もう一つの千里山女子   作:シューム

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第21話「反撃への道筋」

「・・・え?いやいや、園城寺先輩じゃないんですか?」

 

 突如咲の目の前に現れた園城寺怜に似た、自称『怜ちゃん』に戸惑っていた。

 

『まぁ、あんまり細かいことは気にするなや。色々気にしてると将来ハゲてまうで。』

「園城寺先輩が言ってきたんじゃないですか...」

『それより咲、うちを呼び出したってことはこの状況をなんとかしたいんやろ?』

「確かにこの状況を何とかしたいですけど、園城寺先輩を呼んだ覚えはないんですが...」

『まぁまぁ、いつも膝枕してもらってるお礼や、怜ちゃんがその分の恩返しをしたるわ。』

 

 ニコニコと怜は答えた。一方で咲はまだいまいち現状を把握しきれていなかった。

 

「そもそも、園城寺先輩は何をしてくれるんですか?先輩の能力の『一巡先を見る』とかですか?」

『いや、それとは少し違う能力や。ほれ咲、見てみ。』

 

 怜が指し示した方には、牌が並んでいた。

 

{三三三[⑤]⑥⑦[5]7775} {裏白白裏}

 

「これは...なんですか?」

『これはこの局で咲があがれる完成形や。奥に続いてってる道は牌を捨てていく順番や。その順番で捨てていくと、そのあがりの形にできる。ただし、捨てる順番を間違えるとあがれなくなるから注意やで。』

「これ以外にはあがれないってことですか?」

『別にそんなことはないで。ただ、この形が咲があがれる中で一番高い点を出せる形なんや。今回の場合やと...『嶺上開花、門前、役牌、三暗刻、ドラ5』やから倍満やな。なかなかいいんやないか?』

「十分ですよ!それで、この能力ってこの後ずっと使えるんですか?」

『いや、多分この1回だけや。そもそも『怜ちゃん』の力はうちが膝枕してもらうことで、そこにうちの力を注入して使える技なんや。咲に膝枕してもらうことは最近増えたけど、それでもこの1回きりやな。』

「それって、もしこの局でのあがりの形が1翻とかだったら...」

『いやぁー、咲は運があるなぁ。』

 

 怜は笑っていたが、咲は呆れていた。1翻であがれてたとしても、多分焼け石に水だったかもしれない。

 

「ていうか、膝枕をしてもらった人がその力を使えるなら、清水谷先輩も使えるってことですよね?」

『せやで。ただ、竜華はまだ1回も使ってないんやけどな。使う機会がなかったし。せやから、うちの始めては咲になるっちゅうことやな。あぁ、咲に初めてを奪われてもうた...』

「・・・先輩ってちょいちょい下ネタ挟んできますよね。」

『咲が勝手にそう捉えてるだけやないか?』

 

 怜はおどけてみせた。

 

 

『それじゃぁ、うちはそろそろ帰るわ。くれぐれも捨てる順番間違えるんやないで。それと、』

 

 そう言って咲の方を見ると、

 

『うちにできるのは咲に反撃の機会を与えてやるくらいや。せやから、ここから巻き返してくには咲の実力が必要になってくる。相手はプロ2人と憩やけど、負けるんやないで!』

「・・・大丈夫です。先輩からもらったこのチャンス、無駄にはしません!」

『その意気や。ほな、頑張ってや。』

 

 そう言うと、怜はふっと消えていった。

 

 ────ちゃん、咲ちゃん!

 

「はい!」

 

 気がつくと、3人が咲のことを不安そうな眼差しで見ていた。

 

「大丈夫?ぼーっとしてたけど。」

「はい、大丈夫です!ご迷惑をおかけして申し訳ないです。」

「続けられるか?」

「はい、お願いします!」

「ほんなら再開しようか。次は咲ちゃんの番やで。」

 

 咲の元気そうな声に3人は安心して、対局を再開した。

 

(いつの間にか対局始まってたんだ...とりあえず、園城寺先輩に教わった通りに捨てていかないと。)

 

 咲は怜に言われた通りの順番で捨てていった。

 

(あれ咲ちゃん、今までとは捨て方が全く違う。何か考えがあるのかな?)

(いったんは完全に戦意喪失かと思ったけど、意識が戻ってから姿勢が変わった。)

(これは楽しくなってきたで!)

 

 3人とも咲が今までとは違うことに気づいていた。そして、その咲は

 

{三三三八[⑤]⑥⑦[5]777白白白}

 

(これで{八}を切ればあの形の聴牌。『嶺上開花』が役にあったから、次巡で引いてくるのは{白}。ここはなんとしてもあがりにいく!)

 

 咲の考えの通り、次巡で{白}をツモってきた。

 

「カン」

 

{白}4枚を倒して右端に置き、王牌から嶺上牌を引いてきた。

 

「ツモ。4000,8000です。」

「おぉ、最初のあがりが倍満、しかも嶺上開花でってなかなかえぐいやないか。」

「うちの親番流されちゃったですぅー。」

「これで試合がまだまだ分からなくなってきたわけか。」

 

 3人とも悔しそうにしてはいるが、どこかワクワクしているところがあった。それは咲も同じであった。まだ試合は終わってない。残りの局数でどこまで追い上げ、どこまで点数を保てるかが大事になってくる。

 

 ****

 南二局 親:戒能良子 ドラ{七}

 北:荒川憩 25000

 東:戒能良子 29800

 南:宮永咲 26600

 西:藤白七実 18600

 

「うわっ、うちが今最下位やんけ。」

「七実、手加減してると負けるぞ。」

「アホぬかすな、まだ試合は終わってへん。それに、良子ちゃんだって『マイナスにさせる』とか言って、全然できなさそうやんけ。」

「あくまでも、それくらいの気持ちでやるってことだから。まぁ、確かにこのままいくとプロとしての面目が立たないかな。」

 

 そう言う2人は、さっきまでよりも強いオーラを放っていた。

 

(これがプロの力...やっぱりすごい!)

(流れはだいぶ戻ってきてる。ここは戒能プロの親番を早く流して、あがりにいかないと。)

 

 それに応えるかのように、咲と憩も臨戦態勢に入った。

 

 ─ 十一巡目 ─

 

(はった。役はできてないけど、暗刻に{⑧}があるから嶺上開花であがれるかな。)

 

 咲はそう思いながら、どちらかの槓材が場に出ることを待っていた。

 

(さっきの咲ちゃんの嶺上開花、普通は偶然と捉えるやろうけど、宮永照の妹と考えるとあれは意図してやったものに違いない。そうすると、咲ちゃんの手の内には暗刻が最低ひとつはあるはずや。)

 

 七実は先ほどの咲のあがり方を分析していた。

 

(今流れは咲ちゃんにある。・・・ここはちとお灸を据えといたほうがええか。)

 

 そう考えた七実は、手牌の形を少し変え始めた。

 そして、咲の待っていた槓材のひとつ、{⑧}が憩のところから出てきた。

 

(やっと出てきた。これであがれる。)

 

 そう思い、咲が『カン』を言おうとした時、

 

「ロンや。」

 

 その声は七実のものであった。その七実の手牌は

 

{一一七八九①②③⑦⑨789}

 

「純チャン、三色、ドラ1の12000やな。」

「えっ...」

 

 思わずそうつぶやいてしまった。自分の槓材がまさかアガリ牌だったなんて。

 

「不思議そうな顔しとるな、咲ちゃん。せやけど、もう少しどの牌を使って嶺上開花をしようとしているのかはわかりにくくさせなあかんな。」

「・・・私が{⑧}を3つ持ってること、知ってたんですか?」

「最初は流石にわからんかったけど、憩ちゃんや良子ちゃんが{⑦}や{9}を捨ててることとか、うちのところに{⑧}が1個も来てないこと、それとさっき咲ちゃんが嶺上開花であがったことが意図してやったことだとすると、もしかしたら咲ちゃんは{⑧}を3つ持ってるんやないかと思っただけや。」

 

 自分の得意なあがり方をあの一局だけで見抜き、なおかつどの牌で嶺上開花をしようとしていたのかさえ七実は見透かしていた。

 

(流れを引き戻せたと思ったてたけど、いとも容易く止めるなんて...)

 

 咲は改めて2人の実力を思い知らされることとなった。

 

(・・・さっきまでだったらここで挫けてたのかな。でも、今は違う。ここで諦めるわけにはいかない!)

 

咲はまだ諦めてはいなかった。次の南三局、自分の親番へ向けて。




書いてて、そう言えば1回もドラ表示牌書いてなかったなぁと気づいたので、今回から入れてみました。(いつも赤ドラで済ませてたので...)

プロとの試合は次回で終わる見込みです。
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