「お、みんな帰ってきたな。」
咲たちがホテルに戻ると、既に竜華と怜が帰ってきていた。
「先輩方病院から戻ってきてたんですか?」
「ついさっきな。怜を運ぶのに苦労したけど。」
「まぁ、うちは病弱やからな。」
「そのアピールやめ!もう普通に生活できるくらいには回復してるやろ!」
「あ、体の方はもう大丈夫なんですかー?」
「お蔭さまでな。せやけど、一巡先を見る力はまだ戻ってへんけど。」
「そっちの回復にはまだ時間がかかるってことやな。」
そんな話をしていると、洋榎と監督が部屋に入ってきた。
「お、全員揃ってるな。怜は体調大丈夫か?」
「はい、もうだいぶ良くなりました。」
「よし、ほんならミーティング始めよか。」
そう言うと、監督はは話し始めた。
「まずはみんなお疲れ様。ほんまによう頑張ってくれた。結果は準決勝敗退やったけど、今回の大会でそれぞれ何か得るものがあったと思う。それを次の大会、3年にとっては最後の大会になるインハイに向けて、自分のものにしていって欲しい。まぁ、その前に地区大会があるけどな。」
「そう言えば、地区大会とかインハイは個人戦もあるんですよね?あれって何人選ばれるんですか?」
咲が思い出したかのように質問した。
「団体戦の方は各都道府県で1校、大阪の場合やと北と南で1校ずつ選出されるけど、個人戦やとそれぞれの都道府県で3人がインハイへと進めるんや。」
「ちなみに、去年は憩と竜華とうちが代表やったで。怜はまだそのとき一軍におらんかったけど。」
「今はこうして成長したんやし、今年の個人戦は地区の代表になるで。」
「この4人が相手になると思うとなかなか骨が折れそうですぅー。」
「これは部内戦の結果がものを言いそうやな。」
「そう言うことや。相手は案外近いところにいるもんやし。まずは部内で一番になることが目標やな。
それともう1個、明日のことなんやけど明日は決勝は現地で見ずに大阪に帰るで。一応学校休んで来とるわけやし、これ以上長居するわけにはいかんからな。結果は新聞かテレビかで出るやろうからそれを見てな。それじゃ、今日は解散!」
****
翌日、私達は朝早くにホテルを発った。車の中で決勝の試合を見ていたが、結果は白糸台が他3校を圧倒し幕を閉じた。お姉ちゃんは、準決勝のときのような打ち方はしなかったものの、それでも白糸台の得点の大半を稼いでいた。
そして月日は流れ、夏休みに突入しようとする時期
****
「今日の練習も終わりやー!」
そう言いながら、洋榎は椅子に寄りかかって伸びをした。
季節はもう夏になっており、連日蒸し暑い日が続いていた。今はまだ昼時であったため、ちょうど暑さのピークといったところである。しかし、部室にはエアコンが完備されていたため、幸いその暑さを感じずに済んでいた。
「せやけど、この暑い中帰るのは嫌やな。もう少しここでゆっくりしてたいわ。」
「そういう割に、私の膝の上で寝っ転がってますよね...」
咲に膝枕をしてもらっている怜に、咲がツッコんだ。
「咲の膝、冷たくて気持ちええんや。竜華が委員会から帰ってくるまでの間、もう少しこのままで頼むわ。」
「・・・『怜咲』ですか。これは新境地ですぅー。」
「荒川先輩は何を言ってるんですか?」
そんなたわいもない話をしていると、竜華が帰ってきた。
「怜ー、帰ってきたでー!...ってまた咲ちゃんに膝枕してもらってるんか!?」
「仕方ないやろ。竜華がいない間、うちの枕に最適なのが咲しかおらんのやから。」
「せやったらうち委員会やめて怜と一緒におる!」
「そうもいかんやろ。強制選出であったとはいえ、決まったことなんやし。」
「そんな、怜...怜はうちと一緒にいたくないんか?」
「・・・わかった。竜華が帰ってきたし、今から竜華の膝に行ってあげるわ。」
「怜...」
さっきまでとは打って変わって、竜華は明るい表情をしていた。
「・・・『怜咲』はやはり王道の『怜竜』には勝てんか...」
「だから何なんですか、それ。と言うか、これ私が悪いことになってません?」
納得いかないという顔を咲はした。そんな咲をよそに、洋榎が話を戻してきた。
「で、この後どうする?部活は終わったけどこの暑い中帰りたくないし。」
「昼持ってきてないから、残るならうちはどこかで買わなあかんけど。」
「うちも竜華と同じで昼ないわ。けど、こんな中買いに行きたないわ。」
「こういう日に限って購買やってないんですよねー。うちもないですしどこかで買わないとですぅー。」
「そんならここは後輩の憩が買ってくるべきやな。」
「部長、そういう考えは良くないですよー。ここは公平にジャンケンやないですか?」
「ジャンケンかぁ...」
うーん、と洋榎は悩んだ。それを見て、咲が手を挙げた。
「あのぉ、何でしたら私が買ってきますけど?」
「咲ちゃんが行くと迷子になりそうやから、咲ちゃんが行くにしても誰かがついてかなあかんで。」
「・・・よし、ほんならこうしよう。うち、怜、竜華の3人の組と、憩、咲の2人の組の中から代表者を1人出して負けた方が買いに行くでどうや。ちゃんとジャンケンやし。」
「・・・わかりました、それで行きますー。けど、先輩方が負けても文句は無しですからね。」
「その台詞、そのままお返しするで。ほんなら勝負や!」
****
「やっぱり外は暑いですね。」
「ごめんな、咲ちゃん。まさか怜先輩が来るとは思わんかったから。」
あの後、憩と咲の組からは憩がでたが、洋榎たちの方からは洋榎は出てこなくて、代わりに怜が出てきた。そして怜は一巡先を見て、憩の出す手を読んでいた。当然そんなことをされたら勝てるはずがない。
「先に言っとくべきやったな、怜先輩はなしって...」
「まぁ、もう終わったことですし早く買って帰りましょう。」
そうして2人はコンビニへと向かっていったが、不意に後ろから声をかけられた。
「なぁ、自分ら千里山の生徒か?」
振り返ると、そこには1人の女性が立っていた。
「あぁすまん、急に声かけて。...って、ん?」
憩の顔を見て、なにか思い当たることがあったらしい。まじまじと憩の顔を見始めた。
「あ、思い出した!自分去年、麻雀の全国大会の個人戦で1年生ながら2位だった荒川憩やろ!?」
「そ、そうですけど...どちら様ですか?」
「なんや、知らんのか?まぁ、去年はいろいろあって試合に出られへんかったから知らないのも無理ないか。うちの名前は藤白七実、千里山の元エースで今はプロでやってる。」
「へぇー...って、えぇ!?」
あまりにサラリと言うものだから、一瞬流してしまいそうであった。
「それじゃぁ、藤白さんはうちらの先輩にあたるってことですよね?」
「まぁ、そうなるわな。まさか麻雀部の後輩にばったり出くわすとは思ってなかったけどな。そだ、洋榎や竜華なんかは元気にやってるか?」
「はい、元気にしてますよ。」
「おぉ、そりゃ何よりや。ところで、もう1人のそっちの子は誰や?同じ麻雀部の子か?」
「千里山女子1年の宮永咲です。荒川先輩と同じ麻雀部です。」
「宮永..」
すると、不意に険しい表情になった。
「何かありましたか?」
「あ、いや、別に大したことやない。ちょっと昔のことを思いどしとっただけや。...結局あの時、宮永を止められたのは良子ちゃんだけやったし...」
「それって一昨年の個人戦のことですか?」
「なんや、それは知っとったんか?」
「はい、聞いたことがあったんで。戒能プロは宮永照を破った唯一の高校生としても知られてますし。ってことは、藤白さんもあの試合出てたんですか?」
「え、お姉ちゃんって負けたことあったんですか!?」
「ん、お姉ちゃん?」
三人それぞれがそれぞれの疑問を口にした。どこから答えていけばいいのか一瞬わからず、少し沈黙が訪れたが...
ということで、次回からはプロとの絡みになってきます。
実を言うとこの話、この作品を書く前から書きたいなぁと思っていたことの一つでした。元々は、藤白さんの代わりに、湯佐さんにしようかなとか考えてたんですが、なかなか使いにくい点と、せっかく千里山を舞台にやっているのだからどうせなら千里山のOGにしようという点で現在に至りました。
また、本編でほとんど設定が出てないため、こちらで設定を作っていくことになります。予めご了承ください。