次回は頑張ります。
二人がエレベーターで上に行くと、そこは学園都市にはどこにでもある古ぼけた学生寮の一室だった。
「すげぇだろ。まさか誰も学園都市統括理事会の一角が普通の寮に住んでいるとは思うまい!」
時宮進(だいたい60歳)はまるで秘密基地を自慢する小学生のような眼をしていた。
「私入る時にもう一回見てるんですけどね…」
秘密基地自慢とかガキか、と月兎は冷めた目で時宮を見ていた。
「そういうこと言うなって。このアパート、管理人から他の住人まで全部本物なんだぜ。それでいて地下には僕の趣味空間満載、防御も完璧、協力者を入れても、『また隣の部屋のやつは女を連れ込みやがって』で済む。住人は定期的に入れ替わるし、いろんな学校の生徒が混じってるから、顔がバレることもない。隠れ家として理想的だろうが」
まさに年寄りの自慢話、自分の渾身の作品の価値を認めてもらうべく、時宮は熱弁をふるった。その報酬たる月兎の反応は!
「私、あなたの彼女と思われたくないんですけど」
そこか、そこに反応するのか!と時宮は頭を抱えた。しばらく時宮は考えを巡らせたが、
「もういいよ、さっさとその天才様の所に出かけよう。こういうのはやっぱり男のロマンだしな!」
「こいつときたら。なぜ少し嬉しそうなんですか、正直引きますよ」
こういうのは、分かってもらえないことに価値があったりするのだ。
二人は外へ出た後で、暫く待つ。何でも、『タクシーに見せかけた連絡車両』がもうすぐで来るらしい。このあたり、腐ってもお偉いさんと言った所か。
ちなみに、学園都市はその住民の8割が学生であるため、タクシーと言っても学生が速く移動するために払うお金などたかが知れている。そのためそんなに料金はかからず、その代わりにドリンクや車内放送などの、オプションで追加料金を取って少ない客を取り合っている状況である。
待っている間暇なので、その天才の情報でも手に入れようと時宮は考える。
「で、その天才様はどんな研究者なんだ、やっぱあれか、『木原』?学園都市第一位を倒すってことは、まずその能力を作った奴から話を聞くってのがセオリーだろう」
木原一族、この街のあらゆる科学の最先端、それも闇の部分ばかりを掌握する者たちである。その数は五千人に及ぶとか。どんだけいるんだよ。闇そんなに思いつかねぇよ。
「いや、違いますよ。彼の能力を開発したのは確かに『木原』の一人ですが、その人物からはすでに話を聞き終わっています。そういう能力関係のアプローチは失敗したので、今度は違う方面から話を聞いてみようと思いまして」
「じゃあ俺たちが話を聞くのは誰だ?」
「本物の天才、学園都市統括理事のブレーン、その名も雲川芹亜!」
ドン!なんて効果音が付きそうな感じで月兎が言ったため、それに合わせて時宮は何となく拍手をしていた。
そんな茶番を二人がやっている間にタクシーが通りかかる。外見は普通だが、よく見ると左のライトが少し壊れている。月兎いわく、これが協力車の合図らしい。
一応手を挙げて車に乗り込むと、そこにはごく普通の運転手しかいなかった。二人が載ると気さくに喋りだす。
「こんにちは、本日は四葉タクシーに乗ってくださってどうもありがとう。目的地を伝える前に、掛けてほしい曲をリクエストしてくれないかな。タクシー会社も最近は大変で、うちはお客の好きな曲を流すサービスをしているんだ。料金はそのまま、どうだい」
時宮が口を開こうとしたとき、月兎が時宮の膝を思いっきりつねって黙らせて、注文を手早く伝えた。
「ピアノソナタ月光、はいはいこれで
そのセリフを最後まで聞かずに、運転手は『は、はぃぃ』と怯えた声を出して車をスターとさせる。
(ホントにそんなサービスやるわけないじゃないですか、こいつときたら、少し考えたらどうなんです。やるとしても絶対金取りますって)
こっそりと後部座席で月兎が話しかけてくる。
(はぁ、まあそんなもんか、ていうかあれがおまえの素かよ)
(なんですか、その目は。何かご不満でも。)
(お前わたくしにビビりまくりじゃねぇか。あんなのでも気を使ってたとはな。)
(ぐ、そんなことないですよ。敬語で話しているのだってそっちの方が仕事が進めやすいからですし、)
(ま、何でもいいよ。ああ、さっきまでの鬱憤が全部晴れていく気がする。)
時宮が満足げな表情を浮かべる横で、月兎は八つ当たり気味に、
「ほらほら、あと十分だってー。このままのペースで間に合うと思う、ねぇ」
と運転手を焦らせていた。
いまだかつてここまで話が進まないSSがあっただろうか(泣)
まだ話して部屋を出ただけなんですが。
過去編と現在線のスピードの差がすごい…
そういえば何かのセリフの最後って丸着けないんですね。今までの人生全部間違ってきました。どうしましょう(いやどうしようもない)