とある科学の速度標識《スピードサイン》   作:直視明光

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少し小説と違う部分はわざとです。


過去編第1章 むかしむかし Long-Long-Ago
始まりの前に


「さて、この長点上機学園も始まってから五周年を迎えることが出来ました。学園地区と呼ばれているこの辺りでも…」

 そんな事言われなくてもみんな分かっている。どうして校長というものはどこでも無駄な話が多いのだろうか。いつまで立たせるつもりだ。そんなことを考えながら時宮進(ときみやすすむ)は大きなあくびをした。周りの生徒たちもうつらうつらしている者が多いが、さすがにここまで目立つ行動をした者はいない。見かねて、隣にいた女子が声をかけた。

「時宮君、一応記念式典なんだから、真面目に聞いている振りをしないとまずいよ。私達、最高学年なんだし」

 それを時宮は眠そうな目で聞いた後、馬鹿にしたように笑った。

「高2が最高学年のポッとでの学園だろう。あー早く終われ、今度近くにできるっていうお嬢様学園を早く見に行きたい」

 それを聞いたとたん後ろから、別のやつが話しかけてくる。それを発端にして、加速度的に生徒達は騒がしくなっていった。

「常盤台のことか。それはあきらめた方がいい。 今朝見に行ったんだが、警備がひどくて入れたもんじゃない」

「後ろの奴が話しかけてくんなよ。目立つだろ。ていうかお前それで遅刻したのか」

そうこう話しているうちに記念式典は終わった。

もう授業もないし、今日はそのまま家に帰れるのだが、普通なら、まだ二時間目ぐらいの時間である。教室の中には、『 俺達今日なんで学校に来たんだろう・・・』という負の雰囲気が漂っている。

 帰るに帰れず、話している間にその発散されない力が集まり、熱気へと変わっていく。誰ともつかずに、ポツリポツリと話し始めるまで、さほど時間はかからなかった。

「なあ、皆で遊園地にでも行かないか」

「それいいな、うち帰ってもやることないし。」

「お前は追試の勉強をしろよ。いいけど、どういう風の吹き回しで?」

「この学校が出来てからのことを皆で振り返ろう!とかでしょ。ていうか、遊園地まで行く気力ないから。誰か他の案だしてよ」

「新しくできた大きな服屋で買い物は?」

「女子だけで盛り上がってないで男子のことも考えろよ」

「あの、最近出来たっていう家政婦が出迎えてくれる 喫茶店はどうでしょう」

こうなるとみんな止まらない。黒板に即席の投票が行われる。結果、何か食べたあとでカラオケに行くことになった。

 

そんなこんなであっという間に、昼を皆で食べることになった。高校生の行動力のなせる技である。

「 焼き肉!」

「昼からそれは無い。ラーメン、当然豚骨で!」

「 は、塩にきまってるだろ」

「 ラーメン派が内輪もめしている間に、ピザを提案してみる」

クラス内が台風のようにもめる。そこに、本命が投げ込まれた。

「 すごく安いステーキの店知ってるぜ。何でも新しくできた高層住宅で作られた牛を使ってるらしく。」

「 「「 それに決めた!」 」」

クラスが一体感に包まれた。手を合わせている者や、ガッツポーズをしている者もいる。

その時ドアが叩かれ、クラス担任がそこから入ってきた。うるさくしていたので、怒られるのかと教室はすぐに静かになった。

「おーい、時宮いるか。いなければ明日でもいいんだが」

 その言葉を聞いたとたんに教室はまたうるさくなった。なんにせよ、怒られるのは時宮で、自分たちには関係ないと分かったからである。時宮には同情の目線が寄せられた。それを一身に浴びながら、時宮は迷惑そうな顔をして、

「何ですか、今見ての通り忙しいですが。」

 時宮がいるのをみて、担任はほっとした顔になる。

「ああ、居てくれて良かった。薬味先生がお前と話したいことがあるって言うから」

周りの視線が同情から好奇へと変わっていくのを感じる。一人だけ呼び出しとは。近くにいた者たちも時宮から離れて行く。とばっちりを食らいたくないのだろう。

「おい、まさか置いていくつもりじゃないだろうな。 」

止めようとするが、周りの生徒たちは『時宮、お前の事は忘れない。』『さよなら時宮君』と言って離れていく。最後の一人に時宮が視線を送ると、そいつはにやりと笑って、

「いいじゃねーか。薬味先生。胸が小さい以外は美人だろ。2人っきりで楽しんで来いって」

と言うなり、

「時宮は後から行くってさ。ほら、行こうぜ」

とみんなを先導して行ってしまった。

「おい、安達!俺はそんな事言ってないぞ!それに店どうやって行けばいいんだよ、俺携帯まだ持ってないんだぞ!」

時宮の叫びは、皆のざわめきに押し流されていった。同級生の女子の1人が、『 ゴメンネ』と軽く頭を下げてくれたのがせめてもの救いか。

「あー、時宮」

 担任の声は気の毒そうだったが顔は笑っている。

「何ですか、人が落ち込んでる時に」

 担任はへらへら笑いながら、

「だから、薬味先生が用があるって」

「あーはいはい。そうでしたね。それで何の話ですか」

 時宮の態度はだいぶ投げやりになってきている。

「俺に言ったって分かるはずないだろう。何でも、お前の能力についてだったか」

「普段は使えないのに、こんな時だけ邪魔をするのか……」

時宮は毒づいてから一礼し、保健室へと向かう。

ここは学園地区、最新の科学と、()()()の研究を誇る町だ。




次回は1週間以内に投稿します。
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