とある科学の速度標識《スピードサイン》   作:直視明光

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 ついに時宮の能力が明らかになります。レベル4には何とか勝てるけどレベル5には絶対勝てない能力、というのが狙いです。


能力

「それで薬味先生、いったい何の用ですか」

「とりあえずそこに座っててもらえる。いまちょっと手が離せなくて。」

 時宮が薬味に会いに行くと、薬味は書類をまとめている最中だった。白衣は着ているが、装飾された爪や髪を見ると、保健室の先生というより美容室の店員に見える。

 それからしばらく待ったが、一向に話を始める気配がない。

 さらに待っているとようやく顔を起こした。時宮が話そうとしていると、薬味は近くのカップ麺にお湯を注いでいる。

「それ完成させてもらえる?三分も待てなくって」

「それ、必要ですか?」

「ええ。」

 ニッコリ笑顔で言われた。むかついたので少し長めに温めておく。

「それで要件は、」

「うう、時宮君。麺が伸びてるじゃない。わざと?」

「要件は、」

「絶対わざとじゃない。ひどーい」

「ようけんは」

「そういえば時宮君お昼はもう食べた?」

 『お前のせいでまだだよ!』と心の中で叫んだあと、しびれを切らした時宮はドアめがけて走り出した。しかし、その手がドアにかかることはなかった。ドアの前にシヤッターがすごいスピードで降りてきたからだ。

「ちょ、これ暴走能力者の隔離に使うやつじゃないですか、手とか挟んだらどうするんですか」

「時宮君の能力なら大丈夫でしょ。」

「僕の能力が速く動くものに弱いのは知ってますよね。あなたが開発したんですから」

 えーそうだったけーという薬味をぶん殴りたい衝動に時宮は駆られた。

「それで何の用ですか。そろそろキレますよ」

「はいはい、時宮君の能力開発に関する話なんだけど」

 保健室の先生と超能力の話というと違和感があるかもしれないが、決しておかしなことではない。『科学の力で超能力をつくろう!』っと言っても、結局やることと言えば『記憶術の訓練』などというお題目で、血管にクスリを注射したり脳に電極ぶっ刺したりして、()()()()()()()()()()()()()()だけなのだ。担任一人一人が異能の知識がある超名門校もあるが、こういう普通の学校では保健の先生が担当していることが多かった。

「時宮君の能力の分析結果については前に説明したよね」

「ええ。あのつかえないやつですね。どうせ透視能力の変化形ならもっと使える奴が良かった」

「女子の服を透視とかー?身体検査の時に見たから、色とかなら教えてあげられるよ。」

「保健室の先生が言うとシャレにならないのでやめてください。」

「見たいっていうのは否定しないんだね。とにかくこのたび時宮君の速度標識(スピードサイン)が、大能力者(レベル4)第一位に認定されましたー。パチパチ」

 立ち上がって手を叩く薬味を、時宮は冷めた目で見つめる。

「ありゃ、時宮君冷めてるねー。学園地区二十三万人の学生のうち、六割は無能力者(レベル0)大能力者(レベル4)に至っては百人にも満たないってのに」

 学園地区の能力者は、その強さによって5段階に分類される。

 無能力者(レベル0)、学園都市の能力者のうちの6割が所属する。全くないという訳では無いが、弱すぎて機械にもほとんど感知されない能力。要するに普通の人。

 低能力者(レベル1)、スプーン曲げやら、指先に小さな火をともすやら、いわゆる『 マジックとしては使えるけどそれ何の役に立つの?』という能力がここに所属する。結構人数は多い。

 異能力者(レベル2)、1mワープして密室から脱出するとか、大怪我してもなかなか死なないなど、この辺りになるとマジックにしても大掛かりなものになってくる。大体上位互換の能力があって、『 コイツ低能力者(レベル1)とは言えないけど強能力者(レベル3)にもっと強いヤツいるんだよな』という理由でここに回されることが多い。この辺から能力的にはエリート扱いされるが、はっきりいって勉強が出来た方が奨学金は多くもらえる。

 強能力者(レベル3)、50m以内のテレパシーや、大きな火球を作り出す能力など、誰でもすごいと思えるような能力。『 あいつこの学年で一番成績いいらしいぜ』ぐらいの地位を得られる。威張り出すのもここから。人数は500人ぐらい。

 大能力者(レベル4 )、周りを火の海にするとか、車を素手で投げ飛ばすなど、軍隊と単独で戦える化け物集団。学校に一人いればいい方。50人程度しかいない。

 その大能力者(レベル4)の頂点に立ったのだから、もっと誇ってもいいはずなのだが。

「だって別に役に立たないじゃないですか、異能が使えてもラブコメは起きませんってな」

 時宮は大きく手を広げた。

「例えば、地区にある全部の学校で大運動会でもあったら、強い超能力者はもてはやされるかもしれません。でも、逆に言えば、そんなこともなければ超能力者なんて何の役にも立ちませんよ。大学の推薦がもらえるわけでもなし、奨学金がすごく増えるでもなし。特にこんな異能じゃねぇ」

 それを聞いて薬味は

「 まあ、うちの学校は開発にそんなに力入れて無いしね」

と笑った。最先端の科学技術を持つ学園地区では、学校によって少し違うが、未だに正体がよく分からない超能力よりも、機械工学に造形が深い、数学が得意など()()の方が評価されやすい。生徒間での評価は上がっても、生徒の生活費に直結てる奨学金の値段はあまり上がらないのだ。

 薬味は少し考えた後で、

「いや、時宮君の異能って結構使えると思うけど。確か『半径5メートル以内の視覚出来る物体にかかっている反応を知覚し、その速度を操る』っていう異能だったよね」

 と反論を試みた。

「ええ。その()()()()()っていうのが曲者なんですよ。自分を高速移動させようにも自分は見れない。弾丸を止めようにも動体視力でとらえられないものは止められない。物にかかる反応を全部止めておくことは出来ても、今度は重力にも引っかからなくなるから地球においていかれてどっかに飛んで行ってしまう。光は反応に時間が関係ないから止められない…」

 どんどん自分の能力の欠点を挙げていく時宮を薬味はドン引きした目で見ていた。

「それだけ欠点言えるってことは、ひょっとして全部試したの?」

「ええ、二週間前に能力が覚醒してからいろいろとね!そもそも、こんな能力が第一位でいいんですかね、水分掌握《リヴァイアサン》の方がよっぽど強いと思いますけど」

 水分掌握(リヴァイアサン)、学園地区創設時の第一世代の中で唯一大能力者(レベル4)に覚醒し、それからずっと能力者の頂点に立ち続ける怪物である。式典などにも良く登場するため、時宮もよくテレビなどで見ていた。

「大丈夫だって、ちゃんと各校の開発者たちが相談して決めたことだから。さっき言ってた欠点も、いろいろ工夫すれば克服できるものが多いと思うけどなぁ。そんな時宮君にスペシャルニュース!さっき『お金がもらえるわけでもない』って言っていたけど、そんなことはありません。第一位にもなると、いろいろな研究機関から仕事が来て、お給料もちゃんと出ます!」

「なんですと!っこれでバイトに追われる日々ともおさらばだ!」

 バイトの代わりにいろいろ人体実験(テスト)されるだけという現実をおしえてやるべきか薬味は真剣に悩んだが、結局辞めた。

「それで、その最初の仕事が今日あるの。ほんとは明日からだったんだけど、今日いるなら今日からでいいよね!もう向こうにも連絡しちゃったし。」

「あの、この後打ち上げがあるんですが…」

「うん、あきらめて(すごくいい笑顔)」

「あきらめてたまるかぁ!」

 時宮は窓めがけて走った。

「扉がだめなら窓から!」

「あ、こらー」

 怒る薬味を放っておいて時宮はひた走る。

 打ち上げが始まるまであと30:00分




 今までルビの振り方を間違えてました…
 次回は二日後です。誤解を招きそうなので言っておきますが学園都市第一位を止めると言っても妹達(シスターズ)を守って一方さんと戦ったりはしません。
 過去編、現在編の違いは、彼が暗部に堕ちる前、堕ちた後です。
 まぁ一方さんとは戦うんですが…
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