騎士王が兜に王位を譲る話   作:VISP

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ふぅ…執筆時間約2時間でこれなら、我ながら頑張ったな!(自画自賛

そしてHF二巻発売見逃してた。買わなきゃ(迫真


第10話 Stay night編その4 VSキャスター

 

 

 

 三日目・昼

 

 

 丁度お昼過ぎの5時限目。

 士郎と凛は美味しいお弁当(正直店が開けるレベルだと思う)を食べた後、ここ数日のハードな日常から少しばかり眠気が差していた。

 昨日、ライダーに襲われたと言うのに、人間と言うのはやはり肉体からの欲求に弱いらしい。

 無論、互いに傍には霊体化したサーヴァントがいるからこそ、なのだが…。

 それが油断して良いという理由にはならない。

 

 突然、学校の敷地全体が深紅の結界に包まれた。

 

 これに即座に眠気を追い出したのは、二人が気を抜いていたとは言え、戦の経験があり、魔術師であったからだろう。

 

 「アーチャー!」

 「ライダーの結界宝具だな。一般人では一時間もすれば消化されるぞ。」

 

 真紅の聖骸布を纏った弓兵の言葉に、凛は歯噛みする。

 まさか真昼間に仕掛けてくるとは思っていなかった。

 否、学校なんていう人口密集地帯にこんな代物を仕掛ける様な奴にそんな暗黙の了解を期待するだけ無駄だったという事だろう。

 

 「士郎、敵は宝具と機動力に優れたライダーだ。十中八九対軍宝具等の広範囲攻撃手段を有している。ここで戦えば巻き込むぞ。」

 「くそ、慎二の奴…!」

 

 セイバーの経験から来る考察に、士郎は歯噛みする。

 かつての友人の変わりぶりに、彼は心底激怒していた。

 此処には桜も大河も、多くの生徒と教員もいる。

 断じて逃げる訳には、否、逃がす訳にはいかない。

 

 「奴自身はこの状況でも十全に活動可能だろうが、何処にいるか結界に紛れて分からん。アーチャー、凛、二手に分かれて行動するぞ。」

 「分かった。衛宮君達も無理はしないでね!」

 

 判断は一瞬、即効で戦力の分散を良しとして、二組は独自に行動する。

 どの道、サーヴァント同士の戦闘が始まれば気づく。

 この学校という敷地内なら、サーヴァントなら即座に駆け付ける事が出来る。

 

 「士郎、我々は向こうの校舎を。」

 「解った!」

 

 そして士郎達もまた行動を開始する。

 

 

 

 だが、それをじっと見る者の存在に、セイバーだけが気づいていた。

 

 

 

 …………………………………………………………

 

 

 

 

 「止まれ、士郎。」

 

 制止の言葉に、士郎は己のサーヴァントに怪訝そうな視線を向けた。

 だが、彼女の顔に迷いはなく、ただランサーやバーサーカーの時と同じ様な、戦う者の厳かな表情だけがあった。

 

 「出てこい、魔術師。さもなくば、ここら一帯消し飛ばすぞ。」

 『あら?騎士様ともあろうお方が随分と乱暴なのね。』

 

 その何処から届いているのか分からない声に、士郎は初めて自分達が見られていた事を悟った。

 セイバーがいるとは言え、アーチャーと分断された状況で、サーヴァント一体を相手に出来るのだろうか。

 否、それは既に先日の時点で、バーサーカーやランサーとの戦いで証明されている。

 

 『ふふ、随分警戒されたものね。出来れば穏便に話し合いたいものだけど。』

 「では姿を見せてもらおうか、キャスター。であれば話を聞く位はしよう。」

 

 セイバーと士郎の前に現れたもの、それは紫色の奇妙な靄だった。

 それが辛うじて人型に思える程度の輪郭を象っており、声はそれを通して発せられていた。

 

 『私が天敵の貴方の前に姿を現すなんて、怖くてとてもじゃないけど無理よ。』

 

 言葉の端々から伝わる、こちらへの侮蔑と軽視。

 否、それを敢えて感じさせる事で、こちらの敵意と警戒心を集中させているのだ。

 つまり、この敵は何かを狙っている。

 

 『要件は一つよ。それをそちらが飲んでくれれば、二度と貴方達の前には現れないし、害をなす事もない。だから…』

 

 セイバーは無言だ。

 この手の敵と言葉を交わす事は隙に繋がると理解しているのだ。

 例えばモルガンとかマーリンとかケイ卿とか、彼女の生きた時代でも特に口の達者な連中は頭おかしい位に賢く、こちらを手玉に取るのだ。

 

 『死んで頂戴。』

 

 その言葉と同時、二人目掛けて奇妙な骸骨の兵士達が近くの教室や階段から現れ、殺到する。

 その手には剣や槍、斧が握られ、どう見てもあれらの接近を許した時点で穏やかならざる結末を迎える事だろう。

 無論、

 

 「フンッ!」

 

 それをこの剣の騎士が見逃す訳もないが。

 一太刀、ただそれだけで数体の骸骨兵が砕かれ散らされる。

 だが、その程度ではどうにもならない。

 骸骨達は砕かれた後、適当な破片同士が接合し、新たな兵士となって戦線に復帰する。

 一体一体の動きは単調で、その攻撃には重さも速さも無い。

 ただ、疲れず、動揺せず、幾らでも用意できる兵器というのは中々に厄介だ。

 その物量によって、セイバー達はこの狭い校舎の中で、あっと言う間に取り囲まれてしまった。

 

 「セィ!」

 

 だが、此処にいるのはただの騎士ではない。

 クー・フーリンの片腕を切り飛ばし、ヘラクレスを一度殺した不死身の騎士だ。

 骸骨風情ではどうにもならない格の差が存在する。

 現に今流行りの無双ゲーの様に、彼女は骸骨達を切り捨て、叩き潰し、粉砕し、骸骨の海を散らしていく。

 ものの1分で100体近い骸骨を砕いているのだから、凄まじい限りである。

 

 『凄まじいわね、セイバー。でも…』

 

 スゥ…と紫の靄が収束し、一人の人間、否、サーヴァントが実体化する。

 紫のローブに身を包んだ女性は妖艶な雰囲気を纏っており、明らかに信用できる類の人相ではなかった。

 そして、

 

 「これならどうかしら?」

 

 その左手には、今朝朝食を一緒にとった藤村大河の姿があった。

 だが、セイバーはそれを無視して骸骨を破壊し続ける。

 経験的に知っているからだ、この手の手段で嵌まると後で痛い目を見ると。

 

 「ッ、セイバー止めてくれ!」

 「……。」

 

 士郎の声でセイバーは漸く制止される。

 もし声をかけねば、キャスターを斬り捨てるまで何があっても戦闘を続行しただろう。

 この暴君は、人質程度では止まらないのだから。

 

 「あら、セイバーは無理でもマスターは釣れた様ね。」

 

 士郎の無様を、キャスターは嘲笑する。

 人として当然の狼狽と動揺は、しかし魔道に生きる者にとっては弱さでしかない。

 とは言え、それを持ち続けて得るものもあれば、失うものもある。

 こればかりは賛否両論であり、永劫決着がつく事はないだろう。

 

 「士郎、ここで殺さねばこいつはもっと多くを殺すぞ。女一人で済むのなら、ここで殺しておくべきだ。」

 「それは…」

 

 それは、確かにそうだ。

 人間に全てを救う事は出来ない。

 救おうと思った者しか救えない。

 間に合わなかった者、敵対した者はどうやったって救えない。

 でも、それでも、

 

 「止めてくれ。藤ねぇはオレの姉貴分なんだ。」

 

 衛宮士郎にその決断は下せない。

 少なくとも、今はまだ。

 

 「…分かった。」

 

 それだけ言って、セイバーは不可視の剣を下ろした。

 

 「あら、いともあっさり。最初からこうしてればよかったかしら?」

 

 それをキャスターは然も愉快だと言わんばかりに見ていた。

 まるで演劇に出た道化を笑う様に、さもおかしそうに。

 

 「まぁ良いわ。それじゃ坊や…」

 

 するりと、セイバーの横を通り抜けてキャスターが士郎の前に滑る様にして近づく。

 その手には稲妻の様なジグザグを描いた、歪んだ短剣が握られていた。

 

 「セイバーを貰うわね?」

 「ガッ…!?」

 

 士郎の肩口に、短剣の切っ先が突き刺さる。

 それだけならまだ耐えられた。

 

 「が、あ、ぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああッ!?」

 

 問題は、そこから伸びる様に左腕から発生した激痛だ。

 日々、魔術と剣術の鍛錬を行って、並より痛覚への耐性を持つ士郎でも絶叫する様な激痛。

 同時、僅かな痕跡を残して士郎の左手の令呪が消失した。

 

 「あっはははははははははははははは!もう本当に馬鹿なんだから!ふっくくく…!」

 

 堪え切れないと言う様に、キャスターは哄笑する。

 その右手には士郎の代わりとばかりに、否、移された令呪が赤く輝いていた。

 

 「成程、契約の破棄か。厄介な。」

 

 それを険しい顔でセイバーは見ていた。

 

 「そうよ。私の宝具たる「破戒すべき全ての符」は全ての魔術を初期化する。それは勿論、サーヴァントの契約も!」

 

 自信満々に告げる魔術師の姿と宝具。

 それで漸く、セイバーは彼女の正体を思い出した。

 

 「成程。貴様は裏切りの魔女か。」

 「…えぇ、そうよ。まぁ宝具まで見せれば流石に解るわよね。」

 

 魔女と言われた事に、一瞬だけ歯噛みして直ぐにキャスターは冷酷な魔術師の仮面を被る。

 彼女の在り方は、彼女自身が望んだものではない。

 裏切らされ、裏切られ、裏切り続けた、世間知らずの賢い王女の成れの果て。

 それが裏切りの魔女、コルキスの王女メディアだった。

 

 「さてセイバー。先ずは第一の令呪よ。」

 

 そして魔女は右手の令呪を掲げた。

 意に沿わない主替えをしたのなら、やる事はただ一つ。

 それは…

 

 「坊やを殺しなさい。」

 

 前の主を殺す事だ。

 

 「ぐ、ぬぅ……ッ!」

 

 令呪による強制力、それにセイバーは真っ向から抵抗する。

 元より三大騎士クラスは対魔力を持ち、更にセイバー自身も最上級の対魔力を保有している。

 意に沿わぬ命令には勿論ながら抵抗できる。

 

 「士郎!大河を連れて凛達と合流しろ!」

 「だけど、セイバーは!」

 

 最早まともに動けない状態で、それでも彼女は士郎へ逃げろと告げる。

 いっそ麗しいまでのその尽くし方に、キャスターは一瞬だが過去の己を重ねて嫌悪する。

 だが、令呪の効果は使用する魔術師によっても変化する。

 そして、命じたのはギリシャ神話における魔術の女神ヘカテーから直接教えを受けた、神代の魔術師でも屈指の英霊である。

 例え並の魔術師であれば抵抗し切る対魔力を持っていても、抗い切れるものではない。

 

 「ぐぅぅぅうぅぅぅ――ッ!!」

 

 それでも、セイバーは抗った。

 限定的に龍種となり、瞳孔を縦に裂いて対魔力を向上させてまで、彼女は抗った。

 

 「流石の対魔力ね。では『衛宮士郎を殺しなさい』。」

 

 その抵抗に驚きつつも、それはキャスターの想定内だった。

 セイバーを手駒にするには、その心を折る必要がある。

 だからこそ、先程よりも多くの魔力を込め、二画目の令呪を使用した。

 

 「が、か…ッ!?」

 

 セイバーの右手、握られた不可視の剣が振り被られる。

 その先には大河を連れて逃げようとする士郎の姿があり、今にも不可視の剣は振り下ろされようとしていた。

 

 (このままじゃ逃げ切れない!)

 

 その時、衛宮士郎の思考は明瞭だった。

 追い詰められ、恐怖や怒りが排除された思考は明確に生存のための手段を模索する。

 考えろ考えろ考えろ。

 己に出来る事を考えろ。

 この窮地を打破する手段を考えろ。

 そして、

 

 『君も私も、その大本は作る者だ。』

 

 昨夜の記憶に行きついた。

 

 『我々の敵はただ一人、己だ。己の内と向き合い、敵に勝つのではなく、勝てる己を想像し、創造しろ。ただそれのみにこそ、我々は特化している。』

 

 日課である魔術の鍛錬、そこに現れたアーチャーからの助言。

 魔術回路の構築や強化の仕方は遠坂から習ったが、役に立たないと言われた投影に関する助言は無かった。

 だが、今はあの弓兵の言葉こそが己の内にあった。

 

 (キャスターのあの短剣…!)

 

 あれがもう一本、この手にあったのなら…!

 だが、幾ら彼が投影に特化した魔術回路を持ち、アーチャーという先達の助言があっても、宝具の投影は初の彼では間に合わないだろう。

 だが、彼のサーヴァントは何処までも愚直だった。

 

 「が、ぁぁぁああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

 セイバーの咆哮が廊下に響き渡る。

 同時、振り下ろされる不可視の剣を咄嗟に逆手に持ち代えて、

 

 「嘘…。」

 

 肉を貫く鈍い音と共に、己の腹に突き刺した。

 これには如何なキャスターも、返り血を浴びながら呆然とせざるを得なかった。

 その剣先は腹を貫通し、柄まで通り、背から血に染まった刀身が見えていた。

 一体誰が想像するだろうか?

 令呪に抗うためとは言え、己を剣で刺す様な者を。

 所謂大英霊とされる者達ならあり得るかもしれないが、生憎と彼女自身はそうではない。

 寧ろ、卑劣な者達との関わりの深い彼女では、予想も出来なかった。

 

 「―――投影、開始!」

 

 だからこそ、衛宮士郎は間に合った。

 

 第一に、創造の理念を鑑定。

 第二に、基本となる骨子を想定。

 第三に、構成された材質を複製。

 第四に、製作に及ぶ技術を模倣。

 第五に、成長に至る経験に共感。

 第六に、蓄積された年月を此処に再現する―!

 

 「全工程投影完了―――是、破戒すべき全ての符。」

 

 そして当然の様に、士郎の右手に歪な短剣が現れた。

 使い方は既に解っている。

 ならば、後は実際に使用するのみだ。

 

 「セイバーーーーーッ!」

 

 その声に、セイバーは目を開き、驚きを露わにする。

 先程まで逃がそうとしていた未熟者が、己に向かって突っ走る。

 そしてその右手には、つい先程見たばかりの歪な短剣が握られている。

 

 「こ、のぉ!」

 

 それをキャスターは見逃さない。

 アレは不味い。

 何が何だか分からないが危険に過ぎる。

 そう判断し、己の魔術によって未熟な少年を消飛ばそうとする。

 だがしかし、

 

 「士郎―――ッ!」

 

 二人の間にはセイバーがいた。

 剣で己を貫きながら、それでも彼女は士郎の盾となるべく二人の直線上に入り、キャスターも魔術を散らした。

 もし、キャスターが骸骨、竜牙兵を動かしていたなら結果は違っていただろう。

 だが、咄嗟に己の長所たる魔術に頼った事が、彼女の敗因となった。

 血濡れたセイバーの背中に、歪な短剣が突き刺さる。

 直後、彼女を縛っていた令呪の強制力は消え、士郎の左手には令呪が戻った。

 

 「く…!」

 

 令呪が消えた瞬間、迷わずキャスターは撤退を選択した。

 竜牙兵に時間稼ぎを命じ、殆ど魔法の領域と言われる空間転移の魔術を稼働する。

 だがしかし、彼女の見通しは甘かった。

 

 「……ッ!」

 

 呼吸で以て魔力を生成、その全てを魔力放出による加速に回し瞬間的に音速を超過したセイバーは群がる竜牙兵を全て無視して己の身体で歯牙にもかけずに粉砕しながら、ただ最速にして渾身の一刀をキャスターへと叩き込んだ。

 

 「そんな…こんな、所で…。」

 

 それが、キャスターの今際の言葉だった。

 

 

 

 

 

 この後、結果的にライダーを取り逃がしたアーチャー達と合流した一行は、ライダーの追跡でなく、結界によって一刻の猶予の無い者達を治療せざるを得なかった。

 無論、聖堂教会スタッフも一時間とせぬ内に来たのだが、そのタイムラグで少なくない数が死ぬと判断した凛は、敢えてその場に残って治療魔術を行使した。

 アーチャーとセイバー、士郎も災害救助や負傷者への対処を心得ており、聖堂教会スタッフの尽力もあり、何とか犠牲者を0にする事に成功した。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜

 

 ざしゅり、と。

 路地裏に生肉を切り裂く音が響いた。

 

 「い、いや、だ…僕、は…こんな…。」

 

 それが間桐の正統たる少年の最後だった。

 

 「あは、ライダーは返してもらいますね、兄さん。」

 

 心底嬉しそうに、少女の声が夜の路地裏に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ふぅ…(賢者モード
明日も早いのに何やってんだかw

色々おかしいかもしれませんが、そこはまぁ脳内補正でお願いします。
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