騎士王が兜に王位を譲る話   作:VISP

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そろそろ物語が急展開します。
イチャラブもあるがな!

ただしランサーとアサシン戦は大筋に関係ないので完全省略です。
結末は大体原作通りとだけ。

しかし前話の感想数だけで29とか凄い事に(汗
君達何処に潜んでたんだ?


第17話 Stay night編その11

 八日目 朝

 

 

 

 

 『昨夜から未明にかけて、新都方面での行方不明者の数は新たに約100人が確認されました。これにより一連の事件による行方不明者は200人を超えました。これに対し、県警は…』

 

 早朝から流れるニュースでは、新都で今まで以上の行方不明事件が起きた事を告げていた。

 

 「キャスターもいない状況でここまでとか…。綺礼の奴でも隠蔽はし切れない、か。」

 「原因って、やっぱり昨日の影かしら?」

 

 凛とイリヤ、二人の脳裏には昨日遭遇した影、バーサーカーを飲み込み、アーチャーの攻撃も一顧だにしない正体不明の何かの姿があった。

 

 「あれはサーヴァントに対して天敵よ。魔力に還元されて吸収されちゃう。」

 「確実に防御できるのはセイバーの鞘の真名解放時だけね。でも攻撃となると…。」

 「「う~ん…。」」

 

 流石に一晩経っただけでは打開策は浮かばないらしい。

 

 「でもイリヤスフィール、知恵借りといて何だけど、あんたもアレの相手するつもり?」

 「まぁバーサーカーの敵だし…それにあれ、サーヴァントの宝具やスキルじゃない。魔術の一種よ。かなり悪質だけど。」

 「嘘…。」

 

 イリヤの言葉に、凛が耳を疑った。

 通常、現代の魔術ではサーヴァントを害しえない。

 それが死に体とは言え、高い神性と不死性を持ったヘラクレスならなおの事だ。

 それはつまり、あの影は対魔力の高いセイバーでも素の状態では確殺可能だと言う事だ。

 

 「資料も見せてもらったけど、多分大聖杯に溜まってる呪詛に形を与えて使役してるのね。元が複数のサーヴァントからなる魔力の上に超高濃度の呪詛だから、対魔力も突破可能で大抵のサーヴァントはほぼ即死。これは無理ね。」

 (でも、小聖杯も無いのに、これだけ大聖杯の魔力を運用できるものかしら?)

 「無理ゲー、過ぎ。」

 

 イリヤが自信満々に解説しながら確信に近づきつつあった時、唐突にリズがやってきた。

 

 「あらリズ、どうしたの?」

 「朝ご飯、出来た。」

 「一応私も見ていましたので、今朝はドイツ風となっております。」

 

 前掛けを片付けつつキッチンから現れたアーチャーとセラの言葉と朝食の香しい香りに、漸くイリヤと凛は空腹を覚えた。

 

 「わーい、ありがとうアーチャー!」

 「じゃぁ私は衛宮君達を起こしてくるわね。」

 

 そういうと、直ぐに凛は席を立って士郎達の寝室へと向かった。

 「あ、待て凛。今はまだ多分早い」というアーチャーの慌てた声が後ろから聞こえたが、それが凛の耳に届く事は無かった。

 

 (ここはやっぱり定番の「昨夜は~」かしら?どの道どんな顔してくれるか楽しみねー♪)

 

 

 だがしかし、事態は彼女の想像を上回っていた。

 

 

 「衛宮君、セイバー。おはy」

 「ひゃぁ!?ま、待って下さい士郎!も、もう朝で、んくぅ!」

 「悪い!でもまだ止めらんない!」

 「は、ぁあっ!」

 

 ノックと共に声をかけようとした瞬間、室内から水気のあるもの同士がぶつかる音、そして家主とその従者の喘ぎ声と言うか…はっきり言って、濡れ場の音が聞こえた。

 

 (………………………………え、うわー、マジで?マジで現在もヤッテル最中?これ声かけたら空気嫁ってレベルじゃないわよね?っていうか、セイバーあんな声出せるんだ。士郎も、うわっ、なんか男なのに色っぽいとか。昨日は魔術師としてヤレって言ったけど、実際はこんな感じなんだ。うわーうわー。)

 

 

 この後、遠坂凛は5分程立ち尽くしてから居間に戻った。

 

 

 「凛、だから言ったんだ。まだ早いと。」

 「シッ!」

 「レバッ!?」

 「ふんっ!」

 

 

 腹を抱えて蹲るアーチャーを余所に、にやにや笑うロリブルマーからの追求を躱しながら、凛は漸く食卓についた。

 

 最も、味は全然分からなかったが。

 

 

 

 

 …………………………………………………………………

 

 

 

 

 結局、士郎とセイバーが食卓についたのは10時頃であった。

 顔を赤くして沈黙しているのに、その癖決して離れようとしない二人に、凛は頬を赤らめてそっぽを向き、イリヤはニヤニヤと笑みを深め、リズはお赤飯を茶碗に盛った。

 

 「イリヤ、何か言いたいなら聞くぞ。」

 「あ、良いんだ!じゃぁじゃぁ昨日、何処を触ったらセイバーが一番y「却下ぁーッ!!」えー、つまんなーい!」

 

 余りの気不味さに質問を許した士郎だったが、いきなり言われたくない所にブッコんで来たので速攻で終わった。

 無論、ロリブルマーはぶーぶー文句を言ってきたが、年下(とアーチャー以外は思ってる)のオマセな少女にリアル知人の濡れ場を解説する勇気も度胸も蛮勇も無かった。

 と言うか、学校一の高嶺の花だった(過去形)の遠坂に見た目ロリのイリヤ、そして無表情で何を考えてるか分からないメイドその1(大)と神経質そうで昨日からこっちを睨んできてるメイドその2(小)、以前から魔術や戦闘の訓練で世話になってるアーチャー(わっかいなぁと生温い目)、そしてもう一人の当人にして現在正座で顔を赤くして俯きながら身を縮こませているセイバー(さっきまでエロ三昧)の前で昨夜の初体験を話すとか拷問か羞恥プレイの類でしかない。

 

 「あれ?桜は?」

 「まだ起きてこないわよ。」

 「あ、では私が起こしてきます!」

 

 言うが早いか、セイバーは宣言すると誰も止める間もなく、桜の寝泊まりしている離れへと足早に駆けて行った。

 

 「さてシロウ、セイバーもいないんだから洗い浚い…。」

 「イリヤ、下品。」

 「お嬢様、少々お話が…。」

 「え、あ、ちょっと、リズ、セラー!?」

 

 そしてロリブルマーもまた、見かねたメイド達により連行されていった。

 

 「まぁ若い二人がどうなろうと口は出さんが、共同生活中なのだから、周囲にも気を配ってもらいたいものだな?」

 「う、わ、分かってるよ。悪かったな、寝坊して。」

 「うむ、以後は気を付ける様に。」

 

 一応年長者としての言葉を残して、アーチャーは霊体化した。

 

 「…取り敢えず、私はアーチャーと一緒に一旦屋敷に戻るから。何かあったら連絡して。今後の事は帰ってきたらね。」

 「わ、分かった。遠坂も朝から悪かったな。」

 

 そうして凛とアーチャーも一旦衛宮邸を去っていった。

 

 

 

 

 ……………………………………………………

 

 

 

 

 「どう、して…。」

 

 衛宮邸の離れにある客間のベッドの上で、桜は泣き伏していた。

 

 「どう、して…っ」

 

 先輩とは、私が先に出会ったのに、何で先輩は、あの人を選んだのだろう。

 汚さで言えば私と同じ位で、でも芯の強さは姉さんみたいで、戦力としてはアーチャーさん以上で。

 あぁ、成程。

 そんな皆のいいとこ取りした様な人だから、きっと先輩にも選んでもらえたんだ。

 

 「ぅ、ぐ、ひっく…!」

 

 間桐桜は泣いていた。

 この10年以上泣いた事など無かったのに、彼女の心の障壁はもう罅だらけで、彼女だけでは既にどうにもならない。

 ならば、彼女の現状を打破するのは…

 

 「間桐桜、貴方に聞きたい事があります。」

 

 他者による介入以外にあり得ない。

 

 「ひっ!」

 

 間桐桜は恐怖した。

 初めて会った時と同じ様な濃密な死の予感に、総身が凍り付いた。

 しかも、今の彼女は全身を鎧で覆い、右手に剣を、左手に鞘を握った完全武装状態だ。

 幾ら影を用いた所で、付け入る隙は無い。

 

 「影を出せば殺す。騒いでも殺す。質問の答えによっても殺す。故、心して答えよ。」

 

 その暴君の言葉に、桜はガクガクと頷く事しかできない。

 頷かなければ殺される。

 そんな未来を正確に予想しながら、桜は恐怖で固まりながら頷いた。

 

 「間桐桜、貴方は士郎に懸想していますね。」

 「は、はい!」

 

 これは肯定する。

 士郎と出会ったあの放課後から、自分はとっくに彼に惚れ抜いている。

 自分の何もかにもを投げ捨ててでも、あの人の傍にいたいと思っている。

 

 「では、間桐桜…」

 

 一瞬だけ、セイバーは僅かに躊躇ってから、続きを口にした。

 

 「貴方は万難を排してまで、士郎と一生添い遂げたいと思っていますか?」

 「それ、は…。」

 

 貴方が、それを言うのか?

 私から、あの人を奪っておいて?

 寄りにもよって貴方が――ッ!?

 

 「質問に答えよ、と言った筈だぞ。」

 

 感情のままに影を出そうとする寸前、桜の喉元に黒い聖剣が突き付けられていた。

 その切っ先は肌に触れながら、しかし傷つける事はなく、その冷たさと意思だけを明確に伝えていた。

 

 「ぁ、ぅ…。」

 

 だが、既に二度の警告は発された。

 これ以上の遅滞は死を招く。

 それがどんな結果になろうとも、彼女はそれを遂行するだろう。

 

 此処まで来れば、蟲が何らかの動きを見せると思うのだが、この蟲が桜を動かすには意識が不明瞭な就寝時間や極限状態なら兎も角、明確な意識のある状態では先ず理性を血中に直接生成した薬物で緩め、自身の支配が及ぶようになってからか、直接念話で命ずるしかない。

 前者は時間がかかり過ぎるし、後者は桜の殺気で読まれてしまう。

 外部の普通の蟲やアサシンでは、この最優の暴君には対応されてしまう。

 それら全てを組み合わせれば、或はと言った所だが、今それをしてしまえば、遠坂とアインツベルンにもそれが知られてしまう。

 蟲としては、完全に詰んでいた。

 故に、宿主がこの暴君の満足する答えを返す事を祈る事しか出来なかった。

 

 「わた、しは…」

 

 だから、暴君の殺気を跳ね除けて桜が口を開いた時、蟲は本気で驚いた。

 

 「わたし、は…!」

 

 徐々に、暴君の殺気が高まる。

 しかし、桜はそれすらも押し退けて、暴君の目を真っ直ぐ見ながら、口を開き続けた。

 

 「私は、先輩と…!」

 

 最早、試す事に意味は無いと、暴君は殺気を完全に消した。

 必然、桜は己が願いをはっきりと口にした。

 

 「私は、先輩と一緒にいたい!一緒になって、結婚して、子供を産んで、育てて、幸せに生きたい…!!」

 

 それは何処までも切実で、何処までも在り来たりで、だからこそ尊い願いだった。

 

 「その願い、聞き入れよう。」

 

 そして、至極あっさりと、セイバーは桜の心臓に聖剣を突き刺した。

 

 

 

 

 ………………………………………………………………

 

 

 

 

 「が、がぁぁぁぁぁぁぁ!!己、サーヴァント風情がぁ…!!」

 

 薄暗がりの洞窟の中で、蟲の長たる老人がその形を崩れさせながら、醜く喚き散らしていた。

 然もありなん、この翁の秘策にして生命線の一つが絶たれたのだから。

 

 「キ、キキキキキ…!」

 「何じゃと…?」

 

 老人が従者たるアサシンからの何がしかの言葉に振り向くと同時、蟲の巣窟と化していた洞窟に唐突に大量のドラム缶が投げ込まれてきた。

 

 「ぬ、いかん!」

 

 無論、老人として数百年を経た魔術師である。

 その身に秘めた神秘と命の総量は、最早並大抵の手段では突破できない。

 だがしかし、今の彼は魂の半分を打ち砕かれた状態であり、即座の魔術行使は暫くは不可能だった。

 故に、全てのドラム缶の爆散を防ぐ事は適わなかった。

 

 「貴様を殺すのに、最早魔術が意味を成さぬと言うのなら、端から魔術に頼らぬまで。」

 

 四半刻とせぬ内に、煙と炎、熱の充満した洞窟内に、コツコツと足音が響いた。

 それは勿論、翁でも暗殺者のものでもない。

 先程ドラム缶を投げ入れた、襲撃者によるものだった。

 

 「貴様か、若造…!」

 「お久しぶりだ、ご老体。相も変わらずで安心したよ。」

 

 監督役を務める筈の神父、言峰綺礼が立っていた。

 顔をガスマスクで覆い、酸素ボンベを背負いながら。

 

 「普通魔術師って言ったら、礼装とか使うもんなんじゃねぇのか?」

 

 そう言ったのは現在綺礼が使役しているランサーだ。

 正直、彼の生前からしても「うわぁ…」と引く様な手段だった。

 ドラム缶の中身は大量の聖別された油にアルミと白リンの粉末、そして魔術式の焼夷剤の混合物だった。

 こんな生物が無数に存在する閉鎖空間で使えば、先ず間違いなく熱と酸欠の充満で全滅するだろう。

 それが魔に属する妖物の類であるなら尚更だ。

 とは言え相手も魔術師、急激な科学及び魔術反応でも、全滅する事だけは無いだろうと考えていた。

 

 「私も正直、あの男の様で取りたくはない手段だったのだがね。何分、この方が確実だったのだよ。」

 

 綺礼は不服そうに告げるが、それも仕方がないだろう。

 魔術師でありながら、魔術師を確実に殺害するため、魔術師らしからぬ方法を取る。

 それは正に、彼の宿敵たる衛宮切嗣の「魔術師殺し」としての業に他ならないのだから。

 

 「よくもまぁ抜け抜けと言えたものよ。あの黄金のサーヴァントが居らぬまま、よく儂の前に立てた物よ。」

 

 ざわり、と洞窟内に残った蟲達が騒ぎ出す。

 今の攻撃で3割まで削られたものの、未だに多く存在する大量の蟲と髑髏の仮面を前に、しかし、綺礼とランサーは微塵の動揺も無かった。

 

 「何、元より誰の指示も受け付けんよ、アレは。」

 「その間、オレ達は害虫駆除ってか。嫌だねホント。」

 

 綺礼が黒鍵と聖書を構え、ランサーが槍と魔術行使のためのルーンを刻む。

 どちらも口では不服そうにしながら、しかし、両者とも戦闘者として最適な動きを選択する。

 

 「何故じゃ言峰綺礼。何故この状況で…!」

 「疑問かねご老体。何、簡単な事だ。このまま貴方が独り勝ちするのが面白くない。それだけの話だ。」

 「んじゃ行くぜぇ、アンサズ!」

 

 開幕は、ランサーの放ったルーン魔術だった。

 

 

 

 

 ………………………………………………………

 

 

 

 

 「嘘…私、死んだんじゃ…。」

 「死んではいません。その前に鞘で治療しましたから。」

 

 先程、心臓を刺し抜いた相手を前にして、アルトリアはあっさりと否定した。

 

 「貴方の心臓に巣食っていた蟲はこれで取り除かれました。これで、貴方は士郎と共にいられます。」

 「え、なんで、セイバーさんは…?」

 

 桜の疑問は最もだった。

 例え心臓の蟲と言う最大の問題が無くなっても、彼女の汚された身体が治る訳でも

あの陰惨な凌辱の記憶が消える訳でもない。

 なのに何故、アルトリアは桜に士郎を譲る様な事をするのか?

 

 「私は所詮サーヴァント。この現世においては客人の身です。聖杯戦が終結すれば座へ帰る身です。彼とは一生を共にできません。」

 

 自分の幸せはどの道果たされないのなら、せめて士郎が幸せで在れる様に。

 それだけのために桜を試し、蟲を殺したのだ。

 

 「私は彼からもう十分貰えました。次は貴方の番です。」

 

 そう言って、コトンと小瓶を水差しの載った机に置いた。

 

 「あの、セイバー、さん?これは…。」

 「媚薬です。使いなさい。」

 

 いやぁ姉上に習っておいて良かった、と宣うアルトリアに、桜の頬が引きつった。

 

 「こうでもしないとあの朴念仁はさっぱり貴方を抱きませんよ?」

 「で、で、でもこれってやっぱり不味いんじゃ…?」

 

 この期に及んで臆病風に吹かれる桜に、アルトリアはやれやれと肩を竦めた。

 

 「では私が独り占m「ダメです!」

 「では使いなさい。後遺症も依存性も無い安全なものですから、夕飯のデザートにでも一滴垂らせば十分です。その時に、色々と言いたい事も言えば良いのです。男は女を受け止めてなんぼなのですから。」

 「うぅぅ…ごめんなさい、先輩。でも先輩のためでもありますから…。」

 

 こうして、衛宮士郎はエロゲ主人公らしく、童貞卒業の翌日、恋人公認で後輩の女の子を抱く事になっちゃったのであった。

 

 

 

 

 

 

 




蟲爺「どうしてこうなった!」
神父「他人の努力を台無しにする…愉悦!」
我様(充填中)
乳上「士郎分割統治案」
の四つでお送りしました!

なお、ドラム缶はヘリで空輸したのをランサーが地上でキャッチして投げ入れました。
アイン家やうっかり家みたく金属細工っぽいのだったら効かなかったのにね!
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