騎士王が兜に王位を譲る話   作:VISP

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拙作「マシュの姉が逝く」とのクロスです。


嘘予告 藤丸一家、参戦

 それは有り得たかもしれない可能性。

 並行世界からの迷い人、藤丸士郎と桜が遂にその身柄を魔術協会側に補足されてしまった。

 妻子を連れ、士郎は思考する。

 家族を守るために、自分達が幸せに過ごすために。

 そのために、彼は以前帰国してきた息子とその連れの少女二人の事を思い出した。

 

 「そうだ。カルデアに行こう。」

 

 取り敢えず、息子と会って話をする事にした。

 

 

 

 

 これは藤丸一家がカルデアにお引越しするお話である。

 

 

 

 

 ……………………

 

 

 

 

 「と言う訳で、初めまして藤丸士郎です。」

 「妻の藤丸桜です。息子がお世話になっています。」

 

 事情を話され、初見でSAN値が直葬されたカルデア首脳陣を後目に、藤丸夫婦はにこやかに挨拶した。

 

 「娘の歩花です。まだ事情が飲み込めてないけどよろしくお願いしまーす…。」

 

 逆に、普段は快活で物怖じしない妹は、余りの驚天動地な事態の連続にグロッキー気味だ。

 まぁ普通は両親が実は平衡世界出身のヤバ過ぎる身の上出身の魔術師で、事故でこの世界に来てからはバレないように静かに暮らしてたんだけど最近バレちゃったんだ☆とか言われた上に、今までの生活全てを擲った一か月に渡る逃亡生活を送り、その最中に両親が割とあっさり戦闘行為を行い、襲い掛かる野良魔術師を相手に一方的な戦闘を繰り広げれば、そら(現実逃避しても)そう(仕方ない)よ。

 

 「あー…取り敢えず、君達を協会に差し出す様な真似は絶対にない。ないが、自分の身は可能な限り守ってくれ。」

 「すまん、アーチャー。」

 

 並行世界の同一人物であるエミヤと藤丸士郎は、割とあっさりお互いを受け入れた。

 何せこの二人、原作セイバールートと乳上HFルートと言う余りにも差異の大きな世界の出身だ。

 互いに思う処がない訳ではないが、いがみ合う必要性は余りにも薄かった。

 これがこの世界本来の衛宮士郎の辿ったUBWルートなら即座に戦争ものなのだが、生憎と二人ともよい年した大人だった事もあり、直ぐに情報交換に移れたのも幸いした。

 

 「しかし、そうか…桜とな…。」

 「あ、お前その様子だと生涯独身だったろ。」

 「表に出ろ。やはり衛宮士郎とは相容れない存在らしいな。」

 

 訂正、そうでもなかった(呆れ

 

 「二人とも、息子に恥をかかせる気ですか?」

 「士郎さん、ダメですよ?」

 「「すみませんでした。」」

 

 が、女子供に弱いのは共通していた。

 ものの見事にセイバーと桜の二人に鎮圧されていた。

 

 「んじゃ、タダ飯食う訳にもいかないし、厨房借りるぞ。」

 「仕方あるまい。案内しよう。」

 「あ、じゃあ私も。お菓子作って挨拶しますね。」

 「では味見役は任せてください。」

 「んじゃ、私はお兄ちゃんと一緒にいるからー。」

 

 余り家事スキルが突出していない(人並にはできる)娘を置いて、衛宮一家とも言える面々が厨房入りした。

 彼らが滞在するようになってから、カルデア新館の食堂のレパートリーは更に増え、特に洋食や洋菓子が豊かになった事から、女性陣を中心にその利用率は普段の倍になる事となる。

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 「うちの家族が実はなろう的主人公だった…。」

 「先輩!?しっかりしてください先輩!」

 「立香、色々メタ過ぎ。」

 

 そして、家中もとい渦中の人である立香は、衝撃の事実にぐったりしていた。

 傍らでキリエライト姉妹が心配しているが、机に身を預けた彼はそのまま動かない。

 うん、まぁ、人類救済した!と思って日常に回帰しようと思ったら、そこから問題が発生して、家族の安否も不明だったと思えば、いきなり自分の職場にやってきて事情説明されたとくれば、これは仕方ないだろう。

 

 「いや、寧ろオレらは納得したぜ。なぁ?」

 「だな。」

 「おう。」

 「うむ。あの様な両親の下に生まれたのなら、ここまで優秀になれた事も納得だ。」

 

 等と、ケルト系アルスター組のクーフーリン達(-オルタニキ)とスカサハ(槍)の言葉に、周囲の英霊達はうんうんと頷く。

 だって、どう考えても素養はあったとしてもただの一般人が、礼装ありきとは言え、魔神柱の動きをほぼ確実に停止させる程の威力を持ったガントを放ち、逆にその全力攻撃を防ぐ程の魔術障壁を張れる方がおかしい。

 

 結論:あぁやっぱり。

 

 それで英霊達の見解は一致していた。

 同時に、根源接続者並の厄ネタに、首脳陣及び頭脳労働担当班は頭を抱えた。

 だって、封印指定の固有結界持ち魔術師(+デミ・サーヴァントとも言える存在)に既に完成しながらも自律している聖杯(属性虚数元素、子供は自動的に才能開花)、更にその両者の娘までいるのだ。

 どんな魔術組織であっても、否、その価値が分かる者なら、どんな障害があっても手に入れようとするだろう。

 それ程までの価値が、藤丸一家にはあった。

 

 「いやー私としてはそんな自覚も無いんだけどね?なんか大変なのは分かるんだけど…。」

 「その様な認識とはな…。娘、貴様早々に改めねば死がマシ程度の目には会うぞ?」

 

 忠告するのは第七特異点から参戦した賢王のギルガメッシュだ。

 周囲にエルキドゥもいない事から、暇潰しに来たらしい。

 

 「あ、やっぱりですか?」

 「分かっているのなら、せめてこのカルデアにいる間は鍛えよ。せめて父母の足を引っ張らぬようにな。」

 

 言いたい事だけ言って、賢王は去って行った。

 その手に三人分のビールと塩茹でした枝豆を盛った皿を持ちながら。

 …どうやら、エルキドゥとキングゥの分を含めたビールの補給に来ただけのようだ。

 

 「あの王様の言い分は正しいわな。」

 「とは言え、嬢ちゃんの適正も測らなけりゃダメだな。」

 

 言うのは、大人の姿のクーフーリンの二人だ。

 彼らにとって、新兵の教導位は訳はない。

 そもそも、最初期のカルデアにおいて立香を教え導いたのは、この二人とエミヤ(弓)とメディア(大人)なので、実績的にも任せるには順当な二人だった。

 

 「ふふ、マスターの時はセタンタに先を越されたが…」

 

 だが、この場には一人、この二人以上に教導に向いた英霊がいた。

 

 「さて、マスターの妹よ。安心せよ、ワシがしっかり導いてやる故。間違いなく現代の貧弱な魔術師風情では太刀打ちできないようにしてやろう。」

 「お兄ちゃん!チェンジ、チェンジで!」

 

 ケルトの誇る自走追尾式核地雷メンヘラ師匠の恍惚とした笑みに、生存本能の警告に従って藤丸妹は最愛の兄へと救援を乞う。

 しかし、現実は非情だった。

 

 「現代人に向け、逃げ足重点で。」

 「承知した。」

 「お兄ちゃーん!?」

 

 兄の裏切りに、妹は涙した。

 しかし、それは悪意によるものではない。

 

 「これも歩花のためなんだ。頑張ってほしい。」

 

 キリッとした兄の顔は、妹の知らない、男として成長した顔だった。

 男子三日会わざれば…と言うが、立香の場合は彼からすれば一年以上の戦いの日々だったのだ。

 例え内心は清姫を始めとしたマスターLOVE勢向けの誤魔化しモードだったとしても、妹からすれば知らない兄の姿にキュンキュンくるものがあった。

 

 「お、お兄ちゃん…分かった!歩花は頑張ってきます!」

 「うむ、良い覚悟だ。では行くか。」

 「へ?」

 

 ガシリ、と万力で締められた様な、一切の抵抗を許さぬと言わんばかりの力が込められた手が妹の肩を掴む。

 振り返れば、そこにはとても愉しそうなお顔をした影の国の女王(神話レベルのヤンデレメンヘラ)がいた。

 

 「ではマスター、ちとシミュレーター室を借りるぞ。」

 「はいはい、行ってらっしゃい。」

 

 ずるずると、上機嫌に妹を引き摺っていく神殺しを、止められる者はいなかった。

 全員が「あぁ可愛そうだけど明日はお肉になるんだよね」という気分で見送った。

 

 

 

 

 

 「お、お兄ちゃん!歩花は、歩花は絶対に強くなって帰ってくるから…!」

 「おぉ、まだ叫べたか。では次、スケルトン100人セットに行ってみるか。」

 (お兄ちゃん、歩花はもうダメかもしれません…。)

 

 

 後日、元気にスケルトンを素手で砕く妹の姿が見られたと言う、

 

 

 

 

 ………………………

 

 

 

 

 「しかし、あの坊やがここまで大成するとはね。」

 

 ほぅ、と溜息を吐くのは色々と縁が深い第五次聖杯戦争のキャスターことメディア(大人)だ。

 医務室で念のために士郎と桜の診察をするのは彼女が二人と面識があり、十分な配慮も出来ると判断されたからだ。

 無論、純粋な魔術師としての腕前でも彼女を超える者はこのカルデアにはスカサハとマーリン位しかいない。

 前者は現在将来有望な少女を扱き中だし、後者はセクハラ夢魔なので間違っても人妻の診断はさせてはいけないが故の人選でもあった。

 ソロモン? 今は中身ロマニ状態なので、任せるには何処か不安がある。

 ゲーティアはゲーティアで、迂闊に表に出すには不安があるし、彼らはカルデアの頭脳労働担当班の一人(連日ブラック業務継続中)であり、早々他の仕事は割り振れない。

 

 「はは、オレは今も未熟だよ。支えてくれた人がいるからこそ、今のオレがあるんだ。」

 「もう、士郎さんったら…。」

 「はいはい、ご馳走様。」

 

 何この万年新婚夫婦羨ましい。

 そんな内心を完全に隠蔽しながら、メディアは本題に入った。

 

 「あのお嬢ちゃんの処置は、現代の魔術師としては見事と言って良いわね。多少の手直しと調整だけで済んだわ。」

 

 藤丸桜に施された隠蔽及び封印処置。

 迂闊に聖杯の機能を発揮し、その存在を露呈させないためのものだが、想定された経年劣化程度のものであり、然したる調整はいらなかった。

 士郎の左腕にしても、聖骸布と鞘の力により、特に現時点で心配するような事は起きていなかった。

 

 「すまない。ありがとう。」

 「良いのよ。私の弟子の身内なら、私達が助けない訳にはいかないわ。」

 

 まだまだ未熟だけどね、と溜息をつかれるが、それは彼女の基準が神代の魔術師だからだ。

 礼装ありきとは言え、現代の基準で言えば、立香はそれはもう立派な魔術師、否、両親と同じ魔術使いと言える。

 そう、下手をすれば封印指定を受けかねない程に。

 それを免れているのは、一重にカルデアのおかげだった。

 

 「それにしても、黒い大人の騎士王、ね。」

 「あぁ。こっちに呼ばれてるって聞いてるんだが…。」

 

 もう一つの相談、それはかつて士郎と桜が元の世界にいた時の事だった。

 黒い騎士王、それも成熟した姿でありながら、聖槍ではなく聖剣を持っていたという。

 士郎と桜を最後の瞬間まで助け、再会を約束した女性。

 士郎の、もう一人の大事な人。

 

 「とは言え、ここカルデアにいる黒い騎士王は剣を持った少女と槍を持った女性の二人、それにサンタコスの少女の三人。貴方達の言う騎士王はいないわ。」

 「そうか…出来れば約束を果たしたかったんだけどな…。」

 

 返し切れないものを貰った。

 それは命であり、力であり、今現在の彼を構成する全ては、彼女が力を貸してくれたが故に手に入れられたものだった。

 

 「おや、私へのお礼は無しですか?」

 「ライダー、いたのか?」

 

 そこにひょっこりと顔を出したのは五次のライダーことメドゥーサだ。

 普段着のセーターとジーンズ、魔眼殺しの眼鏡の姿は彼女がかつて冬木で好んでいた装いだ。

 

 「ライダーとは積もる話もあるし、食堂で皆でお茶でもしませんか?」

 「お、いいな。」

 「今なら丁度空いてますし、賛成ですね。私の部屋は姉様達がいらっしゃる時が多いので…。」

 「私は遠慮しておくわ。貴方達と一緒にいると、口の中が甘くて仕方ないもの。」

 

 和気藹々、そんな雰囲気の藤丸夫婦+1にメディアはげんなりとしながら告げた。

 

 

 

 

 「騒がしいですよ。ここは医務室、傷病の無い方は出ていってください。」

 

 だが数秒後、医務室の主によって全員が追い出された。

 

 

 

 

 ………………………………

 

 

 

 

 人理修復に成功したカルデアで、新たな事件が幕を開ける。

 新たな特異点の観測。

 魔神王は倒され、聖杯も全て蒐集した筈の状態で、人員の増強に成功したカルデアは更なる試練に挑む。 

 そこは西暦2000年代の極東、新宿と言われる都市。

 後にカルデアが「新宿幻霊事件新宿」と呼称した事件、これが魔術王が遺した4の残滓の始まりとなる。

 

 そして、そこには未だ約束の時を待ち続けるもう一人の騎士王の姿がある事を、未だ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「士郎、私を忘れないでください…。」くすん

 「きゅ~ん、ふ~ん…。」

 「カヴァス二世、慰めてくれるのですか…今は貴方だけが私の癒しです。」

 「うわっ、動物だけが癒しとか、嫁き遅れのOLみたいなんですけど。本当に哂えるわ。」

 「そこに直れ、下郎。」

 「ちょ、こんな所で聖剣とかやm」

 




藤丸家帰省時、まだ新宿に行ってなかったら?と言うIF展開から生まれたお話です。
まぁ嘘予告だから続かないんですけどね!

後、ゲーティアは一部の魔神柱が分離した事は気付いてたけど、こんな企てするとは思ってなかったよ!
まぁ殆どの魔神柱はその場で戦うなり英霊庇ったり自滅したりゲーティアと共に死んだりとかしたからね!仕方ないネ!
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