南三局 親:宮永咲
西:荒川憩 13000
北:戒能良子 29800
東:宮永咲 26600
南:藤白七実 30600
(これが最後の親番...なんとしてもここで多く稼ぐ!)
前局では咲のカンを七実が阻止した形になったが、咲はそれにめげていなかった。
(ふむ、南一局で咲の中の何かが変わったようやな。もう流石にこの程度じゃつぶれんか。・・・っと、今はそれより心配せなあかんほうがあるか。)
七実は良子の方をちらりと見た。真剣な眼差しをしていた。
(今の状況やとうちがトップ。まだあと二局もあるし、得点差もさほどあるわけではないけど、良子ちゃんとしてはこの状況、あまりよろしくないやろうなぁ...)
長年一緒に戦ってきたからか、七実は良子のことが結構わかる方であった。だからこそ、現状が非常に危ういことにも気づいていた。
(とりあえず、ここは直撃喰らわないようにするか。)
七実は安全策をとることにした。可能なら早くあがってこの局を流そうとしていた。
そして、七実のその悪い予感は見事に的中することとなった。
「リーチ」
良子は一巡目で、ツモってきた牌を捨ててリーチをかけた。
(ツモ切りでリーチって、下手したら地和だっかもしれんやないか。)
(戒能プロの手、なかなか高い気がしますう。)
(私の親番の時に...とりあえず今は、直撃を食らわないようにして、反撃のチャンスを伺おう。)
良子のダブリーに全員警戒心を強めた。しかし、その上を良子は行っていた。
「ツモ。ダブリー、一発、門前、一盃口、役牌、混一色、ドラ3の6000,12000。」
「ダブリーで三倍満ですか!?」
「しかも、一発で引いてきちゃうなんて...」
「本気出しすぎやないか、良子ちゃん?」
「ノー、ノー。まだ本気は出してないよ。『アレ』も使ってないし。」
「『アレ』ってなんですか?」
「そのうちわかると思うよ。今は見せてあげられないけど。」
良子は咲の質問を有耶無耶にして返した。
***
南四局 親:藤白七実
南:荒川憩 7000
西:戒能良子 53800
北:宮永咲 14600
東:藤白七実 24600
(良子ちゃんにだいぶひっくり返されたなぁ...)
七実は点数を見てそう感じていた。
(とりあえず安手でもいいから連荘して点差をひっくりかえしていかなあかんな。そうなると厄介なのは...)
七実は卓に着いている3人を見た。
(良子ちゃんが厄介なのはわかってるとして、咲ちゃんも厄介やからなぁ。さっきの局を良子ちゃんがあがったものの、流れが完全に途絶えたわけやないからな。嶺上開花で和了るのもまぐれじゃなさそうやし、槓材は流さないようにせなあかん。逆に、憩ちゃんは最初のあがりからなかなかあがれてないんか。多分、憩ちゃんの能力は良子ちゃんが止めてるんやろうけど...って、ん?)
七実が憩の方を見ると、先ほどとは違う、禍々しいオーラを放っていた。
(なんやこれ!こんなオーラトッププロくらいしか出せへんで!何者なんやこの子!)
このことに、良子と咲も憩の変わりように驚いていた。
(荒川先輩、さっきまでとは明らかに違うよ...)
(これは油断できないな...)
しかし、一番驚いていたのは当の本人の憩であった。これまで麻雀をやってきた中で、これほどまでに強い力を感じたことはなかったからだ。
(なんやこのみなぎってくる力は。これなら、これならうちの能力の本来の力が出せそうや!)
配牌が終わり、親の七実が牌を切った。そして、次の憩の番でそれは起こった。
憩は山から牌をツモってくると、それを見ることなく卓の上に倒した。そして手牌を全て倒して、
「ツモ。地和です。」
憩はそう言った。あまりの出来事に誰も動くことが出来なかった。現状のもとからそのオーラが消えていったとき、3人はやっと動くことができた。
「地和って役満やないか!オーラスでそんなんぶちかましてくるとは...」
「私、地和初めて見たかもしれないです...」
「いやはや最後にこんなことになるとは。そうすると得点は...」
最終結果
1位 戒能良子 45800
2位 荒川憩 39000
3位 藤白七実 16600
4位 宮永咲 6600
「私が1位か。役満ツモられたけど、なんとかなったか。」
「役満ツモっても1位になれはいのはわかってたんで、ビリになるくらいならと思ってあがりにいったんですけど...前半であがりが少なかったのが響きましたぁ...」
「いやいや、憩ちゃんは十分強かったで。プロのうちをここまでやるんやから。」
「そんなことないですぅ。お二人とも、能力を使わないでうちらと戦ってたんですよね?」
「なんや、気づいとったんか。まぁ、勝負は勝負や。どんな形であれ、憩ちゃんはここまで張り合ってきたんやから。」
憩の頭を撫でながら七実は言った。そして今度は、咲の方を向いて
「それもこれも、咲ちゃんの和了りが大きかったなぁ。あそこで雰囲気がガラリと変わったで。」
「私なんかそこでしかあがれなくて、結局4位でしたし...園城寺先輩も力を貸してくれたのに...」
「怜先輩と何かあったの、咲ちゃん?」
「あ、何でもないです!気にしなくて大丈夫ですよ!」
そういえば、園城寺先輩のことは誰も知らないんだった、と咲は思った。
「まだまだ実力が足らないってことはあるかもしれないけど、やっぱり宮永照同様、何かしらの力を秘めていることは感じ取れた。それが発揮された時、咲は姉と同じかそれ以上の力を出せるかもしれないな。」
「良子ちゃんの言う通りやな。いやぁ、今年の千里山は楽しみやわ。こんなに強い後輩が入ってくれて、洋榎たちも心強いんやないか?咲ちゃんも憩ちゃんも、先輩たちを追い抜かせるように頑張るんやで。」
「「はい、頑張ります!」」
咲と憩はそう力強く言った。
「それじゃぁ、今日はこれで終わりかな。なかなか楽しかったよ。」
「うちも勉強になりました。お二人とまたいつか戦いたいですぅ。」
「私もです!今日はわざわざ対戦してくださってありがとうございました。」
「ほな、また今度な。今日はお疲れ様。」
そうして、咲と憩たちは去っていった。
「ねぇ七実、さっき『また今度』って言ってたけど会う予定とかあるの?」
先ほどのさり際で七実の言っていたことに良子は疑問を持っていた。
「いややなぁ良子ちゃん、社交辞令みたいなもんに決まっとるやろ。今度会えるのがいつかわからんのに。」
「・・・の割には次いつ会えるのか知ってるような顔してるよ。」
「気のせいやで、気のせい。せや、それより良子ちゃんに聞きたいことあるんやけど、小鍛治プロが来年からランキング戦とかにも出てくるってうわさ聞いたんやけど、ホンマなん?」
「まだ詳しいことは聞いてないけど、そうらしいよ。」
「おぉ、それは楽しみやわ!あの小鍛治プロが第一線に帰ってきてくれるなんて、こんな嬉しいことはないで!」
「そううかうかしてられないよ。手強い相手が増えるんだから。」
「たとえ相手が強くとも、うちは全員倒すまで!」
「それならまずは私に勝てるようにはしないとね。」
「一応良子ちゃんには何回か勝ってるで!3年の頃の練習試合の時とか...
ふたりはしばらく、そんな会話を続けていた。
***
「ただ今帰りました。」
「遅くなってしまって申し訳ないです。」
咲と憩が部室のドアを開けると、洋榎と竜華が満面の笑みで出迎えてくれた。案の定、怜は竜華の膝の上で寝ていたが。
「ええんや、2人が無事に帰ってきてくれたんやから。」
「せやで、もう夕方になりそうな時間帯やけど、こんなに遅くまでうちらのお昼ご飯を何にしようか考えていてくれたんやなと思えば、なんにも思わんわ。」
「お昼ご飯って...」
咲は部室を出る前のことを思い出した。そもそも私たちが外に出かけた理由って...
「まさか忘れたわけやないやろうな、お二人さん?」
「さて、どんなものを買ってきてくれたんやろうなぁ。」
洋榎と竜華から凄まじい覇気が放たれていた。
「ワァーコノカンジ、アラカワセンパイノオーラスノトキヨリスゴイデスヨ。」
「ホンマカサキチャン。ソレナラコノジョウキョウソウトウヤバイナァ。」
その日の夕方、麻雀部の部室には悍ましい形相で怒る先輩と、涙目な後輩がおったそうな。
これにてプロ編終了です。
書きたいこともかけたので、なかなか満足してます。