異世界に言ってみたら勇者の剣になっちまってたんだけど、どうしようかな? 作:朝津川 トム男
『』で囲まれている所は、主人公の心の声です。周りには聞こえていません。
『ん…ぁ…?』
『ここ…何処…だ…?』
身体を起こして見ようとしてみる。
だが、鋼鉄みたいに固まったかの様に動かない。
腕や脚を動かしてみようと試みても、びくともしなかった。
周りを見渡すにも、首が動かない。しかも、周りは真っ暗。
しかも、何かに押し固められている感じもする。
どうやら、全身が土に埋まっているようだ。
…?何かが脚の辺りを掴んでいる様な感触がした。
『うおっ!?上に引っ張られるっ!?』
ぐぐぐっと、誰かが自分の脚を引っこ抜こうとしてるみたいだ。
だが…その誰かは、フッ、と諦めたかの様に手を離してしまった。
『ま、待てよ!俺を助けてくれぇ!』
_______その後も、俺を引っ張ってくれる誰かは変わり代わり来ているようで、すごく勢い良く引っ張ってくれる人もいた。
だが、皆途中で諦めて居なくなっていった。
そんな、ある時。
ザワザワ、と大きな声が聞こえてきた。どうやら、抜くのに挑戦する様だ。
『どーせ今回も無理さ…』
と、半ば諦めていたそんな時。
俺は、引っこ抜かれた。
『うおおっ!?』
いきなりグッと持ち上げられ、周りの景色が見える。
人々が俺を見ている。
ちょっと小恥ずかしい為、持ち上げている者(どうやら女性の様だ)に降ろして貰うように頼む。
『も、申し訳ないんですが、降ろして頂けませんか?恥ずかしいのですが…』
だが、その女性は降ろしてくれない。
しかも、衝撃の一言を言っていた。
「やったぁ!遂に、勇者の持つ事の出来る伝説の剣を手に入れられたわ!」
『…はい?』
俺は困惑した。俺は人間だからである。
『てか、勇者って、どー言う事だ…?』
その疑問は周りの人々の服装や、建物でわかった。
どう見ても、現代の建物とは違う。よくあるRPGの世界感の服装、建物にしか見えない。
と、言うことは………
『俺、まさか異世界的な所、来ちまったの、か…!?しかも、俺が勇者の剣…!?』
まさかじゃなくてもそうらしい。
と、俺が困惑していると、引っこ抜いた女性が自分を振り回し始めた。
『う、うおおっ!?うわぁぁっ!』
ブンブンブン、と数回振られた所で女性は俺を鞘に収めた。
カチン、といい音が響く。
真っ暗になるかなぁと思っていたが、鞘から周りを見る事が出来るようだ。
異世界とか…最近ラノベでよく見る、好きなジャンルだけども、せめて人間になりたかったなぁ…。
<mode:ユーミシア>
「今日こそ…今日こそ、伝説の勇者だけが持つ事の出来る勇者の剣、手に入れてみせる…っ!」
私は、ガッツポーズを決めた。
すると、近くのドアから誰かがこちらを見ている。
「…ユー、何してるです?」
「うわぁあっ!?…何だ、リーアか…びっくりしたよ。」
この子は、私達のパーティーのメンバーの1人、僧侶のリーアちゃん。
まだ小さいながら、魔力量が並の人間の3倍程ある為、パーティーに入る事になった。
バトル中では、危ない時に必ず回復魔法をかけてくれる、とても有難い存在なのです。
「もう、朝ごはんの準備、出来てるですよ。行くです。」
「はいはーい。」
寝室からリビングへ向かう。
トントン、と包丁の音と、ふわっと香ってくるスープのいい香り。
思わず顔が綻びそうな気持ちになりながら、それを作ってくれている方のほうを見る。
…イケメンが、水着エプロンで調理をしている。
盗賊兼家政婦(?)のスレイ。
かなり強いのだけど、家事全般も彼がやってくれている。
冒険者協会の貼り紙には、『何でもやります!掃除洗濯料理戦い、何だってやります!雇って!』って書いてあった。
「……ふぅ、出来たぞ。
ソリア茸とキャベツのスープと、オムレツ、それに豚牛のベーコンだ。
…た、たーんとお召し上がれ。」
うん、美味しそう。最後のセリフが無かったら完璧だったなぁ…
「美味しそう…。
でも、スレイ、最後のセリフは要らないと思う…。」
あっ…
スレイが崩れ落ちる。
「ふっ…この前読んだ絵本のお母さんが、『ほら!たーんと召し上がれ!』って言ってて、皆喜んでたから、やってみようと思ったらこれか…」
ブツブツと何か呟いている。
怖いから聞かなかった事にして、食べよう。
「ん!おーいしー!流石スレイだね!」
「ブツブツ……あぁ、ありがとう。」
これほんと美味しい。
説明出来ないくらいに。これ食べたら外食とか無理。
「……ふっ、我の従えた伝説の料理人には遠く及ばんが、なかなかだ、胸を張るが良い。」
「…はっ、有り難き幸せ。」
横で中二病的な発言をしているこの子はサティナちゃん。
技の出す時間は凄く長いけど、それに見合う程の力を持ってるよ。
正直、このパーティーで1番強力なのはサティナちゃんだと思う。
しかし、サティナちゃんの中二病発言に咄嗟に返せるのはスレイだけである。
スレイ、凄い人だと思う。
さて、私の自己紹介もしましょうか。(ご飯食べながら)
私は、勇者(になりたい少女)のユーミシアよ。むぐむぐ。
皆には、ユー、って呼ばれてるわ。むぐむぐ。
私は、剣が大好き。
今まで手に入れた剣は1000本以上よ。
しかも全て残ってるわ。むぐむぐ。
今日は、伝説の勇者の剣を手に入れる予定よ。宜しくね。
勇者の剣…。
伝説の勇者のみが所有できる最強の武具。
勇者の職業によって、形状を変えるらしいわ。あ、これ美味しい。
他にも、勇者の鎧だとか、盾だとかあるけど、私には関係ないのよ。剣!剣が欲しいの!!
…こほん。取り乱したわ。むぐむぐ。
「ご馳走さま!美味しかったわ、スレイ!」
「…あぁ、食器は流し台に置いておいてくれ。」
食器を片付け、服を着替える。
奏での鎧。防御は余り高くないけど、見た目が可愛らしいから、武具に費やそうと思っていたお金を使った。
今の武器は、カルシュリトッドって言う剣。
ある地区でしか取れない貴重な金属を使った厚さがうすーいうすーい剣なの。
他にも………っと、このまま話しちゃったら明日までかかっちゃうかも。
そろそろ時間ね!行きましょうか!
パーティを組んで宿を出る。
あ、そうそう、スレイは基本人前では顔を隠してるの。何かあったのかしらね?それは聞いてないから分からないのだけど。
「あーっ!あったあったー!!勇者の剣よ!」
突き立てられた勇者の剣。何人もの猛者が力任せに引いてもびくともしていない。
「ねーねー、ユー、ほんとに取れるのー?」
「汝、ユーよ。これは余りにも無謀であろう。…まぁ、我ならば、この程度容易いのだがな。」
「…やめといた方が良いぞ。」
皆から心配される。私そんなに弱そう?
と聞くと、
「「「弱そうではないが、やましい気持ちで取れないと思う。」」」
と言われた。失敬な、私はとても清純だろう。
真摯だし(剣に)、一途だし(剣に)。
そんな私が、抜けない訳が無い!!!
と、言う事で、私の番となる。
「さぁて…やったるぞー!」
柄をグッと持つ。
勢い良く引き抜こうとして、力を入れた瞬間。
スルリと抜けた。
「「「お、おお?おおお?おおおおおお!!」」」
観客の皆さんから拍手が起きる。
す、凄い。自分でも抜けないと思ってたのに。
「やったぁ!遂に、勇者の持つ伝説の剣を手に入れられたわ!」
あまりの嬉しさに剣をブンブン振る。
わーっ!わーっ!!
もう嬉しさがこみ上げてきて…!
剣を鞘に収め、仲間の元へ。
私は、伝説の剣を手に入れたのだ。
なんか、新しい異世界物を…と思って、色々見たのですが、武器物ないかな?と思って、書いたっす。
いやー、なかなかな物で。