艦隊これくしょん 単発物   作:なかむ~

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この話では大和とまるゆ(むしろまるゆメイン)の話を書きました。

史実での大和とまるゆの邂逅があまりに感動的だったんで、思わずこの二人で書きました。



あなたがいてくれたから

 

 

 

「はあ…」

 

 

鎮守府の港、白い水着に身を包む一人の少女はじっと海を眺めていた。

空は青く晴れ渡り、目の前の海は日の光を反射してキラキラと輝いている。

だが、そんな光景とは裏腹に少女の顔は暗く落ち込んでいるようだった。

 

 

「ため息なんかついて、こんなところで何してるんだ? まるゆ」

 

「ひゃっ!? た、隊長っ! いたんですか!?」

 

 

いきなり自分を呼ぶ声に驚く少女、三式潜航輸送艇まるゆはあわてて後ろを振り返る。

提督はそんな彼女を見ると、頭をかきながら少し申し訳なさそうに声を掛けた。

 

 

「なんか、悪いな。 驚かしたみたいで…」

 

「いえ、気にしないでください。 まるゆは大丈夫ですから…」

 

「そのわりには、さっきから暗い顔してたが何かあったのか?」

 

 

口では大丈夫といっていたが、いまだに彼女の顔は暗いまま。

提督もそんなまるゆの様子に気を掛けずに入られなかった。

 

 

「もし良かったら話してみろ。 提督として、部下の悩み相談くらい引き受けるぞ」

 

 

その言葉にまるゆは小声で悩みじゃないんですけど、と前振りすると話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和さんの事を思い出していたんです…」

 

「大和って、あの戦艦大和か?」

 

「はいっ。 大和さんを見送ったあの日も、こんな海が綺麗な日でしたから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、戦艦大和にとって最後の出撃となった坊ノ岬沖海戦。

雄雄しく戦場に向かう彼女を見届けたのが、このまるゆだったのだ。

 

 

 

 

 

「あのとき、戦地に赴く大和さんは本当に凛々しく格好良かったんです。 それに引き換え、まるゆはただ大和さんを見送ることしかできなくて…それが悲しくて…」

 

「まるゆ…」

 

「本当はまるゆも大和さんの力になりたかった。 でも、潜水艦としてまともに潜ることもできないまるゆじゃ足手まといにしかならないから…」

 

「……」

 

「まるゆは情けないです。 大和さんは最後の最後まで立派に戦ったのに、まるゆは一緒に戦うこともできないお荷物になるだけの役立たずな潜水艦です…」

 

 

まるゆの独白にただ耳を傾ける提督。

まるゆは本来陸軍が物資の運搬を目的として作った潜水艦であり、戦う力がないのは無理もないことだが、そのとき自分がまるゆと同じ立場だったら、きっと同じことを思ったであろう。

だけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まるゆが役立たず、か…。 俺はそうは思わないな」

 

「ど、どうしてですか…!?」

 

 

涙でぬれたまるゆの顔を横目に、提督は海を見たまま口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「あのとき、戦地に赴く大和は凛々しく格好良かったとまるゆはそう言ったが、本当にそうだろうか…?」

 

「な、何が言いたいんです隊長!?」

 

「なら逆に聞くが、まるゆは出撃するときいつもどう思ってる? よし、やるぞ!って、張り切ってるか?」

 

「…正直、怖いです。 戦うのも、攻撃されるのも、すごく怖いです…」

 

「きっと、大和もそうだったと思うぞ」

 

「どういうことですか…?」

 

 

話の意味が分からず困惑するまるゆ。

そんなまるゆの頭にポン、と手を置くと提督は話を続ける。

 

 

 

 

 

「どんなやつでも、死地に行くのは恐ろしいことだ。 それは、最強の戦艦大和も例外ではない。 彼女にとっても傷つくことや沈められることは怖いことなんだ」

 

「…あの大和さんでも…ですか?」

 

「大和が最後まで自分を奮い立たせることができたのは、そんな自分を見届けてくれるものがいたからなんだ。 自分が今まで守ってきたものが、自分を見守ってくれている。 大和は、あのときまるゆから勇気をもらったんだ」

 

「それじゃ、まるゆは……まるゆは大和さんのお役に立てたんですか…?」

 

 

涙で顔をくしゃくしゃにしながら聞いてくるまるゆ。

提督はまるゆの頭を軽くなでながら顔を向けてきた。

 

 

「これは、あの時あの場所にいたお前だからできたことだ。 まるゆ、お前は役立たずなんかじゃない。 日本一…いや、世界一の戦艦を勇気付けた立派な潜水艦だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

提督の言葉を聞いたとたん、まるゆは泣き出した。

今まで抱え込んでいた大和への罪悪感。

そんな彼女に何もできなかったという自分自身の無力さ。

そんな思いをすべて洗い流すようにまるゆはただひたすら泣き続け、提督は何も言わず頭をなでたまま彼女が泣き止むをのを待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、落ち着いたか?」

 

「はい、もう大丈夫です。 すみません、隊長にご迷惑をおかけして」

 

「迷惑だなんて思ってないよ。 言ったろ、提督として部下の悩み相談くらい引き受けるってな」

 

「そういえばそうでしたね。 まるゆ、うっかりしてました」

 

 

港で二人が顔を見合わせて笑っていると、不意に提督の持っていた無線機が鳴り出した。

どうやら工廠の方から連絡が入ったらしく、提督が無線機片手に話を聞く。

 

 

「…なんだって、それは本当か!?」

 

 

提督は突然血相を変えると、無線を切ると同時にいきなりまるゆの手をとった。

 

 

「ど、どうしたんですか隊長!? 今の連絡はなんだったんですか?」

 

「いいから早く来るんだ!」

 

 

まるゆは訳も分からず、ただ提督に手を引かれたまま工廠に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるゆがつれてこられたのは大型建造ドックの前。 そこでようやく提督から理由を教えてくれた。

 

 

「突然つれてきて悪かったな。 実はさっきの連絡なんだが…」

 

 

まるゆが見たのは現在起動中の大型建造ドックがひとつ。 そして、カウンターには建造時間が表記されていた。

 

 

8時間、と。

 

 

 

 

 

「へっ!? 隊長、これってまさか…!!」

 

「お前のところに来る前に工廠の妖精に頼んで大型建造をしてもらったんだ。 ある戦艦を建造するためにな」

 

 

高速建造材によりあっという間に建造時間が減っていき、そしてゼロになる。

 

 

「じゃあ、隊長が建造しようとした戦艦って…」

 

「敬礼しよう、まるゆ。 今度は彼女を見送るためじゃなく、彼女を迎えるために敬礼しよう」

 

「はいっ!!」

 

 

建造が終わり、ドックが開く。 二人は右手を額に当て、新しく建造された艦娘へ敬礼をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

お久しぶりですね。

あなたは、まるゆのことを覚えてくれてますか?

まるゆ、あなたにお話ししたいことがたくさんあるんです。

新しく配属された鎮守府のこと。

そこで働いているやさしい艦娘さん達のこと。

そして、まるゆの大好きな隊長のこと。

いっぱい…いっぱいお話しさせてくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和型戦艦、一番艦、大和。推して参ります!」

 

 

 

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