OVERLORD 自衛隊彼の地にて・・・ 作:ラルク・シェル
イグヴァとの戦闘を終えて眠りについたザリュース。目を覚ますとまずは自分の体を確認。
[ん…生きているのか…あれ?]
だが、それ以前にクルシュが抱き着いて寝ていることを知る。それも自分の尻尾も絡み合わせて、絶対に離れないようにしていた。
[これは…]
「んん…あっ!」
ザリュースが起きたことに気づくと顔を赤くした。
「クルシュ…もしかしてずっと俺のことを看病?」
「ええ、あれだけ戦ったのですからね。なんとか治癒魔法と回復魔法を施したけど、アナタかなり疲れたみたいだからね」
「そうか…そうだな…」
お互いに顔を赤くなるが、ザリュースはそのままクルシュを優しく抱きしめる。
「ザ…ザリュース」
「もう少し、このままで」
「おぅ、やってるか?」
だが、ここにゼンベルが入って来たので、2人は分かりやすいように尻尾を振りながら離れた。そして顔を赤くしながら睨み付けた。
「お…お前…」
「なんだよ?邪魔したことは謝るけどよ…主役が居なくてつまらなかったんだぜ」
そう言いながらも、勝利の宴会の様子を2人に見せるゼンベル。
「そういえば、お前かなり無茶したよな?」
「無茶って…なにが?」
「あの手榴弾を2個も使って自爆した事に決まっているだろ?」
ザリュースは呆れながらも、自爆と言う無謀な策をしたゼンベルに言う。
「だけど、こうして無事だったんだろ?そんな事より、ほれ!」
すぐに2人を外に出すと、リザードマン達が祝勝会の最中だった。
「みんなお前のおかげなんだぞ?早く顔を出しに行きなよ」
「分かったよ」
ゼンベルに勧められながらザリュースとクルシュは、最初にシャースーリューの所に向かった。
「ザリュース、体はもう良いのか?」
「ああ、クルシュのおかげでな」
「え?はい」
つい照れ始めるクルシュで、そこに酒の椀を持ったスーキュとキュクーもやって来た。
「それにしても、緑の人もとい自衛隊と呼ばれる者達の爆弾などという物が役に立つとは」
「のこり…すくない。たいせ…つに、つかわな…ければな」
2人はかなり自衛隊から貰ったC4と手榴弾を高評して、さらにロロロも喜んだように近づくとザリュースの頬をスリスリする。
「ロロロ、お前も大丈夫そうだな?もちろん、よくがんばった」
優しく撫でながらも今回の勝利が本当に良かったと実感した。
一方その頃、ナザリックに戻って来たコキュートスとエントマ。今回の作戦が失敗したにもかかわらず、コキュートスは何か別な事を考えていた。
「コキュートス様。では、私はこれで」
「アア、ソウダナ?」
エントマと別れると玉座の間に入ると、すでにアインズと守護者達がいた。
「コキュートス。ご苦労様だったな?」
アインズはコキュートスの帰還を確認すると全員の声を聞いた。まずデミウルゴスから聖王国両脚羊のアベリオンシープの皮が羊皮紙にピッタリだと説明して、シャルティアも自分の失態の仕置きの覚悟が出来てると発言。
そして最後の問題はコキュートスで、リザードマンに敗北した事を尋ねた。
「聞いた話では、リザードマン共が爆弾を使っていたと聞くが?」
「ハイ、恐ラク自衛隊カラノダト分カッテイマス。シカシニナガラ、敗北シタノニ変ワリマセン故ニ」
「当然のことですよ。分かっているのなら、まず頭を上げて謝罪しなさい」
怒っている様子のアルベドがきつく言って来た。
「失礼シマシタ。ソシテオ預カリシタ兵ヲ失ッテ申シ訳アリマセン」
「また、今回の敗北を責めるつもりはない。誰だって失敗する…私だってな」
仮にも社会人なのでアインズはコキュートスの失敗を許した。
「して、どうすれば勝てた?」
「リザードマンヲ侮ッテイマシタ。モット慎重ニスベキカト」
「ふむ、どんなに弱い存在でも侮るのはいけない事だ。ほかには?」
「ヤハリ、情報不足ダットシカ考エラレマセン」
コキュートスは戦場の地形やリザードマン達の実力に、さらには自衛隊からの品をちゃんと把握できなかったのと、さらには低位のアンデッドの指揮がうまくいかないのも原因らしいと言う。
「それ以外はないのか?」
「ハイ」
「素晴らしい!
まさかのNPCの守護者であるコキュートスが失敗から学んだので、アインズはとても嬉しいようだ。
「しかし敗北したというのだから罰は与えたいが、その汚泥をお前の手で拭え必ずやリザードマンを殲滅せよ。今度こそ誰の手も借りずにな」
「素晴らしいお考えですアインズ様!リザードマン共をコキュートスの敗北という罪と一緒に洗い流すとのですね」
アインズから失敗の取り消しと殲滅という命令にアルベドが絶賛した。しかしコキュートスは乗り気になりない様子。
「アインズ様…ジツハソノ事ナノデスガ。オ願ガイ議ガアリマス」
「栄誉ある我らナザリックに敗北をもたらした身でありながら、アインズ様に請願するとは!」
「落ち着けアルベド。して、その願いとは?」
「…リザードマンノ皆殺シハ、反対シタイト思イマス」
「なに?」
なんとコキュートスは殲滅計画に反対して無しにしてと頼んできた。
「コキュートス!アナタ自分がなにを言っているのか分かっているの?」
これには当然、アルベドはコキュートスの意見でさっきよりも怒り出した。
「だから落ち着け。コキュートス、今の発言の理由を申して見ろ。当然、ナザリックの利益に関係するものだろうな?」
「ハイ…今後彼ラノ中カラ屈強ナ戦士ガ出テ来ル可能性ガアルノデ、リザードマンニナザリックヘノ忠誠心ヲ」
どうやらリザードマン達を戦力にして取り込めば、ナザリックの強化につながるというのがコキュートスの提案。
「なるほどな。しかしアンデッドの生産の方が費用効果は高い筈だが?」
「ソレハ…」
これには言葉を積もらせるコキュートス。しかしリザードマン達を生かしたいという気持ちもあるので、なんとかいい案はないのか考える。
「あの、アインズ様」
するとデミウルゴスが口を開いて提案してきた。
「リザードマン達で統治の実験をして見るのはどうでしょうか?」
それは色んな種族を束ねて支配する為に、まずはリザードマン達を恐怖に依らないで支配する実験をした方が良いという事。
「面白い案だデミウルゴス!では、リザードマンは殲滅ではなく占領に変更する。それからコキュートス」
「ハ!」
「お前の罰はリザードマン達をナザリックの忠誠心を植え付けよ。ただし、恐怖による支配は厳禁だ」
「カシコマリマシタ」
まさか二度もデミウルゴスに助けられて、コキュートスは心の中で感謝した。
「アルベド」
「はい」
「兵の準備とガルガンチュアを起動させよ」
「完了しました」
「では、行動を開始せよ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
全員に命令してアインズは玉座の間から出た。それから自室に入ると、自分のベッドへ豪快にダイブ。
「まさかコキュートスが自分の判断であんなことを言うなんてな…」
コキュートスの成長に少し喜ぶと同時に、今後は自分も成長しなくてはと感じてしまう。
「でもまさか伊丹さん達が、リザードマンに爆弾を渡していたなんてな…」
アインズは伊丹に連絡しようとしたけど、あんな事を言った時点でもう遅いと分かっていたので諦める。
一方その頃、園遊会が終わって自室に戻って来た伊丹もアインズに連絡しようとした。
「なに考えてんだ?俺達はいつか今度は敵同士になるかもしれないのに…」
園遊会の事もあって、ドッと疲れてベットに横になる。しかしまだ色々とやることがあった。
「テュカはもちろん…元老との交渉。まだまだあるのにな」
しかし伊丹は知らなかった。近いうちに帝都で大変な騒動が起きる事に。
少し時間が空けてしまいました。次回からは帝都の地震が入るかもしれません。