とある科学の速度標識《スピードサイン》   作:直視明光

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 雲川さんSugeeee!回です。


評価

「「すいませんでした」」

 ベットの上に座ってそっぽを向いている雲川に向かって、時宮と月兎は土下座をしていた。雲川様は大変ご立腹していらっしゃるようだ。

「いやあ、雲川さんはこんなに若いのに立派だな、俺がこのぐらいのころはぼんやりしているだけだったよ、なあ月兎」

「 そうですね越崎さん、さすが天才!」

 2人でおだててみたが、雲川さんが答えてくれる様子はない。それどころかそのままボソリと、

「 そんなので機嫌が直ると思っているなら舐められたものだけど」

と呟いた。いよいよ二人は慌てて、

「 そうだ、持ってきたジュースでも飲むか」

「 そうですね、ほら」

と帰り道に飲もうと鞄に入れて持ってきていたペットボトルのコーラを取り出す。

 ここまでオーソドックスなのは学園都市だと逆に珍しく、そこらの学生なら目の色を変えて欲しがるはずなのだが。

 雲川はそれをチラリと振り返って見た。それからそれを受け取り、飲み出す。

 これでようやく機嫌を直した、飲み物で釣られるとはやっぱりガキだなと時宮と月兎が目配せを交わしていると、8分の1ほど一気に飲んだ雲川が息をフーと吐き出しながら、

「 それで何の用で来たんだ、()()()()()()()()()、要件は手短に頼むけど」

「 ああ、君も知っていると思うが、今学園都市第一位の野郎が暴れているだろう。そいつを倒す、まではいかなくても無力化出来ないか君の知恵を借りたいと、ん?学園都市理事?」

「 ああ、まさかバレていないとでも」

 何だってーと時宮は大きく後ろに下がりそうになったが、体勢を立て直した。この間顔色は全く変わっていない。渡ってきて修羅場の数か違うのだ。

「 何を言っているのかさっぱりだな。俺は越崎太一だ。時宮進は俺の上司だよ、全く、ブレインだからって何でも疑うのはやめた方がいいぜ」

 いくら修羅場をくぐっても、鍛えられたのは精神と肉体だけで、話術は鍛えられなかったらしい。ミステリの犯人ばりの言い訳である。これでは自分が時宮進だと自白しているのと同じことだった。

 現に隣では、月兎が心の中で頭を抱えていた。そのセリフを傲然とした様子で聞いていた雲川は、時宮が話し終えてからゆっくりとした調子で話し始めた。

「 それにしてはおかしな所がある。」

 右手の人差し指を立てて、

「 まず第1に、お前達の関係。私は学園都市理事の1人の直属のエージェントが来ると聞いていた。だったら二人で来た場合、その階級は対等なはずだけど。しかしさっきからの言動を見ていると、どうやら男の方が女の方より上の立場にあるらしい。相棒関係にもみえない。とすると、上司と部下とするのが自然だけど」

 普通なら口を挟みたくなるような長台詞が続くが、時宮も月兎も雲川の妙な迫力のせいで何も言えなかった。雲川は立てる指を2本に増やして、

「第2に、お前の格好。少しは隠そうとしているようだけど、後頭部に何かの機械が付いているのは動きからすぐに分かるけど。演算装置の補助があった方が能力が上手く使える能力者は沢山いる。でも、ここまで小型なのは珍しいし、()()()()()()()()()()()()()()()が効かないところからも見て、最高級品だと言えるけど。いくら強くても、エージェント1人にそこまでのものを 与えるのは割が合わない」

 所々に不穏なワードを紛れこませながらも、雲川の話は続いていき、理由が十を越えたところで、

「 だから、最終的に渡されたコーラから、お前が時宮進だと結論を出したわけだけど、なにか質問は?」

 そんな事を言われても、時宮と月兎は圧倒されてグウの音も出ない。結論こそ時宮がほとんど自白してしまったとはいえ、ここまでの論理展開は完璧だった。

 これが天才の実力か、雲川芹亜恐るべし!と2人が震えているのをしばらく堪能した後、雲川は

「 まあここまでのは全部冗談だけど」

と笑っていった。時宮が驚く前に、月兎が猛然と、

「 じゃあどうやって私たちが時宮進とその美人補佐だと分かったと言うんだよ、こいつときたら!大体ここに来てからまだあなたとは二言三言しか交わしてないのに、それに……」

とほとんど切れ目を付けずに話し続けていく、さっきまで我慢していたのが吹き出しているらしい。所々で地が出ている。それをうっとうしげに手で払いながら

「 私は1度もお前のことを美人とは言っていないけど。簡単なことだ、私の雇い主が誰だと思っている。そこの男の正体は直接聞いただけだ」

 そこまで話したところで、彼女の携帯が鳴る。

「 ほら、私の上司(貝積継敏)からだけど」

半ばひったくるようにして時宮は携帯を取った。

「 楽しんでくれたかね、()()

 渋みのある低い声が聞こえてくる。貝積継敏、学園都市統括理事会の中では、比較的良識派として知られている男だ。

「それが先輩に対する態度か、貝積。人の秘密を勝手に話してんじゃねぇよ。」

 学園都市内でも、時宮の正体を知っている者は10に満たない。貝積もその1人だが、時宮は当然しっかりと口止めしてあった。とはいえ、正体を隠したり若さを保ったりするその理由までは教えていない。

「 こうすれば彼女をより早く信頼してもらえると思ってね。効果はあっただろう」

「 確かに、あれだけ理由をでっち上げられた時点で、さすが天才といった所だろう。だからって営業妨害していいってことじゃないと思うけどな」

「 そういってくれるな。そもそもそんなに隠すようなことでもないと私は思うがね。若作りしたり、様々な方法で自らを偽っているのは統括理事会の皆がやっていることだろうに」

「 俺には俺の考えがあるんだよ、俺の誤算はお前がそこまでして他人を持ち上げる事だった。なにか理由でも?」

そこで2人の間に幾ばくかの互いの考えを窺うような時間が流れる。それから貝積は少し笑っているような口ぶりで

「 私にも私の考えがあるんだよ、先輩。気にしないでくれたまえ、もう切って構わないかね」

 時宮はしばらく考えたあと、

「 ああ、ひとつあったな」

「 なんだね」

「 その勿体ぶった話し方をやめろ。こっちが部下みたいじゃないか。自分から歳をとったと言っているようなものだぞ。大体お前は昔からだな」

 それに応えたのは、ツー、ツーという電話を切った後の音だった。長い説教には付き合ってられないということらしい。

 

 

 




 学園地区能力者紹介その1
第二位 水分掌握(リヴァイアサン)
 予めある程度時間をかけて指定した100ℓ以内の水分を自由に操る能力。距離は25m程度。
 水を予め指定しなくてはならない、量が少ないなどのデメリットがあるにもかかわらず、第二位の地位についているのは()()()()()()()()()()()()()()自由に操れるため。
 戦闘では、水を水蒸気に変えて爆発を起こしたり、能力で実際には有り得ない硬度の氷の剣を作って戦う。
 能力者は盲目の青年であり、普段は体の周りに自らの水蒸気を浮かばせることで周囲の物体の位置を把握している。第一世代唯一の大能力者(レベル4)でもある。現在大学1年生。学園地区では最年長組。
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