とある科学の速度標識《スピードサイン》   作:直視明光

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もう二度とああいう事は言いません(反省)
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結論

 後輩に一方的に電話を切られて、時宮は少し鼻白んだが、また掛け直すというわけにもいかない。仕方なく時宮はやや乱暴に携帯を投げ渡した。雲川はそれを難なく受け取り、軽く切り出す。

「さてと、お前が電話している間にこの女から大体お前の実力は聞いたぞ」

ベットの上に座っている月兎と雲川の周りには、一方通行(アクセラレータ)と時宮の能力について書いてあると思われる大量の書類が散らばっていた。

「ああ、それでどう思う?」

「話にならないけど、これでよく戦えると思ったな」

 にべもない。

「おい、そりゃないだろ。もう少し何か前向きなことは言えないのか」

 今日何回実力差について話されたことか。さすがにもう慣れた、そう思った時宮だったが、口調からは馬鹿にされた怒りが隠しきれていなかった。

「この報告書を読む限り、お前の攻撃は種類は違えど、結局単純な物理攻撃か異能による直接干渉に集約されるんだろう?」

「そうひとくくりにされると何だか違うと言いたくなるが、まあそうだな、ていうかそうじゃない能力者なんているのかよ」

一方通行(アクセラ―レータ)にはそのどれもが通用しないんだ、これでどうにかしろと言う方が無理だと思うけど」

 取りつく島もなかった、どうしようもないと言っていい。とはいえ、二人はこれではいそうですかと引き下がるわけにもいかない。時宮は急に黙ってしまったが、月兎は違った。

「へー、結局そういう事言うんだ、へー」

「何だと」

「だって結局お手上げって事じゃん、そんな結論なら私でも出せるっての、こいつときたら。天才って言っても結局はただの小学生ってことなんでしょう」

「ああ、その私にヘラヘラ意見を聞きに来たくせに偉そうだな!」

 見た目は小学生と中学生、してその実態は学園都市統括理事子飼いの天才と、学園都市最暗部を担う男の右腕(自称)の間に火花が散る。

「そこまで言うなら考えてやるけど、もしそれがうまくいったらお前土下座してもらうからな」

 すぐにムキになるのはさすがに年相応である。そういうと雲川は資料を凄いスピードで読み始めた。

「おい月兎、二人で盛り上がってるのはいいが」

「盛り上がってなんかいません、時宮さんも何か言ってやればいいじゃないですか、ここまで来たのは何だったんだとか」

「お前も俺の能力をさんざん馬鹿にしてきただろうが、それより、問題は一方通行(アクセラレータ)だろう。ヤツが完全に学園都市の制御下を離れて、外のメディアに放送されるとかあったら大変だぞ」

「だからってどうこう出来るわけじゃありませんよ。何ですか、これから時宮さんが戦ってきてくれるとでも?」

 そういった月兎の前で時宮は不敵に笑った。

「ああ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、こいつときたら!もし負けたら」

 さすがに本気で言っているとは思わなかったらしい、月兎は目に見えてうろたえ始めた。

「気にすんなって、速度標識(スピードサイン)は逃走向きの能力だからな、まあ足止めぐらいは出来るだろうな」

「私の責任になるんでホントにやめてくれませんか」

「いきなり真顔になるんじゃない、さてと、この事件が終わったら二人で飲みにでも行こうぜ」

「時宮さん…」

 表向きは感動したように見せかけながら、月兎は心の中で笑っていた。むしろほっとしていた。前も言ったように、月兎の任務は速度標識(スピードサイン)一方通行(アクセラレータ)を戦わせることである。それさえ達成できれば時宮の事はどうでもいいのだ。時宮のように、それを表に出したりはしなかったが。

「おい、いい空気になってるところ悪いが、学園都市第一位を倒す方法を思いついたぞ」

 その空気を雲川がぶち壊した。

「何?それでどんな案なんだよ。断続的に爆薬を打ち込んで酸素をなくすとか言うのはなしだぜ」

 一方通行(アクセラレータ)が学園都市第一位の能力者という事は、学園都市で最も研究価値がある人間であるという事を示している。万が一殺してしまうと、その損失は天文学的な金額となるのだ。

「そんなことは分かっているけど。いいから聞け」

 時宮と月兎は二人で雲川の前に座った。雲川の高説が始まる。

「まず、私は初心に立ち返ってみた。そもそも私は心に関する専門家で超能力や物理法則は専門外だ。人並み以上にこなせる自信はあるがな。それなのに私に超能力に関する問題を持ち込むとは、」

 そこから長い話が始まりそうになる。月兎がスッと手を上げて、

「あ、そういうのは巻きで」

「あ、ああ…。とにかくそういうわけで私が目を付けたのは、まだこの学園都市第一位が幼いという事だった」

 お前だって十分幼い、と時宮は呟く。

「黙れ、聞こえてるぞ。つまり、一方通行(アクセラレータ)の能力には勝てないが、まだ幼いその使用者には勝てるという事だな」

「いいから早く本題に入って入って、こいつときたら、勿体付けないと話せないんですか」

そう月兎が言った所で雲川が立ち上がり、

「さっきからいちいち茶々を入れさせないと先へ進まないのか!いい加減にしろ、私は別にこのまま終われせたっていいんだぞ」

 勢いよく怒鳴った雲川に二人は気おされ、静かになる。

「ああもう、要するに、能力を使用する方の戦意を削いでしまえばいいけど。幼い子供が大量の武装した人間に囲まれて化け物扱いされたら、すぐに心が折れてしまうだろう。考えてみれば簡単なことだったけど。まあ難解な物理的問題は簡易的な心理的側面によって解決される、と言う奴だな」

 時宮は深く頷いている。納得したらしい。

「あのー、一応言っておきますが、相手は小学生ですよ?」

 月兎が申し訳程度に言ったが、この場にそれを気にする人間はいなかった。そもそも、超能力者を本名ではなく、その能力名で呼ぶような人間たちである。そのあたりは結構ドライだった。

「ただ、この方法には一つ問題があってな」

「ん?俺には完璧に思えるが」

一方通行(アクセラレータ)が黙って囲まれているとは思えん、その間、気をそらす人間が必要だ」

「ああー、なるほど。それは結構致命傷だな。あれを止められる人間となると…」

 そう言っていた時宮は視線が自分の方を向いているのを感じた。それは徐々に強くなっていき、

「ああ、分かりましたよ。やればいいんだろうやれば。はあ、戦わなくていいと思ったんだけどな」

 結局時宮はそれを受け入れざるを得なかった。




 学園地区能力者紹介その3
第四位 天ノ羽衣(てんのはごろも)
 体の周囲に、文字通り衣の様な特殊な力場を発生させる能力。飛んできた攻撃はそれがレーザーであれ爆発であれことごとく滑ってあらぬ方向へ外される。応用として、重力をそらして文字通り飛ぶこともできる。学園地区の能力者では珍しく、能力名の読みが日本語である。戦闘能力にはあまり役立たないが、防御能力は絶大である。衣の名前通り、顔と指先の一部分には防壁が存在しない。逆に腕の周辺には防壁が伸びている。
 能力者は枝垂桜学園の高校二年生、黒髪美人で、合気道の達人でもある。研磨派の頂点であり、彼女を慕う生徒は多い。
 枝垂桜学園は常盤台より三年早く開校しています。二つは近くに建っているという設定です。研磨派については本文中で説明します。
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