「なんですって! 海軍に出向!?」
両津の大声とともにバリンと割れる署長室のガラス。
「いきなり大声を出すなこの大馬鹿者が!」
そう言って署長室の中で両津の隣に立つ大原部長がゲンコツで両津の頭をガツンと殴る。
「いてぇ! 部長! 何もゲンコツで殴ることないじゃないっすか!」
「うるさい!」
「とにかくだ。両津には海軍のこの鎮守府に向かってもらう。」
と、署長の屯田御目須が両津の大声で頭痛を引き起こした頭をさすりながら言う。
「な、なぜ私が行かなくてはいけないのです!? 他にも候補はいっぱいいるでしょう!?」
深いため息をついたあと屯田署長が両津の質問に答える。
「本庁のコンピュータが弾き出した結果、君が適任と判断されたのだ。」
「って、またその展開ですか? しょちょーう!?」
「まぁそう言うな。今回の事件、もしかしたら例の深海棲艦が関わっている可能性があるのだ。」
と、大原がコホンと咳払いをしてから話す。
「そうだと思ったから抗議したいんです! そんな物騒なところに行きたくありません!」
「ダメ。」
そっけなく屯田署長が却下する。
「な、なんでですか!?」
「日本の警察で戦艦ル級の主砲が直撃しても生存していられるのは君くらいしかいないからだ。」
「そんなもん食らって生きていられる人間なんて警察どころか世界中探してもいませんよ!」
「まぁ君は以前不発弾が爆発したときも生きていたし、大丈夫だろう。」
「どこが大丈夫なんですか! 部長もなんとか言ってくださいよ!」
「両津……。」
そう言って両津の目をじっと見る大原部長。
「ぶ、部長……!」
両津の手をとる大原部長。
「くれぐれも海軍の方々に迷惑をかけるなよ。」
と、強い語気で両津に念を押す。
大原部長の期待はずれの言葉を聞きその場でずっこける両津。
「部長! 部長は私のことが心配じゃないんですか!?」
「あぁ。心配じゃない。」
ゆっくり、しかしはっきりと言い切った大原部長。
「ぶちょーう!!!!」
大声で抗議の声をあげる両津。
「あ、いや、心配だぞ。」
「ぶ、ぶちょう……。」
目をうるうるとさせる両津。だが、
「お前が海軍に出向するということは警察の恥部をさらすようなものだからな。それがとても心配だ。」
「私も心配だ……。」
大原部長の言葉に激しく同意する屯田署長。
「そんなぁ~~!」
両手をわなわなと震わせる両津。
「そうそう、言い忘れるところだったよ、両津くん。」
「なんですか、署長? まだ何かあるんですか?」
元気なさげに署長に聞きかえす。
「今回の事件を無事に解決できたら、その功績で君を昇進させることが決まっているのだ。」
「え!? しょ、昇進ですか!? この私が!?」
大声で驚きの声をあげる両津。
「昇進すればもちろん今よりも給料も高くなるぞ。」
「や、やったじゃないか両津!」
「は、はい! 部長!」
(やりぃ! 給料アップか! コイツはチャンスだぜ!)
と内心でほくそ笑む両津。それに感づいた大原部長が念のために釘を刺す。
「だから真面目に取り組むんだぞ、わかったな?」
「は! おまかせください、署長、部長!」
と、さきほどまでとは打ってかわって両津は真面目な態度で敬礼をしてみせる。
「では、改めて命令する。両津勘吉巡査長、海軍に出向し協力して麻薬を摘発せよ。」
こうして両津の鎮守府への出向が決まったのだった。