足柄先生の猛烈!?時事授業   作:ふみ2016

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第4斉射 はわわわ!マイナンバーって何なのです?『テーマ:マイナンバー』

ホームルームが終わった直後の学校の放課後、というのはいつも部活動がはじまる活気ある時間のひとつである。

 

中高一貫校のシステムをとる鎮守府内のこの学校では部活動も基本は中高一緒に行うことになっている。

 

もちろん、レベル差はあるので同じ部活動でも中学・高校で練習内容が一部違う場合もある。

 

そんな鎮守府の部活動でも一番活気に満ちているのがここ、薙刀(ナギナタ)部である。

 

戦前、この薙刀を修めた有名な女性武道家は生涯無数の試合をし、明確に敗北したのはわずかに1回のみ。

 

ナギナタは2メートルにも及び、それを自在に操る技は圧巻の一言に尽きる。

 

そんな薙刀は女性の武道ひいてはスポーツとして生まれ変わり戦後に連盟が発足し、艦娘の彼女達は体育の必修として必ず習うことになっている。

 

今日も薙刀部の彼女たちは武道場で2メートルを越えるナギナタを巧みに操っていた。

 

「面!」

 

強気そうな少女が鋭い面を繰り出すと同時に対峙する少女に向けて足を前進させる。

 

二人とも防具は着けていない。

 

型(かた)と呼ばれるナギナタの基本操作を身に着ける稽古だ。

 

「……!」

 

やや垂れ目ぎみなその少女が無言で面を刃で受ける。目の印象からか打ち込んできた強気そうな少女と違い、こちらはやや弱気そうに見える。

 

すかさず面を打ちこんだ少女が右手と左手の位置を高速で反転させる。

 

『持ち替え』と呼ばれる技術でナギナタを体に立てるように持ち直し、

 

「スネ!」

 

すかさず垂れ目の少女のスネを打つ。

 

「……!」

 

それも受けきった垂れ目の少女が左斜め後ろに後退しつつ先ほどの強気な少女と同じように得物を持ち替える。

 

「面!」

 

びしり!と音を立て、垂れ目の少女の面が決まってしまった。

 

防具をつけない型の稽古なのでナギナタが直撃してしまった頭部は言うまでもなく、とても、とても痛い。

 

頭をさする強気そうな少女はキッ!と垂れ目の少女を睨みつけた。

 

「いった~~い!!!! ちょっと電、またナギナタで私の頭を打つなんて、どういうことなのよ~~!?」

 

「はわわわわ! 雷ちゃん、ごめんなのです!」

 

誤って強気な少女ー雷の頭を2メートルを超えるナギナタで打ってしまった電は何度もぺこぺこと頭を下げる。

 

そんな二人を気にかけて顧問を務める艦娘が近くに歩みよってくる。

 

「う~~ん。電はもっと空間打突の練習をして感覚を身に着けたほうがいいわね。」

 

「あ、足柄先生!」

 

二人の視線の先には上は白の稽古着に下は黒袴をはいた足柄が同じくナギナタを持って立っていた。

 

「雷は踏み込みすぎよ。それにしても……。」

 

と言って足柄は少しだけ考え、続きを話す。

 

「それにしてもいつもより二人とも落ち着きがないわね。何かあったの?」

 

その問いに顔を見合わせる雷と電。

 

そして電が足柄を見て事情を話しはじめた。

 

「じ、実は……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

それは昨日、学校が終わって電と雷ちゃんが自室でくつろいでいるとやってきたのです。

 

こんこん、とドアがノックされたので二人で開けて出てみると、そこには二通の手紙をもった暁ちゃんが立っていたのです。

 

「なんか、郵便が届いていたわよ。雷に電。」

 

「もう! 暁ったら、また電と私宛の手紙を渡し間違えてるわよ!」

 

「ふ、二人は名前の漢字が似ているから、レディもたまに、そうたまに間違えてしまうのよ!」

 

「何よ、それ~~!」

 

「はわわわ、二人とも、落ち着くのです!」

 

二人とも普段は仲がいいのですが、たまにちょっとしたことでいがみ合うのです。

 

「じゃ、じゃあ確かに手紙は渡したから、それじゃ!」

 

ばたん!とドアを閉めて暁ちゃんは自室に帰っていったのです。

 

「まったく、暁ったら……。」

 

「仕方がないのです。確かに私達の漢字はとてもよく似ているので、間違えやすいのです。」

 

「はぁ、電は本当にお人よしなんだから。まぁいいわ。一体何が届いたのかしら?」

 

「なんか、お役所からの手紙みたいなのです。」

 

その手紙の中には沢山の数字が記入された紙がはいっていたのです。

 

「まいなんばー? 何これ?」

 

「電もよく知らないのです。でも、とても大事なものってテレビでやっていたのをちらっと見たことがあるのです。」

 

「へぇ。どんだけ大事なのよ。これ?」

 

「ちらっと見ただけだから、電もよくわからないのですが、絶対なくしちゃダメって言っていたのを覚えているのです。」

 

「え~~、そんな面倒な代物なの、これ?」

 

「明日、足柄先生に聞いてみるのです! 先生ならきっとこれが何なのか知っているのです!」

 

「でも、明日社会の授業ないわよ? 職員室に行くのも、ちょっとなぁ。」

 

「なら、部活動のときに聞けばいいのです!」

 

「あ、そっかぁ。足柄先生、私達の薙刀部の顧問だしね。そうしよう、そうしよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけなのです。」

 

「なるほどねぇ。で、届いた郵便物について私に聞きたくって、いつもよりも落ち着きがなかったというわけね。」

 

「そうなのです。」

 

「う~~ん。そうねぇ。教えてあげたいけれど、この時間じゃねぇ。」

 

そう言って足柄は稽古場に備えられている時計と見る。

 

型の稽古はいつも部活動の最後に呼吸を整える意味でも行われる。

 

そのため、部活動が始まってからかなりの時間が経過しており時計の短針はすでに7を指していた。

 

(こんな時間からじゃ、教えるのは無理ね。)

 

そう考えた足柄は二人に向かって残念そうに話す。

 

「もう遅いし、明日の昼休みじゃダメかし……」

 

「今日! 今日がいいわ! このままじゃ私達、この”まいなんばー”がなんなのか不安で眠れないわ! 電もそうでしょ!?

 

足柄の言葉をさえぎる雷。話を振られた電は雷の話に同意するように首を強く縦に振る。

 

「はわわ! そ、そ、そうなのです! このままでは私達、”まいなんばー”のせいで路頭に迷ってしまうのです!」

 

必死で足柄に訴える二人。

 

「ろ、路頭に迷うだなんて大げさね。でも、そうねぇ……。」

 

手をあごにあてて考える足柄。その姿をちいさな二人の艦娘がじっと見つめる。

 

(必死ね。この必死さ、な~~んか企んでいそうなのよねぇ。この二人。)

 

ちらっと二人を見る足柄。相変わらず雷と電は無言でじっと足柄を見つめている。

 

(一体何を企んでいるのかしらね。)

 

と、足柄は思い当たることを考える。

 

今日は給料日前日。多くの艦娘の財布で最も閑古鳥が鳴いている日なのだ。

 

そんな日は特に食べ盛りの子どもたちはひもじい思いをする。

 

そこまで考え付いて足柄は「はっ!」と思い至る。

 

(まさか、この子達、そのためにあんなに落ち着きがなかったんじゃ……。)

 

じっと二人を見つめる足柄。

 

すると……

 

『ぐうぅぅぅぅ~!』

 

雷と電のどちらともなく威勢のいい腹の音が響く。

 

恥ずかしそうにする二人を見据える足柄。

 

「仕方がない。そこまで言うなら今日教えてあげるわ。」

 

せっかく今日教えてあげる、と言っても二人は喜んでいない。と、いうことはー。

 

(あぁ、やっぱり、この二人の狙いは……。)

 

そしてニコリと笑みを浮かべる。

 

「ご飯食べてから教えてあげるわ。今日は私についてきなさい。二人とも。一緒にご飯食べましょう。」

 

その言葉を待っていました!とばかりに二人も満面の笑みを浮かべる。

 

(本当にウチの駆逐艦娘達は隠しごとが下手なんだから。)

 

そんな様子を他の薙刀部員達、高等部の北上と大井が眺めていた。

 

「あちゃぁ、また足柄さん、ご飯に連れて行くみたいだよ大井っち。」

 

「そのようですね、北上さん。給料日前で足柄さんもお財布に余裕がないんでしょうから断ればいいのに。」

 

「え? ふふっ、大井っちがそう言うと面白いね。」

 

「ど、どういうことですか北上さん?」

 

「そんな足柄さんに中等部の頃、大井っち猫かぶってあの駆逐娘達みたいに何度もご飯つれてってもらったじゃない。ま、私も便乗してたけれどね。」

 

「ま、まぁそういうこともありましたね……。」

 

「本当、いい先生だよ。足柄さんは。私達、まだまだ力が足りないけれど、せめてこれで恩返ししたいね。」

 

そう言って北上は自分の持つナギナタを見つめる。

 

そんな北上の手に大井は自分の手をそっと重ねる。

 

「大井っち……。」

 

「北上さん、私も北上さんと同じ気持ちです。私達ができることで、足柄さんに教えてもらったこのナギナタでできる恩返しをしましょう!」

 

北上をうっとりとした眼差しで見つめる大井。

 

「大井っち……! そうだね、大井っち!」

 

そう言って北上が大井の腰に腕を回し優しく抱く。

 

「はひゅん! 北上さん……! そんな大胆な……! 駆逐艦の後輩達も見ています……!」

 

「そんなの関係ないよ大井っち。見せ付けてやろうじゃん。」

 

「あぁ北上さん、大好きです。大好きです、北上さん……!」

 

「私もだよ……、大井っち……!」

 

顔を近づける重雷装巡洋艦北上と大井。

 

そんな様子を後輩の駆逐艦娘達は白い目であきれて見ていた。

 

「またよ。北上さんと大井さん。女同士でなにしてんのかしら。」

 

「はわわ! 仲が良すぎなのです!」

 

手で顔を覆いながらもわずかに指を開けてこっそりと見る電。

 

「仲がいいっていうより、あのままだと一線越えそうね。というか、越えてんじゃないかしら。あとでおしおきね。」

 

ポツリ、とつぶやく足柄。

 

「先生、なにか言ったのです?」

 

「何も言ってないわ。さ、時間がないわよ。二人とも、あのアホな先輩みたいにならないように最後まで気を抜かないで稽古に励みなさい!」

 

『はい!!』

 

元気に返事をして二人は思いっきり稽古に励むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまなのです!」「ごちそうさまでした!」

 

ちょこんと椅子に座っている駆逐娘二人が行儀よく両手をあわせる。

 

雷と電はおなか一杯で幸せ!といった満面の笑みを浮かべている。

 

「はい。お粗末さまでした。」

 

二人の満足そうな表情を見て今回の夕食を作った羽黒もニコっとする。

 

「二人ともごめんね。給料日前だからお店に連れて行ってあげれなくって。」

 

と、足柄が少し残念そうな声で話す。

 

「そんな! とんでもない!」

 

「そうなのです! とてもおいしかったのです!」

 

「そう。そう言ってくれると私も嬉しいわ。ま、私がつくったわけじゃないんだけれどね。」

 

「あの、食後のデザートにプリンをつくってあるのですが、雷ちゃん、電ちゃん、食べませんか?」

 

「ありがとうなのです! 羽黒先生! でも、本当にいいのです? ご飯を食べさせてもらって、デザートまで……。」

 

「そ、そうよ。私も電もおなか一杯食べさせてもらっただけでも……。」

 

「ほら二人とも、遠慮しなくていいのよ。こんな機会でもなければ羽黒の特製プリンを食べられないわよ!」

 

「ふふっ。ねぇさんの言うとおりですよ。さ、遠慮しないで。」

 

「あ、ありがとうなのです! ではありがたくいただくのです!」

 

こうして二人の目の前に綺麗なカラメルソースがのったプリンが差し出される。

 

スプーンを持ち、目を輝かせる二人。

 

「さて、おなかも膨れたことだし、本題にはいりましょうか。」

 

「ねぇさん、本題って何です?」

 

「これなのです!」

 

そう言って自分のカバンから電がある封筒を取り出す。

 

「ちょっと電! ”まいなんばー”ずっと持ち歩いていたの?」

 

「はわわ、雷ちゃん、よくなかったのです?」

 

「なるほど、二人はマイナンバーとは何なのかを聞くためにいらっしゃったのですね。」

 

「そうなのよ。」

 

「ねぇさん、私もマイナンバーは詳しくは知りません。この機会に私にも教えてください。」

 

「ええ。もちろんよ、羽黒。そうね、せっかく電が持ってきているから、ちょっと確認してもらいましょうか。」

 

「確認って、何をです?」

 

「マイナンバーっていうからには、数字が与えられているわ。電、数字は何桁?」

 

「えっと、いち、にぃ……12桁もあるのです。」

 

「そう。住民登録を行っている人全員が12桁の数字をもらったわ。ここまでは知っているわね?」

 

「と、いうか、それくらいしか知らない……。」

 

と雷は恥ずかしそうに頭をかく。

 

「マイナンバー制度は正しくは『社会保険・税番号制度』っていうの。」

 

「う~~ん。いかにもお役所っぽい名前なのです!」

 

「特に大事なのは社会保険の部分ね。」

 

「社会保険?」

 

雷が首をかしげる。

 

「社会保険って何なのです?」

 

「そうねぇ。みんなも一度は聞いたことがあると思うわ。お年寄りが……。」

 

「あ、雷わかっちゃった! 年金だ!」

 

「おー! 雷ちゃん、さすがなのです!」

 

「その通り! マイナンバー制度の肝は年金よ!」

 

「ねぇさん、年金がどうマイナンバーに関わっているのですか?」

 

「それはこの制度が始まるきっかけが、年金だからよ。」

 

そう言って足柄は自分のxperi@のロゴがはいったスマホを取り出す。

 

「今から動画をひとつ見てもらうわ。それを見れば何でマイナンバーが必要になったのかわかると思うわ。」

 

 

 

『マイナンバー制度は政権を揺るがしたひとつの事件がきっかけである。

 

 納付記録があるものの【持ち主のわからない年金記録】が【5万件】もあることが2007年2月の国会で発覚した。

 

 いわゆる【消えた年金問題】である。  

 

 記録を管理する社会保険庁は国民から痛烈な批判をあび、マスコミも一斉に取り上げた。

 

 こうして政権を大きく揺さぶる大問題になったのである。

 

 その後、当然宙に浮いてしまった年金情報を確認することになったが、その作業はまったく進展しなかった。』

 

 

「と、まぁ、こういうことがあったのよ。」

 

足柄が動画を一時停止する。

 

「はわわわ、大変なのです! でも、どうして宙に浮いた年金情報の確認が上手くいかなかったのです?」

 

「それじゃ、続きを見てみましょう。」

 

 

 

『過去分をさかのぼってデータの照合を試みたが、なんと、肝心のデータそのものがあいまいだったのだ。

 

 これでは情報照合のしようがない。

 

 そこで今後このように情報が不明確になることが起こらないようにする必要に迫られた。

 

 そして2013年5月。

 

 記録をひとりひとりキチンと結びつけて管理するための【マイナンバー法】が成立した。』

 

 

 

「なるほど、情報をしっかり管理するためにこのマイナンバーは送られてきなのね。」

 

納得するように頷きながら話す雷。

 

「そうね。まぁ、実際のところ、マイナンバーを導入すればお役所仕事が楽になるっていうのもあるけれどね。」

 

「どういうことなのです?」

 

「お役所に年金の申請なんかをするとね、いくつもの手続きが必要になるの。でもマイナンバーが導入されればその手続きがグッと楽になるわ。」

 

「電、わかっちゃったのです! つまり手続きが楽になれば労働力も減るのです!」

 

「そっかぁ! 冴えてるわね、電!」

 

「えっへんなのです!」

 

「ねぇさん、でもマイナンバーって年金も大事ですけれど、他には何に使うのですか?」

 

「そうね……。今後使えることはどんどん増えていく予定みたいだけれど、とりあえずは3つかしら。」

 

そう言って足柄はスマホに資料を展開させた。

 

 

 

☆…マイナンバー、何に使う?…☆

 

①社会保険

 年金の資格取得やその確認、医療保険の保険料徴収など

 

②税

 確定申告書、届出書、調書などに記載

 

③災害対策

 被災者生活再建支援金の支給など

 

 

 

「災害対策もマイナンバーで管理するんだぁ。」

 

「こういったことをするために効率的に情報を管理して連携できるようにするのも目的のひとつね。」

 

「ねぇさん、質問いいですか?」

 

「なに? 羽黒?」

 

「情報を、その、こんなに扱うってことは悪用されたりしないのですか?」

 

「うーん、そうねぇ。さきにマイナンバーを導入した外国だと悪用されたりはしてるわね。」

 

「あぁ、やっぱり。」

 

「日本では悪用されるのを防ぐために強力な罰則を定めたわ。それにデータを完全に盗まれないように分散して管理するようにしているわ。」

 

「なるほど、対策はとられているのですね。少し安心しました。」

 

「ま、マイナンバーを説明すると、ざっとこんなもんかしらね。」

 

「電、マイナンバーが自分の情報をきちんと管理してもらうために大事だということが、よくわかったのです。」

 

「せっかくこういう制度を導入するんだもの。お役所はしっかり私達の情報を管理してもらいたいわ!」

 

「二人ともよく理解したみたいでよかったわ。」

 

わからないことが解決したことでスッキリした雷と電を見て、足柄も満足そうに頷いた。

 

「それでは皆さん、デザートも食べ終わったようなので後片付けしますね。」

 

「あ、羽黒先生。後片付けは私と電がやります! デザートまで頂いたんですもの、それくらいはさせてください!」

 

「そうなのです! お二人は休んでいてください、なのです!」

 

「そうですか? それではお二人にお任せします。何かあったらおっしゃってくださいね。」

 

『はい!』

 

返事をして食器類を片付けに別室にいく雷と電。

 

「ねぇさん、お二人とも満足してくれたようでなによりですね。羽黒もマイナンバー制度がどんなものなのかわかってよかったです。」

 

「そうね。でも、結構遅い時間になっちゃったわね。さすがにこんな時間を二人だけで帰らせるわけにはいかないわね。」

 

「それなら大丈夫です。ねぇさん。」

 

そう言ってスマホを取り出し誰かに連絡する羽黒。

 

(あら、羽黒? 誰を呼ぶのかしら?)

 

足柄は疑問に思いつつ羽黒がスマホを操作するのを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

食器をさげた雷と電はエプロンをつけて食器をがちゃがちゃと音を立てて洗っていた。

 

「それにしても羽黒先生のご飯、本当においしかったわね。そう思わない? 電?」

 

「電もそう思うのです! デザートに出されたプリンも甘さが絶妙でお店で売ってるものよりもおいしかったのです!」

 

「でも……。」

 

「でも、なんなのです?」

 

「羽黒先生ってあんなに可愛くって、こんなに女子力が高いのに浮いた話を聞いたことがないわ。」

 

「う~~ん。そういえば電も聞いたことがないのです。」

 

「実はね……。」

 

そう言って雷はこっそり話しをするために顔を電の耳元に近づける。

 

「羽黒先生、相当な夢見る乙女らしいわよ。」

 

「はわわ! それってどういうことなのです?」

 

「あくまでウワサなんだけれど、馬に乗った侍のような男性が好きで、そんな人をずっと待っているって。」

 

「そ、そんな男の人、今の時代にいるわけないのです!」

 

「だ、か、ら、彼氏もできないんじゃないかって。もっぱらのウワサよ。」

 

「た、たしかにその説が正しければ謎は解けるのです!」

 

「終わりましたか? 二人とも?」

 

と、羽黒が声を掛ける。

 

いきなりウワサ話の主人公が現れたのでビクっと肩を震わせる二人。

 

「あ、あ、あと少しです! 羽黒先生!」

 

「はわわわわわ! そうなのです! 問題はどこにもないのです!」

 

「そうですか? それでは食器を洗い終わったら二人を寮まで送ってもらうので、声をかけてくださいね。」

 

『はい(なのです)!』

 

羽黒が部屋から出て行き、「はぁ!」と大きく息を吐く。

 

「き、聞かれたかな?」

 

「わ、わからないのです。で、でもあの様子ならたぶん大丈夫なのです。」

 

「ん? 今おもったんだけれど、『送ってもらう』って羽黒先生は言ったわよね?」

 

「確かにそう言ったのです。」

 

「羽黒先生か足柄先生が送ってくれるんじゃなくて?」

 

「あ! そういえばそうなのです!」

 

「いったい誰が私達を送ってくれるんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ぴんぽーん

 

「いらっしゃったようです。それでは二人とも、気をつけてね。」

 

「はい! 今日はごちそうさまでした!」

 

「ありがとうございました、なのです!」

 

そして玄関のドアを雷と電はがちゃりと開けた。

 

するとそこには

 

『ひひ~~ん! ぶるるるるる!』

 

と元気になく馬が二人の顔面の3センチ先に現れた。

 

「ひ、ひ、ひえ~~い!!!!!」

 

驚き飛びのく二人。

 

「ちょ、ちょっと、この展開って……!」

 

以前同じ状況を経験した足柄がおののく。

 

「あぁ! 秋山さま!」

 

うっとりとした表情をする羽黒。

 

馬の背中には革ブーツに赤ズボンを履いた陸軍騎兵将校がまたがっていた。

 

「板型電話機能搭載小型電子計算機に送られてきた要請を受け、参上つかまつった。陸軍第一戦車大隊大隊長、秋山です。」

 

(あ、あのおかしな陸軍の将校!? まさか羽黒がこいつに連絡していたなんて! つーかスマホって言いなさいよ! まどろっこしい!)

 

とまさかの人物の登場で心の中で絶叫する足柄。

 

「羽黒殿。こちらの少女がたをお送りすればよろしいのですか?」

 

「は、はぃ~~。よろしくおねがいします。」

 

ぽわ~~んとした表情で頼む羽黒。

 

状況がよくつかめない雷と電は玄関先で完全に固まっていた。

 

「あ、え、えっと……。」

 

「では、参りましょう。おふた方。」

 

声をかけられるも馬の前で呆然とする駆逐艦娘達。

 

「え、えっと、あの、その……。」

 

「二人とも、大丈夫ですよ。秋山さまが二人をちゃんと寮まで送ってくださいますから。」

 

「左様。この命に代えてもお二方をお守りいたす。」

 

「あぁ、秋山さま、素敵です……!」

 

「二人とも気をつけてね……。」

 

半ば諦めたような声を出す足柄。

 

「は、はい。」「な、なのです。」

 

こうして雷と電を引き連れた騎兵が駆逐寮まで行くことになった。

 

よく晴れて月の光が美しい。

 

そんな中、パカパカパカという馬のひづめの音だけが夜の鎮守府に甲高く響くのだった。




参考文献
梅屋真一郎『知らないとどうなる!?いちばんわかりやすいマイナンバー』日本能率協会マネジメントセンター、2015
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