もう一つの千里山女子   作:シューム

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第2話「プラマイゼロ」

 憩と咲は麻雀部の部室の前までやって来た。

 

「ここがうちらの部室や。」

 

 そう言って憩は咲を中へと招き入れた。

 

「お、やっと来たか憩。」

「あれ、そっちの子は誰や?」

 

 中に入ると中には既に二人いた。一人は活気のある明るそうな人、もう一人は大人しげな雰囲気の人であった。

 

「紹介しますぅー。この子は一年生の宮永咲さんですぅー。」

 

 二人とも私の名前を聞いた途端何かもの言いたげな様子であった。が、解決したのか自己紹介をしてきた。

 

「うちは三年の愛宕洋榎、ここの麻雀部の部長をやってるで。んで、こっちはうちと同じく三年の園城寺怜や。」

「よろしゅう。」

「あ、こちらこそよろしくお願いします。」

 

 慌てて咲はぺこりとお辞儀をした。

 

「それはそうと憩、この子麻雀部員じゃないやろ。ええんか連れてきて?」

「頼んだら了解してくれたんで大丈夫ですぅー。」

「宮永さんも無理にやったらやらんでええんやで。」

「いえ、私は大丈夫です。少しの間だけですけど。」

「そか。ほな始めようか。東風荘でやるで。」

 

 そう言って洋榎は二人を卓へと誘った。

 

 ****

 

 東一局 親:園城寺怜

 怜から見て下家に洋榎、対面に咲、上家に憩となっている。

 

「そういや宮永さんって関西弁しゃべらへんな。」

 

 唐突に洋榎が切り出してきた。

 

「はい、お父さんの仕事の都合で今年からこっちに引っ越してきたんです。」

「前まではどこにいたんや?」

「長野です。」

「そこそこ遠いところからなんやな。なかなか慣れないやろ。」

「そうですね。特に来たばかりなんでなかなか友達が作れなかったり...」

 

 聞いてはいけないことを聞いてしまったかのようである。咲は傍から見ても落ち込んでいるのがよくわかるほどしょげていた。

 

「あ、なんかすまん!悪気があったわけやないんやけど...」

「部長ってデリカシーないですよねぇー。」

「なんか言うたか、憩?」

「何でもないですぅー。それより、今とっさに捨てた牌って怜先輩の和了牌じゃないんですか?」

「よう分かったな憩。洋榎、それロンや。」

「ぬぁ!深く考えずに捨ててたわ!」

 

(まさかここで振り込んでしまうとは...というか、怜最初っから全力なんか?さっきの約束は一体何だったんや...)

 

 ────────

 

「とりあえず、宮永さんは麻雀を打てるとは言うてもだいぶ昔の話やし、何より戦う相手が千里山の代表メンバーとなると宮永さんだと勝つのは厳しいと思うんで全力は出さないようにしましょうー。」

「せやな、少し力をセーブするようにして打たないとな。」

「宮永さんも待っとるから早よやろか。」

 

 ────────

 

(とか言って約束したのに...いや、もしかして怜の言うてた「全力は出さない」ってもしかして宮永さんだけでうちらに対しては全力ってことか?)

 

 ちらりと怜の方を見るとニッコリとした顔をしていた。

 

(なるほど、そっちがその気なら...)

 

 この時点でもう洋榎の力をセーブするためのストッパーは壊れていた。

 

 ****

 

 東二局 親:愛宕洋榎

「リーチや!」

 

 洋榎がそう言ってリー棒を取り出した。

 

(わぁ、部長本気になっちゃいましたかぁー。)

(これは鳴かないと上がられるなぁ)

 

 二人がそう思っているうちにも再び洋榎の番まで回ってきてしまい、

 

「来るでぇー、来るでぇー、一発来るでぇー!」

 

 そう言って洋榎は牌を引いてくる。

 

「ツモ!立直、門前、一発、断幺九、三色、赤2の親倍で8000オールや!」

「うわぁ、先輩エグイですぅー。」

「えぇ、親倍ですか!」

「洋榎ストッパー壊れたんやな。」

「もうアンタらなんか信用せんからな!」

 

 洋榎の目には微かに涙があった。

 

 ****

 

「怜ー!課題終わったで!」

 

 竜華は勢いよく部室の扉を開けた。

 

「お、終わったんか竜華。こっちももう少しで終わりそうやからもう少し待っててや。」

「じゃ、そのへん座ってるわ。」

 

 近くにあったソファーに座ると見知らぬ人がいること気づいた。

 

「怜、その子誰や?」

「あ、竜華は初対面やったな。この子は一年生の宮永咲や。」

「宜しくお願いします。」

「で、こっちはうちらと同じ三年の清水谷竜華や。麻雀部の副部長をやっとる。」

「宜しくな!宮永さんは麻雀強いんか?」

「いえ、私はそんなに強くないですよ。まだ一位になってないですし。」

「部長もまだなってないですよねぇー。」

「誰かさんが倍満ツモったうちの後の局でうちに倍満ぶち当てたからなぁ。」

「はて、誰のことやろうなぁー。」

「...まぁ、今までの成績があるからそれでも見たらどうや?」

「それもそうやな。」

 

 そう言って竜華はパソコンの方へ行き今までの成績を見ることにした。

 

(一、二回目は憩が一位、三回目は怜が一位か。洋榎はホンマに一位になってなかったんやな、お気の毒に...。ええと、宮永さんの成績はっと...)

 

 ****

 

「あ、ツモです。立直、門前、一盃口、ドラドラで2000・4000です。」

「最後は宮永さんの和了か。でも一位には届かなかったなぁ。」

「それでも二位やから十分やろ。」

「それでは、四人揃ったようなので私はこれで失礼します。」

「すまんな、宮永さん。無理に来てもらってー。」

「いえ、大丈夫です。それではこれで。」

 

 そう言って咲はすぐに帰ってしまった。

 

「もう少し長くいてくれても良かったんやけどなぁ。」

「ま、無理に引き留めるわけにも行かなかったし。それより憩、あんたがあの子を連れてきた理由って...」

 

「何やこれ!!!」

 

 突然大きな声をあげた竜華に三人はビックリしてしまった。

 

「何や竜華、いきなりそんな声出して。」

「なぁ、今の対戦で宮永さんの成績なんぼやった?」

「ええっと、多分プラスマイナスゼロだと思いますぅー。」

「それがどうかしたんか?確かにプラマイゼロは珍しいけどそんなに驚くほどでもないやろ。」

「ほな、見てみぃこの成績。」

 

 そう言って竜華は三人に咲の成績を見せてやった。

 

「三回連続プラマイゼロやて!」

「いや、今回のも入れると四回や。」

「じゃぁ、宮永さんのプラマイゼロって偶然じゃなくて...」

「故意にやったものやろうな...」

 

 四人はその事実にただ唖然とすることしかできなかった。




実際の咲さんはこのメンバー相手でもプラマイゼロってできるんですかね?流石に無理かな?
次回もまた麻雀の内容になる予定です。
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