ヘル・アーマゲドン」「テムジン」「シーザー」みたいな上級モンスターしかいない。残りの手札だって罠カードだし……」

「あ!もしかして、さらに強力な融合モンスターを召喚はするために上級モンスターを融合素材にする気か!?」

「なるほど…長い間白星のデュエルを見続けているだけあって、観察眼は悪くないようだな」

 

遊矢の疑問に、赤馬は眼鏡のブリッジに中指を当てながら言う

 

「「魔神王の契約書」は墓地の「DD」モンスターをゲームから除外することで、融合素材とするができる」

「なっ、墓地融合もできるのか!?」

「私は墓地の「DDケルベロス」と「DDナイト・ハウリング」を除外し、融合する!」

 

墓地にあった2枚の「DD」モンスターが、赤馬の背後の渦に飲まれ、1つの悪魔へと生まれ変わる

 

「牙剥く地獄の番犬よ!闇を切り裂く咆哮よ!冥府に渦巻く光の中で、今1つとなりて真の王へと生まれ変わらん!!」

 

渦の闇を切り裂いて生まれ落ちたのは、レイピアを手に神々しい白い鎧を着た細身の悪魔、「ダルク」

 

「融合召喚!神の威光伝えし王!「DDD神託王ダルク」!!」

 

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

 

「攻撃力2800!」

「よっしゃあ!「トリシューラ」の攻撃力を上回ったぜ!」

 

志島と刀堂が嬉しそうに声をあげた

 

「カードを1枚セット。……私はこれでターンエンドだ」

 

赤馬のエンド宣言と共に、「ヘル・アーマゲドン」から発せられていた「シーザー」の気配が消え失せた

 

 

白星 風斗 LP2000 手札 0枚

 

氷結界の龍 トリシューラ

レベル9 ATK2700

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

レベル8 ATK3000

インフェルニティ・デーモン

レベル4 ATK1800

インフェルニティ・ネクロマンサー

レベル3 DEF2000

VS

赤馬 零児 LP3000 手札 0枚

 

(スケール1)DD魔導賢者ガリレイ

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

レベル8 ATK3000

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 0

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

 

(スケール10)DD魔導賢者ケプラー

 

魔神王の契約書

伏せカード 1枚

 

 

「僕のターン…ドロー。そしてスタンバイフェイズ」

「この瞬間、「シーザー」の効果によりその効果で蘇生させたモンスターの数だけ1000ポイントのダメージを受ける……だが、さらに「神託王ダルク」の効果が発動される!「ダルク」がフィールドに存在する限り、私が受ける効果ダメージは全て回復へと反転する!」

 

怒涛王によって受けるはずの代償が、神託王によって祝福の光に変わって赤馬に降り注がれる

 

赤馬 零児 LP5000 手札 0枚

 

「嘘!?最初の時よりもライフが増えちゃった!」

「フィールドどころか、ライフも大きく差をつけたわ!!」

「これが赤馬零児の力か…!」

 

周りが戦々恐々する中、引いた「死者蘇生」を見て必死に僕は考える

 

普通に考えれば「地底のアラクネー」あたりでも召喚して「ヘル・アーマゲドン」…いや、「DD」ペンデュラムのデメリットも考えれば「ダルク」を処理すべきか。アクションカードを使えばできないことも……でももし赤馬のエクストラに「ベオウルフ」があるかもしれないことを考えると下級モンスターを放置するわけにもいかないし、うぅ〜〜〜ん……悩むなぁ

 

『ここは防御でいいと思うぜ。攻撃しても「戦乙女(ヴァリキリー)」で返り討ちにされるし、おあつらえ向きのダークシンクロもあるだろ?』

 

おあつらえ向きのダークシンクロ?……あっ

 

なるほど、確かにそれはいいな。確かアニメのこの段階での「ケプラー」は赤馬のスタンバイでスケール5になって、それ以上のレベルのペンデュラム召喚したモンスターを破壊する効果を持つ。下級モンスターも減らせば「ベオウルフ」への対策にもなる

 

アニメ版「ケプラー」のペンデュラムテキストは「(1):自分スタンバイフェイズに発動する。このカードのPスケールを5つ下げる。その後、このカードのPスケール以下のレベルを持つ、P召喚した自分フィールドのモンスターを全て墓地へ送る。」と書かれているのだが、その際に破壊されたのはレベル8の「ヘル・アーマゲドン」だった。だからおそらく実際のテキストは「このカードのスケール以上」だと思う

 

ちなみに何故ここまでアニメ版「ケプラー」の効果に詳しいのかといえば、前世で「DD」デッキ作る時にWikiで誤植の話を読んだから。結構印象に残っていたのだ

 

「バトルだァ↑!「インフェルニティ・デーモン」で「烈火王テムジン」を攻撃!」

「ええっ!?風斗も攻撃力の低いモンスターで攻撃!?」

「なにが狙いかは知らんが、永続罠「戦乙女(ヴァリキリー)の契約書」を発動!この効果で私の悪魔族モンスターは相手ターンでのみ、攻撃力を1000アップさせる」

「あ"っ」

 

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK3000

 

それの攻撃力上昇忘れてた

 

でも攻撃宣言はもうされたから「デーモン」は止まらず、強化された「テムジン」の剣撃によって破壊された。一瞬恨めしそうにこちらを見ながら消えたのはきっと目の錯覚だろう。そう信じよう

 

白星 風斗 LP800 手札 1枚

 

やっちまった……。いや待て、まだライフは800も残ってる。落ち着け、まだ慌てるような時間じゃない

 

「次に「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン」で「神託王ダルク」を攻撃!!」

 

そして僕はハシゴを素早く登って、ある程度の高さでジャンプ。ポールの頂点にあったアクションカードを拾って着地に成功する

 

「アクションマジック「ハイダイブ」発動!「ワンハンドレッド・アイ」の攻撃力を1000アップさせる!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

レベル8 ATK4000

 

「攻撃力が4000になったわ!」

「この攻撃が通れば「ダルク」の回復を封じることができる!!」

 

おい遊矢!何フラグ建ててんだ…ああ!すでに赤馬の手にアクションカードがある!急いでアクションカードを拾おうと周りを見るが何もなかった

 

「アクションマジック「回避」!「ダルク」への攻撃を無効にさせてもらおう」

 

全身の眼が見開かれたと同時に百眼の龍はブレスを神託王に向かって吹き付ける。しかしそれを手に持ったレイピアで華麗に受け流して、最終的に攻撃を回避した

 

お、おのれ!遊矢が余計なこと言わなければ…!

 

「な、なんか風斗がすごい俺を睨んでるんだけど…」

「何かしたんじゃないの?」

「いやいや!俺あんな親の仇でも見るような目で見られることなんてしてないから!」

 

八つ当たり気味に遊矢を睨んでるとそんな会話が聞こえてきた。チッ、今日はこのくらいで勘弁しといたらぁ

 

「手札から「死者蘇生」を発動!墓地のダークチューナー「ナイトメア・ハンド」を特殊召喚する!」

 

DT(ダークチューナー)ナイトメア・ハンド ダークチューナー

レベル10 DEF 0

 

「さらに手札が0の時、「インフェルニティ・ネクロマンサー」の効果で墓地の「インフェルニティ・ドワーフ」を特殊召喚する!」

 

インフェルニティ・ドワーフ

レベル2 DEF500

 

揃った「ナイトメア・ハンド」と「ドワーフ」の並びに赤馬が目を鋭くさせる

 

「ダークチューナー……もう1体の「ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン」を召喚する気か?」

「あいにく、エクストラのカードは基本1種類ずつなんだよね。それに同じカードばかりじゃ芸がない。だから今からあんたに、最高のファンサービスをくれてやる!」

 

前世とそのまた前世のネタをな!

 

「ファンサービス…エクシーズ…人形…うっ、頭が」

「北斗、気をしっかり持て!デュエルしてるのはお前じゃねえ!!」

「何をやっているのだあやつらは……」

 

志島はファンサービスのトラウマがフラッシュバックして、それを見ていた権現坂が呆れていた。無視してデュエルを続ける

 

「レベル2の「インフェルニティ・ドワーフ」とレベル3の「インフェルニティ・ネクロマンサー」に、レベル10のダークチューナー「ナイトメア・ハンド」をダークチューニング!!」

 

「ドワーフ」と「ネクロマンサー」の合計レベルは5。そこから「ナイトメア・ハンド」の10を差し引けば……レベル−5!

 

「闇と闇重なりし時、冥府の扉は開かれる。遡りし時をも凍てつかせ!!」

 

ズッ…と空の黒い球体から頭と細い胴体以外の全てが氷で成形された悪魔が這い出てくる。「トリシューラ」の次には大きい体のそのモンスターは、氷の塊で下半身は巨大な柱、両腕には翼のようなものを置き換えている姿をしていた

 

「ダークシンクロ!!レベル5!「氷結のフィッツジェラルド」!!」

 

氷結のフィッツジェラルド

レベル5 DEF2500

 

「新たなダークシンクロモンスターか」

「僕はこれでターンエンド」

 

 

白星 風斗 LP800 手札 0枚

 

氷結界の龍 トリシューラ

レベル9 ATK2700

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン

レベル8 ATK3000

氷結のフィッツジェラルド

レベル5 DEF2500

VS

赤馬 零児 LP5000 手札 0枚

 

(スケール1)DD魔導賢者ガリレイ

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン

レベル8 ATK3000

DDD烈火王テムジン

レベル6 ATK2000

DDD怒涛王シーザー

ランク4 ATK2400

ORU(オーバーレイユニット) 0

DDD神託王ダルク

レベル7 ATK2800

 

(スケール10)DD魔導賢者ケプラー

 

魔神王の契約書

戦乙女(ヴァリキリー)の契約書

 

 

「防御を固めるか…私のターン、ドロー」

 

赤馬がカードをドローしたその時、不思議なことが起こった!

 

「ガリレイ」のスケールが2、「ケプラー」のスケールが5に変化して、2以下と5以上のレベルでペンデュラムモンスターの「ヘル・アーマゲドン」がフィールドから消えた

 

まあ、僕知ってたけどね

 

「何…!?」

「モンスターが消えちまったぞ!!」

「どうしてか分からないけど、これで白星の方が有利になった!」

「いっけー白星お兄ちゃん!」

 

唐突に訪れた変化にギャラリーがざわめく中、自分のデュエルディスクのペンデュラムカードを見ていた赤馬が不意に笑う

 

「フフフ……そういうことか……」

 

手で顔を隠しながら静かに笑うその姿はどう見てもラスボスか黒幕に見えます本当にありがとうございます

 

「ペンデュラムにはまだまだ先があるーー…」

「社長!!」

 

その時、中島さんが赤馬に大声で呼びかけた。電話を片手に持って、緊迫した表情をしている

 

「先ほど舞網市内で強力なエクシーズ反応を確認されたとのこと!同時にLDSの講師が1人襲撃されたと報告がありました!」

「講師が襲撃って……」

「分かった。今すぐ戻ると通達を」

「ハッ!」

 

中島さんが連絡するためにその場を離れ、赤馬はこちらを見ながら言う

 

「白星、すまないが緊急事態ゆえにこのデュエルは中断させてもらう。この勝負は君に預ける」

 

それだけ言うと赤馬はデュエルコートから出て遊勝塾から立ち去ろうとする

 

首席3人組や赤馬日美香なども出ていくのを遊矢たちが唖然と見ている中、僕は天を仰ぐ

 

(物語は進んでいる。否応無しに、急速に。これからどうなっていくのか……疲れるなぁ)

 

とりあえず黒咲をブン殴ることに関しては再度決意した




ハーメルン内でもVRAINSの小説も見かけるようになってきましたね。最初は大丈夫かな?なんて思ってましたけどアニメ自体は非常に面白くて毎週楽しみにしてます!でも総集編が多いのは勘弁してくれよ……

あとこの小説の次回予告って、VRAINSの次回予告と似てね?(こじつけ



それでは次回予告!

1つの戦いに区切りをつけた風斗。そのデュエルで起きた出来事は、遊矢に大きな焦燥をもたらす。彼の心を癒そうと誰もが動く中、遊勝塾に1つの波紋が生じる……

「ペンデュラムは、もう俺だけのものじゃないんだな……」
「そういった悩みは、僕も結構あったな」
「やっと見つけましたよ……師匠」

面倒くさがりな直感系決闘者がゆくARC−V物語
第37話 「千顔の名を継ぐ少年」
お楽しみは、これまでだ!

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