今日は月曜日。今週もがんばっていきましょー!
「さってと! 用事も済んだことだし、遅くなっちゃったし、鳳翔さんのところでご飯食べてから帰りましょう。ね、暁?」
「え? いいの? 足柄先生?」
嬉しそうに聞き返す暁。鳳翔の小料理屋五十六はお値段的な敷居が高く、駆逐娘の給料で通うことは難しいのだ。
「いいのいいの! それにもう少しこのロボット君とお話をしたいしね。」
「ロボットじゃねぇ! 俺様の名前はメ、タ、ビ-、だ!」
「あぁ、ごめんごめん! メタビー、悪かったわ。」
ムキィッと怒るメタビーを諌めるように手をひらひらさせる足柄。
「まったく、冗談じゃねぇぜ。いきなり知らないところに飛ばされたかと思ったら、こんなチビがマスターだなんてな。」
「何よ! 暁だって好きであんたのマスターになったわけじゃないわよ!」
ふんっ!と言って顔を背ける暁とメタビー。あらあらと足柄は困り顔で一緒に歩く。
(まぁ、お腹が膨れれば二人とも機嫌が直るでしょう。ん? メタビーってご飯食べるのかしら?)
と考えているうちに目的の店に到着する一行。
「ん? ここで食うのか? 小料理屋ごじゅうろく? 変な名前の店だな。」
「あんたロボットのくせに読めないの? いそろくって読むのよ!」
「そ、そんなの知ってらい! わ、わざと間違えたんだよ!」
「暁にはわかるわ! あんた絶対知らなかったわよ!」
「本当に人間みたいな間違いをするロボットね……。まぁ二人とも、とりあえず中に入りましょう。」
がららら、と戸を開けて入る三人。すぐに店員が駆け寄ってきた。
「いらっしゃいませだロボ!」
出てきた店員はおよそ店員らしからぬ黒タイツに身をつつみ、頭には奇妙なアンテナをつけサングラスをかけていた。
「えっと……。」
思いもかけない格好で出てきた店員にどう話したらいいか一瞬戸惑う足柄。
すると一番最後に入店したメタビーが店員を見て驚愕の声をあげる。
「あーーーー! なんでお前がこんなところにいるんだよ!」
「ロボーーー!? なんで貴様がこんなところにいるんだロボー!?」
「し、知り合いなの? メタビー?」
「知り合いも何もここに来る前に俺はコイツと戦っていたんだ!」
「え!? メタビーの敵ってこんな黒タイツの変態だったの!?」
「変態とは失礼ロボ!」
すると外が騒がしいと感じた鳳翔が店の奥から出てきた。
「あら、足柄ちゃんに暁ちゃん、いらっしゃい。」
「ほ、鳳翔さん、この人は?」
「あぁ。店の前でお腹を空かせて倒れていたのを介抱してあげたら、お礼がしたいって。それに帰るあてもないそうだからここで働いてもらうことにしたのよ。」
「なんてこった……。」
頭を抱えるメタビー。
「ふん! そういうことだロボ! 申し遅れました、俺は悪の秘密結社ロボロボ団のリーダー、サケカースと申しますロボ。」
そう言ってサケカースは名刺を律儀に足柄と暁に手渡す。
「あ、ご、ご丁寧にどうも……。」
「おい、てめー! なに悪の秘密結社のリーダーがご丁寧に名刺なんて渡していやがる!」
「名刺を差し出すのは社会人としてのマナーだロボ!」
キリっと答えるサケカース。
「そ、その格好で言われても説得力ないかも……。」
と、足柄は苦笑いを浮かべる。
「と、とにかくここでは一時休戦だロボ! ささっ、奥のテーブルが空いているロボ。ご案内するロボ。」
そう言って慇懃(いんぎん)丁寧に一向をもてなす。
「あ、ありがとう……。」
こうしてサケカースに案内され座席につく足柄たち。
「メニューが決まりましたらお声かけくださいロボ。」
「すさまじい違和感を感じるな、お前……。」
「助けてもらった恩には報いる。それが俺の悪のプライドってもんだロボ。」
そう言ってサケカースは席を離れていった。
「メタビー、変な人と知り合いなのね……。普通、悪人は恩に報いるなんて言わないと思うんだけれど……。」
「知り合いたくって知り合ったわけじゃない!」
「あははは。さてと、何を食べようかな……。そうそう、暁、遠慮しなくていいからね。好きなもの食べなさい。」
「ほ、本当に!? えっとそれじゃぁ……。」
メニューを選んでいると三人の座っている席に赤城と加賀がやってきた。
「こんばんは。足柄さん。」
「あら、赤城に加賀。どうしたの? 席は空いているみたいだけれど?」
「いえ、暁が連れているロボットを見たくって。」
「あ? 俺がどうしたっていうんだ?」
「すごーい! 本当に人間みたいに話すのね! あ、握手してください!」
「え? あ、あぁ。それくらいなら……。」
と赤城の握手に応じる。
「一航戦の加賀といいます。サインをいただけないかしら?」
「さ、サイン!? お、おぅ! いいぜ! こんなもんでどうだ?」
「すごい! ロボットのサインなんて、赤城ははじめてみました!」
「嬉しい……。大切にします。」
「そ、そうか?」
思いのほか喜んでもらえたことでメタビーは照れながら人差し指で頬をかく。
「あ、いたいた! 本当にロボットだ!」
わいわいと騒がしくなる店内。
いつのまにか沢山の艦娘がメタビーを一目見ようと店に集まってきていた。
「ちょ、ちょっと一体なんなのよ! ま、まさか、この展開は!?」
「呼ばれたかしら?」
と、カメラ機能を強化したスマホを片手に人ごみの中から飛び出してきたのは
「青葉! やっぱりあなたね! 一体何をしたの!?」
「いやぁ、そのロボットがここにいるってツイッターに流しただけだよ。そしたらみんな、われ先にここに駆け出しちゃって。」
「やっぱり! どうせそんなことだと思ったわ! ところで、メタビーが人気なのはわかるけれど……。」
と言って目線をちらっと脇に逸らす足柄。
「ちょっとおっさん、何そのカッコ! すごいウケる! 一緒に写真とって~~。」
「ポーズはこんな感じでいいロボ?」
目線の先ではサケカース(黒タイツの自称悪人)がサービス精神満点で写真に応じていた。
「なんであの黒タイツの人まで人気なのよ! ウチの艦娘達は一体どうなってるのよ!」
「まぁまぁ。細かいことは気にしないで。」
「青葉さーん、こっち写真お願いしまーす!」
「はいは~~い! それじゃ私は忙しいのでまたね!」
「あ、ちょっと! はぁ、仕方ないわね。それにしても……。」
「えへへ。そ、そんなにくっつかれると、困っちゃうぜ……。」
たくさんの艦娘達に押されるようにくっつかれたメタビーは幸せそうな表情を浮かべていた。
「本当に、人間みたいなロボット……。女の子にデレデレしちゃうところなんて男性そのものじゃない……。」
「まったくよ! ホント、何デレデレしちゃっているのかしら!」
プンプンと怒る暁。
「ちょっとみんな! 私達ごはんが食べたいの! 食べ終わったらまた見せてあげるからしばらく我慢してよ!」
むっとした形相で怒る暁。そんな彼女を見て物分りのいいこの鎮守府の艦娘たちは「は~~い。」と言って足柄たちの席から離れていった。
もっとも、調子にのったサケカースが自分のメダロットを召喚し、そっちに話題が移ったという事情もあるが。
ひと段落しメニューも頼み終えた足柄たちはお互いの自己紹介を始める。
「さてと、これでしばらくは安心ね。改めて私の名前は足柄。ここで艦娘として社会科を教えているわ。」
「私は暁。足柄先生の生徒で同じく艦娘をしているわ。」
「そういやちゃんと自己紹介してなかったな。俺様はメタビー。相棒のイッキと一緒に毎日ロボトルの腕を磨いているんだ。ところで、その艦娘ってなんなんだ?」
水を一杯のみ足柄はメタビーの質問に答える。
「海より出でし異形の怪物、深海棲艦と戦える実質唯一の存在。それが私達艦娘よ。」
「な、なんだそりゃ? 深海棲艦? それがお前らの敵なのか?」
「そうね。私達の、というより全人類の、といったほうが正確かしら。」
足柄と暁は深海棲艦について、そして現在の状況についてをメタビーに説明する。
「そ、そんなヤバイことになっているのか、ここは。」
「まぁ、暁たちの働きで随分落ち着いてはいるんだけれどね。」
うつむいてプルプルと震えるメタビー。
「お、お前はそんなチビなのに、命を張って戦ってきたんだな。」
「チビって言うな!」
「そ、そうだな。俺もイッキと命がけで戦った経験があるからわかる。命を掛ける戦いっていうもんがどれほど重たいのかを。」
「メタビー……。」
「チビって言って悪かったな。少なくとも、ここに俺がいる間の相棒はお前だと認めるぜ。」
「え? 相棒?」
「そうだ、相棒だ。俺とイッキは主従関係じゃなく、対等な関係で戦ってきたんだ。」
「相棒……。うん、すっごくいい! マスターなんて無機質な言葉よりずっと、ずっといい!」
「よろしく頼むぜ、相棒!」
「ま、レディの暁にまかせなさい。メタビー!」
ぐっと握手をする二人。そんな彼らを足柄はほほえましく見ていた。
「お待たせしたロボ。ご注文の料理だロボ!」
「あら? このオイルって?」
「あぁ、それは俺のだ。メダロットにとってはオイルが食事みたいなものなんだ。」
「へぇ~~。そうなの。それじゃ、みんなで」
『いただきます!』
暁とメタビー、二人に共通していたもの。それは命をかけた勝負をした経験だった。お互いを知り、仲を深めることができた二人。だが、そんな二人に試練が襲い掛かるのはもう、まもなくのことであった。
余談だがこの一件で多くの艦娘が鳳翔の店に押しかけたことにより、その日の店の売り上げは歴代最高になり、鳳翔も大忙しだったという。
もちろんー
「ロボー。さすがに疲れたロボ……。」
「サケカースさん、お疲れ様でした。これよかったら……。」
「こ、これは! まかないメシ! ほ、本当に食ってもいいのかロボ?」
「えぇ、当然です。こんなに頑張ってくれたんですもの、一杯食べてくださいね。」
「ろ、ロボ~~。鳳翔さん、こんな俺を助けてくれたばかりかご飯に寝床まで与えてくれて、本当に、本当にありがとうだロボ~~。」
「まぁまぁ。大げさですよ。サケカースさん。困ったときはお互いさま。そう私は思っていますから。」
優しい声音に柔和な笑みを浮かべる鳳翔。その姿を見たサケカースは自分を待っているであろうある女性の姿を重ね涙を流す。
「ぐすん。そうでしたかロボ。このサケカース、鳳翔さんのこと、たとえ元の世界に帰っても決して忘れないロボ!」
「ふふっ。ありがとうございます。それではサケカースさん、ご飯を食べ終わったら最後の後片付けまで頑張りましょうね。」
「もちろんだロボ!」
こうしてサケカースは鳳翔の優しい思いに触れ、いっそう鳳翔の仕事の手伝いに励むのだが、それはまた別のお話ー。
つづく