ガバガバ感が酷い……けど思い付いたのだから仕方が無い。
「ーーーやぁ、ラインハルト。ようやくここに来たのだね」
特異点、神座と呼ばれる場所で私は笑う。私が微笑みをかけるのは髪、瞳、そしてその魂までもが黄金に輝く魔性の女性。手にしているのは至高の聖遺物と名高い聖人殺しの槍。彼女もまた、私に対して深い笑みを向けている。
「あぁ、来たともカールよ。私は、私の望みを叶える為にやって来た」
ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。本来ならば彼女では無く彼なのだがこの世界では女性として存在していた。異物、イレギュラー、本当ならば即座に排除しなければ私の筋書きに乱れが生じてしまうのだが……その脚本家たる私もまた、本来のカール・クラフトとは異なる存在である時点で修正出来る許容範囲を超えてしまっている。
ある日突然、なんの前触れも無く私は第四天、水銀の蛇、永劫回帰と呼ばれる男になってしまった。
始めは絶望したさ。今まで生きていた全てを奪われて、結末の決まっている役者に割り振られた事を。それでも、この物語を好んでいた私はどうにか本来の結末を迎えようと努力した……いや、本来の結末を迎える事を生きる目的にしていたと言うべきか。そうでもしなければ気が触れてしまいそうだったのだ。
そして1941年、戦争の狂気が渦巻くベルリンにて、私は筋書き通りに詐欺師として牢獄に入れられ……初めて彼女に出会った。
その時の衝撃は何度回帰を繰り返そうとも言葉に言い表すことが出来ない。暇を見て語句のレパートリーを増やしているのにも関わらずにだ。
鼓動が早まる、息が苦しい、身体が火照る……衝撃を言い表すことが出来なくても、この感情の正体を知る事は出来た。
私は、彼女に恋をした。
そして私は彼女を永劫破壊の法にて魔人へと押し上げ、彼女の感じる既知感を取り除くべく奮闘した。表向きではマルグリットを黄昏の女神へと至らせる為に動きながらだがね。
私は本来のカール同様に藤井蓮を創り出し、彼女の率いる黒円卓の面々と競わせた。
その果てで藤井蓮は綾瀬香純と結ばれ、櫻井蛍と結ばれ、マルグリットと結ばれ、氷室玲愛と結ばれ……彼女に未知を与える事は出来た。だが、それでも、私の目的は果たせなかった。機会はあったのだがそれをしようとすると私が臆してしまいチャンスを逃してしまうのだ……万を超えて数えるのを辞めてしまったがそれだけの年月を生きているというのに恥ずかしい限りだよ。
そして藤井蓮が彼女らの内の一人と結ばれ、ラインハルトが未知を感じて満足しているのを見て私は感じてしまうのだ。
あぁ嫌だ認めない、この様な結末など許せない。とね。
男の嫉妬など見苦しいものだというのは私自身が理解しているさ。だけどそれでも、嫉妬せざるを得なかったのだよ。藤井蓮がラインハルトを満足させているところを見るとね……どうやら私は存外に嫉妬深い性格だった様だね、初めて知ったよ。
そして私は流出し、世界を回帰させる……だが、いい加減に言わなければならないのだろう。此度の回帰で初めて面と向かって藤井蓮と一対一で話す機会があってそこで指摘されたのだ。
ーーー女を待たせる男は最低だ、いい加減思った事を言ったらどうなんだ?
それを聞いて私は唖然とし、すぐに笑ったね。それをお前が言うのかと。だが……確かにそうだ。思いは伝えなければ分からない。幾ら世界を回帰させる程に思っていたとしても、思っているだけでは伝わるはずがない。
そして、ラインハルトは座に乗り込んで来た。藤井蓮は氷室玲愛と共にグラズヘイムから脱出した様だね……これで、この場にいるのは私とラインハルトの二人だけだ。
「カールよ、私は全てを愛しているのだ……故に、卿の事も
「我が愛は破壊の慕情か……なるほど、確かにそれを気づかせたのは私である。ならば君の
私は歩き出し、離れていた距離を詰める。そしてラインハルトとの距離が手を伸ばせば触れ合える程に狭まったところで私は膝をついた。
「ラインハルト・ハイドリヒ……私は貴女に恋をした。貴女に跪かせていただきたい、花よ」
見上げるラインハルトの顔が唖然としている。こうしたラインハルトの顔を見るのは初めてなのだが……それ以上に恥ずかしい。愚者を絵に描いたような告白だ。笑ってくれ。だけど、これしか言葉が思い付かなかったのだ。
「……カールよ、卿は女神のことを愛していたのでは無かったのか?」
「否、確かに私はマルグリットに対して愛を向けている。しかしそれは兄妹愛の様なものだ。決して異性に向ける愛情などでは無い。私が異性として愛しているのは貴女だけだ」
「クッーーーハハハハハハッ!!!!」
それを聞くとラインハルトは槍を持っていない手で顔を覆い隠し、腹の底から笑い始めた。
「私を!!私の事を愛すると!?壊すことでしか愛を証明出来ない私を愛すると!?そう言うのかカール!?」
「然り、壊すことでしか愛を証明出来ない
「ーーーならば、教えてくれ。卿の愛を!!」
ラインハルトから神威が溢れ出し暴風となる。並の魂であれば砕け、チリすら残らないであろうそれだが私には効かない。吹き飛ばされる様にして距離を取る。
「ーーー
「流石は私の愛した君、私の逆しまにして自滅因子。やはりそう来たか」
私とラインハルトの関係は人間と癌細胞だと言える。魂が必ず持つとされる死や終焉を求める自壊衝動、例え覇道神となっている私にも自壊衝動はある。それを自滅因子と言い、覇道神の場合はその自滅因子を無意識に生み出してしまう。自滅因子とその発生源は互いに引かれ合う。同性ならば友情として、異性ならば愛情として。
私が彼女に恋をしたのにはそういう背景があるからなのかもしれないが……それに関しては声を大にして否と唱えさせてもらおう。私はラインハルト・ハイドリヒを愛している。自滅因子とその発生源などという下らぬ関係などでは無く、一人の男として。
「ーーー
「
ラインハルトの身体から力強い鼓動が響く。
「魅せろ、我が愛し子らよーーーその渇望を叩き返してやるがいい!!」
そうして現れたのは彼女が英雄と呼び、彼女に忠誠を誓った爪牙たち。
「卿が屑星と断じた私の爪牙だ。彼らの物語と渇望は斯くも清洌に美しい……笑わせなどせぬよ」
確かに、彼らの物語と渇望は水銀の蛇へとなってしまい惰性から物語を演じることになった私からすれば目も眩むほどに眩しい。魔名と呪いを与えたことを頭を下げて謝りたい程だ。
「
「
だが、それでも私は譲らない。
「あぁ、邪魔だぞ。ラインハルト以外に私を殺せるものか!!」
腕の一振るい、それだけで彼女の爪牙たちは砕け散る。
彼女を全力で
「ヴァルハラは目の前だ。その既知感は枯渇している……盟約だ、今こそ幕を引くとしよう」
「
「
口角が持ち上がるのがわかる。不謹慎かもしれないが、彼女がこうして私だけを見てくれているのを実感して嬉しいと感じてしまっている様だ。
「
「ーーー勝つのは私だ!!!!新世界の開闢に散る花となれ!!!!カール!!!!」
「ーーー吐かせよラインハルト、散るのはどちらか思い知るがいい。故に我が
「「
「
「
カール・クラフト
水銀の蛇に憑依した青年。憑依したことにでは無く結果の決まっているこの世界に送られたことに絶望するが、この世界を正しい形で終わらせることを目的に水銀の蛇として活動する。そしてベルリンにてTSしたラインハルトと出会い、彼女に恋をする。そしてそこから彼の目的が変わる。マルグリットを女神にする為に動きながら平行してラインハルトに未知を味わわせようと尽力する。そして回帰の果てに藤井蓮と一対一で本音で語り合う機会を得て、そこで彼から「女を待たせる男は最低だ、いい加減思った事を言ったらどうなんだ?」と告げられて、その回帰にてラインハルトへ告白することを決意する。ちなみに本物の水銀の蛇に比べてウザさ控えめ、ウザいと感じてもそれは水銀の真似をしているから。
ラインハルト・ハイドリヒ
どうしてだかTSしてしまった獣殿。カールとの出会いとその後の行動は原作と変わり無い。だが、彼女は何かとカールのことを気にかけている節があったと爪牙たちは語る。その理由は彼女もまた、カールに恋をしていたから。故に無意識のうちにカールを壊したく無いと
ロート・シュピーネ
お茶の間の代表格、小物会の大物。この世界の彼は何と求道の創造位階に達している。シュピーネが原因でカールは背後から彼の一撃を喰らい、ラインハルトに胸を貫かれることになる。つまりシュピーネが居なかったらラインハルトは負けていた。もう形成(笑)などとは言わせない。
結果としてはラインハルトがカールを倒したことで自滅因子の宿主が喪失、それに伴ってラインハルトも倒れる。だが二人は互いの愛を知り、確認したことで満足する。そしてマルグリットの統治する世界に期待を抱きながら共に消滅していった。
マルグリットはカールの目論見通りに覇道神・第五天となる。藤井蓮は氷室玲愛と生涯を共にし、死後マルグリットを守護する覇道神として座に着く。
結末がおかしい?気にするな、私が一番分かっているから。
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