騎士王が兜に王位を譲る話   作:VISP

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大分間が開いてしまった…
モチベーションが回復次第投稿していきます。

そしてFGO、黒ジャンヌ出なかったよ…(泣


第26話 Stay night編その20 決戦5

 丁度ライダーとアサシンの戦いが膠着状態になっていた頃。

 衛宮士郎という成れの果てと可能性もまた、決着をつけようとしていた。

 

 「「………。」」

 

 投影による憑依経験を生かした白兵戦も、宝具を矢とした射出も、互いに幾度も繰り返した。

 だが、相互作用によるものか、急速に成長する士郎によって一方的なものから徐々に拮抗に近づき、遂には相殺してしまう。

 劣化とは言え、射殺す百頭の様な宝具にまで昇華された技すら打ち合いながらも、二人は決着を付けれずにいた。

 最早、互いに札の切り様がなかった…最後の一枚を除いて。

 だから、互いに次の手が分かっていた。

 

 

       体は  剣で 出来ている

 「「――――I am the bone of my sword.」」

 

 共に衛宮士郎なら、切り札はこれしかない。

 彼らに許された唯一つの奇跡、異常な投影の根源しか。

 

      血潮は鉄で 心は硝子

 「「―――Steel is my body, and fire is my blood」」

 

       幾たびの戦場を越えて不敗

 「「―――I have created over a thousand blades.

      ただ一度の敗走もなく、

      Unaware of loss.

      ただ一度の勝利もなし

      Nor aware of gain」」

 

        担い手はここに独り。

 「「―――With stood pain to create weapons.

        剣の丘で鉄を鍛つ

       waiting for one's arrival」」

 

      ならば、我が生涯に 意味は不要ず

 「「――I have no regrets.This is the only path」」

 

       この体は 無限の剣で出来ていた

 「「―――My whole life was “unlimited blade works”」」

 

 ザァァ…と、強い風と共に世界が塗り替えられていく。

 何処かの皮肉屋の様な炎ではない。

 起源を同じくする者とは言え、彼らは既に彼とは別人なのだから。

 

 「これが、シロウの世界…。」

 

 呆然と、今の今まで黙していたイリヤが呟いた。

 セラは驚愕で絶句し、リズはその光景に感動していた。

 

 紅い、赤い、朱い夕焼け。

 地平線に沈みかけた夕日が空と大地の全てを赫に染めていた。

 空には雲一つなく、大地には草木の一本もない。

 あるのは剣だ。

 無数の、数える気すら起きない程の膨大な数の剣。

 それらがまるで墓標の様に突き立ち、黄昏時特有の長い影を地に落としていた。

 

 だが、もう半分は少し違った様相を見せていた。

 雲一つない空とアカの夕日は変わらない。

 だが、地上は木こそ無いものの、肥えた黒土に背の低い草の類が疎らに生え、それらを避ける様に剣が突き立っていた。

 

 それぞれの心象は、中心である二人の衛宮士郎を境に分かたれ、どちらに混じる事も揺らぐ事もなく、ただ対等に対峙していた。

 

 「ここまでは全て及第点だが…」

 

 エミヤがスッと残った右腕を掲げれば、無数の剣が浮かび上がり、その切っ先を士郎へと向けた。

 

 「さぁ、最終試験だ。」

 

 言葉と同時、剣群が雪崩を打って射出された。

 そのどれもが劣化した贋作とは言え、宝具に違いは無い。

 一発一発が見た目を遥かに凌駕した神秘を内包した一撃なのだ。

 人間に当たれば確実に五体は四散してしまうだけの威力はある。

 

 「何時まで…」

 

 だがしかし、そんなものは先程から何度も見た。

 

 「上から目線だテメェ――ッ!!」

 

 互いに数十もの剣群が虚空から生え出し、射出される。

 通常の弾丸や砲弾など比ではない程の神秘が込められた贋作達は、ただ只管に作り手の意思のままに飛翔する。

 進み、衝突し、音もなく砕け散り、消えていく。

 先程から何度となく繰り返された現象。

 しかし、先程と違う点もある。

 

 「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 

 砕かれ、光の粒子となって消えていく贋作の下で、二人の衛宮士郎が打ち合い続ける。

 最早二人の剣は互いに一合毎に砕かれ、手近にある剣を引き抜いては更に続行される。

 

 「これは捌けるか!」

 

 アーチャーの言葉と同時、山すら切り裂く程の巨大な剣が正面から士郎目掛けて射出される。

 斬山剣と言われるその巨剣は、切るとか以前にその圧倒的質量を以て士郎を圧殺せんと迫り来る。

 

 「舐め…」

 

 だがそれも…

 

 「るなぁ!!」

 

 今の士郎を討つには至らない。

 その手に握られたのは螺旋剣ことカラドボルグ。

 射出に特化された改良品ではないが、唯の一振りで三つの丘を切断する威力を余す事なく発揮し、迫り来る巨剣を粉砕した。

 

 「お、」

 

 巨剣が形を失い、エーテルとして散っていく中を士郎は疾走した。

 

 「おおおおぉぉぉぉぉ…ッ!!」

 

 その姿はボロボロだった。

 当然だ、彼は未熟な人間の少年なのだから。

 対するアーチャーはサーヴァントであり、その性能は人間とは桁違いであり、尚且つその全身を宝具程ではないが列記とした礼装で覆っている。

 攻撃の余波一つですら、ただの衣服を着る士郎にとっては致命打に成りかねず、逆にアーチャーにとってはそうではない。

 それでも、士郎は自分の辿ったかもしれない成れの果てへと駆けていく。

 

 (桜…)

 

 だが、そもそも士郎は彼の事は眼中に無い。

 

 (桜、桜、桜、桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜桜――ッ!!!)

 

 思うのは、自分に分かれを告げてきた少女の事。

 自分にとっては二人目の女であり、鈍い自分をずっと想ってくれた娘。

 身体を凌辱され続け、それでも何時か来る幸福を、未来を信じ続けた女の子。

 自分が負けて死ねば、彼女はきっと泣くだろう。

 もしかしたら泣かないかもしれないが、それでもきっと悲しむだろう。

 それは嫌だ。それはダメだ。

 

 『ずっと一緒にいてください。一番じゃなくても良いですから』

 

 結ばれたその夜、そう告げる彼女の何と美しかった事か。

 あの衛宮士郎には絶対持てない美しさを持つ少女は、絶対に無くしてはならない世界の宝だ。

 だから、士郎は剣の豪雨の中を剣群を率いながら突き進む。

 

 (弱い。だが強い。)

 

 そんな矛盾した感想を、衛宮士郎の成れの果てたるアーチャーは抱いた。

 

 

 彼もまた、衛宮士郎の一人として駆け抜け続けた人生だった。

 アルトリアとの約束を果たせず、嘗ての理想を追って英霊になる事を目標とした彼にとって、間桐桜と言う少女は数少ない日常の象徴だった。

 髪は白髪に、肌は褐色に、声は掠れ、肉体は鍛え上げられ、灼けていく鉄の様に変わっていった自分を、彼女は受け入れ続けた。

 数か月、酷い時には年単位で留守にする自分に代わって、姉代わりの女性が結婚して街を去っても、彼女はずっとあの家を守り続けた。

 どんなに酷い戦場でも、彼女との憩いの一時があったからこそ、衛宮士郎は駆ける事が出来た。

 その時間はまるで儚い夢の様で、アルトリアを失ってからは養父の現役時代の様な冷酷さを持った彼が唯一人間らしく在れる瞬間だった。

 ただ、どんな夢にも終わりは来る。

 第五次聖杯戦争から10年、黒い小聖杯を完成させたマキリによる第六次聖杯戦争の開催。

 汚染された聖杯を利用しようとする間桐臓硯を討つため、衛宮士郎は自身にとって生涯3度目にして最後の聖杯戦争に参加し……間桐桜を殺した。

 

 『私…先輩になら…良いです…。』

 

 そう言って、腕の中で冷たくなっていく彼女の姿を、アーチャーは忘れる事が出来なかった。

 彼女の存在もまた、衛宮士郎という男の魂へと刻まれたが故に。

 二度目となる自分に人間らしさを取り戻させてくれた女性の喪失。

 

 『世界よ…我が死後をくれてやる。』

 

 その悲しみに、悲嘆に、彼は最早耐えられなかった。

 硝子の心は砕け散り、鉄の血潮は溢れ、剣は折れた。

 そんな中、間もなく自身も死に行く間際、彼は願った。

 永劫、世界の奴隷になっても構わないから…

 

 『だから…今度こそ衛宮士郎に、彼女達を救わせてくれ。約束を、守らせてくれ。』

 

 だから、今度こそ彼女達に幸せになってほしい。

 例えそれで、自分が幸せにならなくても構わないから。

 

 

 ザシュリ、と肉を貫く鈍い音が響いた。

 

 「…なんでだ。」

 

 莫耶を握りしめた右手が血が滴る事にも気づけないまま、士郎は呻く様に呟いた。

 

 「勝利のためには…常に、最善の行動を。今回は、偶々これだっただけだ。」

 

 そう告げるアーチャーの右手には、一本の歪な短剣が握られていた。

 破戒すべき全ての符。

 コルキスの王女にして裏切りの魔女メディアが持つ、契約破壊の宝具。

 投影品とは言え、剣の形のソレはオリジナルと遜色のない効果を持つ。

 アーチャーはこれで自らを縛る大聖杯からの、この世全ての悪からの干渉を断ち切ったのだ。

 

 「なんで手加減した?隻腕でも勝てただろ。」

 

 そうなのだ。

 この衛宮士郎の可能性の一つは、最初から衛宮士郎を殺すつもりが無かったのだ。

 でなければ、士郎は数回は確実に殺されていた。

 

 「おいおい、そっちこそ勘違いしているぞ。私の目的は既に知っているだろう?ならばお前を殺す訳にはいかんさ。」

 「最初、思いっきり殺すって言ってなかったか?」

 「本気なら開幕で偽螺旋剣を使っている。洞窟ごと破壊するつもりでな。」

 

 劣化しているとは言え、丘を三つ切断したカラドボルグの真名解放+壊れた幻想を地下空間で行えば、如何に補強されたこの地下空間と言えども間違いなく崩落する。

 すると、運が良くて宝具で蒸発か崩落で圧死、悪くて地下に閉じ込められたまま窒息死が待っている事だろう。

 それをせずに態々白兵戦を挑んだ挙句、固有結界まで披露した理由は一つ、選別だ。

 生前己が出来ず、死後を売り渡してまで臨んだ願いを果たしてくれた別の衛宮士郎へ、彼の積み重ねた多くの経験と投影品を以て、彼なりの返礼としたのだ。

 

 「ではな。後は任せる。」

 

 それだけを告げて、アーチャーもまた黄金の粒子となって消えていった。

 その顔には何の憂いも悔いも無く、ただ満足そうな笑みだけが浮かんでいたのを士郎だけが見ていた。

 

 「…礼ぐらい言わせろよ、馬鹿野郎。」

 

 その光景を目にした士郎は、悔し気に吐き捨てた。

 

 

 

 

 ……………………………………………………………

 

 

 

 サーヴァント達が戦闘を開始した頃、最も先へと進んだ少女もまた、接敵していた。

 

 

 ドクンドクンドクンドクン…

 

 

 薄らと闇色に照らされる地下空間に、断続的に鼓動が響く。

 その音は最早、鼓動というよりも巨大な振動として濃密な呪詛と共に地下空間全体に響き渡っている。

 何の耐性も持たない一般人であれば、一刻もあれば完全に発狂する様な呪詛に包まれながら、それでもその空間へと足を踏み入れた遠坂凛は、その名の通り凛とした態度を崩さずに前を向いていた。

 

 

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクン…

 

 

 その視線の先には、地球上全ての呪詛を捏ね上げて作り上げた様な、胎児にも似た肉塊があった。

 それこそがこの騒動の元凶、英霊の座に帰れず、大聖杯へと取り残された復讐者の匣を纏った英霊の成れの果て。

 サーヴァント・アベンジャー、真名をアンリ・マユ。

 本来なら偽物の、単なる亡霊でしかなかったソレは、今や願望器を浸食し、嘗て望まれた通りの真正の邪神として生まれ出でようとしていた。

 そして、その肉塊に半ば埋め込まれ、彼の神の子の様に十字に吊り下げられているのが凛の妹、間桐の鋳造した黒の聖杯たる間桐桜だ。

 

 「漸く、此処まで来た…。」

 

 右手には己が従僕というか義弟というか頭来るイケメンからの贈り物である宝石剣。

 そして自身には事前に施しておいた強化魔術に精神防壁。

 左手は残ったありったけの宝石を出せる様に敢えて空けている。

 当に準備段階は終わり、後はただ駆け抜けて取り戻し、凱旋するのみ。

 

 「往くわよ桜。」

 

 そして、凛は確かに一歩、踏み出した。

 それが敵対識別に繋がったのか、大聖杯に、間桐桜に変化が現れた。

 

 「■■ ■■■■■■■――.」

 

 アンリ・マユの意思に操られた桜が、何らかの呪文を詠唱する。

 直後、巨大な地下空間の全てを埋め尽くす様に、黒く巨大な影が音もなく立ち上がる。

 その数に至っては50を優に超え、100になるかと言う程。

 更に、それらの戦闘力は一体辺りが並のサーヴァント一体に比肩する程であり、果ては対サーヴァント特効とも言うべき浸食・汚染能力を備えている。

 如何に優秀なマスターであっても、この状況は完全に詰んでいた。

 但し、それは普通の魔術師ならば、と注釈が付くが。

 

 「Es last frei.Werkzug―――!」

 

 凛の詠唱と同時、宝石剣から光り輝く魔力が刃となって放たれ、一撃で複数の影を斬断した。

 

 「さぁ、人生初の姉妹喧嘩の始まりよ!!」

 

 高らかに宣言し、凛は正面から影の海へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

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