足柄先生の猛烈!?時事授業   作:ふみ2016

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セーラー服と反応弾

「う~~ん。とんでもない代物みたいね、君は。」

 

白衣を着た夕張がカタカタと物凄い速さでパソコンのキーを打つ。

 

およそ市販のものとは思えないほどゴツいパソコンからは無数のコードが延びている。

 

そのコードのすべてが今朝、暁が発見した謎のカブトムシ型ロボットへと接続されていた。

 

「夕張、いる?」

 

「夕張さん、こんばんは!」

 

「あら、二人ともいらっしゃ~~い。」

 

ドアをノックして足柄と暁の二人が夕張の研究室に入室する。

 

「ほら、これ差し入れ。夕張のことだから研究に夢中になって何も食べていないんじゃないかと思って。」

 

「お! サンドイッチ! ……見た目はおいしそうだけれど……。」

 

「もう! 失礼なやつね! 私がつくったんじゃないわよ! 羽黒お手製よ!」

 

「あぁ、そっかぁ。よかった。これで飢えなくてすむわ。飢えた狼さん。」

 

「何言ってんのよ! このマッドサイエンティスト!」

 

と二人で罵りながらも目が笑っているこの仲良し二人を見ながら暁は

 

(え!? 足柄先生の飢えた狼って由来は、もしかしてご飯つくれなくって飢えているからってこと!?)

 

などと邪推していた。

 

「で、解析はどうなの? 進んだ?」

 

夕張は足柄が持ってきたサンドイッチを夢中でほおばるのをやめ、解析した内容を伝える。

 

「以前、ここの鎮守府が大規模空爆を受けかけたことがあったでしょ?」

 

「あぁ、私が対空兵装満載で赤城が奮戦したあの防空戦ね。それがどうしたの?」

 

「いやね、そのときに微弱ながら空間のねじれを感知していたのよ。ま、さっき調べなおしてわかったんだけれどね。」

 

「なに? つまりその空間のねじれが原因でこのロボットが降ってきたっていうの? そんなマンガみたいな話があるの?」

 

「それを言っちゃ私達の存在も相当おかしいものだと思うけれどね。」

 

「ま、それもそうね。」

 

「あ、あの、夕張さん!」

 

二人の会話を見ていた暁が意を決したように夕張に話しかける。

 

「ん? どうしたの暁ちゃん?」

 

「これ。これをそのロボットと拾ったの!」

 

そう言って暁は浜に打ち上げられていた時計のようなものを夕張に差し出す。

 

大きな画面のそれはまるで

 

「スマートウォッチ?」

 

「そうなのよ。そっくりでしょ? それを渡すために暁とここまで来たのよ。」

 

夕張は時計をパソコンに接続し解析を始める。

 

「う~~ん。なるほどね。あのロボット、外部に通信送っていたけれどこの時計に通信していたようね。」

 

「やっぱり! 助けてって声がこれから聞こえてきたのよ。だから、もしかしてって思って。」

 

するとガタンとロボットのほうから物音がした。

 

ロボットのほうを振り向く一同。

 

「お、起きたのかな?」

 

「う、うぅぅん。ど、どこだここ? お、おい! なんだこのケーブルは! まさかお前達、ロボロボ団の仲間か!?」

 

「違うわよ。まぁ、あなたがあまりにも珍しいものでちょっと調べさせてもらっただけ。」

 

「め、珍しいだと……!? お前ら、メダロットも知らないのか?」

 

「メダロット? それがあなたの名前なの?」

 

「違う! それは俺達の総称であって、俺様の名前はそんなダサくない! 俺様の名前はメタビー! 世界ロボトル選手権大会2位のメタビー様だ!」

 

「1位じゃないんだ。」

 

ブラックコーヒーを不味そうにすすりながらジト目でメタビーを見る夕張。

 

「う、うるせー! 次こそビクトルの野郎に勝ってやらぁ!」

 

「随分威勢がいいわね。ポンコツのくせに!」

 

ふん!と鼻を鳴らす暁。

 

「あぁ!? ってお前はあのときのチビじゃねぇか。やんのかこら!」

 

「チビって言うな! あんただってチビでしょうが!」

 

「なんだとぉ! もう絶対許さねぇ! 食らえ……。」

 

そう言ってメタビーは頭部発射口を暁に向ける。

 

「反応弾!」

 

大声で叫ぶメタビー。身構える暁。だが、

 

「あ、あれ? なんで反応弾が発射されないんだ?」

 

「あぁ、それなら、ほら。」

 

と、夕張が指差した方向には大量の弾薬がこんもりと積まれていた。

 

「あぁぁぁ! 俺の弾薬が全部抜き取られてる! おい、なんてことしやがる!」

 

「だって仕方ないじゃない。あんなもの積まれて今みたいな状況になったら困るし。」

 

「ま、夕張の判断は当然というものね。」

 

「く、くそー!」

 

「おしゃべりは終わったかしら!? それじゃ今度は暁の番ね! 見てなさい!」

 

「なに!?」

 

目を閉じた暁の足元に桜をかたどった魔方陣が出現する。

 

と、みるみるうちに暁の身体に砲塔、アンテナ、煙突が顕現する。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ふぅ。艤装完了! チェックメイトよ!」

 

ガチャコンと砲をメタビーに向ける暁。

 

うつむきブルブルと体を震わせるメタビー。

 

「あら? どうしたのかしら? 怖くて声も……。」

 

「か、」

 

「?」

 

「かっこいい!」

 

「へ?」

 

「かっこいいなぁ! お前! 一体どうやったらそんなことができるんだ? 教えろよ!」

 

「え、えぇ!?」

 

目を輝かせて暁に艤装の仕方を教えろとせがむメタビー。

 

まさかの展開に面食らった暁は「えっと……。」と声を詰まらせる。

 

「しかし、すごいロボットねぇ。あれ、本当にスタンドアロンなの?」

 

と足柄が夕張にロボットについて尋ねる。

 

「えぇ。解析結果によれば、ほぼ間違いなく外部環境に依存しないで独立したシステムで動いてるわね。」

 

「SB社が売り出したペッペーを見たことがあるけれど、あそこまで巧みに喋ってはいなかったわ。」

 

「ペッペーも十分すごいけれど、ネットに接続してそこから情報を引き出して感情表現をより豊かにしているからね。独立してこんなに感情表現できるロボットなんていないわよ。身体の動きも器用に動くわね、このロボット。そう、まるで……。」

 

言葉を区切る夕張。その言葉を続けるように足柄が話す。

 

「そうよね。あのロボット、まるで人間みたいだわ。一体、あんなロボットが普通に存在する社会ってどうなっているのかしら?」

 

「ふふ。こんなときまで社会科教師なのね、足柄は。」

 

「だって、そう思わない? ここまで感情表現ができたら、果たして私達とロボットの垣根ってどうなるのかしら?」

 

「さぁ。私はそっちは専門じゃないから。でも……。」

 

そう言って話を切る夕張。その目線は暁から艤装の仕方を必死で学ぼうとするメタビーに注がれる。

 

「でも、人によっては家族同然になるかもしれないわね。大事な家族の一員に。」

 

そう言って夕張は再びブラックコーヒーを不味そうにすすった。

 

「よっしゃー! いくぞ! 艤装!」

 

「全然気合が足りないわよ! もっと強く叫ばないと!」

 

「そ、そうか? うぉぉぉぉぉ! 艤装!!!!」

 

「暁、そろそろ帰るわよ。」

 

「え? もうそんな時間なの?」

 

「ん? お前ら帰るのか? と、いうか俺はどうしたらいいんだ?」

 

「あぁ、ロボット君、じゃなかった、メタビー君も暁ちゃんと一緒に帰るのよ。」

 

「え!? どういうこと? 夕張さん!?」

 

夕張が卓上に置いていた例の時計を取り出す。

 

「暁ちゃん、これを渡しておくわ。」

 

「え? これって夕張さんにさっき渡したスマートウォッチ? なんで私に?」

 

「これ、『メダロッチ』っていうみたいなんだけれど、マスターがいないと作動しないのよ。暁ちゃん、一回これをつけたわよね?」

 

「え、えぇ。浜辺で一回だけつけたわ。」

 

「そのとき再設定が行われたみたいでね。少なくともこの世界ではメタビーのマスターはあなたよ、暁ちゃん。」

 

「え、えぇぇぇぇ!」

 

「な、なんだとぉ!」

 

驚きの声をあげる暁とメタビー。

 

「お、おい! ちょっと待て! お前、今俺のマスターがこのチビだって言ったか?」

 

「言ったわよ。聞こえなかった?」

 

「マジかよ……。」

 

「ま、そう言うわけでメダロッチは渡しておくから、何かあったらすぐに連絡ちょうだいね。」

 

「わ、わかったわ……。」

 

「じゃ、私達は帰るわね。今日はありがとう夕張。」

 

「こっちこそ。興味深いものが見れたわ。また来てね、メタビー君。」

 

「もう二度とお断りだ。このマッドサイエンティスト。」

 

マッドサイエンティスト、その言葉を聞いた夕張の表情が凍りつく。

 

「ねぇ、今、君なんていった?」

 

急に雰囲気が変わる夕張。グシャリとコーヒーが入っていた紙コップを握りつぶす。

 

「あ? 聞こえなかったのか? このマッドサイエンティスト!」

 

ぷるぷると震える夕張。

 

「許さないわ……。私は、私は兵装実験艦よ!」

 

そう言って艤装する夕張。まばゆい光が彼女を包む。

 

「うぉぉぉ! こいつも艤装するのか!」

 

「4スロ全部主砲にした私の火力を見せたげるわ!」

 

夕張の全砲門がメタビーに照準をつける。

 

「ま、まて! おい、嘘だろ!? やめろぉぉぉぉ!」

 

メタビーの静止を求める声が夕暮れの鎮守府に響く。

 

だが、それを上書きするように夕張の全砲門一斉射撃の音が轟いた。

 

「あちゃぁ。夕張にマッドサイエンティストって言って怒られないのは私だけなのに。とんだ災難ね。」

 

「ち、く、しょう……。それをはやく言ってくれ……。」

 

力なく声を出したメタビーは黒こげになったままがっくりと地面に倒れ伏した。

 

『ビービー、全パーツ、ダメージポイント100。機能停止、機能停止。』

 

「はぁ、暁、一体どうなっちゃうんだろ? 柄じゃないけれどあえて言わせて貰うわ。『不幸』だわ……。」

 

 

 

 

小料理屋「五十六」前

 

「さてと、今日も張り切って皆においしい料理を食べてもらいましょう! ってあら!?」

 

営業中をしめす暖簾を出しに外へと出てきた鳳翔が驚きの声をあげる。

 

「ろ、ロボ~~。」

 

そこには黒いタイツを着た頭にアンテナが二本ついている男性がうつぶせに倒れているではないか。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

大慌てでこの男に駆け寄る鳳翔。

 

「うぅぅん。お、俺様はロボロボ団リーダー、サケカース様だロボ……。」

 

「た、大変! 錯乱しているみたい! 頑張って! コスプレイヤーさん、気を確かに!」

 

「こ、コスプレではないロボ……。俺様はサケカース、偉大なる悪の、ってそれはいいから、な、何か食わせて欲しいロボ……。」

 

「わ、わかったわ! 今ご飯を食べさせてあげるから!」

 

「ロボ~~。」

 

つづく。

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