騎士王が兜に王位を譲る話   作:VISP

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冬木編だとセイバー枠で大体そのままなのでスキップです。
FGOは4章の一部ネタバレ注意。


番外編
番外編その1 FGO(ロンドン)編


 

 

 

 

 (さて、このままではロンドン上空にあっさり到達してしまうが…。)

 

 魔霧に侵された大英帝国首都、その上空へと至る雷の階段を昇りながら、最新の雷電の化身たる碩学者二コラ・テスラは思考する。

 

 (このままではあの若者達が追いつく前に着いてしまう。それ即ち、私が雷電を与えたもうた人類文明の終焉を意味する。)

 

 狂化を付与されようと、武勇ではなく知性こそ力である二コラ・テスラにとり、如何なる状況下でもその知性が下がる事は無い。

 しかし、身体と知性と切り離されていては、それも十全に生かせない。

 

 (とは言え、この状況なら抑止力とて何らかの形で介入してくる筈。あの若者達だけでなく、何かが…)

 

 そう二コラが思考した時、不意に活性化していた魔霧に変化が発生した。

 都市を覆い尽くしていた有毒の霧が徐々に、しかし確かに一点へと収束を開始する。

 既に収束点の濃度は魔術師と言えど即死するレベルの致死量となり、時間と共に更に濃厚になり、遂にはそれらを媒介に、ある英霊が実体化する。

 

 「ふ、ふははははははッ!御都合主義とは相変わらずだな抑止力!よろしい大いによろしい!だがしかし生半な天地の英霊では我が障害となる事も…!」

 

 

 

 「黙れ」

 

 

 

 余りの事態に愉快そうに哂う二コラを制する様に、霧の中から憤怒を滲ませた声が響く。

 声量自体は大した事は無い。

 しかし、そこに込められた余りにも大き過ぎる威圧にさしものの二コラも沈黙した。

 そして、遂に魔霧の中から、一騎のサーヴァントが顕現する。

 

 「貴様か。ロンディウムを、我がブリテンを焼かんとする蒙昧は。」

 

 それは漆黒だった。

 夜の闇にも、霧の闇にも飲み込めず、宇宙の暗黒が如き漆黒の鎧と槍。

 狂気に染められた愛馬に跨り、くすんだ金の髪を揺らし、同色の瞳を己が国と民の敵たる者へと向けるその威容。

 

 「はははははははははははは!真逆貴殿か星の英霊!人の希望の象徴よ!国の、人類のために、我が前に立つか騎士王よ!」

 

 未だこの国に畏怖と恐怖と共に語られる、偉大なる騎士達の王。

 国を、民を救うため、あらゆる悪行を成したと言われ、大英帝国の二枚舌外交を始めたとも言われる、伝説的な暴君の中の暴君。

 アルトリア・ペンドラゴン。

 全身から覇王としての威を放ちながら、彼女は19世紀の霧の都へと降り立った。

 

 「黙れと言ったぞ碩学の徒よ。」

 「はは、すまないな星の英霊よ。何せこの身は天災故に人の話を聞かぬ所がある。許されよ。あぁしかし…」

 

 その覇気を一身に浴びながら、大天才は動じない。

 寧ろ、愉快で愉快で堪らない、そう言わんばかりに晴れの気を放っている。

 

 「確かに君ならこの私を殺し得る!最新の雷電たるこの身すら、君の槍なら貫ける!ははは、やはりこうでなくてならない!」

 「成程、分際を弁えている様だな。では…」

 

 ゆっくりと、騎士王の槍が持ち上げられる。

 ブリテンに伝わる聖槍、世界の表裏を繋ぎ止める楔にして「ロンの槍」と言われるソレ。

 ソレの表面を、不可視の魔力が渦巻く様に巡っている。

 触れれば凡百の英霊では一撃で致命打を負うソレを向けられ、それでもなお、大天才は揺るがぬ笑みを以て歓迎する。

 

 「さぁ人類救済の具現者よ!我が雷電、見事貫き通してみせよ!」

 「雷とは刹那の間に天地を駆けて消える者。表裏の狭間へ消え行くがいい。」

 

 19世紀、大英帝国首都ロンドン。

 魔霧に包まれた霧の都で、人類に雷の恩恵を齎した碩学者と人類救済の一翼を担う大英雄が、その上空で激突した。

 

 

 

 

 そして、遂に間に合った若き英雄達は見た。

 偉大なる騎士達の王、その真の意味での雄姿を、民と国を守るため死力を尽くした王の背中を。

 

 

 

 

 だがそれも、束の間に過ぎなかった。

 雷電たる硯学が消えた時、その槍の矛先は、今の今まで轡を並べていた者に、息子である筈のモードレッドへと向けられていた。

 

 「構えよ、モードレッド。」

 「糞、何でだ父上!?」

 

 焦りと悲しみを綯い交ぜにしながら、モードレッドは油断なくクラレントを構えた。

 ランサーである騎士王に対し、モードレッドは多少の消耗こそあるものの有利である。

 対し、今の今まであの雷電たる二コラ・テスラを相手に五分の勝負に持ち込んでいた騎士王は、例え聖杯のバックアップがあっても、多大な消耗を強いられていた。

 仕掛けるなら戦闘中に幾らでも機会はあった筈。

 なのに何故、今になって仕掛けてくる?

 

 『不味い!多分アーサー王にもゾォルケンの詠唱の影響があるんだ!今まで共闘してたのがおかしい位に!』

 

 その疑問をカルデアのロマニからの通信が答える。

 それが意味する所は、この戦闘を避ける事は出来ないと言う事だった。

 

 「残念ですが…戦闘、開始します!」

 

 盾を構える少女の声に、魔術師に従う英霊達が各々の得物を構える。

 

 「抗え、人理の守護者よ。一度は私を破ったのなら、二度目もやってみせよ。」

 

 その姿に騎士王が威圧を増した笑みを浮かべ、応える様に聖槍を掲げ、魔力を漲らせる。

 

 「出来ぬと言うなら此処で潰えよ! 最果てにて輝ける槍!!」

 

 騎士王との二度目の戦いは、世界を貫く聖槍の輝きから始まった。

 

 

 

 

 戦いは、辛勝だった。

 ロンゴミニアドの威力は貫通力だけを見ればカルデアが嘗て相対した約束された勝利の剣を超え、マシュの疑似宝具による防御すら貫通し得る程だった。

 だが、彼らは幾多の激戦にて鍛えられた、敗北即ち人類史焼却という重責を負った、人理の守護者であり、ここまで戦い、生き残ってきた経験と覚悟があった。

 そして…

 

 「我が麗しの…」

 

 彼女がいた。

 

 「父への手向け!」

 

 兜の騎士、叛逆王、紅の王。

 この世で唯一騎士王の血を受け継ぎ、その命を絶った者、モードレッド・ペンドラゴンが。

 騎士王の天敵たる彼女の手には、王権を象徴するクラレントが握られている。

 その輝ける王剣は純白の雷を伴う斬撃となって、生前と同じ様に回避も防御もせず、まるで受け入れる様に微笑んだ騎士王を袈裟懸けに斬った。

 

 「御美事。」

 

 その一撃で霊核を砕かれながら、それでも騎士王は膝を着く無様を見せなかった。

 

 「流石は我が子、我が後継。良くぞ暴君からロンディウムを、ブリテンを守り抜いた。」

 「父上…ッ!」

 

 その称賛に、モードレッドは悔しそうに、遣る瀬無さそうに父に呼びかける事しか出来なかった。

 狂化されていたから。

 ブリテンを、人類を守るためには仕方なかった。

 そう言うのは簡単だった。

 だが、生前から尊敬し、焦がれ、愛する父を二度も手にかける心境は、何人も横槍を入れる事は出来なかった。

 

 「良い、許す。お前の剣からはお前の王気が伝わった。よく務めを果たした様だな。」

 「オレは、オレ、は…!」

 「泣くな馬鹿者。王たる者が涙を見せるな。」

 

 二度も愛する父を殺してしまった。

 その悔いに涙を流す愛娘に、しょうがないとばかりに騎士王は、アルトリアは微笑んだ。

 

 「私を終わらせてくれた。二度も望まぬ結末を防いでくれた。」

 

 徐々に末端から黄金の輝きに、魔力へと霧散しながら、それでも騎士王は我が子らに、人理に守護者達に微笑んだ。

 

 「モードレッド、これを持っていきなさい。必ず力になるでしょう。」

 

 そう言って、まだ残っている右腕で母は娘に一振りの剣を渡した。

 

 「カリバーン!?でも、オレは…」

 「良いのです。貴方には、その資格があるのですから…。」

 

 勝利すべき黄金の剣。

 騎士王が岩から抜いたとされる、ブリテンの王選定の剣。

 嘗てアルトリアが苛烈な治世の中で折ってしまった、王たる者の資格を問うソレを、モードレッドはおずおずと手にした。

 

 『カリバーンの魔力が増大した!?モードレッドを認めたのか!?』

 

 ロマニの解説と輝きを増す剣に一同は驚きを露わにするが、モードレッドだけは神妙な顔でアルトリアを見つめていた。

 

 「貴方達の道は深く険しい。でも、どうか諦めないで…」

 

 消えゆく中で暴君の中の暴君と言われた女性は、しかし、最後まで若者達へと言葉を残す。

 

 「7つの聖杯を7つの英霊に与えなさい。それなら或は…。」

 「父上!」

 「さよなら、また会いましょう、私の…」

 

 最後まで誰かのための言葉を残しながら、騎士王は、アルトリアは消えた。

 後には、僅かに漂う魔力の残り香と…

 

 「父上の剣、お預かりします。」

 

 黄金の剣を構え、静かに誓う王の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝具紹介

 

 クラレント(凛然と輝く王剣)

 

 レンジ…対人宝具

 ランク…B

 ブリテンの王権を象徴する儀礼用の剣であり、本来なら騎士王が担う白銀の剣である。

 しかし、モードレッドが王の課題のために旅立つ時に仮として与えられて以来、愛剣として使用される事となる。

 本来は儀礼用のため、武器としての威力は約束された勝利の剣に劣るものの、それでも十二分に強力である。

 

 

 

 

 クラレント・ブラッドアーサー(我が麗しの父への手向け)

 

 レンジ…対軍・対王宝具

 ランク…A+

 クラレントの全力解放形態。

 真名解放時には担い手の魔力を増幅させ、その刃から約束された勝利の剣に酷似した銀色の閃光として発射する。

 モードレッドの王位継承の逸話から、対騎士王、対王において使用した場合、攻撃力が上昇する上、この剣で王の称号を持つ者を倒した場合に限り一定確率で宝具又はスキルを略奪する事が出来る。

 また、本人からスキル・宝具を譲渡された場合、無条件でそれを使いこなすと言う、正にモードレッドの逸話そのものを再現した宝具である。

 史実のそれとは異なり、正式な手順を踏んでいるため、魔剣ではなく、聖剣としての属性を維持している。

 騎士王を王という呪縛から解き放った、王位簒奪にして継承の剣。

 

 

 

 

 カリバーン(勝利すべき黄金の剣)

 

 レンジ…対人宝具

 ランク…B(A)

 

 騎士王が岩から抜いたブリテンの王選定の剣。

 儀礼剣であり、その攻撃力は約束された勝利の剣に比べると劣る。

 また、乳上の場合、王位について半年の頃に折ってしまったため、諸侯からの反発を助長してしまい、この剣そのものが割とトラウマの一翼を担っていたりする。

 ブリテンの王に相応しい者が持った場合、その威力が1ランク上昇する。

 また、担い手に不老の加護を与えるため、魔力回復(小)、単独行動(C程度)を付与する。

 もし乳上が存命のまま譲位を選択した場合、自身が鞘を持ちながら、湖の貴婦人に打ち直してもらったこの剣をモードレッドに与える予定だった。

 

 

 

 

 

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