「ふーん」
相変わらず時宮の反応はかなり地味だ。
「ここで『ええええええ!』とか言った方が良かったんでしょうが、生憎そんなに驚いてません」
「ええー、はあ、つまんないの」
落胆した様子の薬味を前に、時宮の口調も知らず言い訳がましくなる。
「いやだって動物進化研究所って言ってましたし、後は中にいた小さい子供との二択でしょうが」
「せっかく勿体ぶったのに、あーあ」
「そんなに落ち込まないでくださいよ。ねぇ、ねぇってば。何で俺はこんなことしてるんだ、本当なら今頃打ち上げだったのに」
時宮が薬味を励ましている傍らで、もう一組の方も騒がしくなっていた。
「あんな風に近付いて…あの男の飢えた目が見えなかったんですか」
「脳幹は相変わらず心配性ねぇ、そんなことある訳ないのに」
「パソコンに目を向けない!いいですか、大体あなたと言う人は…」
見た目は犬が飼い主の前でお座りをしているようにしか見えないのだが、実際には犬の方が飼い主を座らせてやたらといい声で説教している。なんというか、色々とシュールだ。
両方が一騒動終わった後で、脳幹の自己紹介が始まったが、創元は相変わらず時宮に興味津々。脳幹は創元を心配しながら時宮をにらんでおり、対する時宮は行けなかった打ち上げの事を思い出して心ここに在らずである。それを薬味が面白そうに見つめているといった様子で、全く成立していなかった。
「木原脳幹だ。今回人生経験とテストを兼ねて、そちらの学校にお邪魔させてもらうことになった。よろしく頼む」
時宮をにらみつつ脳幹が言う。
「あ、ああ」
とはいえ時宮からすれば自分の方を見つめているようにしか見えない。観察されている様な居心地の悪さを時宮は感じた。
「そういえば先生、犬が学校に入って問題ないんですかね、ほら、成績とか」
時宮が薬味に質問すると、それを脳幹が聞きとがめた。
「失礼な事を言わないでほしいな。君よりはよほど私の方が頭はいいはずだ」
「おいおい、俺を馬鹿にしてるのか、いくら何でも現役高校生が昨日今日考えられるようになった犬に負けるはずないだろ」
「私が意識を持ったのはお前と同じ十六年前だ!」
にわかに二人の雰囲気が険悪になる。
「そのあたりは私から説明するわ」
創元がキーボードをたたくと、画面に数字の羅列が現れた。
「脳幹には、私たちが開発した演算補助機械を用いて、犬に人間と同等、もしくはそれ以上の思考を持たせているの。と言っても、性格は脳幹個人の物なんだけどね。そちらの学校の一学期期末試験を解かせた結果がこれ」
そこに表示された成績は、どれも時宮のそれを上回っていた。
「ま、負けただと!」
時宮が本日一番の驚いた顔を見せる。
「フッ、当然のことだ」
「時宮君は開発や暗記ものの成績は良くても、それを応用するのが苦手だから…あれ、暗記系の教科でも負けてる」
薬味の慰めになっていない慰めが、さらに時宮の心を抉り取る。
「偶然能力を持っているだけのサルに、学園地区でも優秀な木原の一員である私が負ける道理はない」
とどめである。トキミヤはたおれた!
「こら脳幹、時宮さん倒れちゃったじゃないの。言い過ぎでしょ」
「大丈夫ですよ、創元さん。このやろう、犬の分際で、人様を馬鹿にしやがって」
「その犬に成績で負けたというのに、元気なものだな」
「なんだと!」
時宮が脳幹にとびかかる、犬と人との乱闘は、最終的に割って入った創元が、得体の知れない方法でふたりを吹っ飛ばして終わった。『 力の動き方が分かれば、これぐらいなら高校生でもできるよ』と本人は言っていたが。いや絶対無理だって。
その結果
「 狭いぞ、もう少し向こうへ行けよ犬」
「 どう見てもお前の方が広い、暑苦しいから押すなサル」
「 はいはい両方共仲良くするー今日はこのまま徹夜だからねー」
恐ろしく悪い雰囲気の中、車は進んでいった。ちなみに2人のどちらかが助手席に乗るかもめた結果、結局両方とも後ろに座っている。
「 そう言えばあそこにいた子供は何だったんだ?どこぞの犬のせいで忙しくて聞きそびれたが」
「 あれは創元さんの兄、総混さんの息子で幻生というんだ。まだ15歳だが、お前よりよっぽど賢いぞ」
「 なんだと!」
「 やるか!」
後部座席がドタバタとうるさくなる。今晩は長くなりそうだ。
学園地区能力者紹介その4
第五位
学園地区で、もっとも奇妙な能力と呼ばれている能力。
起きている現象としては能力開発が始まって数日の小学生の1人が覚醒、能力が暴走し、その場にいた9人を乗っ取ったと見られている。その誰かは、自身の
現在使える能力は
能力者は高校三年生の男女10人。そのうち誰が最初の能力者だったかは判明していない。それぞれの自我を取り戻すことを切望している。