もう一つの千里山女子   作:シューム

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今回は試合の最後まで書いたのでいつもよりは少し長くなっています。




第7話「オーラ対オーラ」

南三局

西:愛宕洋榎 25400

北:荒川憩 29200

東:宮永咲 13200

南:園城寺怜 32200

 

「なんか咲えらい雰囲気変わってないか?ものすごいオーラや。」

 

泉は風香に話しかけた。

 

「うん、あんな咲初めて見たよ。あれが咲の本気なのかな?」

「どうやろ。まだ上があるかもしれんよ。」

 

泉と風香は自分たちの親友であるはずの咲にどこか恐怖を感じた。

 

(さて、この状況どないするか。宮永さんの能力が『点数調整』と『嶺上開花』以外にもあるとしたら厄介やけどそれだけなら宮永さんの番をうちが先を読んでずらす今まで通りのやり方で何とかなるやろ。)

 

怜はそう考えて、今まで通り一巡先を読んで牌を捨てていった。和了れそうなら自分が和了り、咲が嶺上開花をしようとしたらそれを止めるという自分の役割を全うするために。しかし、

 

(なんやこれ!まだ序盤やのにもう嶺上を使用としてるんか!ってことはもうすでに聴牌してるんか!)

 

怜には咲がこの後の自分の番に四筒を使って嶺上開花をする未来が見えた。

 

(何とかせなアカンな。ここで白を切ったら多分洋榎が鳴いてくれるはずや。頼むで!)

 

怜はそう言って自分の手牌にあった白を切った。

同時に「ポン」という声が聞こえた。鳴いたのは洋榎だ。

 

(今の怜の切り方的に、宮永さんが嶺上をするのを読んでうちにわざと鳴かせたってことやろうな。)

 

洋榎は不要な牌を捨てた。洋榎は怜の考えが読めていた。

そしてその後憩が牌を引いてくる。引いたのは四筒。

 

(これが宮永さんの槓材か。とりあえず四筒と交換して一筒を捨てるか。)

 

憩が一筒を手に取って捨てようと置いた刹那、憩は雷に撃たれたような感覚を受けた。

 

(あかん、この牌は捨てたらあかん!この牌には何かがある!)

 

しかし、置いてしまったためもう戻すことは出来なかった。そして、憩のその悪い予感は的中してしまう。

 

「カン」

 

対面にいる咲が言った。そして今までこの部屋を包んでいたオーラがより一層強くなる。

咲は憩の捨てた一筒で槓をした後、嶺上牌を引いてくる。

 

(これで嶺上開花が成立して宮永さんの連荘ですかー。次で止めないとですぅー。)

 

憩はそう思っていたが、咲はこれで終わりではなかった。

引いてきた嶺上牌と手牌の内の3枚を倒して、

 

「もう1個、カン!」

 

その言葉を聞いて場に戦慄が走った。

 

(なんやて!出現率の低い嶺上開花を2回もやってのけたって、人間か、この子!!)

(倒した牌も筒子やからもしかして手牌の形は清一か!?鳴いた状態でも嶺上開花があるから最低でも6翻の跳満かやて!)

(そして、ルール上大明槓で和了られた場合それをさせた人、今回はうちが、責任払いになっちゃいますぅー。)

 

そう思っているうちに、咲は嶺上牌を引いてきて、今度は手牌全てを倒した。

 

「ツモ。嶺上開花、清一、ドラ4の倍満です。」

 

咲のその恐るべき力に皆唖然とするばかりであった。誰もこの事実を受け止めきれないでいた。そのため、正気に戻るには少し時間がかかった。

場の状況が理解できるようになった時、怜はある疑問に気づいた。

 

「ちょい待ち。宮永さん、今『ドラ4』って言うたけど、ドラなんてどこにものってないで。」

「いえ、ドラならちゃんとのってますよ。」

 

咲はそう言って王牌の方へと手を伸ばした。そして、まだ表示されていなかった二つ目の槓ドラ表示牌をめくる。

そこには九筒が書かれていた。

 

「これでドラが4つのってドラ4です。」

 

これには一同言葉が出なかった。

 

(ドラがのることまで予測してたんか。ほんま、化け物やろ!)

(ドラ表示牌を見ずに分かったってことはもしかして宮永さんの能力は嶺上開花じゃなくて王牌の支配なんじゃないですかー?)

(しかもこれで宮永さんの連荘...なかなか厳しいで。)

 

****

 

南三局 一本場

西:愛宕洋榎 25400

北:荒川憩 5200

東:宮永咲 37200

南:園城寺怜 32200

 

(ここでまた宮永さんに和了られたら最悪憩がとんで終了や。なんとしても和了らせないようにせなあかん。)

 

洋榎はそう思って自分の配牌を見る。

 

(悪くないな。鳴けたらかなり早く和了れる手や。ただ、さっきみたく宮永さんがそれより早く和了ってくる可能性も十分あるしな。)

 

そう思っていると、憩が始まってすぐに洋榎のポン材を捨てた。

 

「それポンや!」

 

これにより洋榎の手はかなり前進した。

そして、洋榎が牌をひとつ捨てた後、憩の番でまた洋榎のポン材が捨てられる。

 

「それもポンや!」

 

(なんや、もしかして憩は早くこの局を終わらすためにわざとこんな事をしとるんか?憩でさえそこまで警戒しとるとは...これは早く和了るしかないな!)

 

今度の憩の捨てた牌は洋榎が鳴けるものではなかった。洋榎がもう既に聴牌していることに気づいたのだろう。

そうしているうちに、洋榎の番までまた戻ってきて、

 

「ツモ!断幺九、ドラ1の700、1300や!」

 

これで洋榎が和了ったことで咲の二本場は阻止できた。

そして試合はオーラスへと突入していく。

 

****

 

南四局

南:愛宕洋榎 28000

西:荒川憩 4500

北:宮永咲 35900

東:園城寺怜 31500

 

(まだ十分に逆転の余地はある。安手であっても連荘すればいいだけやし。それより、こんな点差になってるのに憩、笑っとる...)

 

怜が憩の方を見ながらそう思った。この状況を楽しんでいるように見えたからだ。

 

(いつぶりかな、こんなにピンチなこと。昨年の個人戦の決勝が最後かな...あのとき、うちは結局巻き返せるほどの力がなくて宮永照さんに負けちゃったんだっけ...でも、今は違う。今のうちには戦える力がある。ここで負けたら昨年の二の舞や!)

 

その時、咲のオーラに包まれていた部屋に新たなオーラが混ざってきた。

 

(このオーラは憩のものか!しかし、こんな憩初めて見るで。)

(せやけど、宮永さんを抑えきらないと意味ない。現に、次の番で宮永さんは槓をして嶺上開花で和了ろうとしておるし。ここは憩の方に鳴いてもらうか。)

 

怜は憩の鳴けそうな牌を捨てた。しかし、憩はその牌に見向きもしなかった。

 

(これじゃないんか!アカン、宮永さんが槓をしてまう!)

 

そして、結局誰も鳴かずに場は進み、咲の番となり

 

「カン」

 

咲はそう言って手牌の九萬を倒した。そして王牌へと手を差しのべる。

場は沈黙していた。誰もがここで咲が和了ってこの試合は終わると予感していたからだ。

しかし、その沈黙を破るかのような声が発せられた。

 

 

「その嶺上は取る必要ないで」

 

 

全員がその声の主の方へと顔を向ける。声を発したのは憩であった。

 

「宮永さんがカンと言っとた時にロンって言うたんやけど聞こえなかったですかぁー。」

 

その言葉と同時に憩のオーラは咲のオーラを凌ぐほど凄まじいものとなった。

 

「槍槓や。その槓は成立せえへん。」

 

槍槓。嶺上開花よりも出現率の低い役で、普通は他家が加槓した時にその牌が自分の和了牌だったときに成立する役である。

 

「せやから、今の宮永さんの暗槓には槍槓できひんはずや...ある一つの役を除いて...」

「ほんま、崖っぷちに立たされた時の勝負強さが半端ないなぁ。暗槓で槍槓したってことはアレなんやろ?」

「はい!」

 

憩はそう言って手牌をゆっくりと全て倒した。

 

「国士無双ですぅー。」

 

かくして、大大逆転の末この勝負は憩に軍杯が上がった。

 

****

 

最終結果

荒川憩 36500

園城寺怜 31500

愛宕洋榎 28000

宮永咲 3900

 

「うーん、やっぱり先輩方には敵いませんでした。」

 

対局が終わったあと、咲は背もたれに寄りかかりながらそう呟いた。久々に本気を出したせいかかなり疲れていた。

 

「何言うてるんや。千里山のレギュラー相手にここまで善戦したんやからたいしたもんやで!それに、多分宮永さんにはまだ眠っている力があると思うで。それが目覚めたらどうなる事やら...」

 

洋榎は咲をフォローするかのように言った。ただ、咲が化けたら手がつけられないかもしれないと思ったのは本心であった。

 

「で、久しぶりに麻雀をやってみてどうやった?」

 

いつの間にか、ソファーに座っている竜華を膝枕にして寝転がっている怜が咲に質問した。

 

「そうですね...やっぱり負けて悔しい気持ちはありますけど、それ以上に打ってて楽しかったです。久しぶりにこんなに強い人とやりましたし。」

「そうか。ただ、全国の舞台にはうちらと同じかそれ以上に強い連中がわんさかいるからな。」

「宮永さんのお姉さんとかもですねぇー。」

 

憩のその言葉を聞いて咲はついさっき見た記事を思い出した。

 

(お姉ちゃんは私のことを待ってくれてるんだ。そしたら、今度は私がお姉ちゃんに会いに行く番だ!)

 

咲は決意を固めたのか改めて麻雀部の先輩たちの方に向き直った。

 

「先輩方、私はお姉ちゃんとの約束を果たすために、全国の舞台で待っているお姉ちゃんに会うために全国の舞台に行きたいです。だから...だから、私を麻雀部に入部させてください!」

 

咲のその言葉を聞いて一同顔を合わせたあと、笑顔で咲の方へ向いて、

 

「やっとその言葉を言うてくれたか。ずっと待ってたんやで。」

「宮永さんが入ってくれればかなりの戦力になりそうやからな。」

「あ、そうするとお姉さんと区別がつかないですから『咲ちゃん』って呼んだ方がいいですかね?」

「まぁ、その話は後でもええやろ...とりあえず、」

 

「「「「「「ようこそ、麻雀部へ!」」」」」」

 

先輩と同級生の暑い歓迎を受けて咲今日、麻雀部へと入部することになった。




これにて咲が麻雀部に入部するまでの話は終わりです!
次回からはいよいよ、春季大会編になります!また、日常的なお話は後書きにオマケとして書いていこうかなと考えてます。

さて、今回の話の途中で加治木先輩のあのセリフが出てきましたが、あれを入れた理由については個人的にあそこらへんの話が結構好きって言うのがあります。加治木先輩の槍槓かっこよかったです。(ちなみに今後加治木先輩は出てくる予定はないです。出てもオマケくらいかもです。)
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