足柄先生の猛烈!?時事授業   作:ふみ2016

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暁の涙

「まだだ! そんなことでは深海棲艦のメダロットを倒すことなんぞ到底できないロボ!」

 

サケカースの言葉が発せられると同時に新撰組隊士型メダロット「シンセイバー」が刀を上段に構えなおす。

 

幕末を駆け抜けた新撰組の隊員が再び蘇ったような圧倒的な殺気を放つシンセイバー。

 

その目の前にはボロボロに傷ついたメタビーが片ヒザをついて悔しそうに顔をシンセイバーに向けている。

 

今、暁は深海棲艦に対抗するために演習場でサケカースとロボットバトル、通称ロボトルの訓練をしているのだ。

 

「ば、馬鹿にして!」

 

メタビーに戦闘指示をだしていた暁がシンセイバーの構えを見て声を荒げる。

 

シンセイバーがとった上段の構えは真上から即座に敵を切り伏せることができる最も攻撃的な構えだ。

 

しかし同時に、自分が相手よりも上位の存在であることを誇示するという意味あいも含まれる構えでもある。

 

暁は後者の意味合いがシンセイバーの構えに含まれていることを悟った。

 

(私とメタビーのことを格下に扱っているのね……!)

 

ぎゅっと拳をつよく握り締める暁。

 

今回の任務は暁とメタビーにしか遂行できない。

 

だから自分達が頑張らなくてはいけないのに。

 

キッとサケカースを睨みつける暁。

 

「ふん。いい眼差しだロボ。だが……。」

 

サケカースが話を切った瞬間、シンセイバーが砂塵をまきあげ一気にメタビーに間合いをつめる。

 

「く! メタビー、サブマシンガン!」

 

暁の指示よりやや遅れて二つ銃口がついた左腕を構えるメタビー。

 

「くらいやがれ!」

 

ガガガガガガ!と音をたてて機関銃をシンセイバーに向けて発砲するメタビー。

 

だが、その弾丸をいともたやすく突破してシンセイバーはメタビーにせまる。

 

「!? メタビー、よけて!」

 

暁の指示よりも早くシンセイバーがメタビーに到達する。

 

「! くそ!」

 

メタビーが毒づく。

 

「もらったロボ。」

 

シンセイバーの刀がヒュンと音をたてて振り下ろされた。

 

カシュンと空気が抜けるような音がメタビーの背中から発せられる。

 

「勝負あり、だロボ。」

 

ゆっくりと言い放つサケカース。

 

「そんな……。そんな……!」

 

がっくりとその場に座り込む暁。

 

呆然とする暁の目の前にメダルが排出され機能を停止させたメタビーの姿があった。

 

「これで100回目だロボ。貴様が俺に敗北したのは。」

 

「きゅ、98回目よ……!」

 

涙声で弱弱しくサケカースに言い返す暁。

 

涙をみせまいと暁はかぶっている帽子をより深くかぶろうと帽子のツバに手をかけている。

 

「ふん! そんなのはどうでもいいロボ。重要なのは貴様がこの俺に一回も勝てていないということだロボ。」

 

「……!」

 

声にならない声をあげる暁。

 

サケカースの言ったとおりだった。

 

作戦開始まで時間は残りわずかしかない。

 

敵は最強のメダロット「ゴッド・エンペラー」。

 

そのゴッド・エンペラーよりもはるかに弱いとされるサケカースのシンセイバーに負ける。

 

何度も負ける。

 

情けない。私は、私はなんて情けないんだろう。

 

「……ぐすっ。」

 

暁の両目から大粒の涙がとめどなくあふれてくる。そして、嗚咽も。

 

そんな暁をサケカースが真っ直ぐに見据える。

 

「たしかに貴様はロボトル初心者で、俺は経験者だという違いはあるロボ。しかし、決定的に違っている部分がひとつあるロボ。」

 

「……。」

 

帽子を深くかぶったままサケカースの言葉を暁は聞く。

 

「そのたった一つに気がつけるかどうか。それ次第だロボ。」

 

(まぁ、俺もあの小僧とこのメタビーから学んだんだがなロボ。)

 

と、心のなかでサケカースはつぶやいた。

 

「では、今日はこれで終わりにするロボ。」

 

そう言って暁に背をむけ鳳翔の店に帰っていくサケカース。

 

サケカースと私のたった一つの違い。

 

一体それは何なのだろう?

 

そして、本当にそのたった一つの違いがわかれば私は勝てるようになるのだろうか?

 

そう思いながら暁は乾いた地面に放り出されたメタビーのメダルを拾い上げ、じっと考えるのであった。

 

残された時間は、あとわずか。

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