第3話 Zero編冒頭
Side ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
事の始まりは、本来研究者である私が武勲を望んだことだった。
何をするにしても無気力で関心もなく、退屈そうにしている婚約者であるソラウ。
彼女を振り向かせるため、より己の能力を誇示しようと目をつけたのが聖杯戦争だった。
早速資料を集め、更に召喚の触媒となる遺物を予備含め伝手を十全に生かして探し回った。
その時、偶発的に発見したのが彼のブリテンの騎士達が使ったという円卓、その欠片だった。
これならば歴代の円卓の騎士達の中から最も相性の良い英霊を召喚できる!
私はこれを使用する事に決めた。
途中、予備の触媒が盗まれる事もあったが、本命が無事ならば些細な事だ。
そして私は独自の聖杯戦争の術式を一部解析する事で、サーヴァントのラインを分割し、ソラウにも繋げる事に成功する。
これでもしもの時の魔力不足やソラウに危険が迫った時でも安心できるだろう。
そして私は今宵、最適のタイミングで、自身の全力で以て英霊召喚に応じた。
「サーヴァント・ランサー。召喚に応じ参戦した。」
眩い光と共に召喚されたのは、漆黒の鎧と槍を携えた、絶対的な覇王だった。
「問おう。貴様が私のマスターか?」
視線を向けられた瞬間、私は今までの人生上、未体験な程の重圧に包まれた。
ランサーはその容姿こと美麗な女騎士だが、纏う雰囲気が全てを物語っている。
間違いない、このサーヴァントは強力過ぎる!
何をした所で人間に御し切れる存在ではない!
ここで私は初めて英霊の何たるかを知った、最早遅きに失したものであったが…。
「そ、そうだ!私が貴方を召喚した魔術師だ!」
「うむ。我が名はアーサー・ペンドラゴン。では魔術師よ、此度の戦における戦略を申してみよ。」
「は、はい!」
既に私に拒否権は無かった。
出来たのはソラウを庇う様に立つ事だけで、私は人生で初めて己の矮小さを実感した。
10分後
「馬鹿か貴様?」
ランサー、否、アーサー王は失望したと言わんばかりに私を見下ろしていた。
ここまで来るといっそ清々しい程の見下しぶりだった。
「魔術師という輩は多少賢しい者が多いが…お前の場合、根本的な間違いを起こしている。認識がズレていると言っても良い。」
「そ、れは一体…?」
確かに戦乱の極みにあったブリテンを統一した王からすれば児戯であろうが、それでもこれ程真っ向から言われた事は初めてだった。
「先ず戦争と言うものを理解せよ。魔術の競い合い?馬鹿々々しい!それでも貴様根源を目指す外道の一人か?」
その言い様に反感を抱いた瞬間、ズンと王の槍の穂先が怒気と共に床に突き立てられる。
「戦争とはあらゆる手段で以て勝つものだ。そのためならあらゆる手段が許される。尋常な勝負をしたくば競技会でも開くが良い。」
もっともな言い分だった。
少なくとも、これ程の存在を呼び出しながら、真っ向から競い合い等、確かに馬鹿らしい。
「魔術師よ。未だ尋常なる勝負を望むなら戦場から降りよ。貴様には百害あって一利無しだ。しかし…」
プライドが粉砕されるのを自覚しながら、私は王が言葉を途切れさせた事にふと視線を向ける。
「まだ勝ちたいと言うのならば我が旗下へ入れ。花の魔術師程ではないが、この私をこの状態で召喚した事は評価しよう。」
王の言葉、それに偽りは無かった。
この大英帝国首都ロンドン、彼女の時代ではロンデ二ゥムと呼ばれ、今現在でも鴉を化身としてアーサー王が守護しているとも言われるし、そもそもアーサー王自身が世界的な知名度を誇る。
この地で多くの人々の信仰を得た状態で召喚された彼女は通常よりもステータスが向上している。
そう言えば、と思い出す。
彼の王はブリテン統一と蛮族との闘争のため、神算鬼謀を以て最後を除いた全ての戦いに勝利したという。
戦争の何たるかを知り尽くした常勝不敗の騎士王。
最後の戦の帰趨とて、王の掌の上に過ぎなかった。
そして、王のステータスは確かに素晴らしく万全の状態であり、軍略スキルもあるならば適材適所だろう。
「畏まりました。これよりこのケイネス・エルメロイ・アーチボルト、貴方の下【?】。」
「許す。ケイネスよ、勝利の暁にはお前に聖杯をくれてやろう。」
こうして、私の聖杯戦争は当初想定していなかった方向で始まる事となった。
(あれー?ある程度口出し出来ればそれで良かったのに…やり過ぎた?)
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(やれやれ…つまらんものだ…。)
深夜の遠坂邸にて、アーチャーこと英雄王ギルガメッシュは退屈していた。
と言うのも、自身を召喚した魔術師が余りにも?魔術師然としていたからだ。
多くの魔術師は根源の渦を目指す。
神話の時代は少数派だったが、今ではそのためになんでもするというロクデナシばかり。
そんなものはとっくに見飽きているし、そもそもこの世全ての愉悦を味わったと言える英雄王にとり、生半可な娯楽は暇つぶしにもならない。
(後は他の魔術師や英霊共だが…雑種ばかりであれば、早々に終わらせるのも手か…。)
余りの刺激の無さにそんな事を考えていると、不意に遠方からの魔力の高まりを感知した。
「ッ」
次の瞬間、遠坂邸に渦巻く巨大な黒光が突き刺さった。
月明りの中、未だ粉塵が舞う遠坂邸に、一騎の騎士が降り立った。
漆黒の鎧と槍で武装した女騎士。
ケイネスによって召喚されたランサーだ。
全身から絶対的な王気を放つ彼女は、静かに粉塵を見つめていた。
突然、その姿が一瞬で背後へとブレる。
「ッ!」
直後、大量の剣や槍、矛や杖、弓等の多種多様な宝具が粉塵を突き破って現れた。
「シィ!」
それを見事な槍裁きで以てランサーは凌ぎ切る。
次いで、槍の穂先から自身の魔力を収束し、牽制と迎撃のための遠距離攻撃として射出する。
だが、それを粉塵の中から現れた金のアーチャーは防ぐ事すらせず、己が対魔力とその鎧だけで凌ぎ、お返しとばかりに背後に展開した金色の光から先の倍以上の宝具を射出する。
「フン!」
その暴威を前に、しかし、ランサーは鼻で笑って踏み込んだ。
魔力放出を用いた音速超過の突進はいとも容易く宝具の弾雨を掻い潜り、アーチャーの懐を目指して突き進む。
「戯け!」
ランサーの進行方向の地面、そこからも黄金の光と共に宝具が剣山の様に突き出す。
それに対し、ランサーは魔力放出により宙を駆ける事で回答した。
あくまで突き出すに留めた故に、それだけで回避されてしまう。
「ぬぅ!」
遂に一挙手一投足の間合いに入った。
同時に突き込まれた槍に、アーチャーは幾つもの盾で以て防ぎ切る。
ランサーの宝具を以ても、真名の解放無くば貫けない堅牢な守りに対し、ランサーは魔力放出で強引に威力を上げた槍の薙ぎ払いで盾の一枚を弾き飛ばす事で回答した。
「痴れ者がァ!」
途端、爆散する様に放たれる宝具の山が、今度こそランサーを吹き飛ばす。
余りの密度、連射速度に、槍を振るう間すら無い。
ランサーは槍を盾代わりにする事で、辛うじて致命打を避けながら、行きと同じく素早く魔力放出で後退する。
「っと、流石に格が違うな英雄王。」
「ほぅ、初見で見破るか。やはり時臣めの策など当てにはならんな。」
二ィ…と口元を歪めて真名を言い当てるランサーに、アーチャーもまた応える様に笑みを浮かべる。
ギルガメッシュとアーサー。
共に並ぶ者無き絶対者、超越者としての王なればこそ、その気質は近しく、ぶつかり合う王気に未だ屋敷の瓦礫の中にいる時臣や使い魔で偵察している各陣営は戦慄していた。
「さて、開幕を告げる号砲にはまだ足らん。」
「うむ。やはり祭りの始まりとは派手でなくてはな。」
ゴゥ…とランサーの周囲に魔力が吹き荒れ、アーチャーの周囲に百を超える宝具が出現する。
「卑王、鉄槌!」
「王の財宝!」
この夜、遠坂邸及びその周辺は完全に崩壊し、霊地として完全に使用不可能となるのだった。
このランサーの想定戦術
1、遠坂の霊地壊して補給途絶→燃費悪い我様の後半戦での息切れ狙い
2、アインツベルンはラスト→ケリィに防衛対象を抱えさせて動きを鈍らせ、ケイネスの死亡フラグ排除
3、大量の魔力入り宝石の準備→宝具ブッパしても霊地によらず補給可能
4、ケイネス&ソラウは一般人に変装して移動しながら夫婦生活→今後の結婚生活の予習と発見の困難さUP
5、常に先手で動く→相手に対応を強制させ続ける
6、基本、同盟はしないが、対海魔戦には参加→令呪追加欲しい
7、ケイネスの伝手で教会の癒着を暴露→政治面から遠坂陣営を攻撃
大体こんな感じ。
聖杯とかどうでも良いので、最後まで残ったら令呪ブースト宝具連射で消飛ばす予定。
なお、セイバー枠はモードレッドだが、同盟は出来ない模様
全編やったら何話かかるか分からんから冒頭のみ