艦隊これくしょん 単発物   作:なかむ~

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この話は、初ケッコンカッコカリの記念として書いた話です。
余談ですが、これを書いている途中で羽黒のレベルが99になったんですが、これを書き終わるまでケッコンカッコカリはしないと自分に言い聞かせていたので、自分にとっても思い入れの深い作品です。


羽黒のケッコン休むに似たり

 

 

 

「全砲門、開いてください!!」

 

 

羽黒が放った砲弾が敵の旗艦を正確に撃ち抜く。

 

 

「ワオ、さすがデース!」

 

「今日も羽黒さん気合入ってますね。 私たちも負けてられませんよ」

 

 

バシー島沖で補給艦狩りに来ていた第一艦隊の金剛と霧島が感嘆の声を漏らす。

羽黒が張り切るのも無理のない話。

現在、第一艦隊である4人の錬度は98。 そして、旗艦を勤めている彼女はもうすぐ最大錬度に達するからだ。

 

 

「主砲よーく狙って、撃てー!!」

 

 

鳥海が最後の深海棲艦を撃沈させ、艦隊は鎮守府に帰還することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆お疲れ。 補給と入渠の準備ができてるから、ゆっくり休んできなよ」

 

 

艦隊帰港後、秘書艦代理の蒼龍がねぎらいの言葉をかける。

彼女もまた、空母として第一艦隊のエースメンバーを勤めているが今回は補給艦狩りが目的のため留守を任されていた。

 

 

「ありがとうございます、そうさせていただきます」

 

「それでは、みんなでTea Timeとしゃれこみまショー!!」

 

 

鳥海は丁寧にお辞儀をして、金剛は我先にと子供のように入渠ドックに駆け込んでいき、そんな金剛の後を呆れ顔の霧島が追っていった。

 

 

「戦闘が終わったばかりなのに、皆さん元気ですね」

 

「そういう羽黒ちゃんもさすがだね。 またMVPを取ったんだって?」

 

「あ、あれはたまたま私の攻撃がうまく当たっただけで…」

 

「十分すごいじゃない、そんな謙遜しないの。 …って、あっ!!」

 

 

突然大声を上げる蒼龍に羽黒も驚きの表情を見せた。

 

 

「ど、どうしたんですか蒼龍さん!?」

 

「ごめん羽黒ちゃん、提督から羽黒ちゃんに執務室に来てほしいって伝言預かってたんだ!」

 

「私に…ですか?」

 

「すっかり忘れてたよ。 悪いけど、すぐ行ってもらっていいかな…?」

 

「構いませんよ。 私も、司令官さんに作戦の報告をしなくてはいけないので」

 

 

そう言って羽黒は蒼龍に見送られながら執務室に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します、司令官さん」

 

「お疲れ羽黒、突然呼び出してすまないね」

 

 

ぺこりとお辞儀をしながら執務室に入る羽黒を提督が迎える。

 

 

「えっと、司令官さん。 今日の作戦結果なのですが…」

 

「いや、それより今日は羽黒に渡したいものがあるんだ」

 

「渡したいもの…ですか?」

 

 

そう話す提督は妙にそわそわしており、羽黒も先ほどから気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「羽黒っ!!」

 

「は、はいっ!」

 

「これを受け取ってくれ!!」

 

 

提督は羽黒の前に小さな箱を突きだし、羽黒は戸惑いながらも受け取った箱を開ける。

そこには…

 

 

 

 

 

「ふわっ!? こ、これってもしかしてケッコンカッコカリの指輪じゃないですか!?」

 

「そうだ。 羽黒が最大錬度になったら真っ先に渡そうと思っていたんだ」

 

 

突然の告白に羽黒も驚きが隠せなかった。

提督は日ごろから艦隊のみんなに気さくに接しており、多くの艦娘から慕われている。

その提督が、まさか自分をケッコンカッコカリの相手に選ぶなんてこれっぽっちも思っていなかったので、羽黒は完全にパニック状態に陥っていた。

 

 

「その…、受けてもらえるかな?」

 

「え、えと…あの…その…」

 

 

提督は彼女の返事を心待ちにするが、羽黒は顔を真っ赤にしており、おまけに頭から煙まで出ていた。

正常に頭が回らない状態で思考した結果、彼女が出した返事は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい!! 私、これは受け取れません!」

 

 

そういって提督に指輪をつき返すと、羽黒は顔を覆いながら執務室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア…。 私、司令官さんに何てこと言っちゃったんだろう」

 

 

鎮守府の食堂、窓際の席で羽黒は一人ため息を吐いた。

 

 

「とっさとはいえせっかくの誘いを断っちゃって。 ほんとは、私も司令官さんのことが…」

 

 

 

 

「羽黒さん、ここにいたんですか」

 

「ひゃうっ!? ちょ、鳥海さんっ!?」

 

「どうかしたんですか? そんなにあわてて」

 

「いえ…その…」

 

「もしよろしければ私に話してくれませんか? 羽黒さんとは付き合いが長いですから放っておけないんです」

 

 

二人はこの鎮守府でも早くに配属されたもの同士で鎮守府海域攻略のときから常に一緒に出撃していた。

ゆえに羽黒と鳥海はこの鎮守府の中でも特に親しい間柄であるのだ。

 

 

「じ…実は…」

 

 

羽黒は少しおびえながらも執務室での出来事を打ち明けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっ!? ケッコンカッコカリの話を断ったって!?」

 

「はい…。 突然の話にびっくりして…つい…」

 

「すぐ司令官さんに話して誤解を解きましょう。 大丈夫、ちゃんと話せば分かってくれますよ」

 

「いえ…きっと、これでいいんですよ」

 

「よくないわ! だって、羽黒さんも司令官さんのこと好きなんでしょ!? 今断ったら、きっと一生後悔するわ!!」

 

「本当にいいんです! それに、私じゃ司令官さんには釣り合いませんよ…」

 

「どういう…ことですか…?」

 

 

真剣に話を聞く鳥海に顔を向けながら、羽黒は涙交じりに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛さんは明るくて社交的な人ですし、霧島さんは頭が良くてとても強い方です。 鳥海さんだって綺麗で司令官さんへの気配りもできて、私より皆さんのほうがとても魅力的です」

 

「羽黒さん…」

 

「鳥海さんの言うとおり、私も司令官さんのことが好きです。 だからこそ、司令官さんには私よりもっと素敵な方を選んでほしいんです」

 

「……羽黒さん、よく聞いてください」

 

「えっ…?」

 

 

鳥海は両手を羽黒の肩に置くと、まっすぐ彼女の目を見ながら話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「羽黒さん、私は羽黒さんほど司令官さんにふさわしい子はいないと思います」

 

「ど、どうしてですか…?」

 

「羽黒さんの言うように、確かに他に魅力的な子はいるかもしれません。 ですが、司令官さんはそんな子達の中からあなたを選んだんですよ。 それが、どういうことか分かりますか?」

 

「え…どうしてって…?」

 

「それは、司令官さんにとって羽黒さんが一番魅力的だったからですよ。 だから、あなたをケッコンカッコカリの相手に選んだ。 違いますか?」

 

「あっ…!」

 

「もしも、今この話を断ったら羽黒さんは自分だけでなく司令官さんの気持ちも裏切ることになってしまいます。 そのほうが、あなたにとってずっと辛い事なんじゃないですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

その時、ようやく羽黒は気づいたのだ。

どうして提督が自分を選んでくれたのかを。

彼女が教えてくれなければ一生気づかなかったであろう事を。

 

 

 

 

 

「…私、馬鹿でした。 そんな簡単なこと、今まで気づかなかったなんて…」

 

「羽黒さん…」

 

「鳥海さん。 私、司令官さんのところに行ってきます。 行って、自分の気持ちを正直に伝えてきます」

 

「がんばってくださいね」

 

「はいっ! ありがとうございます、鳥海さん!!」

 

 

羽黒は鳥海に深々とお辞儀をすると、食堂の出口から一直線に執務室に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官さんっ!」

 

「うおっ、羽黒!?」

 

 

仕事中、突然の訪問に驚く提督の前に羽黒はまっすぐに顔を向けてくる。

 

 

「私は金剛さんのように明るくないし、霧島さんほど頭も良くない。 鳥海さんのような魅力もありません」

 

「な、なにいってるんだ。 そんなの俺は気にしたり…」

 

「でも…」

 

 

少し間を置いて気持ちを落ち着けると、羽黒は再び口を開く。

 

 

 

 

「司令官さんのためなら霧島さんや鳥海さんに負けないぐらい頑張ります! それに、司令官さんを思う気持ちなら金剛さんにだって負けません! だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官さん、私にケッコンカッコカリを受けさせてください」

 

 

「…ああ、もちろん。 っていうか、俺からお願いしたいくらいだ」

 

 

提督は机から指輪を取り出すと、ゆっくりと羽黒の左手を取り指輪を薬指にはめた。

 

 

「これからもよろしくな、羽黒」

 

「はい…、こちらこそお願いします。 司令官さん」

 

 

羽黒は涙で潤んだ目で薬指にはめられた指輪を見ると、嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「OH~、先を越されてしまいまシター…」

 

「残念でしたね、姉様」

 

「いや~羽黒ちゃん幸せそうだねー」

 

 

執務室前の廊下では、残念そうに肩を落とす金剛・金剛を慰める霧島・にやけながら中をのぞく蒼龍・そして

 

 

「司令官さんと仲直りできてよかったです」

 

 

嬉しさと悲しさが入り混じった顔つきをした鳥海の姿があった。

 

 

「でも良かったの? 鳥海さんも、提督のことが…」

 

 

少し心配げに声をかける蒼龍の言葉を、鳥海がさえぎった。

 

 

「これでいいんです。 大好きな人と、大好きな親友のためにも…」

 

 

鳥海は廊下の窓から空を見上げながら、静かにつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おめでとう、羽黒ちゃん…」

 

 

 

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