時宮が止まった車から降りると、そこには白いいかにも研究所然とした建物が建っていた。ここまでの物は逆に珍しい。
「先生、なんで俺まで降りてついてくる必要があったんですかね。先生だけでいいと思いますが」
「転校生に対する君の反応が見たいから、とでも言っておこうかな」
薬味の機嫌はずっと上昇気味である。今にも鼻歌を歌いだしそうだ。そのまま、一人で研究所の入り口まで行ってしまった。時宮もあわてて後を追いかける。
「何の御用でしょうか」
「木原創元先生と面会しに来たものです。こっちのは付き添いで」
受付はしばらくした後、行っていいと許可を出した。
「転校生に会いに行くという話はどうなったんですか、先生。実は木原創元は天才少女だったり?」
「ううん、そんなことはないわよ。まあ見てからのお楽しみと言った所ね」
ずいぶんと勿体付ける。これで実際はしょうもなかったりするんだろうと時宮は考えていた。大体にして人生とはそんなものである。
蛍光灯で白く輝いている廊下を進んでいくと、一つの大きな部屋にたどり着いた。部屋には『木原創元』と札がかかっている。外には学生と笑う写真と研究結果が貼ってあるが、その研究から感じる動物実験を淡々と行う顔と学生と笑っている顔がどことなく不整合に感じられた。薬味が軽く扉を叩く。
「どうぞー」
暖かい声で許可が出たので、二人は中へ入っていった。
「こんにちは、お久しぶりね、薬味さん、今日はうちの脳幹をあなたの学校に入れてくれるそうで、」
たくさんの書類が山となっている机の前には三十ぐらいの、どこか温かい雰囲気を纏った女性が座っていた。年齢は薬味の少し上ぐらいだろうか。美人のお姉さんといった感じである。
「いやいや、創元さん。あなたにはいっぱい借りがありますし、これぐらいならお安い御用ですって。そういえばこの前の論文も」
大脳新皮質の新拡張分野がどうこう、とこの手の話題にあるまじき高い声で二人が話し出したのを横目に見ながら、時宮は新しく転校してくるとか言う奴を探していた。さっきの言葉を聞くに、名前は脳幹とかいうらしいが…変な名前である。周りを軽く視線だけで見渡してみると、部屋内部の隣との境目から中学生ぐらいの男子が顔を出していた。時宮が目で合図を送ると、何かに引っ張られたかのように隣の部屋へ引っ込んでしまった。
耳をそばだてると、『勝手に出ていくんじゃない』『でも面白そうじゃん、あのお兄さん、今の学園都市第一位らしいよ』『創元さんに迷惑かけるな』と他の人にたしなめられるのが聞こえてくる。たぶん、あの子供が転入生だろう。大方、創元さんが研究で手一杯なので薬味先生が預かるといった感じではないだろうか。
「ああ、ごめんごめん。創元先生、こいつは時宮進、研究から逃げ出そうとしたんで今しょっぴかれる途中ってとこですね」
「なるほどね、ふーん」
そう言いながら創元は時宮の全身を舐めるように見つめていた。その眼も心なしか先程までのすべてを見守る母親然とした物から狂科学者じみた物へと変わって言っている気がする。
「少し見せてくださる、たしか
そんなことを言いながら少しづつにじり寄ってくる。そのまま、
「ということは目に何か時別なものがあったりするのかしら」
なんて下から覗き込まれた日には高校生の心臓にはいろいろと良ろしくない。
(少し離れてくれませんかね…)
と思っていると創元は離れていった。時宮はほっとしたがどうやら自分の意志によるものではないらしく、
「何するの脳幹、今仕事中でしょう」
裾を犬に噛まれて引き戻されている。というか、今脳幹と言わなかったか。
「あの、先生」
「あれ、まだ言ってなかったかしら」
お前が勿体付けまくってただろうが。
「今創元先生に噛みついているのが木原脳幹、きょう迎えに来た転入生よ」
学園地区能力者紹介その2
第三位
風など、空気を操る能力
とはいえ、生み出せる風の速度は最高で秒速40メートル程度であるため、高位能力者との戦闘には少々心もとない。必殺技は自らの風を操る能力によって空気を圧縮し、一点に向かって発射する
能力者は霧ヶ丘女学院の高校一年生。霧が丘の異名を轟かせた。軽く、気まぐれな性格で、普段は飛んで移動する。
ちなみに、観測が真なる能力で普段はその余波を振るう旧第一位に対して、解析が真なる能力で普段はその余波を振るう新第一位。
水分を通してこの世全てを支配する旧第二位に対して、新しい物質を作ってこの世の外の世界を支配する新第二位。
小技を通して究極の一撃で勝利を狙う旧第三位に対して、すべての攻撃が必殺に該当し、その連撃で勝利を掴む新第三位。
全てをそらして回避する究極の盾としての旧第四位に対して、万物を貫く究極の槍としての新第四位。
相手と同調し、共感する精神の頂点の旧第五位に対して、相手を支配し、洗脳する精神の頂点の新第五位。
学園都市のどこにでもいて、すべてを監視する旧第六位に対して、どこにもいない、誰にも監視されない新第六位。
常人でありながら、正体不明であろうとする旧第七位に対して、正体不明でありながら、あくまで本人は説明できると考えている新第七位。
と対比して作ってあったりもします。(本当は十位まで考えてあるのですが、対比しているわけではないので今回は載せません。)