一週間前くらいから続きを書こうとしていたんですが、それまでの話の流れをキレイサッパリ忘れていたので、今までの分の話を全てふりかえっていました。(なので所々修正したところもありますが)
幸いある程度書きためてあった分があり、思い出すのにそこまで時間がかからずに済みました(笑)
話の続きとしては、個人戦本戦、怜と咲の戦いから今回の話は始まります。
「ツモ。800,1600です。」
個人戦本戦1回戦、怜の親番で始まったこの試合も今の咲の和了で南場に突入した。ここまで怜があがった回数はたったの1回、東3局の咲の親番であがった時だけで、それ以外のあがりは全て咲があがったものであった。
(しかもその1回は偶然あがれたようなもんやし、ほんまに恐ろしい子やなぁ)
怜は卓上に表示されている点数に目をやった。怜と咲との点差は5000点差程に広がっていた。
(あがられた回数の割にそこまで点差は離されていない。けど、確実にうちが立直するよりも早く和りにきてる)
ふぅ、と深く息を吐いた。今の一巡先を見る能力では、咲に勝つことはできない。怜の立直よりも早くに咲が和了りにきている。しかもその和了りを怜の能力を持ってしても止められない。
普段の練習の時にも咲の脅威には目を見張るものであったが、こうして咲との一騎打ちとなると改めてその咲の強さを思い知らされた。
「ぼちぼち出し惜しみしてる余裕も無くなってきよったか。」
怜自身、咲の対処法を何も考えてこなかった訳では無い。自分の一巡先を見る能力だけでは咲に太刀打ちできないことは、戦う前から感じていた。だからこそ、夏合宿で自分から監督に志願したのだ。
「正直まだまだ体力を持たせるんは大変やけど、ここでやるしかないからな。」
その言葉と共に、怜の雰囲気が今までとは一変した。卓に座っていた3人にも、ここから怜が何かを仕掛けてくることは重々感じ取れた。
そして咲には怜が何を仕掛けてくるかはすぐに分かった。合宿の時に何度も感じた、怜の『二巡先』を見る能力だ。
「ここから本気で行かせてもらうで。もう出し惜しみもなしや。」
先ほどまでとは違う、怜から放たれる凄まじいオーラ。咲が二巡先を見る能力を使う怜とはこれが初めての対局になる。いざその状態の怜を前にすると、やはり千里山の代表を背負うだけの気迫を感じた。
今ある5000点差のリードも、この南1局の怜の親番一つで優にひっくり返る可能性がある。慎重に攻めていきたい場面ではあるが、そこまで悠長なことを言っていられる場面でもない。一気にかたを付けなければそのまま流れを持っていかれ、最悪の場合全国への枠を争う戦いに初戦から食い込めなくなる可能性すら出てくる。
「私も、夏合宿で鍛えた成果を全力でぶつけます。」
咲のその言葉を聞き怜は満足げな表情を浮かべた。そして手牌から1打目を切り出す。
「ほんならここで決着つけようか、全国への切符を手にするのがどっちか!」
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南1局も中盤に差し掛かるころ、咲の手牌は順調に進み一向聴までたどり着いた。
(流れは悪くない。でも、園城寺先輩がさっきからツモ切りをしているところを見るに園城寺先輩はもう聴牌しているとみて間違いなさそう)
咲のその予想通り、次巡、怜は点棒を取り出すと卓に突き立てた。
「リーチや。」
未来視のできる怜のリーチ、それすなわち次の怜の番で和了りに来ることが確定していると宣告しているようなもの。しかも今の怜は二巡先まで見えているため、それを防ぐことは今まで以上に厳しいものとなっている。
(ダメだ、今のこの手を使ってどう頑張っても園城寺先輩の立直は阻止できない。)
咲の必死の考えも空しく、何もできぬままに怜が牌を引いてくる。
「ツモ。リーチ、一発、白、混一色、ドラ1の6000オールや。」
あっさりと逆転されてしまった。そして怜の親番は継続されたままである。さらに今の怜は春季大会のころとは違い、二巡先を見る能力を使っても全く疲れている様子を見せていなかった。
夏合宿での怜自身の能力の強化、味方であった時の頼もしさが今は恐ろしい存在へと変わっていた。
「ここから先、うちの親番が終わることはあれへん。聴牌する前にうちが鳴いてそのまま流局させる。ほんでうちだけ聴牌やったらこの親番は継続される。親番が終わるとき、それはこの試合が終わるときや!」
怜の強気な発言。決して思い上がりなどからくるものではない。怜自身の全国大会個人戦へ出場するという強い意志と、咲に対する先輩としての意地。それらが折り重なった怜の決心の表れがそこには出ていた。
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南1局1本場、ここも怜の先制リーチが入る。
(また園城寺先輩のリーチ。何とかして止めないと。)
しかしこの局、先ほどとは少し違うことがあった。それは怜の捨て牌を咲が鳴けることである。
「ポン!」
すかさず咲が鳴いて怜の捨て牌を取る。
この鳴きをいれたことで、怜の一発を防ぐことができた。しかも怜が本来ツモる牌も取らせなくさせたことで、怜のリーチを完璧に防いだのだ。
(園城寺先輩の捨て牌で何とか流れを持っていかれずに済みそう。このまま反撃の糸口が見つかればいいけど。)
そう思いながら咲は手牌の不要牌を切った。
その時、咲の体が一瞬硬直した。
(待って、なんで二巡先を見れる園城寺先輩がこのタイミングでリーチをかけてきたの?園城寺先輩の未来視があれば私がここで鳴いて阻止してくることもわかったはず。そしたらこれってもしかして)
考えていた時間にしてほんのコンマ何秒かの出来事。しかしそのほんの少しの考えが、牌を切る前に出てこなかった。
「思うとる通りや。今のリーチのタイミング、一発を狙うなら普通はせぇへん。それを用心深く考えられたならうちは和了れてなかったやろうな。」
そう言って、怜は手牌を倒した。
「ロン。立直、断幺九、平和、ドラ1の12000は123000や。」
油断した。あの捨て牌、そしてあのリーチのタイミング、全ては自分からこの和了り牌を引きずり出して直撃させるためのものだったのだ。ゆっくりと考える時間があればこうはならなかったのかもしれない。でもそうさせないようにあそこで逆転劇を見せ、是が非でもこのリーチを止めないといけないという勇み足にさせることがそもそもの布石になっていた。そして怜の一発を止めて気持ちが緩んだところで本命を打ち取りに行くという手順だったのだろう。
「一番厄介な咲を止めるには、多少の無理をしてでも直撃を狙うしかあらへんかったからな。なんにせよ、冷静な判断がつかなくなった時点で決着はついとったけどな。」
そういいながら、怜は2本目の100点棒を場に出した。
何もできないどころか逆にうまく返り討ちにされてしまった。結局、流れは止めることができず、全て怜に持っていかれる形となった。
(完敗だな。園城寺先輩に完全にやられちゃった。)
そう思った咲に、ふと思い出されるものがあった。
初めて麻雀部の部室で打ったとき、誰にも止められないという自信があったカンの連続を、槍槓によって荒川先輩が阻止した。あの時、荒川先輩が言っていた『運を味方につけて、なおかつ相手がどう出てくるかを読む力が大事になってくる』という言葉、それによって夏合宿中のチーちゃんとの最終局面で打ち勝つことができた。
そして今この場面。園城寺先輩の一発を止めることに意識がいってしまい、園城寺先輩の考えまで読み取る意識が欠けていた。
(今の園城寺先輩は、このリードしている局面を絶対に守ってくる。それこそさっき言っていたように、和了ることを捨てて流局することになろうとも、聴牌を取って連荘しようとしてくるはず。そうすると、私が少しでも聴牌の気配を見せたらすぐに止めにかかってくる。まずはこの嫌な流れをどうにかしたいけど)
連続してカンをすることで聴牌に気づいたとしても止めることができないようにすることは可能かもしれない。でもそうするためには手牌に多くのカン材が必要になるし、何よりカンを仕掛けてくることを見越して、怜が先にそうさせないように先手を打ってくる可能性もある。
(嶺上開花も使えない今のこの状況、いったいどうすれば)
そう考える咲の頭に、ある一つの妙案が思い浮かんだ。
それは夏合宿中、咲が七実から課せられたネット麻雀で、嶺上開花を使えない状況を打破するために考え出したものである。とはいえ、あの時はそれを実践してみたものの一度もうまくいくことがなかった。
(園城寺先輩がリードを守ろうとしていて、尚且つ私の嶺上開花を警戒しているなら、もしかしたらこの作戦はうまくいくかもしれない。あとは運が味方してくれるかどうかだけど)
決して成功する確率の高い作戦ではない。怜の意識がこのことに気づかないことと、なにより運が自分に向いてこないとできないものである。それでも、この圧倒的に不利な状況をどうにかするためには、今の咲にこの方法しか残っていなかった。
(厳しいものだとしても、これを成功させないとどのみち勝ち目はない。だったら望みの薄い賭けだとしても、そのわずかな可能性に賭けるしかない!)
咲の強い決意を胸に、南1局2本場が始まろうとしていた。
昔思っていた話の流れとは若干違うかなって気もしますが、概ね同じようには進められているかなと。
残していった伏線だったり何だりも、そのまま放置しておくわけにはいかないので...
次回の投稿がいつ頃になるかは不明ですが、2,3週間後を目処に投稿できればなと思っています。
そして、ものすごく長い間次話が投稿されないにも関わらず、待っていてくださった皆さん、本当にありがとうございます!こうして続けていけているのも支え合ってのものだと身に染みて感じました!
今後も投稿を続けていきますので、是非ともよろしくお願いします!