ルート条件2…セイバーとの同盟締結ならず(難易度:激高)
ルート条件3…大聖杯の調査を行う(難易度:低)
以上の条件を全て満たされた場合のみ、このルートは開けます。
アインツベルン城で征服王、兜の王、英雄王による王の宴が催されている頃と同時刻、ランサーは偵察中に偶然にもバーサーカーとそのマスターに遭遇した。
元々、この戦闘は彼女の本意ではなかった。
だが、マスターの制止すら振り切って襲い掛かってくる狂戦士への対応を余儀なくされた。
「Arrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrr!!」
「チッ!」
己が真名を一発で看破された事に対し、ランサーは動揺もなく、魔力放出で一気に距離を取る。
狂戦士の正体は知れない。
だが、同じ時代か出身地の英霊で、ここまでの腕前を持つ者なら、それこそ数える程度しかいない。
それなら直ぐに解るものだが…敵の宝具によるものか、ステータスは見れぬ上、その正体に迫るであろう情報にノイズが走る。
(ならば、ノイズのかかる情報を選別し、そこから洗い出す。)
鞘の加護と直感があるとは言え、目の前の手練れを前にして、ランサーは悠々と考え事を行う。
該当条件:武芸に極めて優れた、正体を隠すスキルや逸話を持ち、狂戦士の適正を持つ騎士の英霊。
思考を加速させていく。
ブリテンの地で見聞きしたあらゆる経験、そして聖杯から得た多くの神話や伝承の中から、ノイズがかかる情報を選出し、その不自然な空白から正答を導き出す。
「Grrrrrrrrrrrrrr!」
轟音と咆哮と共に打込まれる攻撃を、しかし、騎士王は槍を地面に突き刺し、真っ向から受け続ける。
強固な鎧と鞘の治癒力あってこその暴挙。
鞘はあくまで真名を解放した場合のみ防御宝具として機能し、通常の回復効果では痛みまでは消せない。
全身に衝撃と痛みが走る状態でなお、冷徹に思考し続けるその精神力こそ異常の一言だ。
だが、その異常は一分とせぬ内に終わった。
原因は、ランサーが本当に驚いた表情をバーサーカーに向けた事だ。
「お前、なのか?」
問いかける声に対し、狂戦士は静止する事で応えとした。
驚愕に目を丸くし、その名すら呼べない王を前にして、狂戦士は宝具の効果を切った。
途端、全身を覆う霞が晴れ、右腕に狂化により黒化した聖剣が現れ、兜が甲高い音と共に地面に落ちた。
途端、露わになった容貌は、嘗て多くの貴婦人を堕落させた美貌の持ち主とは思えぬ程に荒み果て、魔獣の如き眼光を宿していた。
「ラン、スロット…。」
「Arrrrrthurrrrrrr…。」
時を超えた、嘗て轡を並べた戦友との再会。
だが、片方は自虐が過ぎる王で、もう片方は狂気に囚われていた。
だから、この結果は出会った時点で誰にも止められなかった。
「Arrrrrrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrッ!!」
咆哮と共に、ランスロットが騎士王に襲い掛かり、聖剣を振るい続ける。
それを騎士王は、ただの女性の顔で、呆然と受け入れ続けた。
その時、彼女は真実思考が空だった。
それ程に、衝撃だった。
遠い昔に掠れて消えた前世の記憶は掠れて消えた今となっては、彼女のこの最悪の再会を予期する事は出来なかった。
ただ、聖杯戦争がマトモなものではないとだけしか覚えていなかった。
そんな彼女に、この再会は最悪の形で訪れた。
「そっか…。」
連撃に次ぐ連撃。
腕を、足を、肩を、腿を、腹を、胸を、頭を、顔を切り裂かれ、砕かれ、潰されながら、それでも騎士王は死ねない。
全身に襲い来る苦痛と喪失の感覚と並のサーヴァントではとっくに挽肉になっている状況で、鞘によって強制的に治癒・蘇生し続けながら、嘗ての忠臣の余りの姿に彼女は間違った答えに行きついた。
行きついて、しまった。
「私はもう、貴方の信頼すら、無くしてしまったのですね。」
ストンと、自分の言葉がアルトリアの胸に落ちた。
そうか、そうだったのか。
あっさりと彼女は納得した。
そうだ、当然なのだ、こんな怪物、誰だって好きな筈がない。
それがランスロットが伝えたい事と真逆だと言うのに、ランスロットもまた、狂気に囚われているために訂正できない。
「…ではな、ランスロット。次は首を貰う。」
だが、強固過ぎる理性が、彼女に停滞を許さない。
再構築された意思は即座に暴君の仮面を被り、成すべき事のために行動を開始する。
「Arrrrrrrrrrthurrrrrrrrrrrr!!」
吠え猛るランスロットに対し、彼女は全身からの魔力放出という全方位攻撃で以て答えた。
その一撃に流石にマスターが危険と察知したのか、寸での所でランスロットは雁夜を庇う様に防御の構えを取る。
魔力放出によって巻き上げられた砂塵が薄れる頃には、もう騎士王の姿は無かった。
夕闇が濃くなる時刻、響くのは死に体の雁夜の荒い息遣いだけだった。
…………………………………………………………
「断る。」
拒絶の言葉を吐いた瞬間、英雄王の宝具が無造作に放たれた。
それを騎士王は、黙って受け入れた。
下腹と右肩を貫いた宝具に目を向ける事もなく、掠れた金の瞳を無感動そうに英雄王へと向ける。
そこに込められた以前よりも深い悲嘆に、さしもの英雄王すら眉を顰めた。
「私は王として、責務を全うする。」
ズン、と劇場の床に聖槍の穂先が突き立つ。
そして、竜の心臓から生産される悍ましい程の量の魔力が次々と槍に注ぎ込まれていく。
「切り捨てた全てを糧とし、国と民に栄光と繁栄を。」
聖槍から伸びる13の棘、それらがまるでカウントの様に一本ずつ輝きを増していく。
同時、徐々に周辺の空間そのものが歪み始める。
「此度もまた然り。」
征服王の王の軍勢に近いようで異なる事象を後目に、英雄王は王と言う呪いを背負った女が、徐々に変質し始めている事をその慧眼で察知した。
「我が全霊を持って、聖杯を焼き尽くす。」
聖槍の穂先から、荒野が広がっていく。
夥しい程の死体が転がる、無尽の荒野。
「例えこの街が、この国が滅びようとも」
そこは嘗てのブリテン、最盛期の騎士王が駆け抜けた頃そのままの荒れ果てた大地。
「人類全てには代えられぬ。」
ゆっくりと、槍が引き抜かれる。
直後、劇場一帯は完全に過去のブリテンに飲まれた。
「私は王として、責務を全うする。」
ギチギチと、騎士王の変質が加速していく。
無辜の怪物、その汚名そのもののスキルが事前に掛けられていた令呪の後押しにより、過剰なまでにブーストされる。
「全力で目的を果たせ」。
街から離脱する寸前、ケイネスが三画全てを次ぎ込んだ令呪による強化と騎士王自身の己を顧みない性質が悪魔的な融合を果たしてしまった。
「汚名も、悔恨も、今はどうでもよい。」
竜を模した鎧が真正の竜種の鎧となり、その頭からは二本の角が、背中からは一対の翼が、腰から尾が伸びていく。
「ただ、責務を。」
全身に赤竜の証を、人型の幻想種としての証を生やし、吐息そのものすら魔力だけでなく熱量を孕む。
「私は、王、だから」
変貌していく。
鎧と肉体が融合し、より強固な形へとなっていく。
人としての尊厳の全てを投げ捨ててでも、眼前の強敵を倒し、聖杯を破壊するために。
「みンな、ヲ」
偉大な王から、人型の竜種へと。
鞘による不老不死と無敵の防御、聖槍による対界クラスの攻撃力、嘗て戦乱の時代を駆け抜けた技量と直感。
「まも、ラ、ない、と」
それら全てを併せ持った、最悪にして最上級の竜種。
否、元々ブリテンの守護竜の化身ともされる彼女は単なる幻想種ではなく、神格を伴った龍に他ならない。
「 ッ!!」
声なき声、音にすらならぬ咆哮を以て、その龍は産声とした。
ただの咆哮で周辺一帯を消飛ばす猛威に、しかし、それに相対する王は己が財によって毛程の手傷も負っていなかった。
「つまらん結果になったな。」
ハァ…と、心底退屈そうに英雄王は肩を竦めた。
「最早妃ではなく、お前はフンババに並ぶ我の庭を荒らす害獣となった。故に…」
轟、と英雄王の全身から魔力が噴き出し、その右手に乖離剣が、左手に巻き付ける様に天の鎖が出現する。
「我が全力を以て駆逐する。光栄に思うが良い。」
その言葉を明確に理解する理性は、その龍にはない。
ただ、眼前のソレが危険である事だけは理解できた。
だから、
「 ッ!!」
その口から放たれる対軍宝具クラスのブレスで以て返答とした。
今宵一晩の戦闘により、冬木市全域は壊滅し、万単位の死傷者と行方不明者を出す事となる。
だがそれでも、この世全ての悪が生まれ落ちると言う最悪の結果に比べれば、まだマシだった。
書いてて思った。
これ完全にジークフリート(最終再臨済み)と清姫、ウラド三世とかの上位互換だー!
これどうやって退治すりゃいいんだろ?(汗