足柄先生の猛烈!?時事授業   作:ふみ2016

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~注意~
外伝はまったく時事に関係ないことを書いていきたいと思います。あくまでオマケ程度に思ってください。

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第1斉射外伝『羽黒、運命の夜風』

はぁ。足柄ねぇさんの顔を立てるために一応合コンに出席しましたが、私の好みの男性は残念ながらいないようです。

 

みなさん、海軍の関係者で性格も年収もしっかりしている方が多い印象を受けますが。

 

もしここにねぇさんがいたら、飢えた狼のように殿がたにアタックしていくのでしょうね。

 

でも、でも私は違います。

 

私もわかっています。私の理想は、理想でしかないということを。

 

だってそうですよね。今の時代に馬に乗って颯爽と現れる男性なんているわけありません。

 

そんな人は伝統のあるお祭りに行かないと会えないでしょうし、そういうものに出ている男性は、私の理想とはやはり違います。

 

真紅の鎧を身にまとい、馬にまたがり槍ひとつで戦場を堂々と駆け巡る真田幸村。忠誠を誓った主君に終生命を賭けて仕え、そして、その主君のために散る。

 

そんな男の人、いるわけない。いるわけありません。

 

あぁ、このまま恋する乙女で、いえ、このままだとおばちゃん、最後はおばあちゃんになって死ぬんでしょうか?

 

それも切ないものです。

 

でも、この理想を捨ててしまったら、本当に私の恋は終わってしまいます。

 

それもやはり、切ないものです。

 

ならばいっそ、恋するままで死にたい。明日生きているかわからない、それが私達艦娘なのだからー。

 

あら、もうお開きのようですね。

 

私としたことが、少し酔ってしまったようです。

 

少し足取りが不安ですが、まだ大丈夫ですね。

 

みなさん手を貸してくれると言ってくれますが、自分で歩いて帰れるのであればそうしたいのです。

 

ひとり夜風にあたっていたい。そういう気持ちなのです。

 

はぁ。やっと出入り口まで来ることができました。では、外に出てー。

 

「ヒヒぃぃぃぃん!ぶるるる!」

 

「え!?な、なんですか!?う、馬!?なんで、なんでお馬さんがこんなところに!?」

 

「おう、お前、いまさら来たのか!」

 

は!?え!?今日の合コンで一緒だった人の知り合いがお馬さん!?

 

いえいえ、そんなはずありません!

 

やはり酔っているみたいです。

 

私としたことが、こんなことで動揺するだなんて。

 

いやいや、普通なら動揺しますよね?

 

だって今の時代に馬なんですもの。

 

しかも出入り口の自動ドアを開けてこのお馬さん、平然と顔をだしていますもの!

 

あ、お馬さんがドアから顔をひっこめてくれました。

 

ふぅ、やっと外に出れます。あぁ、夜風が気持ちいいですね……。

 

『ふわっ』

 

「きゃ、きゃぁぁぁぁ!」

 

な、なにかに髪を撫でられました!

 

あ、さっきのお馬さんですね。あはは、くすぐったいです。かわいいですね♪

 

お馬さんの顔を撫でているとお馬さんから声が聞こえました。

 

「私の日和号が懐くとは、ご婦人、只者ではないと見える。」

 

え!? お馬さんが喋った!?

 

ってそんなわけないですよね。お馬さんはひとりでここまで来られるはずがありません。誰かが背中にのって来なければいけません。

 

つまり、今聞こえた声はこのお馬さんの主人ということですね。

 

そう思って私はふっと馬の背中を見上げました。

 

「日和号が大変失礼いたしました。失礼ながら、今日のご、ごうこん?とやらに参加していたご婦人でいらっしゃいますか?」

 

そしたら先ほどお馬さんが見えたときに声をあげた男性が叫びました。

 

「おっ前は本当に馬糞のようにクっソかてぇやつだな! だから女ができないんだよ! それにその姿は何なんだよ!」

 

「失礼な、女性と食事をすると言ったら正装で来るのがふさわしかろう。それに……。」

 

「あ、それに、なんだよ?」

 

「馬糞は固くないぞ。草食だからむしろその糞は柔らかい。ほら、今、日和号が出した糞が道に散乱しているから確かめてみるがよかろう。」

 

「ふっざけんなよ! だからお前は女ができねぇんだよ! 秋山!」

 

そんな罵声が耳に入らないくらい、私の心はときめいていました。

 

その男性は黒毛の馬にまたがり、真田幸村が身に着けていた鎧と同じ、真紅のズボンに革でできたブーツをかっちりと履き、背中には槍の代わりに一丁の銃剣つきライフルを担いでいました。

 

そしてガチリとでもいうような真面目そうな凛々しいご尊顔。

 

まごうことなき陸軍騎兵将校。

 

まるで私の理想を描き出したかのような人。

 

「む?」

 

はっ!目が、目があってしまいました。

 

だめ……見ないで。

 

酔っ払った私を、そんな素敵な格好で、そんな素敵な目で私を見ないで!!!!

 

「ふにゃぁぁぁぁ。」バタっ!

 

「あ、おい! 羽黒さん、大丈夫か?……やべぇ完全に酔いつぶれてやがる! おい! 秋山! お前、この人送ってくれないか? 彼女は艦娘だから、この近くの軽巡寮まで送ってくれ!」

 

「なんと、彼女が我らを救いし希望の光、艦娘であったか。初めて見たときからただのご婦人だとは思えなかったのだが……。」

 

「そんなこと言ってねぇでさっさと送りやがれ!」

 

「承知!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さってと。授業準備もこれで終わりね。明日もこの足柄さまの授業をこうご期待よ!」

 

ひと仕事終えてうーんと体を伸ばす足柄。

 

「そういえばもうこんな時間だけれど、羽黒はまだ帰ってこないわね。大丈夫かしら?」

 

『ぴーんぽーん。』

 

「お? 羽黒帰ってきたわね。はいは~い。今でますよっと。」

 

チャイムの鳴った玄関に小走りで向かう。

 

「羽黒、お帰りなさ……!?」

 

「ひひ~ん、ぶるるるる。」

 

「ぎ、ぎゃ~~!!!! なんで、なんで馬がチャイム鳴らして出てくんのよ!」

 

ドアを開けていきなり想像を超えた来訪者が顔をだす。

 

まったく予想していなかったことに足柄は驚き、おののきながら玄関から後退する。

 

するとその馬がひっこみ、ブーツに赤ズボンを履いた陸軍将校がかわりに顔をだした。

 

「これは失礼いたしました。ご婦人。非礼をお許し願いたい。」

 

入り口から撤退していた足柄がおそるおそるその声の主をみる。

 

「は? あんたどちらさま? その格好は映画の撮影か何かですか?」

 

「いえ、違います。私は陸軍第一騎兵大隊長の秋山少佐であります。」

 

その言葉に足柄は再び驚いた。

 

「あ、あの陸軍の切り札っていわれる第一騎兵大隊の隊長!?」

 

「いえ、あなたがたのご活躍に比べたら微々たるものです。それよりも、彼女をお引取り願いたく、今夜は参上いたしました。」

 

「は? 彼女?」

 

そう言った秋山は馬の背中から誰かを降ろし、お姫さま抱っこをして再び玄関に戻ってくる。

 

「は、羽黒! あっちゃ~~。こんなに酔いつぶれちゃって。どうもすみません。私の妹が迷惑をかけてしまったようで。」

 

「いえ、素敵な妹君をお持ちのようで羨ましい。では、もう夜遅いのでこれにて失礼いたします。」

 

真面目な顔を崩さず、秋山は足柄に向かってピっと敬礼をする。

 

「あ、え、えぇ。今日はどうもありがとうございました。」

 

足柄もお辞儀をしてドアを閉めた。

 

「うぅぅぅん。すやすや。」

 

「まったく、我が妹ながらとんでもないのを連れてくるわね……。」

 

遠ざかっていく馬のひずめの音を聞きながら足柄は眠っている羽黒に話かける。

 

「まったく。あんな変な虫がつかないようにこの私が大事な妹はまもらなくっちゃね。」

 

「むにゃむにゃ。」

 

「ふふっ。ほら、羽黒、あなたのベッドよ。今日はいろいろありがとね。ゆっくり休んでね。それじゃ、おやすみ。」

 

 

 

 

「すやすや。えへへ。私の王子様。きっとまた、会えるよね? すやすや……。」

 

 

 

馬にまたがった将校が夜の鎮守府を歩く。

 

「ふむ。月明かりが美しいではないか。そうは思わぬか? 日和号?」

 

「ぶるるるるる!」

 

「ははは! そうか。そうだったな。貴様は月明かりよりもお天道様のほうが好きであったな。」

 

「ひひーん!」

 

「しかし、不思議よな。夜が嫌いなお前が、なぜか今日の”ごうこん”とやらに、いや、夜道を行きたがる様子であった。だが、私の命令を聞かずに遠回りをし結局私は”ごうこん”には間に合わず。そして、あのご婦人を送ることになったのだが……。」

 

「ぶるる……。」

 

「私以外の誰にも懐かぬお前があのご婦人に懐いた。それはあのご婦人が艦娘だからか? それともー……。」

 

「?」

 

「ふっ。私の思い過ごしか。しかしー。」

 

そう言葉を区切る秋山。夜の風が彼の頬をなでるように吹き抜けていく。

 

そんな風を感じながら口をゆっくり開く。

 

「しかし、今日の夜風は心地よい。」

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